家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃

文字の大きさ
7 / 31

惚れた?

しおりを挟む
「オレに惚れた?」

 ジッと見られているのを感じながら、慧は目を合わさないよう、反応はそこそこに、料理に取り掛かる為システムキッチンに移動した。冷蔵庫に入れていた材料を取り出し、手を洗う。

「龍士郎さまは、とても魅力的な方だと思いますよ」

 どうせsubをからかっているだけなのだろう。慧はキッチンに材料を並べながら、それだけ言った。
 顔を見ていないので、どういう反応をしているかわからないが、仕事中である。仕事をしなければならない。
 そんな慧の考えがわかったのか、

「ありがとう、良く言われる」

 そう苦笑しながら軽く言われ、それ以降はちょっかいを出される事はなかった。

 視られているのは感じるが、特に実害も無いので、どんどん料理を作っていく。昨日、危ないのでキッチンには近づかないで欲しい、というのを覚えてくれているのだろうか、たまたまだろうか。

 そんな事を考えながらも、料理は無事に作り終わり、変わらずダイニングで作業している龍士郎を、久しぶりにまともに見た。
 真剣にパソコンに向かっているその横顔は、流石イケメンだと思いながら、声をかける。

「龍士郎さま。夕食が出来上がりましたが、どうされますか? 後ほど召しあがるなら、冷蔵庫に入れておきますが」

 慧の声かけに、ハッと画面から龍士郎が顔を上げた。

「あ、ああ、ありがとう。後で食べるから、置いておいて」
「はい」

 慌てて、再び画面に顔を戻したので、忙しい時に声をかけてしまったようだ。
 いけない、雇用主の邪魔にならないようにしなければ。慧は心の中だけで反省し、明日の分を冷蔵庫に入れて、今作ったものにラップをし、龍士郎の横に並べる。四人掛けの大きなダイニングテーブルなので、ご飯とチキン南蛮、サラダを置いてもかなりの余裕があった。

 後片付けを完璧にし、再び龍士郎を見ると、先ほどと変わらず真剣な顔でパソコンの画面を見ていた。
 そうやって、黙って真剣な顔をしていると、調子が狂う。真面目である事を好む慧には、その姿は、充分好意的に映る姿であった。

 声をかけて良いのか迷った慧だが、無言で帰る方が失礼だろうと思い直した。なるべく邪魔にならないように、

「それでは、失礼します。明日もよろしくお願いします」

 すこし小さめに声をかけると、龍士郎は集中しているようで、うんともすんとも反応が無かった。
 ここで変に集中を途切れさせても悪いだろう。そう判断し、慧はもう一度だけ小さく、失礼します、と言って部屋を出た。



 今日は、少しだけ違う顔を見る事になった。ちゃんと真面目に仕事をしている姿は、普通に恰好良かった。
 これで、変にこちらにちょっかいをかけようとしなければ、好ましいのに。

 そこまで考えて、慧はハッとした。
 こちららが好ましいなどと思っても、どうしようもない。ただの仕事上の関わりだ。
 ただ、domに変にちょっかいをかけられてしまったsubとしては仕方のない反応だとも思う。そう、subは、domに支配をされたいのだから。
 誰でも良いというわけではないが、誰かにはそうされたい。と、望む己の欲に辟易しながら、慧は会社に戻って行ったのだった。

 会社ではおばちゃん達が平和に仕事後や仕事前のお喋りをしていたのを、ちょっとだけ羨ましく見てしまった。
 だが、この仕事もあと四日。我慢すればすぐ終わる。
 そう決意して、慧は帰路についたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

処理中です...