私の婚約者に手を出すな! ~愛する婚約者を狙う鬼畜令嬢たちとの奮闘記~ 

千依央

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第二章:貪欲令嬢イザベラ

食いつくし系の恐怖

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「強くなる!」と決意した翌日から、ソコルから受ける訓練が始まった。
 正直、私は子爵令嬢として今まで生きてきたから、武力を身に着けるって意味を甘く見ていた。

 正直、しんどい。
 すごくしんどい。
「こ、こんなキッツイ訓練を、ソコルは毎日していたの!?」
 私が息も絶え絶えになりながら、涼しい顔で先に行くソコルに必死でついていく。
 全ては

「アッシュを守って、私達が幸せな結婚生活を送るために、邪魔者を排除する」

 これにつきる。
 そのためなら、どんなにキツくしんどくても投げ出さない!

 とはいえ、慣れない訓練で体力を消耗するのは事実。
「お嬢様、帰る前に、少し休憩していきましょう」
 ジャスミンの提案で帰り道にある、評判のスイーツ店へ寄った。
「お嬢様はここのシュヴァルツヴァルタートルテがお好きでしたわね」
「ここのはね、王都でも特に美味しいって評判なのよ」
 最近結婚式を控えて、甘いものを減らしていたから、久しぶりに食べられるのが楽しみ。

 店内に入って、二人分のスイーツとお茶を店員に注文して楽しみに待っていたら……

「ブゴッ、ブゴゴゴゴッ!」

 聞いたことのある、食欲が失せる程の家畜の様な鼻息。
「まさか……」
 と私は同じく窓際の少し離れた席を見ると……いた。
 赤豚……いやいやイザベラ嬢が。

「お待たせしました!」
 店員がたくさんのスイーツを運んでくる。
 侍女は後ろに立っているだけなので、食べてるのはイザベラ嬢だけ。
 目算だけど、多分運ばれてくるあの量のスイーツは5人前ぐらいある。

 それを一人でガツガツと、汚らしく食べて……ううん、貪っている。
 とても令嬢のテーブルマナーとは思えないほど。
 その証拠に、ジャスミンも嫌悪感をにじませた顔で彼女を見ていた。

 唖然としていると、私達のテーブルにも、注文の品が運ばれてくる。
「あ、ありがとう」
 私達は店員に礼を言っていただこうとする。

「あ、それ! アテクシも食べたいと思ってたやつ!」
 私がシュヴァルツヴァルタートルテにフォークを刺そうとした時、イザベラ嬢がこっちに向かってきた。

「は!?」
 私が唖然としていると、イザベラ嬢は持っていたフォークを私のトルテに刺し、一気に口に放り込んだ。



「……ちょ……うそでしょ!? あなた一体何を考えてるの!?」
 ブヒブヒ言いながら、汚らしく咀嚼するイザベラ嬢。
 私もジャスミンも、あり得ない彼女の行動に唖然としていたら、イザベラ嬢の侍女がふらついて倒れた。

「あなた、大丈夫ですか!?」
 ジャスミンが先に動き、侍女を抱き起す。
 だけど、本当は彼女を助けるべきイザベラ嬢は、倒れた侍女に目もくれない。
 相変わらずテーブルの上にあるスイーツを貪ってる。

 食べきったところで、店内に響き渡るほど大きな曖気を放った。
 あまりにも下品すぎて、店内の人全員が嫌悪感をあらわにする。

「あ~おいしかった。ゲフゥ……会計は、ミーニャ伯爵につけといてね。アテクシは客人だから!」

 そう言い放って、侍女を置いて一人店を出て行った。
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