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学園編
52.在りし日の感謝祭
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社交シーズンの終わりを告げる感謝祭――由緒正しい貴族が集まるこの場でなら、殿下も目を覚まして下さるはず。
一刻も早く、殿下の手で、その口で、あの小娘に知らしめて頂かなくては。あんな貧民の小娘など、到底わたくしには及びも付かないのだと言うことを。
あの貧民が、絶望に歪む様を見たい。
己の不遜に気付き、このわたくしに慄き地にひれ伏すところが見たい……!
あの小娘を讃える全てを、引き裂いてこの世から消し去ってしまいたい……!
感謝祭最終日――わたくしは、贅沢の限りを尽くしたドレスを身にまとい登城した。
「ミーシャ様、とてもお美しいですわ」
回廊でわたくしを待っていた下僕たちが傅き頭を垂れる。
「ええ、本当に女神の生まれ変わりのよう。やはり、クリストフ殿下へ並ぶべきお方は、ミーシャ様だけですわ」
「ありがとう」
――当然だわ。
事前に何度もクリストフ殿下へエスコートの依頼をしたのだけれど、色よい返事はいただけなかった。きっとお忙しいのね。
社交シーズンの終わりは、議会の閉会を意味している。そんな催しの際に多忙を極めているということが何を意味するのか――考えるだけで笑いが止まらなくなる。
流石、わたくしの殿下……!
「クリストフ殿下は謁見の間にいらっしゃるそうよ」
「来賓の方々に挨拶をされているとか」
「あら? 第一王子は……あらまあ……」
ホールへ入れば、貴婦人たちの囁きがそこかしこで踊る。
目障りな第一王子の退場も、もうすぐのようね。身の程知らずにも平民風情が参加しているようだけれど、何かしら、あの貧相なドレス?
――目障りだわ。
「ねえ、皆様? この場に相応しくない装いの方がいらっしゃるみたい。彼らに相応しい装いをするよう……どなたか忠言をすればよろしいのに……ねえ?」
「そうですわね、ミーシャ様! わたくしが申して参ります」
誰にともなくそう呟けば、下僕の誰かが不快なゴミを片付ける。
――当然でしょう? このわたくしを不快にさせることは大罪なのだから。
やがて、王族専用の通路――王の回廊から、クリストフ殿下や両陛下が姿を現し舞踏会の開会を高らかに宣言された。
その後、王家の皆様一人一人の短い挨拶が終わり……フロア内に美しい旋律が流れた。その頃には目障りなゴミは片付けられ、フロア内には正しき秩序が取り戻されていた。わたくしはクリストフ殿下の婚約者ですもの。このくらいは当然よ。
「殿下! 素晴らしい挨拶でしたわ」
わたくしは開会の挨拶を済ませたクリストフ殿下の元へと馳せ参じ、この手を差し出す。陛下の周りに集まる――見知った皆様のご理解とご協力もあり、わたくしはクリストフ殿下の腕を取ることができた。
殿下はいつもと同じ、わたくしに相応しい――孤高の王に相応しく冷たい気高い瞳でわたくしを見ていた…………。
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