この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

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72. 「いつも通りの日が、いちばん宝物だった」

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朝、目が覚めたとき。

ふと、今日は特別なことが何もない日だって気づいた。

お祭りも、お別れも、お迎えもなくて、
クッキーを配る予定も、手紙を書く予定もない。

ただ、園に行って、みんなと過ごす。
それだけの日。

でも――

「……なんだか、それって一番幸せかも」

ボクはミミルにそう話しかけながら、パタパタと着替えをした。

**

園に着くと、レオンが「よーし!今日こそルカと縄跳び対決だ!」って叫んでたし、
ノアは「ルカくんに手作りティッシュケース作ったのー!」ってよくわからないものを差し出してきた。

カインは相変わらず静かで、でもボクが顔を見ると、うっすら微笑んでくれて。

ユリウスは日記帳を持ってきてくれて、ページの隅にそっと押された「しおりの魔法」も添えてあった。

アスも、「今日は“がんばらない日”ってルカくんが決めたって聞いたから、ぼくもがんばらない」って真似してた。

**

いつもの日。

でも、たぶん、ボクはこういう日が――一番、好きだ。

静かで、穏やかで、でもぬくもりに満ちてる日。

**

お昼寝の時間、みんなはぐっすり眠っていた。

ボクは目を閉じながら、今日のことを胸のなかで並べてみた。

・朝、ノアのティッシュケースに困った顔をしてしまったこと。
・レオンの縄跳びが2回でひっかかったのを見て笑ってしまったこと。
・カインがボクの水筒を無言で満たしてくれたこと。
・ユリウスがそっと置いた詩のしおりに、ボクの名前が書いてあったこと。
・アスがミミルに話しかけて、「ミミルはうさぎ語わかるのかな?」って言ってたこと。

どれもこれも、きっと誰かにとっては「小さなこと」。

だけど、ボクにとっては――

「今日も、宝物だった」

心のなかで、そうつぶやいて、ボクはそっとミミルを抱きしめた。

“特別な日”じゃなくてもいい。

“何もない日”が、いちばんまぶしくなるときがあるんだって、知った。

**

明日もまた、“ただの今日”がやってくるなら。

ボクはきっと、それを両手いっぱいで抱きしめたい。

みんなと笑って、みんなの名前を呼んで、また眠る。

そんな日々を、重ねていけたらいい。

**

「……ねえ、ミミル。
また明日も、きっといい日になるよね?」

ミミルの耳が、そっと揺れた気がした。

ボクの問いに、風が答えてくれるように、やさしく。
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