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学園編
50.正しい悪役令嬢の作法2
マリー・トーマンは見目麗しい青年たちを侍らせる男好き――という噂が立つようになるまで、そう時間はかからなかった。
彼女が置かれている状況は誰もが分かっていた。
しかし、この学園は平民を疎んじる子息令嬢が多く通っていることも事実。彼女を積極的に理解し応援しようとする輩は現れなかった。
彼女ばかりがやり玉に挙げられているが、そこにいるのはマリー・トーマンだけじゃない。彼女のルームメイトたちも共に守られている状況だ。だが、彼女たちの言葉は誰にも届かない。数少ない、同じ平民の生徒たちにも。
前回も、このような状況はあった。
わたくしはマリー・トーマンをこの学園から追い出すために、ありとあらゆる嫌がらせを行った。全く同じ事をデリア・リナウドがするとは限らないけど……。
◇◆◇ ◇◆◇
「きゃああああっ!!!」
――人気の無い放課後の教室に、絹を引き裂くような可憐な悲鳴が響き渡る!
「なーにしてるんですか、お嬢様方?」
教室の後ろドアから、恐れおののき膝から崩れ落ちる可憐なご令嬢のお姿を拝見しておりましたが何か?
「お前……っ!」
立ち上がることも出来ないくせに、怖い顔で睨みつけ虚勢を張ることを忘れないお嬢様方の矜持には頭が下がるね。尊ぶべきとは微塵も思わないけどね?
「おやおや、やんごとなきご身分のお嬢様方が……こんなところで虫遊びですか?
いやいや、やんごとなきご身分のお嬢様方の崇高なご趣味は、我々下市民には分かりかねますなぁ」
デリア・リナウドは不在のようだ。
今、ここにいるのは先日、ランチの場で見かけたあの子の取り巻きが五人。ここはマリー・トーマンが所属するクラスで、彼女たちが集っているのは、普段マリー・トーマンが使用している勉強机。彼女たちの目的なんてバカでも分かる。
バカでも分かるということはマリー・トーマンにも分かるということだ。
彼女は勉強道具を放置していくような真似はしない。まあ、彼女には超個人的事情があるんだけど。
私も含め、この学園の子息令嬢は寮室へ戻ってまで勉学に励むようなことはしない。女子生徒ならば尚のこと。このような学園へ通わせておきながら、社交界には『真の淑女は賢しらな知識など身につけない』というおかしな風潮が蔓延している。
でも、それはこの国の社交界に限った話。
だから、他国の王の系譜を強く受け継ぐシテリン家で育ったわたくしは、トップを取るために勉学に励んでいた。王妃様はそれが気に入らなかったのかな?
――なんて、今はいいか。
なぜ、私が今この場にいるのかというと、この犯行について事前通告があったからだ。当の犯人たちが声高に宣言してくれたのだ。
ミーシャ・デュ・シテリンに対して。
だから、マリー・トーマンの机に触れるコトに対する恐怖心を植え付けるため、机に虫のおもちゃを仕込んでおいた。口で言っても聞かないし、体に教えるっていうのも何なので。
私はおもちゃを一つ手に取り、彼女たちに見せつけながら――。
「これ、そんなにお好きならどうぞ、お持ち帰り下さい?」
と、超・友好的に微笑みかけて上げた。うん、私ってば優しい。
「――おい! なんだ今の悲鳴!!」
泣きながら逃げる貴族令嬢と入れ違いに入ってきたのはパトリックだ。
あの子たちは憧れのパトリックがいたことにすら気付かなかったらしい。効果は上々だな。しばらくマリー・トーマンの勉強が邪魔されることはないだろう。
「げっ! お前、何持って……!」
「おもちゃですよ。要らない皮と紐で作りました。可愛いでしょう?」
「気色の悪いモンを見せるな!!!」
あ、またパトリックのトラウマを新たに形成してしまったかもしれない……。
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