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第2章 初めての異世界
冒険者ギルドへ
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朝の鐘が町に響くころ、翔と忍は宿を後にした。
石畳の通りは露店の準備で慌ただしく、焼き立てのパンの香りと馬車の車輪の音が入り混じっている。
「昨日まで森で魔物と戦ってたのが嘘みたいですね……」
忍は微笑みながらも、町の喧騒に少し気圧されているようだった。
翔は頷きつつも油断しない。
「気を抜くなよ。財布を狙うやつは、どこの世界にもいる」
腰の袋を叩くと、じゃらりと硬貨の音が鳴った。
昨日の換金で得たのは銀貨二十枚あまり。
宿泊と食事で減り、残りは十五枚。
登録料を払えばさらに減る……決して余裕はない。
二人が向かったのは、町の北門近くに建つ大きな建物――冒険者ギルド。
厚い木材と石で組まれた堂々たる二階建てで、入口には剣と盾を象った紋章が掲げられている。
扉を押し開けると、酒場を思わせる熱気とざわめきが押し寄せた。
広いホールには長机が並び、鎧姿の戦士、弓を背負った狩人、ローブを纏った魔術師らが酒を酌み交わしている。
奥の掲示板には依頼書がびっしり貼られ、その前で冒険者たちが真剣に紙を睨んでいた。
忍は小声で呟いた。
「……《簡易鑑定》」
青白いウィンドウが次々と浮かび上がる。
【グレン・バルド レベル12
職業:戦士
装備:鉄製ブロードソード
状態:二日酔い/筋肉疲労】
【リサ・ハート レベル9
職業:弓術士
装備:獣皮アーマー+ロングボウ
状態:資金不足(財布残り銅貨2枚)】
【ノルン・ファルド レベル15
職業:魔術師
装備:見習い杖
スキル:火球(中)】
忍は目を丸くして囁く。
「……ほんとに色んな人がいますね。力量や状態まで……お財布の中身まで見えちゃいます」
翔は半眼で返す。
「盗み見はほどほどにな。プライバシー侵害だ」
忍は苦笑しつつも頷いた。
「でも、役に立ちますよ」
翔は小さく笑みを浮かべた。
「それは確かに心強いな」
カウンターに近づくと、若い受付嬢がにこやかに頭を下げた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件は登録でしょうか?」
忍はそっと視線を向け、また小声で呟く。
「……《簡易鑑定》」
【エミリア・クライン 年齢:22
職業:冒険者ギルド職員(受付)
レベル:3
スキル:事務処理(小)/対人交渉(初級)
備考:真面目で世話好き。新人冒険者の応援が好き】
忍は小声で囁く。
「……この人、エミリアさん。世話好きで新人の応援が好きみたいです」
翔は小さく苦笑した。
「なるほど、俺たちにはありがたいな」
翔は受付嬢に向き直る。
「ああ。俺たち、昨日この町に来たばかりだ。……迷い人だ」
エミリアの目が一瞬驚きで見開かれる。
「……そうでしたか。記録院からお話は伺っています。でしたら、仮滞在証より“冒険者登録”をされるのが最も安全です」
机の上に羊皮紙と小さな木箱が置かれた。
「登録料はお一人につき銀貨五枚。お二人で十枚になります」
翔と忍は顔を見合わせ、銀貨十枚を机に置いた。
残りは五枚。心許ない額だ。
エミリアは銀貨を受け取り、微笑む。
「ありがとうございます。ただし――登録にはもう一つ条件があります」
「条件?」と翔が眉をひそめる。
「はい。書類とお金だけではなく、簡単な実技試験を受けていただきます。
剣を振れるか、魔法を扱えるか、最低限の確認をするためです。
試験の結果で、冒険者としての初期ランクが決まります」
忍は息をのむ。
「……試験、ですか」
「安心してください。命の危険があるものではありません。訓練場で模擬戦を行うだけです」
翔は口の端を吊り上げた。
「模擬戦か……いいじゃないか。腕試しにはちょうどいい」
エミリアは二人に木札を手渡した。
「この木札を持って訓練場へ行ってください。担当教官が待っています。――ようこそ、冒険者の世界へ」
周囲からひそひそ声が聞こえてきた。
「迷い人が試験を受けるのか……」
「さて、“幸運”か“災厄”か……」
だが二人は背筋を伸ばし、訓練場へと向かって歩き出した。
――次なる試練は、冒険者として認められるための初めての試験。
翔と忍の新しい一歩が、いま刻まれようとしていた。
石畳の通りは露店の準備で慌ただしく、焼き立てのパンの香りと馬車の車輪の音が入り混じっている。
「昨日まで森で魔物と戦ってたのが嘘みたいですね……」
忍は微笑みながらも、町の喧騒に少し気圧されているようだった。
翔は頷きつつも油断しない。
「気を抜くなよ。財布を狙うやつは、どこの世界にもいる」
腰の袋を叩くと、じゃらりと硬貨の音が鳴った。
昨日の換金で得たのは銀貨二十枚あまり。
宿泊と食事で減り、残りは十五枚。
登録料を払えばさらに減る……決して余裕はない。
二人が向かったのは、町の北門近くに建つ大きな建物――冒険者ギルド。
厚い木材と石で組まれた堂々たる二階建てで、入口には剣と盾を象った紋章が掲げられている。
扉を押し開けると、酒場を思わせる熱気とざわめきが押し寄せた。
広いホールには長机が並び、鎧姿の戦士、弓を背負った狩人、ローブを纏った魔術師らが酒を酌み交わしている。
奥の掲示板には依頼書がびっしり貼られ、その前で冒険者たちが真剣に紙を睨んでいた。
忍は小声で呟いた。
「……《簡易鑑定》」
青白いウィンドウが次々と浮かび上がる。
【グレン・バルド レベル12
職業:戦士
装備:鉄製ブロードソード
状態:二日酔い/筋肉疲労】
【リサ・ハート レベル9
職業:弓術士
装備:獣皮アーマー+ロングボウ
状態:資金不足(財布残り銅貨2枚)】
【ノルン・ファルド レベル15
職業:魔術師
装備:見習い杖
スキル:火球(中)】
忍は目を丸くして囁く。
「……ほんとに色んな人がいますね。力量や状態まで……お財布の中身まで見えちゃいます」
翔は半眼で返す。
「盗み見はほどほどにな。プライバシー侵害だ」
忍は苦笑しつつも頷いた。
「でも、役に立ちますよ」
翔は小さく笑みを浮かべた。
「それは確かに心強いな」
カウンターに近づくと、若い受付嬢がにこやかに頭を下げた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご用件は登録でしょうか?」
忍はそっと視線を向け、また小声で呟く。
「……《簡易鑑定》」
【エミリア・クライン 年齢:22
職業:冒険者ギルド職員(受付)
レベル:3
スキル:事務処理(小)/対人交渉(初級)
備考:真面目で世話好き。新人冒険者の応援が好き】
忍は小声で囁く。
「……この人、エミリアさん。世話好きで新人の応援が好きみたいです」
翔は小さく苦笑した。
「なるほど、俺たちにはありがたいな」
翔は受付嬢に向き直る。
「ああ。俺たち、昨日この町に来たばかりだ。……迷い人だ」
エミリアの目が一瞬驚きで見開かれる。
「……そうでしたか。記録院からお話は伺っています。でしたら、仮滞在証より“冒険者登録”をされるのが最も安全です」
机の上に羊皮紙と小さな木箱が置かれた。
「登録料はお一人につき銀貨五枚。お二人で十枚になります」
翔と忍は顔を見合わせ、銀貨十枚を机に置いた。
残りは五枚。心許ない額だ。
エミリアは銀貨を受け取り、微笑む。
「ありがとうございます。ただし――登録にはもう一つ条件があります」
「条件?」と翔が眉をひそめる。
「はい。書類とお金だけではなく、簡単な実技試験を受けていただきます。
剣を振れるか、魔法を扱えるか、最低限の確認をするためです。
試験の結果で、冒険者としての初期ランクが決まります」
忍は息をのむ。
「……試験、ですか」
「安心してください。命の危険があるものではありません。訓練場で模擬戦を行うだけです」
翔は口の端を吊り上げた。
「模擬戦か……いいじゃないか。腕試しにはちょうどいい」
エミリアは二人に木札を手渡した。
「この木札を持って訓練場へ行ってください。担当教官が待っています。――ようこそ、冒険者の世界へ」
周囲からひそひそ声が聞こえてきた。
「迷い人が試験を受けるのか……」
「さて、“幸運”か“災厄”か……」
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