この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

第125話 「出口はひとつ、待ち伏せは全勢力」

リオネルさんの温室から出ようと、園児たちと廊下を歩く。
　……いや、正確には「園児たちに両脇を固められ、リオネルさんが背後についてくる」状態だ。
　こういうの、護衛っていうより人質の護送みたいだよね。

「外は静かだな」
　ユリウスが扉の向こうを覗く。
　その瞬間——

「見つけたぞ、ルカ！」
　バンッ！　扉が両側から開き、会議室組が雪崩れ込んできた。

　前方には各国の代表、後方からはヴェイルさん、そして横の回廊からは城の護衛団まで現れる。
　まるでボクを中心に同心円状の包囲網が完成していた。

「ルカ様は我が国へ！」
「いや、精霊界に！」
「花卿の庇護下に！」
「園に決まっているだろう！」

　四方八方から主張が飛び交い、空気がピリピリ……いや、もはやバチバチに火花が散ってる。

「ちょっと、ボクは——」
「「「「選んでください！！！」」」」

　……全員の声が見事に揃った。
　なんでそんな大合唱みたいに迫ってくるの。

　園児たちが一歩前に出て、睨み返す。
「ルカは誰のものにもならない！」
「そうだ、本人もそう言ってる！」
「……だからこそ欲しい」
「だからこそ奪う」
　あ、これ会話が完全に平行線。

「ルカ、下がって！」
　ユリウスがボクを抱え、後ろへ飛び退く。
　同時に各陣営が一斉に前へ——

　温室の花々が揺れ、香りが渦巻く。
　その真ん中で、ボクはミミルを抱きしめながら心の中で呟いた。

　……これ、たぶん今日中に決着つかないやつだ