この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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第132話 境界の獣と、西の王の影

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 黒鉄の塔が軋みを上げながら、大地ごと震えた。
 封印が破れる音は、耳で聞くより先に骨の奥に響く。
 ──そして、靄の中から、それは現れた。

 四足の獣。
 しかし普通の魔獣とは違う。
 全身を覆うのは黒い炎のような靄、瞳は血のように赤く、牙は金属を削る音を立てて光っていた。
 背丈は大人の二倍、肩幅は人間三人分──近づくだけで息が詰まるほどの威圧感。

「おい、冗談だろ……」
 レオンが小さく呟き、剣を握り直す。
「冗談じゃない。あれは……“境界守獣”だ」
 ノアの声には珍しく焦りが混じっていた。
「でも、本来なら神子に牙を向ける存在じゃないはず……」

 獣の瞳が、まっすぐボクを射抜く。
『神子……お前を“王”のもとへ連れていく』
 その言葉で、背筋が凍った。
 ──西の王。やっぱり、今回の魔方陣は偶然じゃない。

 カインが即座に飛び出し、拳に炎を宿す。
「連れていかれるわけねぇだろ!」
 炎の拳が獣の肩を打ち抜くが、黒い靄が炎を飲み込み、逆に爆ぜた。
 爆風でカインが後ろに吹き飛び、ユリウスが抱き止める。

「ルカ、下がれ!」
「……下がらない。あれは、ボクが止める」

 ボクは両手を胸の前で組み、精霊語を紡いだ。
 すると足元に黄金色の光輪が広がり、空気が温かくなる。
 守獣の動きが、一瞬だけ止まった。
「やっぱり……あなた、本当は敵じゃない」

 その瞬間、獣の目に一瞬迷いが浮かんだ──が、背後から別の魔方陣が浮かび上がり、獣の身体を再び黒い靄が包み込む。
 まるで、誰かに操られているみたいに。

「……西の王、か」
 呟いたボクの声は、誰にも届かなかった。
 獣が再び咆哮を上げ、次の瞬間、黒い嵐が境界全体を飲み込んだ。
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