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108. 「外交使節団、ついに来訪(プロポーズは列でどうぞ)」
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朝焼けの空に、長く伸びる馬車の列。
金の装飾に彩られた旗が、風に翻っていた。
「……あれ、全部?」
園舎のバルコニーからのぞいたユリウスの顔が引きつる。
「ええ、信じられないけど、全部ですわ」
カインが双眼鏡を覗いたまま呆れたように言った。
「えーと……王子、宰相、外交参謀、騎士団長、学者……それから“謎の仮面男”って誰よ……」
門の前には、国章入りの礼服を着た大人たちがずらりと並ぶ。
それぞれが、宝石箱や書状、色とりどりの花束を抱え──
「ルカ様に、我が国の永遠の愛と繁栄を」
「ルカ様に、正式な婚姻同盟の打診を」
「ルカ様に、第二王妃として……」
──全員、プロポーズだった。
「おい! 並べ並べ! ちゃんと列作れ!」
「うちの国が先だ! 貢物の総額を見ろ!」
一部では軽く殴り合いも始まっている。
(……こわい)
園の中庭で、ミミルをぎゅっと抱えたルカが、小さく震えた。
(プロポーズ……って、外交で……やるものなの?)
アスがルカの隣でそっと言った。
「……全部、政治的意図があります。
でもたぶん、みんな“本気”です。恋も、国も、両方」
「……えぇ……」
ルカの後ろに、いつの間にか園児たちが集まっていた。
ユリウス、レオン、カイン、ノア、そしてアス。
全員の目が、“ガチギレ”していた。
「……ルカに色目使った王子、国交断絶ね」
「てか婚姻て何? 奴隷契約か?」
「“王子様たち”、一列にならんで五体投地しろって言えばいいんじゃない?」
ルカはおろおろと首を振った。
「ま、待って、みんな……外交って、たぶん、そういう感じじゃ……」
「ねぇルカ」
ノアが低い声で言った。
「選ばないって言ってたよね。
でも、“選ばれない自由”くらい、持っていいと思うよ」
「……え?」
「だから、全部断ろう。君が、安心して“誰のものでもいられる”ように」
その言葉に、他の園児たちも頷いた。
「ルカが誰にも渡さないって、決めたんなら──
オレらが全部、守ってやるよ」
(……あ)
ルカは、なんだか泣きそうだった。
外交という大義名分。
求愛という戦争のはじまり。
その最前線に立つのは、小さなボク──
でも、こんなにも大きな愛に囲まれていることが、怖くないと思えた。
「……うん。ありがとう。
ボク、ちゃんと断るから」
「……ひとりひとりに、ちゃんと、心を込めて言うよ」
「“ボクは、誰のものにもなりません”って」
金の装飾に彩られた旗が、風に翻っていた。
「……あれ、全部?」
園舎のバルコニーからのぞいたユリウスの顔が引きつる。
「ええ、信じられないけど、全部ですわ」
カインが双眼鏡を覗いたまま呆れたように言った。
「えーと……王子、宰相、外交参謀、騎士団長、学者……それから“謎の仮面男”って誰よ……」
門の前には、国章入りの礼服を着た大人たちがずらりと並ぶ。
それぞれが、宝石箱や書状、色とりどりの花束を抱え──
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でも、こんなにも大きな愛に囲まれていることが、怖くないと思えた。
「……うん。ありがとう。
ボク、ちゃんと断るから」
「……ひとりひとりに、ちゃんと、心を込めて言うよ」
「“ボクは、誰のものにもなりません”って」
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