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第2章 初めての異世界
冒険者としての第一歩
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登録を終えた翔と忍は、再びギルドのカウンターに戻っていた。
受付嬢のエミリアが、二枚の黒鉄色のカードを差し出す。
「こちらが冒険者登録証――ギルドカードです。ただし、渡す前に本人認証を行っていただきます」
エミリアは小さな銀針を取り出した。微細な魔法陣が刻まれた管が青白く光を帯びている。
「カードは本人の血と魔力で紐づけます。盗まれても他人には使用できません。
まずは指先から一滴、血を落として……次に魔力を流してください」
翔は眉をひそめた。
「……魔力を流すって言われても、やり方が分からないんだが」
エミリアは一瞬だけ目を瞬かせ、小さく頷いた。
「やはり。迷い人の方は最初にそこで戸惑うと記録院の文献にあります。
実際にお会いするのは私も初めてですが、方法は教わっています。
体の奥にある温かい流れを意識し、それを息を吐くようにカードへ押し出すのです」
翔は半信半疑で人差し指を刺し、赤い滴をカードに落とした。
表面が赤く光り、すぐに沈む。
呼吸を整え、体の奥にある熱を押し出すように意識すると――指先にじんわりと熱が集まり、カードが青白く輝いた。
「……これで、あなた以外には使えなくなりました」
忍も同じ手順で挑戦した。最初はうまくいかず額に汗を浮かべたが、呼吸を整えると胸の奥から熱が流れ、カードが光を放つ。
「……できた」
忍の顔がぱっと明るくなる。
エミリアは二人にカードを正式に差し出した。
「これでお二人は正式に冒険者です。そして、仮滞在証はもう不要になります」
翔は懐から羊皮紙を取り出し、眉をひそめた。
「返さなくていいのか?」
「はい。こちらで回収し、記録院へ報告します。今後はギルドカードが正式な身分証として扱われます」
翔は渡した羊皮紙を見送り、カードを手に取った。
掌に収まるそれは縦五センチ、横八センチ、厚さ二ミリほど。
金属特有の冷たさと、指先に伝わるずしりとした重みがあった。
表面にはギルドの紋章である剣と盾、裏には赤い魔法陣が淡く浮かんでいる。
「……なるほど。見た目以上に“証”って感じだな」
エミリアは説明を続ける。
「カードには名前、年齢、レベル、等級が魔術的に記録されています。
また、ギルド口座と連動しており、依頼報酬を直接預け入れることも可能です。
宿や商店で提示すれば、代金を口座から自動的に差し引く仕組みです」
翔は口の端を上げた。
「……要するにデビットカードってわけか」
エミリアは言葉の意味は分からないながらも、くすっと笑った。
「現金を持ち歩かなくても買い物ができる、という点では近いでしょう」
忍は目を輝かせる。
「すごい……これなら大金を持ち歩かなくても済みますね!」
「ええ。血と魔力で本人と結びついていますから、盗まれても使えません。万一失くしても再発行できます」
翔はカードを指で弾き、満足げに笑った。
「悪くない仕組みだ」
エミリアは依頼掲示板から一枚の紙を取り出した。
「それでは、お二人の最初の依頼を。町の外で“ホーンラビット”を五体討伐してください。
報酬は銀貨二枚。危険度は低く、基本を学ぶには最適です」
翔は紙を受け取り、ざっと目を走らせる。
「討伐するだけでいいのか?」
「いいえ。討伐後は証明部位を持ち帰っていただきます。ホーンラビットの場合は“額の角”です。
ギルドがそれを確認して依頼達成とし、報酬を支払います。……こちらをどうぞ」
エミリアはカウンターの下から、小さな革袋を取り出した。
「討伐証明は血が付くことが多いですから、この袋を使ってください。獣革に油を染み込ませてあるので、防水性があり匂いも漏れにくいです」
忍は目を丸くして受け取る。
「なるほど……こういう準備まで整ってるんですね」
「さらに、角以外の毛皮や肉も価値があります。希望されるなら、こちらで買い取りますよ」
翔は口の端を上げた。
「なるほど。依頼報酬に加えて素材の売却で稼げる仕組みか」
エミリアは真剣な目をして付け加える。
「討伐数や達成実績は記録され、ランクアップの参考にもなります。
つまり、ただ稼ぐだけでなく、冒険者としての評価を高めるためにも重要です」
忍は瞳を輝かせた。
「ちゃんとシステム化されてるんですね……。私たち、いけそうです!」
翔はバールを肩に担ぎ直し、にやりと笑った。
「よし、最初の仕事だ。異世界での冒険者生活が始まる」
二人は依頼書を受け取り、ギルドを後にした。
町の外門へ向かい、初めての討伐任務へと歩を進める。
――迷い人から冒険者へ。
その旅路は、確かに動き出していた。
受付嬢のエミリアが、二枚の黒鉄色のカードを差し出す。
「こちらが冒険者登録証――ギルドカードです。ただし、渡す前に本人認証を行っていただきます」
エミリアは小さな銀針を取り出した。微細な魔法陣が刻まれた管が青白く光を帯びている。
「カードは本人の血と魔力で紐づけます。盗まれても他人には使用できません。
まずは指先から一滴、血を落として……次に魔力を流してください」
翔は眉をひそめた。
「……魔力を流すって言われても、やり方が分からないんだが」
エミリアは一瞬だけ目を瞬かせ、小さく頷いた。
「やはり。迷い人の方は最初にそこで戸惑うと記録院の文献にあります。
実際にお会いするのは私も初めてですが、方法は教わっています。
体の奥にある温かい流れを意識し、それを息を吐くようにカードへ押し出すのです」
翔は半信半疑で人差し指を刺し、赤い滴をカードに落とした。
表面が赤く光り、すぐに沈む。
呼吸を整え、体の奥にある熱を押し出すように意識すると――指先にじんわりと熱が集まり、カードが青白く輝いた。
「……これで、あなた以外には使えなくなりました」
忍も同じ手順で挑戦した。最初はうまくいかず額に汗を浮かべたが、呼吸を整えると胸の奥から熱が流れ、カードが光を放つ。
「……できた」
忍の顔がぱっと明るくなる。
エミリアは二人にカードを正式に差し出した。
「これでお二人は正式に冒険者です。そして、仮滞在証はもう不要になります」
翔は懐から羊皮紙を取り出し、眉をひそめた。
「返さなくていいのか?」
「はい。こちらで回収し、記録院へ報告します。今後はギルドカードが正式な身分証として扱われます」
翔は渡した羊皮紙を見送り、カードを手に取った。
掌に収まるそれは縦五センチ、横八センチ、厚さ二ミリほど。
金属特有の冷たさと、指先に伝わるずしりとした重みがあった。
表面にはギルドの紋章である剣と盾、裏には赤い魔法陣が淡く浮かんでいる。
「……なるほど。見た目以上に“証”って感じだな」
エミリアは説明を続ける。
「カードには名前、年齢、レベル、等級が魔術的に記録されています。
また、ギルド口座と連動しており、依頼報酬を直接預け入れることも可能です。
宿や商店で提示すれば、代金を口座から自動的に差し引く仕組みです」
翔は口の端を上げた。
「……要するにデビットカードってわけか」
エミリアは言葉の意味は分からないながらも、くすっと笑った。
「現金を持ち歩かなくても買い物ができる、という点では近いでしょう」
忍は目を輝かせる。
「すごい……これなら大金を持ち歩かなくても済みますね!」
「ええ。血と魔力で本人と結びついていますから、盗まれても使えません。万一失くしても再発行できます」
翔はカードを指で弾き、満足げに笑った。
「悪くない仕組みだ」
エミリアは依頼掲示板から一枚の紙を取り出した。
「それでは、お二人の最初の依頼を。町の外で“ホーンラビット”を五体討伐してください。
報酬は銀貨二枚。危険度は低く、基本を学ぶには最適です」
翔は紙を受け取り、ざっと目を走らせる。
「討伐するだけでいいのか?」
「いいえ。討伐後は証明部位を持ち帰っていただきます。ホーンラビットの場合は“額の角”です。
ギルドがそれを確認して依頼達成とし、報酬を支払います。……こちらをどうぞ」
エミリアはカウンターの下から、小さな革袋を取り出した。
「討伐証明は血が付くことが多いですから、この袋を使ってください。獣革に油を染み込ませてあるので、防水性があり匂いも漏れにくいです」
忍は目を丸くして受け取る。
「なるほど……こういう準備まで整ってるんですね」
「さらに、角以外の毛皮や肉も価値があります。希望されるなら、こちらで買い取りますよ」
翔は口の端を上げた。
「なるほど。依頼報酬に加えて素材の売却で稼げる仕組みか」
エミリアは真剣な目をして付け加える。
「討伐数や達成実績は記録され、ランクアップの参考にもなります。
つまり、ただ稼ぐだけでなく、冒険者としての評価を高めるためにも重要です」
忍は瞳を輝かせた。
「ちゃんとシステム化されてるんですね……。私たち、いけそうです!」
翔はバールを肩に担ぎ直し、にやりと笑った。
「よし、最初の仕事だ。異世界での冒険者生活が始まる」
二人は依頼書を受け取り、ギルドを後にした。
町の外門へ向かい、初めての討伐任務へと歩を進める。
――迷い人から冒険者へ。
その旅路は、確かに動き出していた。
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