家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃

文字の大きさ
15 / 31

話しをしよう 3

しおりを挟む
 慧の微妙な雰囲気を察しただろうが、龍士郎はそれには何も言わず、少しだけ自信なさげに慧を見た。

「慧くん、もしかしたら君、switchスイッチなんじゃないかな、と思って」
「switch?」

 慧は、どこかで聞いた事があるようなその単語を、必死に記憶の底から掘り返そうとした。おそらく、自分とは関係ないと思って、忘れてしまった記憶。だけど、何かが引っかかって、忘れきれない記憶。

「聞いた事ない? ごくまれに、domとsubを切り替えられる人が居るらしいんだ。それが、switch。どういう仕組みなのかオレは知らないけど、昔、人から聞いた話と、慧くんがなんだか重なって見えて」

 と、ここで慧もようやくハッとその単語をどこで聞いたか、思い出した。
 クリニックの、待合室だ。誰かが、話していたのだ。
 switchはどっちつかずで、パートナーを見つけるのが大変だ、と。
 本当にただの雑談のような内容を、なぜ思い出せたのかというと、その時の慧はsubなのに欲が薄いと不思議に思われ、どっちつかずなswitchという人達であれば良いのにと少しだけ羨ましく思っていたのだ。だが、ハッキリとsubだと診断された為、すぐに忘れてしまった記憶。
 慧が絶句している事に気づいた龍士郎は、労わるように慧を見た。

「大丈夫? 慧くん」
「あの、おれ、だって、subだとしか、診断された事、なくて」

 戸惑いながらそう返答すると、何かを思案するように龍士郎は顎に手を当てた。

「診断を受ける前に、sub、と断定される出来事があった、とか?」

 軽く言われた言葉。
 それは、慧のもっとも忌むべき記憶に抵触してしまった。
 ヒュッと息が詰まる。
 これは、ヤバい。薬、安定剤を。

 慧は無意識に椅子から立ち上がり、自分の持ってきたバッグを探した。
 屈んで中をあさると、少しもしない内に薬を探しあて、口に含んだ。水無しでも大丈夫な薬だが、その味は、苦い。
 少しむせながら飲み込み、そこでようやくハッとした。龍士郎をほったらかしてしまた。

 謝ろうと後ろを振り返ると、龍士郎はすぐ側に居り、同じように屈んでいた。
 そして、今気づいたが背中をさすってくれていた。
 暖かい。その手の優しさに、グッと胸が詰まる。

「ごめん、オレ、また失礼な事を聞いたみたいだ。本当、君には、迷惑しかかけてないね」

 それは本当に悪いと思っているような顔で、違う、と言いたかった。
 あなたの顔を、曇らせたいわけではないのだ、と伝えたかった。
 だけど、それはできなかった。
 それを言う為に口を開くと、本格的に過呼吸の症状が出そうだったからだ。
 ひたすら、背中の優しい暖かさに集中する慧。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

処理中です...