キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第5章 王都への道

災害級の壁 ― 突入開始

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ブレイザーの立体ホログラムに映し出された戦況マップが、赤い警告色に切り替わった。
通信機を通じ、落ち着いた声が響く。

《戦術提案。囮役のドローン二十機を先行させ、フラッシュ機能を最大出力で起動。敵軍の視界を奪い、その隙に本隊が突入するのが最適と判断》

「フラッシュ……目潰しか」
翔が頷き、視線を仲間に走らせる。

忍が冷静に言葉を補った。
「暗所に慣れている魔物ほど、光に弱いはず。混乱は必至ね」

「ほぉ……ブレイザーってやつは、敵を混乱させる機能まであるのか」
ガルドが豪快に笑い、斧の柄を叩く。
「なら、その隙に首を刈ってやればいい!」

「やれやれ、戦う前から気合十分だな」
ヘルマンが肩をすくめつつも、杖を握る手には緊張が滲んでいた。

翔は全員を見渡し、力強く宣言した。
「――作戦は決まった。ドローンが光で目を潰す。その瞬間、前衛が突撃。中衛が一気に削り、後衛が支援だ。全員、行くぞ!」

《了解。囮部隊、展開開始》

赤い光が走り、二十機のドローンが石の扉の上空へと散開した。
金属の羽音が低く響き、広間に冷気のような緊張が広がる。

扉の前に立ったブルーノが大剣を構え、口角を吊り上げる。
「いいぜ……獲物は山盛りだ。暴れてやる!」

ユリウスも剣を抜き、鋭い眼差しを前へ向けた。
「ならば私も――王族の剣、見せてやろう」

リーナが詠唱に入る。
「――火よ、炎よ、我が言葉に従え……」

エリナは両手を組み、小さく祈る。
「どうか……皆さんを守れますように……」

忍はクロスボウを手に持ち薬瓶を腰に掛け直し、静かに息を整える。
「混乱は一瞬よ。その一瞬を逃さないで」

翔が扉に手を掛け、深く頷いた。
「……突入!」



モンスタールーム突入戦

《囮開始――フラッシュ、展開》

ブレイザーの重厚な声が石造りの空間に響き渡る。

直後、天井近くに浮かぶドローン群が一斉に閃光を放った。
凄まじい光が岩肌に反射し、まるで昼の太陽を閉ざされた空間に無理やり引き込んだような白光が爆ぜる。

「ギャアアアアッ!!」
「グルルルル……!」

耳障りな悲鳴。
目を焼かれたゴブリンとオークたちが棍棒を振り回し、壁に叩きつけては石片が飛び散った。
視界を奪われた群れは混乱し、仲間同士でぶつかり合い、足元の岩屑を踏み砕く。

石壁に反響する咆哮と、足音と、金属音。
そのすべてが混じり合い、耳をつんざく戦場の交響曲となった。

「今だ――突入!!」
翔が吠える。

瞬間、空気が切り裂かれるような気迫を纏い、仲間たちが飛び込んだ。



前衛の突破

「おらぁぁぁっ!!」
ブルーノの大剣が唸りを上げ、盲目のオークを真っ二つに両断した。
血飛沫が石床に飛び散り、赤黒い染みを作る。

だが――。
「ぐあっ!」
別のオークの棍棒が横薙ぎに振り抜かれ、ブルーノの体を直撃。
重い衝撃音と共に彼の体が石床を転がり、壁に叩きつけられた。

「ブルーノ!」
ユリウスの声が響く。

リーナがすぐさま詠唱を開始する。
「《プロテクション・バリア》!」
青白い光の盾が展開し、続けざまに飛んできた棍棒を弾き飛ばす。
火花が散り、石片が飛び跳ねる。

「し、しまった……!」
ブルーノは呻きながらも立ち上がろうとするが、脇腹から赤が滲む。

「待って! 動かないで!」
エリナが駆け寄り、両手をかざす。
「《ヒール》!」
光がブルーノを包み、裂けた皮膚が徐々に閉じていく。

「……助かった。まだ戦える!」
ブルーノは息を吐き、剣を握り直した。

石の匂いに混じり、血と鉄の匂いが空間を満たす。
熱気と恐怖、そしてアドレナリンで、全員の心臓が早鐘を打っていた。



翔と忍の連携

「翔さん、支援入れます!」
忍がクロスボウを素早く構え、魔力矢を次々と放つ。
シュッ、シュッと空気を裂き、矢はゴブリンの喉を貫いた。

ドローンが矢で怯んだ敵に追撃を重ね、光弾が爆ぜて血飛沫が壁を汚す。

忍はさらに両手をかざし、詠唱に切り替える。
「《氷結魔法・エリアフリーズ》!」

足元に青白い魔法陣が浮かび、瞬間、床全体が凍りついた。
オークたちが足を取られ、バランスを崩して次々と転倒。

「ナイスだ忍!」
翔が叫び、盾で転倒したオークを押し飛ばす。
「《火炎斬撃》ッ!」
炎を纏った剣が軌跡を描き、轟音と共に複数のオークがまとめて焼き払われた。
焦げ臭い匂いが立ち込め、空気が熱で歪む。



災害級の影

「……オーガが動き出したぞ!」
ヘルマンの声に、全員の動きが一瞬止まる。

奥の闇から、二十体もの巨体が姿を現した。
赤黒い肌、血走った目、腕に握られた丸太のような棍棒。
その一歩ごとに床が震え、砂塵が舞い上がる。

「くっ……あれがオーガ……!」
ユリウスが声を震わせる。
「一体で災害級……それが二十……」

「ひるむな! 全員、集中しろ!」
ガルドが怒号を上げ、戦鎚を振り上げて正面から突撃した。

ゴッッ!!
オーガの棍棒と戦鎚が正面でぶつかり合い、空間が揺れる。
轟音に石天井の塵が降り注ぎ、仲間たちの耳を打った。



支援と回復

「《身体強化・全体》!」
「《精神集中》!」
ヘルマンの声が重なり、仲間の全身に力が満ちていく。
疲労が和らぎ、足取りが軽くなる。

「これでいける……!」
翔が息を吐き、再び剣を構えた。

忍が一歩前に出て、両手を掲げる。
「みんな、耐えて! ――《リジェネレーション》!」

柔らかな光が仲間全員を包む。
切り傷がみるみる塞がり、打撲の痛みが霧のように消えていく。

「な……なんだこれは……! 身体が軽い……!」
ブルーノが目を見開き、息を呑む。

「すごい……! こんな回復、聞いたことがない!」
エリナが感嘆の声を上げながらも、さらにヒールを重ねて支援する。



戦場の空気

ドローンの弾幕が空気を焼き、閃光の残滓が残る。
石壁に響く叫び、肉が裂ける音、剣がぶつかる金属音。
湿った血の匂いが鼻を刺し、床に流れ出した血溜まりが靴底を滑らせた。

「残数は!?」翔が叫ぶ。

《ゴブリン残数、およそ七十。オーク三十。オーガ二十――健在》

「まだ……これだけ……!」
ユリウスが息を荒げながら剣を振る。

「だが、いける! 今の俺たちなら、必ず勝てる!」
翔が仲間を鼓舞し、剣を振りかざした。

仲間全員が雄叫びを上げ、災害級の群れに再び飛び込んだ。
その瞬間、モンスタールーム全体が振動し、まるで空間そのものが戦場の鼓動を刻んでいるかのようだった。
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