キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第3章:異世界キャンプの始まり

新たな依頼と進化

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朝日が宿屋《月影亭》の窓から差し込み、木の床を黄金色に染めていた。
忍は藁布団から身を起こし、大きく伸びをして笑みを向ける。

「……おはようございます、翔さん」
「おう。今日は依頼を受けに行くぞ」

翔はすでに身支度を終え、腰には日本から持ち込んだ鉄製のバールを差していた。
胸元の小型スピーカーからブレイザーの低い声が響く。
《藁布団でよく眠れたな。俺のベッドのほうが雲の上みてぇに快適だがな》
忍は小さく笑い、布でスピーカーを押さえた。



朝食を済ませ、二人はギルドへ。
扉を押し開けると、酒と革油の匂いが混じる空気と、ざわめきが押し寄せてきた。

「おい、あれがドルガンを捕らえた迷い人だ」
「鉄の車を操ったって話、本当だったんだな」

ざわつく視線を受け流し、翔と忍は依頼掲示板に目を向ける。
数十枚の依頼票が並ぶ中、受付嬢が近づいてきて声をかけた。

「翔さん、忍さん。もしよろしければ……こちらの依頼をお勧めします」

差し出された依頼票にはこう書かれていた。

【依頼内容:オーク群の駆除】
【報酬:一体につき銀貨五枚】
【補足:畑を荒らす被害多数】

受付嬢は真剣な表情で続ける。
「新規登録の方には、実力を測るための依頼を一件受けていただいています。オークは危険ですが、小規模な群れです。もしよろしければ、この依頼で力を見せていただけないでしょうか」

忍は依頼票を覗き込み、小声で呟いた。
「……オーク、豚顔の二足歩行の魔物ですね」
翔は短く頷き、依頼票を受け取った。
「受ける」



荒れ果てた畑に到着。麦は踏み荒らされ、引き抜かれた芋が散乱している。
翔はバールを構え、忍は集中して呟いた。

「……鑑定」

【オーク LV6】
【特徴:二足歩行の豚顔魔物 怪力】
【弱点:喉、関節部】
【ドロップ:肉、皮、骨、魔石(小)】

「……4体います!」忍の声が震える。

ズシン、ズシンと重い足音。獣臭と共に、4体のオークが棍棒を振りかざして現れた。

「来るぞ!」翔が吠えた。



最初の1体が棍棒を振り下ろす。
ゴォンッ! 空気を裂く重音。翔はバールで弾き飛ばし、脇腹へ渾身の一撃を叩き込む。
「グォォッ!」苦悶の声と共に地に崩れた。

2体目が回り込む。忍が素早く駆け、短剣で膝裏を裂く。
「ギィィ!」と膝を崩した瞬間、翔が頭蓋を粉砕。血飛沫と鉄臭さが広がる。

3体目が突進。土煙を上げて迫る。
翔は全身で受け止め、足元の土が抉れるほどの衝撃に耐える。
忍が喉に短剣を突き立て、翔がバールで止めを刺した。

最後の4体目が狂ったように棍棒を振り下ろす。
翔は腕に痺れる衝撃を受けながらも押し返す。
「今だ、忍!」
忍が両手で短剣を握り、胸に渾身の一突き。
オークは呻き声を残し、血を吐いて崩れ落ちた。

――畑は静寂を取り戻した。

血と獣臭に満ちた空気の中、翔は荒い息をつき、忍と目を合わせた。

その瞬間、青白いウィンドウが浮かぶ。

【清水翔 LV5 → LV6】
【新スキル:戦闘直感(初級)】

【松田忍 LV4 → LV5】
【スキル進化:鑑定(大) → 鑑定(極)】
【新スキル:錬金(初級)】

【ブレイザー LV3→ LV4】
【新機能:素材再構築】
【新機能:自動素材分解(拡張範囲)】

「……スキルが進化しました!」忍が驚きの声を上げる。
「鑑定が中級に……それに“錬金”まで!」

翔は頷き、口元に笑みを浮かべた。
「素材を扱えるってのは面白ぇな」

胸元のスピーカーが低く笑った。
《俺も新機能を得た。【素材再構築】だ。魔物の素材や武器を分解し、別の武器に組み直せる。やってみるか?》

翔は頷き、オークの棍棒や皮、腱、そして腹部から取り出した魔石(小)をハッチへ投入した。
最後に、鉄製のバールを握りしめて言った。
「……これも一緒に入れてくれ」

「翔さん!? 日本から持ってきた大事な道具ですよ!」忍が慌てる。
「ただの鉄の棒じゃ、この先は限界がある。なら、この世界で通用する武器に進化させてやる」

忍は息を呑み、黙って頷いた。

――ゴウン……ガシャン……!
ブレイザーの内部で魔素光が弾け、機械音が鳴り響く。

【素材分解中……】
【魔石同調……】
【再構築完了】

ハッチが開き、二つの武器が姿を現した。

ひとつは黒光りするクロスボウ。オークの腱を弦に、骨と金属片を組み合わせ、魔石で魔素強化された狙撃武器。
もうひとつは――鉄と骨、オークの皮を融合させ、魔石を核に据えた武器。
バールを基にしながらも黒鉄が脈動し、魔素の光が先端に走る。

【進化武器:魔鋼バール】

《お嬢ちゃんにはクロスボウ。翔、お前にはその“魔鋼バール”だ。魔石を核にしたおかげで、もうただの工具じゃねぇ》

忍はクロスボウを構え、瞳を輝かせた。
「……すごい! 軽いのに、狙いが吸い付くように定まります!」
翔は魔鋼バールを肩に担ぎ、笑みを浮かべる。
「悪くない……魔石の力が伝わってくるな」

胸元のスピーカーが唸った。
《それと……ナビが拾った。半径二キロに大きな群れ、十体以上。その中に、一際強力な反応がある》

翔と忍は顔を見合わせる。
「ギルドに報告……しますか?」忍が問いかける。
翔は魔鋼バールを握り直し、口角を吊り上げた。
「いや、俺たちで潰す。迷い人の力を見せつけてやる」

忍はクロスボウを構え、決意を瞳に宿す。
「はい!」

――こうして二人と一台は、新たなスキルと武器を手に、オーク集落殲滅戦へと踏み出した。
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