キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第3章:異世界キャンプの始まり

オーク集落殲滅戦

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森の奥に築かれた粗末な柵。その中にオークの集落が広がっていた。
丸太を組んだ小屋、獣皮を張ったテント。奪われた荷車や酒樽が転がり、焚き火の煙と血の匂いが漂っている。

焚き火の周りには十二体のオーク。肉をむさぼり、下卑た笑い声を響かせていた。
その奥に、一際大きな影――オークチーフが腰を下ろしている。

忍はクロスボウを構え、小声で囁いた。
「……十二体。奥に強い反応が一つ」
翔は魔鋼バールを握りしめ、低く答える。
「まずは群れからだ」



突入と同時に十二体のオークが咆哮を上げる。
「グォォォォッ!!」

《正面三体、右二体!》
ブレイザーの警告が響く。

翔はバールを振り抜き、頭蓋を砕いた。血が飛び散り、横薙ぎでさらに二体を吹き飛ばす。
「せいっ!」

「左は任せて!」忍の矢が喉を貫き、オークが絶命した。

棍棒を受け止めた翔は力で押し返し、頭蓋を粉砕。
忍は眼を正確に射抜き、次々と仕留めていく。

激戦の末、残る二体が怯えて逃げ出そうとした――。

「グォォォォォッ!!」

焚き火の奥から立ち上がる巨体。オークチーフ。
二回り大きな体躯、鉄製の大剣。咆哮と共に大地が震えた。

大剣が振り下ろされ――ドシュッ!
逃げた二体は胴を真っ二つに裂かれ、血を撒き散らして絶命。

「仲間を……斬った……?」忍が息を呑む。
翔は口角を吊り上げる。
「……王様らしいやり方だな」

忍が鑑定を走らせる。
【オークチーフ LV10】
【特徴:群れを率いる個体 力と耐久に優れる】
【弱点:心臓部(魔石)、後頭部(防御薄)】
【ドロップ:肉(高品質)、皮、骨、魔石(中)】

「……心臓に魔石! 後頭部は防御が薄い!」
「なら隙を作れ、俺が仕留める!」



大剣が振り下ろされ、翔は正面から受け止める。
ガァンッ! 地面が抉れ、腕に痺れが走った。
「……クソ重ぇ!」

《翔、引きつけろ! 忍、今だ!》

翔が押し返す間に、忍が矢を放つ。
ヒュンッ! 矢が後頭部に突き刺さり、巨体が揺らいだ。

翔は渾身の力でバールを振り抜き、胸板を砕く。
心臓部を直撃――。

「グォォォォォォッ!!!」
絶叫を残し、オークチーフは崩れ落ちた。



静寂。
青白いウィンドウが二人と一台の視界に浮かぶ。

【清水翔 LV6 → LV8】
【新スキル:強打(初級)】

【松田忍 LV5 → LV7】
【スキル進化:錬金(初級) → 錬金(中級)】

「……力押しのスキルか。悪くねぇ」翔が息を吐く。
「錬金が……進化しました!」忍が胸を押さえて微笑んだ。
《拡張モードだ! 見てろよ、戦場ごと片付けてやる!》

ブレイザーの唸りと共に、柵、小屋、テント、荷車、武器、防具、酒樽までもが光に包まれる。
使えるものは素材へ変換され収納、不用品は魔力に変換され消滅した。

数分後。そこには平らな草地だけが残っていた。

「……すごい。集落ごと……消えた」忍が呟く。
「痕跡を残さず、戦利品は全部俺たちのもんか」翔が口角を上げる。
《フハハ! 掃除も回収も俺に任せとけ!》



翌日、街のギルド。

素材袋を置いた瞬間、周囲がざわめいた。
「オークの皮だ……!」
「魔石も……チーフのじゃねぇか!?」

ベテラン冒険者が唸る。
「新人が……チーフを倒しただと?」
「俺たちでさえ三人死んだ相手だぞ……」

受付嬢リーナは確認し、声を張った。
「通常オーク16体で銀貨32枚。チーフ討伐で20枚。証拠が無傷で揃い、被害拡大を防いだ功績から追加で8枚。――合計銀貨60枚です!」

「17体も……」
「チーフの魔石が無傷……」
「くそ、羨ましい……」

ギルド中の視線が突き刺さる。嫉妬、羨望、そして恐れ。
忍は小さく微笑み、翔は肩をすくめただけだった。



その夜。街外れのキャンプスペース。

焚き火を囲む冒険者や商隊の間で、ブレイザーが展開を始める。
キッチンとテーブルが現れ、忍がチーフ肉を調理した。
ジュワァァッと揚がる音、香ばしい匂い。
黄金色のトンカツと野菜スープが並び、霜の降りたガラスジョッキにビールが注がれる。

「かんぱーい!」二人は声を合わせた。
ごくごく……ぷはぁっ!
「最高だ」翔が笑い、忍も頬を赤らめた。
《見ろよ、全員羨ましそうだぜ! 最高の宴だ!》

周囲の視線を浴びながら、二人と一台の晩餐は盛大に続いた。



食事を終えた忍が汗を拭い、視線を伏せて言った。
「……戦いに料理……身体がベタベタです。お風呂に入りたい……」

《おう、任せろ! 浴室は【小傷回復の湯】仕様だ!》

湯気に包まれた浴室を見て、忍は頬を赤らめて振り返る。
「……翔さん、一緒に入りませんか?」

翔は言葉を失い、忍を見つめた。
「なっ……!」
「一人より、二人で入った方が安心できるかなって……」

その瞳は冗談半分、本気半分。
翔は胸の高鳴りを感じ、初めて忍を「女」として意識した。

《おーおー! 新婚気分かよ!》ブレイザーの茶々で、結局は交互に湯に浸かったが――
湯気の向こうで、互いに意識した視線は消えなかった。



夜。

ベッドスペース。
翔は胸元のスピーカーを外し、スタンドに置いた。
「ブレイザー、ナイトモード」
《了解。静かに見守ってるぜ》

忍は布団に潜り込み、小さく囁いた。
「……一番安心するのは……翔さんが隣にいるからです」

翔は横顔を見て言葉を失い、忍は赤く染まった頬を隠すように目を閉じた。

《おーおー、甘酸っぱくてたまんねぇな》とブレイザーが笑い、翔は苦笑して毛布を引き直した。
「……おやすみ」

夜の車内は静かで温かく、二人の距離はこれまで以上に確かに近づいていった。
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