キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第5章 王都への道

領主館での打ち合わせと出立準備

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領主館・執務室

重厚な扉が閉じられ、広い執務室に沈黙が落ちた。
壁には王国の地図が大きく掲げられ、赤いピンで街道や街の位置が示されている。

領主バルド男爵は椅子に腰掛け、指先で机を軽く叩きながら切り出した。
「さて……ユリウス殿下、カトリーナ嬢。そして翔殿、忍殿。王都への帰還について本格的に話を進めねばならぬ」

ギルドマスター・バルガスが地図の上に手を置き、険しい顔で言う。
「馬車で進む場合……王都までは二週間。最短でも八日。だが補給、宿泊、護衛の疲労を考えれば現実的には十日以上を要します」

ユリウスが深く頷き、唇をかむ。
「……その間、また魔物に襲われる危険がある。バルトでさえあれほどの被害を出したのだ……」

その声に忍が静かに答えた。
「ですが、ブレイザーなら事情は違います」

翔が腕を組み、真っ直ぐに言葉を重ねる。
「中で食事も水も用意できる。休息も取れるし、夜間は結界で護られる。何より、馬車と違って止まる必要がない」

ブレイザーが低く響く声で補足した。
《推定所要時間、三日。最短で二日で王都に到達可能》

室内の空気が一変した。

「……に、二日だと……!?」
ユリウスが思わず立ち上がり、目を見開く。
「馬でも早くて八日はかかる道のりを……たったの二日……!」

ヘルマンが険しい顔で腕を組む。
「規格外だ……だが、速すぎれば逆に怪しまれる。通過する街や検問所で、どう説明するつもりだ?」

領主がゆっくりと頷き、机から封蝋の押された束を取り出す。
「そこで通過許可証だ。王都へ向かう正規の使節団として扱う。その上で、ブレイザーがどれほど早くても問題は生じぬ」

カトリーナが首をかしげる。
「ですが、いくら許可証があっても……“一泊したはずの距離を数時間で移動する”のは、不自然に思われませんか?」

バルガスが唸るように言葉を継いだ。
「確かにな……下手をすれば王都に着いた途端、余計な詮索を受ける」

その場に少しの沈黙が落ちる。

翔が口角を上げ、淡々と告げた。
「なら、途中の街で一泊する。実際には数時間で着けるが、夜は街で過ごすようにすれば“普通の速度”に見える」

忍も頷いた。
「せっかくの旅です。現地の食材や文化に触れるのも良い経験になりますし」

領主は目を細め、深く頷いた。
「……なるほど。それなら王都に不審を抱かせることもあるまい。加えて通過する街ごとに、滞在許可をこちらで手配しておこう」

ユリウスが拳を握り、声を張る。
「ならば決まりだ! 我らは王都へ――迷い人と守護車の加護を受けて進む!」

その力強い声に、執務室の空気が震えるように熱を帯びていった。



領主館・執務室 ― 打ち合わせの続き

「ならば決まりだ! 我らは王都へ――迷い人と守護車の加護を受けて進む!」
ユリウス王子の声が執務室に響いた。

だが、その場で翔が腕を組み直し、低く言う。
「……出発の前に、もうひと仕事あるだろ?」

忍が微笑んで頷いた。
「装備と薬の準備です。旅は安全でも、備えは万全でなければ」

ガルドが勢いよく立ち上がり、拳を握った。
「よく言った! 素材は揃っている。翔の防具、忍のクロスボウ……そして護衛役全員の装備を一段階上に進化させてやろう!」

執務室の空気がざわついた。

「進化……だと……?」
ヘルマンが目を細める。

ガルドは胸を張り、ブレイザーを指さした。
「こいつとタッグを組む。分解と精錬はブレイザー、細工と調整は俺だ。二人で神話級の装備を作り上げる!」

ブレイザーが重厚な声で応じる。
《素材解析開始。オークキングの牙、クロコダイルの鱗、ロックバードの羽根――全て最高純度。使用可能》

「おおお……!」
ユリウスが思わず声を漏らす。

忍はその横で、小瓶や草を広げていた。
「私は医療用品を整えます。現代の薬学、異世界の薬草、そして治癒魔法を融合させて――」

シュッ、と包帯を巻きながら忍が説明する。
「これはただの布ではありません。傷口に触れた瞬間、魔力が浸透し、回復を促進します」

カトリーナが目を丸くした。
「包帯で……回復が……!? これでは医療の常識がひっくり返りますわ!」

忍はさらに、小瓶を並べた。
「回復薬。毒消し。解熱剤。どれも現代知識と異世界素材の掛け合わせです」

ヘルマンが一本を鑑定し、驚愕した。
「……効果、従来の二倍以上……! しかも副作用がない……!?」

執務室の熱気がさらに高まる。

その時、翔が収納から見慣れぬ箱を取り出した。
「それと……長旅に便利なもんを用意した」

カップに麺が詰まった容器。
「湯を注げば三分で完成する。体が温まって腹も満たせる“カップラーメン”だ」

ユリウスは興味津々で身を乗り出す。
「三分……? たった三分で食事が完成するのか!」

領主も目を細め、驚きを隠さない。
「遠征の兵士に渡せば……どれほどの命が救われることか……」

ギルマス・バルガスも目を丸くして笑った。
「迷い人め……次から次へと常識を壊してくれる……!」

翔は肩をすくめ、笑い返した。
「安心しろ、まだ驚かせてやる」

彼がそう言うと、ブレイザーの胸元の通信機が淡く光った。
《外部展開可能。……皆を招待してはどうだ?》

翔が頷き、仲間たちへ視線を送る。
「よし、じゃあ――ブレイザーを体験してもらおうか」
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