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惚れた?
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「オレに惚れた?」
ジッと見られているのを感じながら、慧は目を合わさないよう、反応はそこそこに、料理に取り掛かる為システムキッチンに移動した。冷蔵庫に入れていた材料を取り出し、手を洗う。
「龍士郎さまは、とても魅力的な方だと思いますよ」
どうせsubをからかっているだけなのだろう。慧はキッチンに材料を並べながら、それだけ言った。
顔を見ていないので、どういう反応をしているかわからないが、仕事中である。仕事をしなければならない。
そんな慧の考えがわかったのか、
「ありがとう、良く言われる」
そう苦笑しながら軽く言われ、それ以降はちょっかいを出される事はなかった。
視られているのは感じるが、特に実害も無いので、どんどん料理を作っていく。昨日、危ないのでキッチンには近づかないで欲しい、というのを覚えてくれているのだろうか、たまたまだろうか。
そんな事を考えながらも、料理は無事に作り終わり、変わらずダイニングで作業している龍士郎を、久しぶりにまともに見た。
真剣にパソコンに向かっているその横顔は、流石イケメンだと思いながら、声をかける。
「龍士郎さま。夕食が出来上がりましたが、どうされますか? 後ほど召しあがるなら、冷蔵庫に入れておきますが」
慧の声かけに、ハッと画面から龍士郎が顔を上げた。
「あ、ああ、ありがとう。後で食べるから、置いておいて」
「はい」
慌てて、再び画面に顔を戻したので、忙しい時に声をかけてしまったようだ。
いけない、雇用主の邪魔にならないようにしなければ。慧は心の中だけで反省し、明日の分を冷蔵庫に入れて、今作ったものにラップをし、龍士郎の横に並べる。四人掛けの大きなダイニングテーブルなので、ご飯とチキン南蛮、サラダを置いてもかなりの余裕があった。
後片付けを完璧にし、再び龍士郎を見ると、先ほどと変わらず真剣な顔でパソコンの画面を見ていた。
そうやって、黙って真剣な顔をしていると、調子が狂う。真面目である事を好む慧には、その姿は、充分好意的に映る姿であった。
声をかけて良いのか迷った慧だが、無言で帰る方が失礼だろうと思い直した。なるべく邪魔にならないように、
「それでは、失礼します。明日もよろしくお願いします」
すこし小さめに声をかけると、龍士郎は集中しているようで、うんともすんとも反応が無かった。
ここで変に集中を途切れさせても悪いだろう。そう判断し、慧はもう一度だけ小さく、失礼します、と言って部屋を出た。
今日は、少しだけ違う顔を見る事になった。ちゃんと真面目に仕事をしている姿は、普通に恰好良かった。
これで、変にこちらにちょっかいをかけようとしなければ、好ましいのに。
そこまで考えて、慧はハッとした。
こちららが好ましいなどと思っても、どうしようもない。ただの仕事上の関わりだ。
ただ、domに変にちょっかいをかけられてしまったsubとしては仕方のない反応だとも思う。そう、subは、domに支配をされたいのだから。
誰でも良いというわけではないが、誰かにはそうされたい。と、望む己の欲に辟易しながら、慧は会社に戻って行ったのだった。
会社ではおばちゃん達が平和に仕事後や仕事前のお喋りをしていたのを、ちょっとだけ羨ましく見てしまった。
だが、この仕事もあと四日。我慢すればすぐ終わる。
そう決意して、慧は帰路についたのだった。
ジッと見られているのを感じながら、慧は目を合わさないよう、反応はそこそこに、料理に取り掛かる為システムキッチンに移動した。冷蔵庫に入れていた材料を取り出し、手を洗う。
「龍士郎さまは、とても魅力的な方だと思いますよ」
どうせsubをからかっているだけなのだろう。慧はキッチンに材料を並べながら、それだけ言った。
顔を見ていないので、どういう反応をしているかわからないが、仕事中である。仕事をしなければならない。
そんな慧の考えがわかったのか、
「ありがとう、良く言われる」
そう苦笑しながら軽く言われ、それ以降はちょっかいを出される事はなかった。
視られているのは感じるが、特に実害も無いので、どんどん料理を作っていく。昨日、危ないのでキッチンには近づかないで欲しい、というのを覚えてくれているのだろうか、たまたまだろうか。
そんな事を考えながらも、料理は無事に作り終わり、変わらずダイニングで作業している龍士郎を、久しぶりにまともに見た。
真剣にパソコンに向かっているその横顔は、流石イケメンだと思いながら、声をかける。
「龍士郎さま。夕食が出来上がりましたが、どうされますか? 後ほど召しあがるなら、冷蔵庫に入れておきますが」
慧の声かけに、ハッと画面から龍士郎が顔を上げた。
「あ、ああ、ありがとう。後で食べるから、置いておいて」
「はい」
慌てて、再び画面に顔を戻したので、忙しい時に声をかけてしまったようだ。
いけない、雇用主の邪魔にならないようにしなければ。慧は心の中だけで反省し、明日の分を冷蔵庫に入れて、今作ったものにラップをし、龍士郎の横に並べる。四人掛けの大きなダイニングテーブルなので、ご飯とチキン南蛮、サラダを置いてもかなりの余裕があった。
後片付けを完璧にし、再び龍士郎を見ると、先ほどと変わらず真剣な顔でパソコンの画面を見ていた。
そうやって、黙って真剣な顔をしていると、調子が狂う。真面目である事を好む慧には、その姿は、充分好意的に映る姿であった。
声をかけて良いのか迷った慧だが、無言で帰る方が失礼だろうと思い直した。なるべく邪魔にならないように、
「それでは、失礼します。明日もよろしくお願いします」
すこし小さめに声をかけると、龍士郎は集中しているようで、うんともすんとも反応が無かった。
ここで変に集中を途切れさせても悪いだろう。そう判断し、慧はもう一度だけ小さく、失礼します、と言って部屋を出た。
今日は、少しだけ違う顔を見る事になった。ちゃんと真面目に仕事をしている姿は、普通に恰好良かった。
これで、変にこちらにちょっかいをかけようとしなければ、好ましいのに。
そこまで考えて、慧はハッとした。
こちららが好ましいなどと思っても、どうしようもない。ただの仕事上の関わりだ。
ただ、domに変にちょっかいをかけられてしまったsubとしては仕方のない反応だとも思う。そう、subは、domに支配をされたいのだから。
誰でも良いというわけではないが、誰かにはそうされたい。と、望む己の欲に辟易しながら、慧は会社に戻って行ったのだった。
会社ではおばちゃん達が平和に仕事後や仕事前のお喋りをしていたのを、ちょっとだけ羨ましく見てしまった。
だが、この仕事もあと四日。我慢すればすぐ終わる。
そう決意して、慧は帰路についたのだった。
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