18 / 29
18.荷物は本来、大事に運ぶもの
しおりを挟む
「アンリ。あいつ、やけにタフなんだ。この剣で切り刻んでも、おそらく回復すると思う。仕掛け、わからないか?」
先ほどとは打って変わってアレスは、まるで先ほどのやり取りがなかったかのように、いつもの勇者然とした口調でアンリに尋ねた。
賢いアンリは流石に、その変わりように少し怯んでいたが、おずおずと杖で部屋の奥にある青白く発光する、筒を指した。
「あの、後ろにある装置が怪しい、と思う。詳しく調べないとわからないけれど、あれ、超古代文明の事を書いた古書で見た、空間にある魔力を集める為の装置、だと思う。だから、ここに居るみんなの魔力が尽きないかぎり、あいつは、倒れないんじゃないかな。一刻も早く、壊すべきだと思う」
「わたくしも、そう思います。あの光を見ていると、全身が震えるほどの邪悪を感じます。あの存在が纏うのと、同じ邪悪ですわ」
アンリの推理に、エレフィーナも同意する。血の気は引いていたが、強い決意を秘めた瞳をしていた。
二人の言葉に、アレスも頷いた。
「なるほど。だが、あの装置を壊すとなると、骨が折れそうだな」
「おそらく、爆発は免れないと、思う」
アンリの言葉に、アレスはオレを見た。少しだけ微笑んで、
「メル、危ないからちょっと下がってて。三人は、手伝う気があるなら、この部屋に入ってくれ」
オレの後ろの、三人を見た。
オレが振り返ると、三人は顔を見合わせていたが、決意したようだった。オレを追い越し、中へ入る。オレは躊躇したが、何もできる事は無いと頑張って割り切った。
本当は手伝いたいし、三人のように中に入りたかった。
それでも。
オレの今の役目は、邪魔しない事だと思うから。
せめて、最後までどうなるか、見届けよう。
そう決意していると、アレスが、三人それぞれに何やら指示を出していた。
ミーナは小さく頷くとオレを振り返って、ちょっとだけ手を振って、前を見た。片手盾を構え、魔王とアレス達の間に立つ。オレが何だろうと思っている間に後ろを向いてしまったので、意図はわからなかった。
アンリとエレフィーナは、アレスの言葉を聞いた後、驚いたような顔でお互い顔を見合わせた。が、すぐに納得したように頷き、またしてもオレを見た。……オレ、何かあるのか?
「ご無事で、メルク」
「じゃあね」
二人は微笑みながらそう言うと、それぞれ杖を掲げた。それは、彼女達が魔法などを使う時にする動作。
え? と思っていると。
「メル。危ないから先に戻って、オレを待っていて。……約束」
「アレス?!」
二人が詠唱をはじめる。
アレスがオレの前に来て、ぎゅっと抱きしめてきた。みんなの前で恥ずかしいと思う間もなく身体は離れ、トンと、肩を押された。
それだけでオレは後ろによろめき、そして、オレの周りだけに、結界が張られた。エレフィーナの結界だ。
一体何をと思っていると、アンリの杖の切っ先がオレを向いた。
最大限の魔力が集まっている事を知覚し、そして、悟った。
だから。
「わかった! 約束だからな、アレス! 待ってるから!」
そう、言葉を言い終わらないうちに、オレは、アンリに最大火力で吹き飛ばされていた。
その後。
オレは、エレフィーナの結界のおかげで吹き飛ばされても、障害物にぶつかりそれを破壊し突き抜けても、なんの痛みもなかった。ただ衝撃はあったが、それも緩和されていたようだった。
魔王城を突き破り、森の上を吹っ飛んでいるが、オレはなすがままだった。浮遊感がすごい。飛んでるんじゃなくて、吹き飛ばされてるから、方向転換とかもできない。
しかし、風魔法を調整して人に向ける事で、その対象を吹き飛ばす……運ぶ事ができるなんて、アレスぐらいしか思いつかないだろう。空を飛ぶなんて、夢のまた夢だし。
その人類の夢をかなえている筈のオレは、暇していた。
一定方向に向かって、なすがままだからな。いったいどこに向かってるかわからないので、不安は不安だ。せめて、地面の上に降ろして欲しいと思う。
そんな状態がしばらく続き、ようやく、ゆるやかに下に落ちている事に気づいた。
高さがあるうちに、どの辺りか把握しておかないと、と周りを見回すと、村と、村を囲む柵と、全壊している建物が見えた。
あれは、魔王城に一番近い村ではないだろうか。アレスが壊したとかいう宿屋っぽいのが見える。
流石はアンリだ。エレフィーナの結界もまだ無事に効いている。
だんだん下に落ちていき、咄嗟に足を地面に向けると、ズサササー! と、足と地面が接地し、何とか無事に地面に降り立つ事が出来た。
村には少し距離がある所だったので、村人には見られなかったようだ。
自分の身体が無事だった事を確かめ、オレは、村に戻った。こんな所一人で居られない。
再び、独りで村に入ってきたオレに気づいた村人たちは、オレに、同情と、憐憫と、あざけりの視線を向けてきた。
仕方ないか。一緒に行った筈の三人娘も居らず、勇者も居らず、オレ一人なのだから。
幸い、何か言ってくるような人は居なかったので、この村に滞在してみんなを待つ事にした。
が、しかし。
オレが村についてしばらくもしない内に、この村からでも聞こえる爆発音と、少しの揺れ、そして、森の向こうから立ち上る煙が見えた。
オレは、魔王城の方を向いて、ただひたすら、みんなが無事である事を祈った。
先ほどとは打って変わってアレスは、まるで先ほどのやり取りがなかったかのように、いつもの勇者然とした口調でアンリに尋ねた。
賢いアンリは流石に、その変わりように少し怯んでいたが、おずおずと杖で部屋の奥にある青白く発光する、筒を指した。
「あの、後ろにある装置が怪しい、と思う。詳しく調べないとわからないけれど、あれ、超古代文明の事を書いた古書で見た、空間にある魔力を集める為の装置、だと思う。だから、ここに居るみんなの魔力が尽きないかぎり、あいつは、倒れないんじゃないかな。一刻も早く、壊すべきだと思う」
「わたくしも、そう思います。あの光を見ていると、全身が震えるほどの邪悪を感じます。あの存在が纏うのと、同じ邪悪ですわ」
アンリの推理に、エレフィーナも同意する。血の気は引いていたが、強い決意を秘めた瞳をしていた。
二人の言葉に、アレスも頷いた。
「なるほど。だが、あの装置を壊すとなると、骨が折れそうだな」
「おそらく、爆発は免れないと、思う」
アンリの言葉に、アレスはオレを見た。少しだけ微笑んで、
「メル、危ないからちょっと下がってて。三人は、手伝う気があるなら、この部屋に入ってくれ」
オレの後ろの、三人を見た。
オレが振り返ると、三人は顔を見合わせていたが、決意したようだった。オレを追い越し、中へ入る。オレは躊躇したが、何もできる事は無いと頑張って割り切った。
本当は手伝いたいし、三人のように中に入りたかった。
それでも。
オレの今の役目は、邪魔しない事だと思うから。
せめて、最後までどうなるか、見届けよう。
そう決意していると、アレスが、三人それぞれに何やら指示を出していた。
ミーナは小さく頷くとオレを振り返って、ちょっとだけ手を振って、前を見た。片手盾を構え、魔王とアレス達の間に立つ。オレが何だろうと思っている間に後ろを向いてしまったので、意図はわからなかった。
アンリとエレフィーナは、アレスの言葉を聞いた後、驚いたような顔でお互い顔を見合わせた。が、すぐに納得したように頷き、またしてもオレを見た。……オレ、何かあるのか?
「ご無事で、メルク」
「じゃあね」
二人は微笑みながらそう言うと、それぞれ杖を掲げた。それは、彼女達が魔法などを使う時にする動作。
え? と思っていると。
「メル。危ないから先に戻って、オレを待っていて。……約束」
「アレス?!」
二人が詠唱をはじめる。
アレスがオレの前に来て、ぎゅっと抱きしめてきた。みんなの前で恥ずかしいと思う間もなく身体は離れ、トンと、肩を押された。
それだけでオレは後ろによろめき、そして、オレの周りだけに、結界が張られた。エレフィーナの結界だ。
一体何をと思っていると、アンリの杖の切っ先がオレを向いた。
最大限の魔力が集まっている事を知覚し、そして、悟った。
だから。
「わかった! 約束だからな、アレス! 待ってるから!」
そう、言葉を言い終わらないうちに、オレは、アンリに最大火力で吹き飛ばされていた。
その後。
オレは、エレフィーナの結界のおかげで吹き飛ばされても、障害物にぶつかりそれを破壊し突き抜けても、なんの痛みもなかった。ただ衝撃はあったが、それも緩和されていたようだった。
魔王城を突き破り、森の上を吹っ飛んでいるが、オレはなすがままだった。浮遊感がすごい。飛んでるんじゃなくて、吹き飛ばされてるから、方向転換とかもできない。
しかし、風魔法を調整して人に向ける事で、その対象を吹き飛ばす……運ぶ事ができるなんて、アレスぐらいしか思いつかないだろう。空を飛ぶなんて、夢のまた夢だし。
その人類の夢をかなえている筈のオレは、暇していた。
一定方向に向かって、なすがままだからな。いったいどこに向かってるかわからないので、不安は不安だ。せめて、地面の上に降ろして欲しいと思う。
そんな状態がしばらく続き、ようやく、ゆるやかに下に落ちている事に気づいた。
高さがあるうちに、どの辺りか把握しておかないと、と周りを見回すと、村と、村を囲む柵と、全壊している建物が見えた。
あれは、魔王城に一番近い村ではないだろうか。アレスが壊したとかいう宿屋っぽいのが見える。
流石はアンリだ。エレフィーナの結界もまだ無事に効いている。
だんだん下に落ちていき、咄嗟に足を地面に向けると、ズサササー! と、足と地面が接地し、何とか無事に地面に降り立つ事が出来た。
村には少し距離がある所だったので、村人には見られなかったようだ。
自分の身体が無事だった事を確かめ、オレは、村に戻った。こんな所一人で居られない。
再び、独りで村に入ってきたオレに気づいた村人たちは、オレに、同情と、憐憫と、あざけりの視線を向けてきた。
仕方ないか。一緒に行った筈の三人娘も居らず、勇者も居らず、オレ一人なのだから。
幸い、何か言ってくるような人は居なかったので、この村に滞在してみんなを待つ事にした。
が、しかし。
オレが村についてしばらくもしない内に、この村からでも聞こえる爆発音と、少しの揺れ、そして、森の向こうから立ち上る煙が見えた。
オレは、魔王城の方を向いて、ただひたすら、みんなが無事である事を祈った。
1,008
あなたにおすすめの小説
妹に婚約者を取られるなんてよくある話
龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。
そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。
結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。
さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。
家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。
いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。
*ご都合主義です
*更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる