弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃

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17.愛は人を強くもするし、思いやったりもする

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「うそ!」

 アレスの言葉に、オレは思わず声が出てしまった。

 最初は、はっきりと何を言っているのか聞き取れなかった。
 だが、アレスは怒りでどんどん声が大きくなり、ついには何をそんなに怒っていたのか、ハッキリ聞こえてしまった。聞くつもりじゃなかった。
 聞いてしまったのが申し訳なく、気配を消していたのだが、無駄になった。

「メル?!」

 アレスまで届いてしまったオレの声に、驚いたように振り返った、アレスと目が合った。オレを認識すると、アレスは今まで掴み上げていたその男を床に投げ捨て、入り口の外にいるオレに駆け寄ってきた。

「あ、ご、ごめん。聞くつもりじゃ、なかったんだけど……」

 アレスの過去や家庭環境は、聞いても教えてくれなかった事だった。だから、勝手に聞いてしまって申し訳なく、目線を下にやった。
 だけど、アレスは首を振ったようだった。

「いや……オレこそ、ごめん。メルに、本当の事を言う勇気が出なくて、隠してた。本当は、これが悪夢で、オレの妄想だったらと、どんなに願ったことか」

 オレがハッと顔を上げると、アレスは後ろを振り向き、床に力なく伸びている男を、見た事もないような形相で睨んでいた。まるで、睨むだけであの存在を消そうとしているように。

「だけど、あいつの反応で、オレの仮説が正しかった事が証明されてしまった。最低最悪のクソ野郎だ」

 アレスの怒った声、口汚い言葉。パーティを組んでいた初期の頃は、結構口汚く喋っていたが、勇者になったあたりから使わなくなった言葉。こんな時になんだが、少しだけ懐かしいと思ってしまった。

 ただ、アレスの事を想うと、かける言葉は見つからなかった。
 オレだって、父さんは村が襲われた時に死んだと聞いていた。その時の敵なのだとわかる。だけど、もう父さんの顔すら思い出せない幼少の頃の話だ。その後は母さんんが一緒に居てくれた。そんなオレと違い、アレスは。
 独りだった。
 オレが会いに行くまで、誰ともパーティを組んだ事が無いと聞いた。だから、ずっと、一人だったんだ。

 ここで不意に、アレスがオレにここまで執着するわけが、わかった気がした。すとんと、胸に落ちる。
 オレ達は、互いに互いを支えてにしていたんだな。
 そんな事を思い、胸がいっぱいになって、さらに言葉が出なくなってしまった。

「アレス……」

 泣きそうだ、と思った。オレの方が。名前を呼ぶだけで、精一杯だった。
 そんなオレの機敏がわかったのか、アレスはオレの声に振り向くと、一転心配そうに見つめてきた。

「そうだ! メルはなんでこんな所に居るんだ? もう、戦うのは嫌だったんだろう? 危ない目にあわなかったか?」

 オレの無事を一通り確かめ、アレスは安堵の息を吐いた。……渡すなら、今しかない。
 オレは、ぐいっと今のいままで抱きしめていた、聖剣をアレスに差し出した。

「何でって、コレ! お前、忘れて行っただろ。大事な物なのに。だから、怖かったけど、三人に助けてもらいながら、ここまで来たんだ」

 オレから差し出された聖剣を、アレスは戸惑いながらも、受け取った。
 はぁあ、と溜息がもれた。世界に一本しかない剣なんて、緊張でしかなかった。でも、これでようやく目的が果たせる。
 オレから剣を受け取ったアレスを見ると、喜んでいるようだった。
 そして、ぼそりと、

「あったかい……メルの温もりだ」

 そう、呟いて剣を抱き締めた。
 ……オレは、なにも、言わなかった。

 と、

「ゆっ、勇者様っ、魔王が、起き上がりますわ」

 今まで、廊下の一部として存在感を消す事に全力を費やしていた三人の内の一人、エレフィーナが勇者の後ろを見ながら慌てたように言葉を発した。
 すると、おそらくだがマジでオレしか見えていなかったのであろうアレスが、オレの斜め後ろに隠れるように立っていた三人を、視界に入れた。
 一瞬、眉を寄せたが、すぐにその眉は開かれた。

「あぁ、君たち居たんだ。……君たちが、メルを無傷でここまで連れてきてくれたんだね。ありがとう」

 そしてふわっと、本当に嬉しそうに微笑んだ。その表情は、この世で一番美しい笑顔、を体現していると言っても過言ではなかった。もともと、自身も美しい顔立ちをしている三人が、思わず見惚れてしまうぐらいには。あんなアレスを見ても、まだその美しさに目を奪われるなんて、美しいって罪なんだなあ、とかどこかへ意識を飛ばしてしまった。

「そっ、それより、魔王が」

 いち早く我を取り戻した、正義感の強いエレフィーナが声を上げる。二人もその声でハッとし、頷いた。
 ゆっくり立ち上がろうとしているが、こちらに攻撃してくる気配が無い、と思う。それはアレスも感じたようで、少しだけ首をひねって、アンリの方を向いた。
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