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第二部
31.聖女の事後処理
しおりを挟む舞踏会は、表向きには平穏無事に終了したことになりました。
フレデリック殿下の一連の騒ぎは、防災鍛錬ということになったそうです。
防災鍛錬って何なのでしょうか??
トラブルが収束するまでに時間がかかってしまったこともあり、成人と認められる紳士淑女の皆様は、午前零時を過ぎても会場へ残ることにしたようです。
私やジャン様、そしてベートラ様も疲れてしまったので、早々に引き上げることにしました。またしても、ジャン様とゆっくり舞踏会を楽しむことができませんでした……かなり恨めしいです。
リシュタンジェル邸へ向かう馬車の中――。
「そんな恨めしそうな顔しなくても、舞踏会くらいお父様がいつでも開いてくれるわよ! 貴女を甘やかしたくて仕方ないんだから!」
おかしな顔をしていたところを見とがめられたらしく、ベートラ様に笑われてしまいました。リシュタンジェル公が……そうですか。こそばゆいですね。
自邸で舞踏会を開くということがどういうことなのか、今ひとつピンと来ない私ですが、隣にいるジャン様には話が通じているようです。
馬車内には、ベートラ様、ジャン様そして私の三人が乗っています。
ベートラ様はリシュタンジェル公にエスコートをしてもらっていたようです。
……ベートラ様のご婚約者は……いえ、もうややこしいことには関わらない方向でいきたいと思います。
お茶会を開く感覚は、前回の家庭招待会や遠い昔のコーベル邸の記憶から、何となく想像はつくのですが。それがリシュタンジェル邸でとなると……確かにあの屋敷には大きな広間がありましたが……あそこを使うのでしょうか?
リシュタンジェル邸へ到着すると、先日同様、リシュタンジェル公はジャン様に少々話があるようで、執務室に連行して行ってしまいました……。
今日は色々と込み入った話まですることになったようです。
恐らく、私に関する話もするのでしょうが……すみません、私ちょっと眠いので……ジャン様、後お任せします…………。
Zzz Zzz
翌朝、いつものように侍女が私を起こしに来たのですが、様子が異なります。何やら緊張しているご様子です。
気を使われているようです。最近、人の温もりを感じる対応をされることにも慣れてきていたのですが……うーん、振り出しに戻ってしまいましたか?
侍女たちが何を考えているのか、分かりません。
「……おはようござ――――ッ?!」
朝食のため食堂へ降りていくと、そこにはジャン様がいるではありませんか。
うっかり朝の挨拶を忘れてわめいてしまうところでした。年長者であるリシュタンジェル公及び夫人、長兄や長女……と一通り挨拶をして気付きました。
昨日までいらっしゃらなかった方々が、なぜ?
・
・
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――結論から言うと、真実を知って驚愕状態のリシュタンジェル公が呼び寄せてしまったそうです。昨日、ジャン様がフォローを入れた時には平静を保っていたように見えたらしいのですが……。
そして、優秀な使用人たちは当主の様子から察してしまったと……。
本当に優秀な方々ですね……びっくりです。
「神聖魔術を見せて欲しい!」とお義兄様方が騒ぎ、リシュタンジェル公やベートラ様がお説教をするという一通りの流れが終わり、やっと朝食が始まりました。
◇
「大聖堂へ行く?!」
今日の予定を早急にリシュタンジェル公に伝えなければ! と思い、朝食の場で伝えてしまったのですが……終わってからの方がよかったでしょうか?
「え、なんで??」
疑問を口に出したのはベートラ様ですが、他の皆様も頭に疑問符を浮かべています。
「教皇から取り上げなければならないものがあるので――」
「『教皇様から取り上げる』?!」
あ、しまった。皆様が青い顔で叫びます。
「モニカ嬢……」
ジャン様が少々困った顔でこちらを見てきます!
……今までにない温かく平穏な日常に、ちょっと気が緩んでいるようです……。
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