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第5章 王都への道
災害級の壁を超えて
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――石床がうなり、風圧が顔を叩いた。
「右、くるぞッ!」
翔の警告と同時、二歩ぶん後方にいたブルーノの前へ、丸太の棍棒が地鳴りを伴って振り下ろされる。
ガァン! 火花。盾で受け流したが、腕が痺れる。足裏から脳天まで衝撃が突き抜けた。
「まだだッ! はぁぁっ!」
ブルーノは痺れる腕を叱咤して踏み込み、オーガの膝に斜めの一閃。刃先が分厚い皮膚を割り、暗赤の血が噴く。
「拘束、もう一回――《ライトニング・バインド》!」
リーナの詠唱が被さり、雷鎖が膝へ絡む。巨躯がガクついた瞬間、ユリウスの剣が閃き、ガルドの戦鎚が胸板へめり込んだ。
「潰れろォ!」
戦鎚と骨の軋みが重なる低い破裂音。オーガが仰け反る。
「翔さん、今!」
忍の声。
「取る!」
翔の火炎を纏った剣が、一直線に喉笛へ――火花と血煙を一閃。巨体が膝をつき、地に崩れた。
《一体撃破。ヘイト、三時方向に集中》
ブレイザーの冷静な報告。直後、右側通路から三体が突進してくる足音が重なった。
「三時、正面遮蔽!」
翔の号令に、ドローンが斜め列で滑り込み、閃光弾を二連投。
白光、悲鳴、足がもつれる音――。
「足場を凍らせる。《エリアフリーズ》!」
忍の詠唱で床一帯が霜を噛む。滑ったオーガが体勢を崩したところへ、ガルドが肩で体当たりして進路を逸らし、その隙をブルーノが切り裂く。
「エリナ、前衛に持続回復、重ねて!」
「はい、《ヒール》《リジェネレーション》!」
温かな光が前衛の背に付き、裂傷からの出血が目に見えて細る。
「ヨアヒム、バフ延長を!」
「任せろ、《身体強化》《痛覚鈍麻》、上乗せだ!」
痛みが一段ほど遠くなる。呼吸が深く入る。視界が澄む。
「くっ、楽になる……! まだ戦える!」
ブルーノが奥歯を噛み、笑ってみせた。
左翼では、ゴブリンとオークの群れがなおも押し寄せていた。
「数で押す気ね。なら――数で止める!」
忍が矢筒から短矢を三本、指の間に挟む。
「《魔力強化矢・三連》――行けっ!」
シュバン、シュバン、シュバン――。喉、目、こめかみ。三体が同時に崩れ落ち、空いたスペースにドローンの光弾が刺さるように降る。爆ぜた火花に怯んだ背列へ、リーナの広範囲雷撃が落ちた。
「《サンダーフォール》!」
紫電が空気を裂き、焦げた匂いが鼻腔を刺す。オークの前列がごっそり倒れ、隊列が割れた。
「隊列崩壊、今! 押し切る!!」
翔が前へ。盾で棍棒を弾き、返す刀で掌底のように炎斬を叩き込む。
「《爆炎斬撃》ッ!」
目も眩む閃光の尾。爆ぜる炎が肩口から背へ抜け、オーガが仰向けに弾け飛ぶ。
「ナイス、翔さん! ――《光矢連射》!」
忍の背後で、光の矢が連続して閃き、取り巻きのオークを穴だらけにしていく。
「ガルドさん、左の低いの、今柔らかい!」
「了解だァ!」
戦鎚が地を打ち、跳ね返りで顎を粉砕。低い悲鳴を残して倒れたオーガの胸へ、ユリウスの刺突が突き刺さる。
「トドメ!」
刃が心臓を貫き、巨体が痙攣して沈黙した。
「――くるぞ、塊だ!」
ヘルマンの警告。正面奥から、四体が横一線で肩を組むように突進してくる。
石床が波のようにうねり、壁面の松明が揺れる。
「真正面は捨てる、右に抜けろ!」
翔が壁際へ身を滑らせ、右外へ回り込む。四体の突進は空を切り、石柱を粉砕――破片が弾丸のように飛散した。
「危ない!」
忍が翔の背に手を伸ばす。
カンッ! 石片が忍の頬を掠め、血が一筋。
「大丈夫?」
「平気。ちょっとだけ。……集中、切らさないで」
「――礼は終わってからまとめてな!」
ガルドが笑い、砕け散った石柱の影から回り込み、最も外側のオーガのアキレス腱を狙って戦鎚を叩き込む。
膝が折れた。ひとり倒れれば横列は崩れる。
「今だ、挟め!」
ブルーノが逆側の足を断ち、体勢を完全に奪う。
「《火炎結界》、展開!」
翔の足元から赤い陣が立ち、倒れ込んできたオーガの半身を焼く。
焼けた皮膚が裂け、露出した肉にリーナの雷が落ちた。
「終わりっ!」
ユリウスの刃が心臓を突き、もがきが止む。
「残り、八!」
ブレイザーの音声が短く響く。
「押し切る――全員、前!」
翔が声を張る。息が白い。汗が塩辛い。
足元の血溜まりは滑る。倒れた魔物の体温が、足首にまとわりつくように熱い。
「はぁ、はぁ……でも、行ける!」
エリナが祈りを重ね、再生の光を途切れさせない。
「エリナ、助かってる。もう少しだけ耐えてくれ!」
「はいっ!」
「左二、右三、中央三――中央、俺が取る!」
翔は炎剣を握り直し、盾を突き出す。棍棒が二本、同時に降ってくる。
ガァンッ!! 盾が悲鳴を上げ、腕が痺れた。
「ぐっ……!」
視界が白むほどの衝撃。踏みとどまる。
「ユリウス、右後ろッ!」
「任せろ!」
ユリウスの剣が、翔を狙って背後から回り込んだオーガの手首を落とす。棍棒が転がり、翔の横を掠めた。
「忍、中央一点、抜く!」
「了解、《魔力強化矢・穿》!」
眩い一本の光が、中央のオーガの眉間へ吸い込まれた。
硬いはずの頭蓋を貫く、嫌な手応え――巨体がのけぞり、崩れ落ちる。
「残り五!」
ヘルマンが叫ぶ。「《知覚強化》、全員に!」
敵の動きがわずかに遅く見える。呼吸のリズムが合う。
「決めよう!」
リーナが掌を合わせ、雷と炎を混ぜる複合魔法を紡ぐ。
「《ボルケーノ・サンダー》!」
轟。火雷が渦を巻き、二体の上半身を一気に焼き裂いた。
「最後は一緒に!」
忍が微笑み、翔が頷く。
「《爆炎斬撃》」
「《光矢連射》」
炎と光が網のように重なり、残る三体が串刺しにされる。
遅れて、倒壊の地鳴り。
――静寂。
耳の奥で、脈拍だけがドク、ドクと大きく響いた。
焼けた肉と血の匂い、石粉のざらつき、肺に刺さるような冷たい空気。
誰かが喉を鳴らし、誰かが短く笑った。
《全目標、制圧完了。回収プロトコルを開始。高純度魔石――二十》
ブレイザーの声が、ようやく現実に引き戻してくれる。
「……終わった、のか」
ブルーノが剣を床へ突き立て、深く息を吐いた。膝が笑っている。
ユリウスは剣を鞘に収め、しばし天井を見上げる。
「災害級二十体……普通なら、伝説だぞ」
「今日から“普通”をやめましょうよ」忍が肩で息をしながら笑う。「私たち、もう普通じゃないですから」
エリナが皆の顔を見て、安堵の涙を滲ませる。
「皆さん……ご無事で……本当に、よかった……っ」
ヨアヒムがその頭をぽんと叩く。「よく支えた。おかげで前は倒れなかった」
ガルドは戦鎚を肩に上げ、にやついた。
「よし、あとは戦果の確認だ。素材と石……“職人の時間”だぜ」
《レベル変動を通知――》
青白いウィンドウが次々と弾ける。
【清水 翔 Lv30 → Lv33】
・新スキル《爆炎斬撃》取得(高威力・爆風付与)
・新魔法《火炎結界》取得(半径3m/敵性焼灼)
・《盾術》熟練度上昇
【松田 忍 Lv30 → Lv33】
・新スキル《リジェネレーション》取得(範囲小・持続回復)
・新魔法《光矢連射》取得(多段・貫通補正)
・《狙撃》精度上昇
【ブレイザー Lv25 → Lv28】
・ドローン 50 → 60機
・結界範囲 半径2km → 3km
・《人物鑑定Lv2》強化(スキル傾向・適性まで表示)
【ユリウス/カトリーナ/リーナ/エリナ/ガルド/ヨアヒム/ブルーノ/ヘルマン】
・各 Lv+2
・所持スキル微強化(筋力・精神・詠唱短縮・工作適性 ほか)
「……上がったな」
翔が拳を握り、肩で息をつく。指先がまだ微かに震えている。
忍が頬の小さな切創を拭いながら、柔らかく笑った。
「みんなも。よく、凌いだね」
《ドロップ報告》
《高純度魔石×20/オーガ骨格素材上質×多数/オーク上質皮×多数/ゴブリン各種素材》
《回収は完了。異空間庫で保冷・乾燥処理中》
「骨に筋、いい太さだ。柄に使える。皮はオイルで馴染ませりゃ軽鎧も行けるな」
ガルドの目が職人の光で輝く。
ヨアヒムは魔石をルーペで覗き込み、「純度が高い……回復薬の触媒に最高だ」と頷いた。
ヘルマンは無数のメモを走らせながら、興奮を抑えきれない声を漏らす。
「この規模のモンスタールームの消耗で、この戦果……統計がひっくり返る……!」
「ねぇ、翔さん」忍がそっと袖を引く。「まだ階段の先がある」
「分かってる。……でも、ここで一回、息を入れる」
翔は全員を見渡して言った。「傷のチェック、水分補給、姿勢のリセット。五分で整えて、十で再配置を確認。――次へ行くぞ」
「了解!」
声が重なった。疲れの色は濃い。けれど、その目は、闇の先をはっきりと捉えている。
《ブレイザーより。皆さん――美しい連携でした》
胸元の通信機から、少しだけ誇らしげな音色。
「当然だろ、相棒」翔が笑う。「二人と一台だ」
ふっと、空気が和らいだ。
だが足は止めない。
石階段の縁に、血の滴が落ちて消える。
熱を帯びた呼気が、冷たい迷宮に薄く漂っていく。
――災害級の壁を、一つ超えた。
まだ先は長い。けれど、確かに前へ。
彼らは再び、暗い階段を下り始めた。
「右、くるぞッ!」
翔の警告と同時、二歩ぶん後方にいたブルーノの前へ、丸太の棍棒が地鳴りを伴って振り下ろされる。
ガァン! 火花。盾で受け流したが、腕が痺れる。足裏から脳天まで衝撃が突き抜けた。
「まだだッ! はぁぁっ!」
ブルーノは痺れる腕を叱咤して踏み込み、オーガの膝に斜めの一閃。刃先が分厚い皮膚を割り、暗赤の血が噴く。
「拘束、もう一回――《ライトニング・バインド》!」
リーナの詠唱が被さり、雷鎖が膝へ絡む。巨躯がガクついた瞬間、ユリウスの剣が閃き、ガルドの戦鎚が胸板へめり込んだ。
「潰れろォ!」
戦鎚と骨の軋みが重なる低い破裂音。オーガが仰け反る。
「翔さん、今!」
忍の声。
「取る!」
翔の火炎を纏った剣が、一直線に喉笛へ――火花と血煙を一閃。巨体が膝をつき、地に崩れた。
《一体撃破。ヘイト、三時方向に集中》
ブレイザーの冷静な報告。直後、右側通路から三体が突進してくる足音が重なった。
「三時、正面遮蔽!」
翔の号令に、ドローンが斜め列で滑り込み、閃光弾を二連投。
白光、悲鳴、足がもつれる音――。
「足場を凍らせる。《エリアフリーズ》!」
忍の詠唱で床一帯が霜を噛む。滑ったオーガが体勢を崩したところへ、ガルドが肩で体当たりして進路を逸らし、その隙をブルーノが切り裂く。
「エリナ、前衛に持続回復、重ねて!」
「はい、《ヒール》《リジェネレーション》!」
温かな光が前衛の背に付き、裂傷からの出血が目に見えて細る。
「ヨアヒム、バフ延長を!」
「任せろ、《身体強化》《痛覚鈍麻》、上乗せだ!」
痛みが一段ほど遠くなる。呼吸が深く入る。視界が澄む。
「くっ、楽になる……! まだ戦える!」
ブルーノが奥歯を噛み、笑ってみせた。
左翼では、ゴブリンとオークの群れがなおも押し寄せていた。
「数で押す気ね。なら――数で止める!」
忍が矢筒から短矢を三本、指の間に挟む。
「《魔力強化矢・三連》――行けっ!」
シュバン、シュバン、シュバン――。喉、目、こめかみ。三体が同時に崩れ落ち、空いたスペースにドローンの光弾が刺さるように降る。爆ぜた火花に怯んだ背列へ、リーナの広範囲雷撃が落ちた。
「《サンダーフォール》!」
紫電が空気を裂き、焦げた匂いが鼻腔を刺す。オークの前列がごっそり倒れ、隊列が割れた。
「隊列崩壊、今! 押し切る!!」
翔が前へ。盾で棍棒を弾き、返す刀で掌底のように炎斬を叩き込む。
「《爆炎斬撃》ッ!」
目も眩む閃光の尾。爆ぜる炎が肩口から背へ抜け、オーガが仰向けに弾け飛ぶ。
「ナイス、翔さん! ――《光矢連射》!」
忍の背後で、光の矢が連続して閃き、取り巻きのオークを穴だらけにしていく。
「ガルドさん、左の低いの、今柔らかい!」
「了解だァ!」
戦鎚が地を打ち、跳ね返りで顎を粉砕。低い悲鳴を残して倒れたオーガの胸へ、ユリウスの刺突が突き刺さる。
「トドメ!」
刃が心臓を貫き、巨体が痙攣して沈黙した。
「――くるぞ、塊だ!」
ヘルマンの警告。正面奥から、四体が横一線で肩を組むように突進してくる。
石床が波のようにうねり、壁面の松明が揺れる。
「真正面は捨てる、右に抜けろ!」
翔が壁際へ身を滑らせ、右外へ回り込む。四体の突進は空を切り、石柱を粉砕――破片が弾丸のように飛散した。
「危ない!」
忍が翔の背に手を伸ばす。
カンッ! 石片が忍の頬を掠め、血が一筋。
「大丈夫?」
「平気。ちょっとだけ。……集中、切らさないで」
「――礼は終わってからまとめてな!」
ガルドが笑い、砕け散った石柱の影から回り込み、最も外側のオーガのアキレス腱を狙って戦鎚を叩き込む。
膝が折れた。ひとり倒れれば横列は崩れる。
「今だ、挟め!」
ブルーノが逆側の足を断ち、体勢を完全に奪う。
「《火炎結界》、展開!」
翔の足元から赤い陣が立ち、倒れ込んできたオーガの半身を焼く。
焼けた皮膚が裂け、露出した肉にリーナの雷が落ちた。
「終わりっ!」
ユリウスの刃が心臓を突き、もがきが止む。
「残り、八!」
ブレイザーの音声が短く響く。
「押し切る――全員、前!」
翔が声を張る。息が白い。汗が塩辛い。
足元の血溜まりは滑る。倒れた魔物の体温が、足首にまとわりつくように熱い。
「はぁ、はぁ……でも、行ける!」
エリナが祈りを重ね、再生の光を途切れさせない。
「エリナ、助かってる。もう少しだけ耐えてくれ!」
「はいっ!」
「左二、右三、中央三――中央、俺が取る!」
翔は炎剣を握り直し、盾を突き出す。棍棒が二本、同時に降ってくる。
ガァンッ!! 盾が悲鳴を上げ、腕が痺れた。
「ぐっ……!」
視界が白むほどの衝撃。踏みとどまる。
「ユリウス、右後ろッ!」
「任せろ!」
ユリウスの剣が、翔を狙って背後から回り込んだオーガの手首を落とす。棍棒が転がり、翔の横を掠めた。
「忍、中央一点、抜く!」
「了解、《魔力強化矢・穿》!」
眩い一本の光が、中央のオーガの眉間へ吸い込まれた。
硬いはずの頭蓋を貫く、嫌な手応え――巨体がのけぞり、崩れ落ちる。
「残り五!」
ヘルマンが叫ぶ。「《知覚強化》、全員に!」
敵の動きがわずかに遅く見える。呼吸のリズムが合う。
「決めよう!」
リーナが掌を合わせ、雷と炎を混ぜる複合魔法を紡ぐ。
「《ボルケーノ・サンダー》!」
轟。火雷が渦を巻き、二体の上半身を一気に焼き裂いた。
「最後は一緒に!」
忍が微笑み、翔が頷く。
「《爆炎斬撃》」
「《光矢連射》」
炎と光が網のように重なり、残る三体が串刺しにされる。
遅れて、倒壊の地鳴り。
――静寂。
耳の奥で、脈拍だけがドク、ドクと大きく響いた。
焼けた肉と血の匂い、石粉のざらつき、肺に刺さるような冷たい空気。
誰かが喉を鳴らし、誰かが短く笑った。
《全目標、制圧完了。回収プロトコルを開始。高純度魔石――二十》
ブレイザーの声が、ようやく現実に引き戻してくれる。
「……終わった、のか」
ブルーノが剣を床へ突き立て、深く息を吐いた。膝が笑っている。
ユリウスは剣を鞘に収め、しばし天井を見上げる。
「災害級二十体……普通なら、伝説だぞ」
「今日から“普通”をやめましょうよ」忍が肩で息をしながら笑う。「私たち、もう普通じゃないですから」
エリナが皆の顔を見て、安堵の涙を滲ませる。
「皆さん……ご無事で……本当に、よかった……っ」
ヨアヒムがその頭をぽんと叩く。「よく支えた。おかげで前は倒れなかった」
ガルドは戦鎚を肩に上げ、にやついた。
「よし、あとは戦果の確認だ。素材と石……“職人の時間”だぜ」
《レベル変動を通知――》
青白いウィンドウが次々と弾ける。
【清水 翔 Lv30 → Lv33】
・新スキル《爆炎斬撃》取得(高威力・爆風付与)
・新魔法《火炎結界》取得(半径3m/敵性焼灼)
・《盾術》熟練度上昇
【松田 忍 Lv30 → Lv33】
・新スキル《リジェネレーション》取得(範囲小・持続回復)
・新魔法《光矢連射》取得(多段・貫通補正)
・《狙撃》精度上昇
【ブレイザー Lv25 → Lv28】
・ドローン 50 → 60機
・結界範囲 半径2km → 3km
・《人物鑑定Lv2》強化(スキル傾向・適性まで表示)
【ユリウス/カトリーナ/リーナ/エリナ/ガルド/ヨアヒム/ブルーノ/ヘルマン】
・各 Lv+2
・所持スキル微強化(筋力・精神・詠唱短縮・工作適性 ほか)
「……上がったな」
翔が拳を握り、肩で息をつく。指先がまだ微かに震えている。
忍が頬の小さな切創を拭いながら、柔らかく笑った。
「みんなも。よく、凌いだね」
《ドロップ報告》
《高純度魔石×20/オーガ骨格素材上質×多数/オーク上質皮×多数/ゴブリン各種素材》
《回収は完了。異空間庫で保冷・乾燥処理中》
「骨に筋、いい太さだ。柄に使える。皮はオイルで馴染ませりゃ軽鎧も行けるな」
ガルドの目が職人の光で輝く。
ヨアヒムは魔石をルーペで覗き込み、「純度が高い……回復薬の触媒に最高だ」と頷いた。
ヘルマンは無数のメモを走らせながら、興奮を抑えきれない声を漏らす。
「この規模のモンスタールームの消耗で、この戦果……統計がひっくり返る……!」
「ねぇ、翔さん」忍がそっと袖を引く。「まだ階段の先がある」
「分かってる。……でも、ここで一回、息を入れる」
翔は全員を見渡して言った。「傷のチェック、水分補給、姿勢のリセット。五分で整えて、十で再配置を確認。――次へ行くぞ」
「了解!」
声が重なった。疲れの色は濃い。けれど、その目は、闇の先をはっきりと捉えている。
《ブレイザーより。皆さん――美しい連携でした》
胸元の通信機から、少しだけ誇らしげな音色。
「当然だろ、相棒」翔が笑う。「二人と一台だ」
ふっと、空気が和らいだ。
だが足は止めない。
石階段の縁に、血の滴が落ちて消える。
熱を帯びた呼気が、冷たい迷宮に薄く漂っていく。
――災害級の壁を、一つ超えた。
まだ先は長い。けれど、確かに前へ。
彼らは再び、暗い階段を下り始めた。
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