この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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第167話 氷の王子の作戦、王都を凍らす

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昼下がりの王都。
 セレンが珍しく一人で出歩く……はずだった。

 ──が、案の定そんなわけもなく。
 ボクの手をしっかり握ったまま、市場の通りを歩いている。
 あまりの堂々さに、通りの人たちは口々にささやく。
「神子様、新しい婚約者かしら」
「また一国、落ちたわね……」

「ねえセレン、どうして急に市場なんかに?」
「神子の好物を調べに来ました。王国ごと差し上げる準備のために」
「いやいやいや! 国単位でプレゼントしないで!」

 そう言って笑った彼の瞳は、氷の色をしているのに、どこか切なげだった。
「……本当は、貴方を連れ帰るためです」
「え?」
「我が国は、長い冬に閉ざされ、人々の心も凍りついている。
 貴方が来れば……春が来る」

 少し胸が痛んだ。
 でも、ボクは誰のものにもならないと決めている。
「……ごめんね。ボクは、みんなの神子だから」
「ええ。だからこそ欲しい」

 その瞬間、背後から声が飛んだ。
「神子を口説くなーっ!」
 カイン、ユリウス、レオン、ノア……全員揃って追いかけてきた。
 市場の人々が避ける避ける。

 そしてあっという間に、氷の王子VS護衛団の乱戦に。
 氷の床、火花、剣戟、そして飛び交う野菜。
 なぜか八百屋のトマトが直撃して、セレンが真顔で言った。
「……これは情熱の赤、恋の色ですね」
「いやトマトだから!」

 結局その日、王都の噂はこうだった。
 ──神子ルカ、氷の王子に国ごと口説かれるも、護衛団により阻止。
 平和? なのかな……。
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