キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第5章 王都への道

地下二階への試練

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災害級の壁

地下二階への階段を目前にして、ブレイザーの声が通信機から響いた。

《警告。前方に大規模モンスタールームを確認。》

その場にいた全員が足を止め、自然と警戒の色を浮かべる。

「モンスタールーム……?」
カトリーナが小声で呟く。

《確認できた敵性体数を報告します。オーガ二十体。オーク五十体。ゴブリン百二十体。合計百九十体以上。ここを突破しなければ、下層へ進むことは不可能です》

「なっ……オーガが二十体!?」
ユリウスが青ざめて声を荒げた。

「一体でも災害級だっていうのに……」
ブルーノがごくりと唾を飲み込む。

忍が冷静に眉を寄せて言う。
「……オーガって、一体で高濃度魔石を必ず落とすのよね? 二十体ってことは、それだけで二十個……」

「確かに美味しい話ではあるが、命あってのことだろう」
ガルドが腕を組み、唸るように言った。

そんな中、ブレイザーの声が落ち着いた調子で続いた。

《作戦会議を推奨。通信機を床に置いてください。立体ホログラムを投影します》

翔は頷き、胸元の通信機を外して石床に置く。すると淡い光が広がり、空中に立体映像が浮かび上がった。

光の粒子で構成されたホログラムには、巨大な石造りの広間と、その中にひしめく無数の魔物たちの姿が鮮明に映し出されていた。
ゴブリンの群れが壁際に密集し、中央には黒鉄のような肌を持つオーガの群れ。さらに背後に控えるオークたちが隊列を組んでいる。

「こ、こんな……まるで鳥の目で見下ろしてるみたいだな」
ヨアヒムが目を見開いた。

「すごい……これなら敵の配置も一目でわかるわ」
リーナも思わず声を上げる。

忍が両腕を組んで、少し肩を竦める。
「せっかく石に地図を描こうと思ったのに、全部持っていかれた気分ね」

場の緊張が一瞬ほぐれ、皆の口元に苦笑が浮かんだ。

翔は真剣な眼差しでホログラムを見つめながら口を開く。
「……見事に待ち構えてるな。真正面から突っ込めば間違いなく潰される。作戦を練らないと」

ユリウスが拳を握る。
「だが、避けて通れぬのであれば、必ず突破せねばならん……」

《補足情報。現有ドローン二機での殲滅は可能。ただし、全自動で行えばメンバーの戦闘経験値にはならないため非推奨》

「……つまり、俺たちも手を動かさなきゃ意味がないってことか」
翔が小さく息を吐く。

エリナが不安げに尋ねる。
「で、でも……ブレイザーのドローンだけで、オーガって何体まで倒せるんですか?」

ホログラムの中で、青い光点がドローンの数を示す。
《現状、ドローン五十機展開時であれば、オーガ千体規模と対等に戦闘可能》

「せ、千体!?」
「馬鹿な……」
「千体だと……?!」

全員の声が重なり、空気が震える。

忍が目を丸くしながらも苦笑を漏らす。
「もう……やっぱり桁が違うわね。けど、それを聞いて逆に安心したかも」

ブレイザーの声が続く。
《現在レベル25。レベル30到達でドローン百機展開が可能になります》

「百機……。じゃあもっとレベルが上がったら、一体どこまで……」
リーナが呟き、ぞくりと背筋を震わせる。

翔は苦笑しながらも真剣に言った。
「ブレイザーは確かに強力だけど、俺たちは俺たちで力をつけなきゃいけない。ここは訓練と実戦を兼ねて挑むしかないな」

カトリーナが勇敢に頷く。
「ええ。王都に行く前に、ここで私たちがどこまでやれるかを示す時ですね」

ブルーノも肩を回し、豪快に笑う。
「よし! だったら俺は前衛で暴れてやる! 久々に血が騒いできたぜ!」

ヨアヒムが苦笑混じりに言う。
「……後で薬草のストック、全部俺に回してくれよ。怪我人だらけになったら困るんだから」

ヘルマンが顎を撫でながら静かに言葉を添える。
「若者たちの力を見せる好機だな。わしは後方から補助に回ろう」

翔は仲間たちを見回し、力強く頷いた。
「――よし。作戦を決めよう。真正面突破は無謀だ。分散して各個撃破しつつ、全員が役割を果たす。それでいこう」


災害級の壁 ― 突入準備

ホログラムに浮かび上がるモンスターの群れを前に、全員の顔が険しくなる。
ゴブリン百二十、オーク五十、そして災害級のオーガ二十体。
どれだけ誇張しなくても、これは歴戦の冒険者でも絶望する光景だった。

翔が息を吐き、静かに口を開く。
「――よし、作戦会議の続きだ。俺たちの役割をきっちり決めておく」

ブレイザーが補足するように声を響かせる。
《推奨戦術。敵軍の前衛を分断し、同士討ちを誘発すること。特にオークとゴブリンは士気が低いため、指揮系統を崩せば一気に瓦解する可能性があります》

忍が頷き、指で広間の映像を指し示す。
「つまり……オーガが中心を固めて、オークが盾。ゴブリンは周りで群れてる……まるで軍隊ね。なら、まずは外周のゴブリンを削って混乱させるのが先かしら」

「その混乱の隙に前衛が突っ込む、って流れだな」
ブルーノが笑いながら拳を鳴らした。

「お前はいつだって突っ込む役だな」
ガルドが呆れ半分に笑う。
「だが、前衛が厚いのは悪くない。わしも斧を振るうぞ。オーガの首を刈るためにな」

「おいおい、じいさんに負けるわけにゃいかねえな!」
ブルーノが楽しそうに笑い、空気が少しだけ和んだ。

翔はそんな二人を見て苦笑しながらも、真剣な声で言った。
「よし。じゃあ――役割をはっきり決めるぞ」



前衛
• ブルーノ:「突撃役。オークの壁をぶち抜いてくれ」
• ガルド:「オーガ担当。重戦士として正面を受け止める」
• 翔:「全体の指揮を取りつつ、必要に応じて前衛を支える」

ブルーノが胸を叩きながら笑う。
「任せとけ! 血祭りに上げてやる!」



中衛
• リーナ:「広範囲魔法でゴブリンを削り、混乱を誘発」
• ユリウス:「剣と魔法の両立で中衛支援。騎士としての防御役も」

リーナは冷静に指を立てた。
「でも撃ちすぎると味方も巻き込むわ。翔、ちゃんと私の詠唱時間を稼いでよ」

「わかってる。援護は任せろ」翔が即答する。



後衛
• エリナ:「回復と補助魔法で全体をサポート」
• 忍:「薬草と知識を駆使して即応治療、さらに補助指揮」
• ヨアヒム:「状態異常と薬品攻撃で敵の戦力を削ぐ」
• ヘルマン:「戦況を俯瞰し、魔法による解析と戦術支援」
• ミア:「戦闘は補助程度。だが戦況を記録してギルドへ報告する役」

エリナは少し不安そうに手を握りしめた。
「わ、私……みんなを守れるかな」

忍がにっこり微笑んで言う。
「大丈夫。私もいるし、みんなで守るから」

その言葉にエリナの表情が少し和らぐ。



ブレイザーの声が響いた。
《補足。ドローン四十機を二隊に分け、片方を囮として突入。残りを援護射撃に回すことを推奨》

翔が頷く。
「よし、ドローンは囮役と殲滅支援に分ける。俺たちはその隙に隊列を組んで突入だ」

ユリウスが剣を抜き、光を反射させながら力強く言った。
「――ならば、我ら王族の名に懸けても突破せねばなるまい」

ブルーノが大声で笑い、肩を回す。
「いいじゃねえか! 心が躍るぜ!」

ガルドも斧を掲げ、静かに言葉を紡ぐ。
「……戦士にとって壁を超える瞬間ほど血が滾るものはない。よし、やってやろう」

翔は全員の顔を一人ひとり確認し、深く頷いた。
「じゃあ――いくぞ。俺たち全員で、この災害級の壁を突破する!」

《了解。ドローン、展開開始》

通信機から響いた声と同時に、空間に光の粒が舞い、四十機のドローンがシャアッと音を立てて姿を現す。
赤い警告ランプが点滅し、戦闘の幕が開こうとしていた。

広間の石扉の前で、十人と四十機が一糸乱れぬ気迫を放つ。
扉の向こうには、災害級の群れ。

いよいよ、突入の時が来た――。
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