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第5章 王都への道
地底に眠る宝と災厄 ― オーガナイト殲滅戦
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石段を降りるたびに、空気が重く、濃く、熱を帯びていく。
階段の途中、壁面に埋め込まれた魔石の灯が青く揺らめき、
まるで深海の底に潜り込むような静寂が広がっていた。
ブレイザーのドローンが先行し、周囲を照らす。
その光はまるで人工の太陽のように、岩肌を滑るように走る。
《分析開始。魔力濃度、地上の約二百五十倍。
魔物活動域の中でも最上位クラスです。
空気中の粒子から、希少金属の反応を多数確認》
「……金属反応?」
翔が足を止める。
ガルドがニヤリと笑った。
「そりゃたまらねぇ話だな。どんな鉱脈がある?」
《判定結果――主鉱脈は“オリハルコン”。
副成分に“ミスリル”、“アダマンタイト”、“紅蓮鉱”を含有。
さらに奥には未知の魔導鉱“蒼晶石(ブルークリスタ)”の反応》
「なっ……なんだってぇっ!?」
ガルドが目を剥いた。
「アダマンタイトに紅蓮鉱だと!? そんなもん、王国でも年に数キロ掘れるかどうかの代物だぞ!!」
彼は壁際に駆け寄り、手袋を外して素手で岩肌を撫でた。
そして興奮気味に叫ぶ。
「見ろ、この粒の細かさ……! 魔力密度が高ぇ! これ、下手すりゃ鍛冶の限界を突破できるぞ!」
忍がしゃがみ込み、別の岩の隙間から小さな結晶を取り出した。
「これ……ただの鉱石じゃない。魔力を吸収・保持してる……」
目を細め、鑑定スキルを発動させる。
【蒼晶石(ブルークリスタ)】
・魔力伝導率:S+
・耐熱耐魔性能:SS
・魔導装置や高出力兵装の触媒として最適
「すごい……! これ、エネルギーを流すだけで自動的に魔法を安定化させる……!」
ブレイザーが補足する。
《蒼晶石は、私の動力炉“魔力循環炉”にも使用されている素材です。
この世界では未発見種。貴重です》
「なるほど……じゃあ、あんたの修理にも使えるってことだな」
翔が感心したように呟く。
ガルドが拳を握り、目を輝かせた。
「オリハルコンで外装を、ミスリルで導力部品を、蒼晶石で魔力供給を組み合わせりゃ――
伝説級の“聖装具”が作れる! 俺はこの目で見たぞ、神話の素材ってやつを!」
リーナも驚嘆の声を漏らす。
「でも、魔力濃度がここまで高いと、魔物も……」
《その通りです。前方三百メートル――異常魔力反応、四十一体。
うち一体、戦闘能力が突出。識別名:オーガナイト》
「出たか……」
翔の顔が引き締まる。
《補足。オーガナイトは通常オーガの上位進化体。知性・統率能力を有し、
従属しているオーガの能力を平均で10%上昇させます。
推定総戦力――ドローン五機分。》
「五機……」
ユリウスが唸った。
「つまり、我々全員で挑んでも勝率は低い、ということか」
《現有ドローン三十機。うち十機を投入すれば勝率は99%です。
ただし、環境破壊のリスクを考慮し、慎重な戦闘を推奨》
翔は一瞬だけ考え、頷いた。
「……全員下がってろ。ブレイザー、十機を使え」
《了解。――殲滅戦、開始》
洞窟の奥が轟音と閃光で満たされた。
蒼白い光が壁を照らし、地響きが全員の足裏を震わせる。
吹き荒れる衝撃波と焦げた空気の匂い。
「……すげぇ、まるで地上ごと吹っ飛ばす勢いだな」
ガルドが唸る。
《敵勢力の反応、全滅確認。高純度魔石五十個回収。周囲に二次被害なし》
ブレイザーの冷静な報告に、一同が息を呑んだ。
翔が低く呟く。
「……さすがだな」
「さすがなんて言葉じゃ足りねぇぞ!」
ガルドが前に飛び出し、ドローンの照射で照らされた床を見て叫んだ。
「見ろ! あのドロップの量を! 夢みてぇだ!」
床一面に、宝石のような輝きを放つ素材が転がっていた。
赤く脈動するオーガナイトの魔核。
金属光沢を放つ黒鉄の皮膜。
燃えるような赤の紅蓮骨。
さらに無数のオーガの筋繊維が、細い糸のように広がっている。
《回収完了。追加報告:オーガナイト魔核3、黒鉄皮膜12、オーガ筋繊維24、紅蓮骨8、血晶棍棒片16。
副産物として、蒼晶石の小結晶を5個検出》
「おおっ!? 蒼晶石まで落ちてきやがったか!」
ガルドは目を輝かせながら拾い上げた。
「黒鉄の皮膜で鎧を作りゃ、ドラゴンの息でも焼けねぇ! 紅蓮骨を芯にすりゃ、熱伝導率が倍以上だ!
……ははっ、これで“神話鍛冶”に一歩近づいたな!」
彼の声に、忍が嬉しそうに笑う。
「その魔核、私たちの魔道具の動力にも使えますね。
魔力を安定的に循環できるから、ヒール装置や結界にも応用できるわ」
ヨアヒムが手帳に素早くメモを取る。
「筋繊維と皮膜の組み合わせで、薬効素材も作れる。
魔力強化ポーションの触媒としては最高級だ。王都に持ち帰ったら、薬師ギルドが発狂するぞ」
ブレイザーの通信が入る。
《すべての素材を無酸化結晶保存庫に格納しました。
温度・湿度・魔力安定化完了。品質劣化率、ゼロ》
「……保存まで完璧か。どこまで便利なんだお前は」
翔が苦笑する。
《私は“万能移動要塞”です。便利であることが、存在意義です》
「クク……頼もしいもんだな」
ガルドが笑いながら拳を握る。
「この素材があれば、次の時代の装備を作ってやるぜ。迷い人の世話になってる礼も兼ねてな」
ブレイザーのライトが一斉に輝きを放ち、洞窟の壁一面が青白く照らされた。
血と焦げの匂いがまだ残る空間に、
新たな希望の光が静かに広がっていく。
《次階層への階段、前方八十メートル地点で発見》
ブレイザーの声に、全員の視線が向く。
翔はしばらく無言で階段を見つめ、それから静かに息を吐いた。
「……だが、今は行くべきじゃないな」
《同意。下層からは、さらに高密度な魔力波と未知の生体反応を検知》
「危険ってことか」
ユリウスが腕を組む。
《はい。現段階での勝率、二十四パーセント》
「なら、ここで撤退だ」
翔が言い切る。
「手に入れるものは十分に手に入れた。……ブレイザー、地上へ戻るぞ」
《了解。帰還ルート、最短経路を確保》
背後でガルドが笑った。
「ま、今夜は打ち上げだな! これだけの収穫があったんだ。飲まなきゃ罰が当たる!」
忍も頷く。
「ええ、ヨアヒムと薬の試作もしなきゃ。戦闘の疲れを取る新しい回復薬、作ってみたいの」
リーナが笑みを浮かべる。
「なんだか、研究旅行みたいになってきたわね」
その言葉に全員が微笑み、静まり返ったダンジョンに笑い声が響いた。
階段の途中、壁面に埋め込まれた魔石の灯が青く揺らめき、
まるで深海の底に潜り込むような静寂が広がっていた。
ブレイザーのドローンが先行し、周囲を照らす。
その光はまるで人工の太陽のように、岩肌を滑るように走る。
《分析開始。魔力濃度、地上の約二百五十倍。
魔物活動域の中でも最上位クラスです。
空気中の粒子から、希少金属の反応を多数確認》
「……金属反応?」
翔が足を止める。
ガルドがニヤリと笑った。
「そりゃたまらねぇ話だな。どんな鉱脈がある?」
《判定結果――主鉱脈は“オリハルコン”。
副成分に“ミスリル”、“アダマンタイト”、“紅蓮鉱”を含有。
さらに奥には未知の魔導鉱“蒼晶石(ブルークリスタ)”の反応》
「なっ……なんだってぇっ!?」
ガルドが目を剥いた。
「アダマンタイトに紅蓮鉱だと!? そんなもん、王国でも年に数キロ掘れるかどうかの代物だぞ!!」
彼は壁際に駆け寄り、手袋を外して素手で岩肌を撫でた。
そして興奮気味に叫ぶ。
「見ろ、この粒の細かさ……! 魔力密度が高ぇ! これ、下手すりゃ鍛冶の限界を突破できるぞ!」
忍がしゃがみ込み、別の岩の隙間から小さな結晶を取り出した。
「これ……ただの鉱石じゃない。魔力を吸収・保持してる……」
目を細め、鑑定スキルを発動させる。
【蒼晶石(ブルークリスタ)】
・魔力伝導率:S+
・耐熱耐魔性能:SS
・魔導装置や高出力兵装の触媒として最適
「すごい……! これ、エネルギーを流すだけで自動的に魔法を安定化させる……!」
ブレイザーが補足する。
《蒼晶石は、私の動力炉“魔力循環炉”にも使用されている素材です。
この世界では未発見種。貴重です》
「なるほど……じゃあ、あんたの修理にも使えるってことだな」
翔が感心したように呟く。
ガルドが拳を握り、目を輝かせた。
「オリハルコンで外装を、ミスリルで導力部品を、蒼晶石で魔力供給を組み合わせりゃ――
伝説級の“聖装具”が作れる! 俺はこの目で見たぞ、神話の素材ってやつを!」
リーナも驚嘆の声を漏らす。
「でも、魔力濃度がここまで高いと、魔物も……」
《その通りです。前方三百メートル――異常魔力反応、四十一体。
うち一体、戦闘能力が突出。識別名:オーガナイト》
「出たか……」
翔の顔が引き締まる。
《補足。オーガナイトは通常オーガの上位進化体。知性・統率能力を有し、
従属しているオーガの能力を平均で10%上昇させます。
推定総戦力――ドローン五機分。》
「五機……」
ユリウスが唸った。
「つまり、我々全員で挑んでも勝率は低い、ということか」
《現有ドローン三十機。うち十機を投入すれば勝率は99%です。
ただし、環境破壊のリスクを考慮し、慎重な戦闘を推奨》
翔は一瞬だけ考え、頷いた。
「……全員下がってろ。ブレイザー、十機を使え」
《了解。――殲滅戦、開始》
洞窟の奥が轟音と閃光で満たされた。
蒼白い光が壁を照らし、地響きが全員の足裏を震わせる。
吹き荒れる衝撃波と焦げた空気の匂い。
「……すげぇ、まるで地上ごと吹っ飛ばす勢いだな」
ガルドが唸る。
《敵勢力の反応、全滅確認。高純度魔石五十個回収。周囲に二次被害なし》
ブレイザーの冷静な報告に、一同が息を呑んだ。
翔が低く呟く。
「……さすがだな」
「さすがなんて言葉じゃ足りねぇぞ!」
ガルドが前に飛び出し、ドローンの照射で照らされた床を見て叫んだ。
「見ろ! あのドロップの量を! 夢みてぇだ!」
床一面に、宝石のような輝きを放つ素材が転がっていた。
赤く脈動するオーガナイトの魔核。
金属光沢を放つ黒鉄の皮膜。
燃えるような赤の紅蓮骨。
さらに無数のオーガの筋繊維が、細い糸のように広がっている。
《回収完了。追加報告:オーガナイト魔核3、黒鉄皮膜12、オーガ筋繊維24、紅蓮骨8、血晶棍棒片16。
副産物として、蒼晶石の小結晶を5個検出》
「おおっ!? 蒼晶石まで落ちてきやがったか!」
ガルドは目を輝かせながら拾い上げた。
「黒鉄の皮膜で鎧を作りゃ、ドラゴンの息でも焼けねぇ! 紅蓮骨を芯にすりゃ、熱伝導率が倍以上だ!
……ははっ、これで“神話鍛冶”に一歩近づいたな!」
彼の声に、忍が嬉しそうに笑う。
「その魔核、私たちの魔道具の動力にも使えますね。
魔力を安定的に循環できるから、ヒール装置や結界にも応用できるわ」
ヨアヒムが手帳に素早くメモを取る。
「筋繊維と皮膜の組み合わせで、薬効素材も作れる。
魔力強化ポーションの触媒としては最高級だ。王都に持ち帰ったら、薬師ギルドが発狂するぞ」
ブレイザーの通信が入る。
《すべての素材を無酸化結晶保存庫に格納しました。
温度・湿度・魔力安定化完了。品質劣化率、ゼロ》
「……保存まで完璧か。どこまで便利なんだお前は」
翔が苦笑する。
《私は“万能移動要塞”です。便利であることが、存在意義です》
「クク……頼もしいもんだな」
ガルドが笑いながら拳を握る。
「この素材があれば、次の時代の装備を作ってやるぜ。迷い人の世話になってる礼も兼ねてな」
ブレイザーのライトが一斉に輝きを放ち、洞窟の壁一面が青白く照らされた。
血と焦げの匂いがまだ残る空間に、
新たな希望の光が静かに広がっていく。
《次階層への階段、前方八十メートル地点で発見》
ブレイザーの声に、全員の視線が向く。
翔はしばらく無言で階段を見つめ、それから静かに息を吐いた。
「……だが、今は行くべきじゃないな」
《同意。下層からは、さらに高密度な魔力波と未知の生体反応を検知》
「危険ってことか」
ユリウスが腕を組む。
《はい。現段階での勝率、二十四パーセント》
「なら、ここで撤退だ」
翔が言い切る。
「手に入れるものは十分に手に入れた。……ブレイザー、地上へ戻るぞ」
《了解。帰還ルート、最短経路を確保》
背後でガルドが笑った。
「ま、今夜は打ち上げだな! これだけの収穫があったんだ。飲まなきゃ罰が当たる!」
忍も頷く。
「ええ、ヨアヒムと薬の試作もしなきゃ。戦闘の疲れを取る新しい回復薬、作ってみたいの」
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