キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第3章:異世界キャンプの始まり

盗賊討伐戦

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鳥のさえずりと、湖面を渡る冷たい朝の風で翔は目を覚ました。
車内は薄明かりに包まれているが、外はすでに朝日が昇っている。

「……おはようございます、翔さん」
先に起きていた忍が、小さく笑みを浮かべた。髪はまだ少し濡れていて、昨夜の入浴後にそのまま眠ってしまったのだろう。

翔は大きく伸びをし、窓の外の湖を見やった。二つの月は消え、朝焼けの空と澄んだ水面が広がっている。
「ふあぁ……。やっぱりベッドで寝ると疲れが残らねぇな」

《おう、おはようさん。こっちは魔力満タンで絶好調だぜ》
ブレイザーの声は昨夜よりも張りがある。

「魔力満タン?」翔が眉を上げる。

《死体を分解した魔力でタンクがいっぱいになったんだ。走行エネルギーも自己修復も、しばらく余裕だ》

忍は感心したように頷いた。
「つまり、戦えば戦うほどブレイザーも強くなる……ってことですね」

《そういうこった》



朝食は外の展開式キッチンで。
忍は昨夜の魚の残りを味噌汁にし、保存していた米でおにぎりを握る。
ブレイザーの冷蔵庫から補充された卵とソーセージも焼き、テーブルの上は「和風モーニング」に早変わりした。

翔は湯気の立つおにぎりを頬張り、思わず笑った。
「……異世界にいるのに、朝飯が完全に日本だな。妙に落ち着く」

忍も頷く。
「私もです。……ここにいると、本当に旅をしてるって感じがします」

《夢じゃねぇさ。だが夢みてぇに快適なのは保証してやる》
ブレイザーが嬉しそうに唸った。



食事を終えると、翔は湖畔の地図を広げた。
「さて……どうするかだな。昨日の街に戻って、素材を買い取ってもらうか。それとも……」

翔の指が地図の別の方向へ滑る。
湖から街道を半日ほど進めば、隣の街【バルド】に行ける道がある。

忍は目を輝かせた。
「……せっかくですし、別の街を目指してみませんか? いろんな人に会って、いろんな食材を試したいです」

翔はにやりと笑った。
「俺も同じこと考えてた。旅はやっぱり道を進んでこそだろ」

《よっしゃ、決まりだな! バルドまでは俺の脚なら楽勝だ。途中でキャンプするのも悪くねぇ》

ブレイザーのエンジンが唸り、パネルが自動で収納されていく。
テーブルも椅子も音もなく片付き、車体は再び旅仕様へと戻った。

翔はハンドルに手を置き、笑みを浮かべる。
「じゃあ行くか、次の街へ」

朝焼けに照らされた湖を背に、ブレイザーは街道へと走り出した。



昼前。
森に囲まれた街道を進んでいると、かすかに金属のぶつかる音と馬の嘶きが風に乗って届いてきた。

「……聞こえました?」忍が顔を上げる。

「戦いの音だな」翔は即座にブレーキを踏み、耳を澄ます。

ブレイザーのセンサーが作動し、前方の様子を映し出した。
《商隊が盗賊に囲まれてやがる。護衛が何人か応戦してるが、数で押されてるな》

「商隊……?」忍は不安げに唇を噛む。

「行くぞ」翔は即答した。
「見捨てりゃ寝覚めが悪い」

《了解、突っ込む準備はできてるぜ!》

ブレイザーのエンジンが唸りを上げ、速度を上げた。
街道の先では、三台の馬車を十数人の盗賊が取り囲み、剣と斧を振りかざしている。護衛の兵は必死に応戦していたが、明らかに劣勢だった。

「忍!」
「はい! ……鑑定!」

忍の目に光が宿り、盗賊たちの情報が浮かび上がる。

【名前:ドルガン=ザルク LV6】
【職業:山賊の頭領】
【装備:片刃剣(粗悪品)】
【弱点:冷静さを欠くと隙が大きい】
【特徴:短気/酒癖が悪い】

「翔さん! あの隊長、ドルガンって名前です。大振りが多いから隙を突けます!」

翔はバールを握り直し、にやりと笑った。
「上等だ」

ブレイザーが外部スピーカーから轟音を響かせ、盗賊たちの注意を一斉に引きつけた。
《おうコラァ! そこまでだ!》

驚いて振り返る盗賊たちの視界に、黒い鉄の巨体――ブレイザーが突っ込んでくるのが見えた。



戦闘は一瞬で決した。
翔は次々と盗賊を打ち倒し、最後にドルガンの顎を殴り上げる。

翔は倒れたドルガンを地面に押さえ込み、ブレイザーの収納から銀色のガムテープを取り出した。
「縄よりも手っ取り早いんだよ」

バリバリと音を立てながら、ドルガンの手足をぐるぐる巻きにする。
異世界人たちは唖然とし、護衛兵までもが呟いた。
「な、なんだあの布は……魔導具か?」

翔は額の汗を拭い、薄く笑った。
「ただのガムテープだ」



戦いが終わり、護衛と商人が震える声で礼を述べる。
忍は改めて鑑定を発動した。

【名前:レオナルト=グレン LV2】
【職業:雑貨商】
【所持品:香辛料袋(胡椒・シナモン・乾燥ハーブ)、保存用オイル、小麦粉】
【特徴:誠実/値切り交渉に弱い】

【名前:バルガス=ローム LV4】
【職業:剣士(護衛兵)】
【装備:鉄剣、革鎧】
【特徴:忠義心が強い/酒に弱い】

【名前:キール=ダナン LV3】
【職業:槍兵(護衛兵)】
【装備:鉄槍、木製盾】
【特徴:慎重派/見張りに適正あり】

忍は小声で囁く。
「翔さん、この商人さん、香辛料を扱ってます。護衛も経験豊富みたいです」

翔は頷き、にやりと笑った。
「いい繋がりになりそうだな」
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