19 / 29
最終話・めでたしめでたし
しおりを挟む「メル、この資材どこに置くー?」
「ああ。丸太も板も、教会用に持ってくやつだよ」
「りょーかい」
ざわざわと、再建途中の村の中で色んな人が忙しそうに働いていた。
その内の一人、アレスは、あの豪華絢爛な白銀の鎧を脱ぎ、輝かしい伝説の聖剣を城に戻し、今は薄着で腕をまくりし、その美しい筋肉を惜しげもなく晒していた。
肩に抱えた一抱えもある丸太は、オレも男だがなかなか運ぶのに苦労するのだが、アレスはやすやすと運んでしまった。
「悪いな、アレス。お前にばっかり重いもの運ばせて」
さっさと村の入り口に積まれた丸太と板を、建設中の教会に運び終わり、アレスが戻ってきた。
オレが申し訳なさそうに言うと、アレスはにっと笑い、
「良いって事よ。なんたって、オレとメルの、結婚の誓いをあげる教会なんだ。いくらだって働くさ」
そう恥ずかしげもなく言った。オレはまだ慣れなくて、その言葉につい顔を赤くして俯いてしまった。
すると。
「もうっ、所かまわずいちゃつかないでくださいまし! まだ教会のステンドグラスが届いておりませんのよっ」
向こうの方から、旅の時よりは幾分か簡素な修道服を着た、エレフィーナがぷんぷんしながらオレ達に近寄ってきた。
いつもの事なのでアレスは、はぁ~、と溜息を吐いた。
「だから、ステンドグラスなんて高価な飾りはいらないって言ってるだろう」
「いいえ! このエレフィーナが主導して建てる教会には、絶っ対いるんですっ」
アレスは、呆れたように額に手を当てた。
と、そこへ。
「ねえ、あの丸太は村を囲う柵に使わない? そもそもの数が足りてないの。柵は村として大事でしょ、一刻も早く完成させた方が良いわ」
今は騎士団の鎧や王国の紋章が入ったマントを脱ぎ、動きやすい訓練用の服をまとった、ミーナが小脇に杭を抱えながら近寄ってきた。
ミーナの言葉に、エレフィーナが反論する。
「いけませんわっ、教会の建立は早ければ早いほど良いのです。柵が必要な不埒な者や動物は、わたくしが結界を張りますので、後回しで大丈夫ですわ」
「そうは言うけどさあ」
実は先ほどから、その辺の丸太に腰かけ暇そうに座って居た、着古した薄い紺のローブを纏い片手で杖を地面に突き立てている、アンリが口を挟んだ。
「追放されたとはいえ、元勇者が作ってる村に来る阿呆なんて、早々いないでしょ」
ふぁあ、とアンリが欠伸をすると、エレフィーナとミーナは口をそろえて、
「アンリも働いて!」
「アンリもちょっとは手を動かしてくださいましっ」
そう、声を荒げた。怒られたアンリは、
「やーだー。そもそも、勇者が持てないぐらいの物を上に運ぶのが仕事だし、まだそこまで行ってないし~」
そう飄々と言って、二人の反感を買っていた。
にぎやかになったオレ達の故郷に、ふと、笑みがこぼれた。
「楽しい? メル」
横で、同じように三人のやり取りを見ていたアレスが、オレを見て、目を細めた。
オレより、アレスの方がよっぽど嬉しそうに見える。
だから、オレは思いっきりの笑顔で、
「うん! こんな楽しい日々が来るなんて、想像もしてなかった。ありがとう、アレス。ありがとう、みんな」
そう、アレスや、三人娘にお礼を言った。
四者四様に反応を返してきたので、それもまた面白くて、笑ってしまった。
そうしたら、みんなもつられて笑っていた。
みんなの笑い声は、まだまだ整備途中の村の中、そして、アレスの瞳のように青い青い空に吸い込まれていくようだった。
終わり。
1,044
あなたにおすすめの小説
妹に婚約者を取られるなんてよくある話
龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。
そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。
結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。
さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。
家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。
いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。
*ご都合主義です
*更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる