キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第6章 王都アルディナ編

王都アルディナ ― 英雄たちの帰還

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 陽光が白銀の城壁を照らしていた。
 空を切るようにそびえ立つ王都アルディナ――王国最大の都市にして、栄華の象徴。
 その荘厳な姿を前に、ブレイザー車の金属のボディがきらりと光を返す。

「……すごい……!」
 忍が、息を呑んだ。
 「見渡す限り、人、人、人……これが王都……!」

 翔は隣の席で腕を組み、口の端を上げる。
「噂には聞いてたが……まさかここまででかいとはな」

《ブレイザー車:王都南門まで、残り距離三百メートル。現在の入場待機列――約三百六十名》

 擬人化したブレイザーが穏やかに報告する。
「さすがは王国の中心都市ですね。人も多いです」

 ユリウスが車内で頷く。
「我々も並ぼう。この列を見れば、王都がどれほど栄えているかが分かる」

「さすが殿下だなぁ……普通は“通せ”って言うところですよ?」
 リーナが茶目っ気を交えて笑うと、カトリーナも微笑んだ。
「殿下は、そういう方ではありませんもの」

「……うむ、まっすぐでよい。王の器よ」
 ヘルマンが深く頷き、ガルドが鼻を鳴らす。
「民の前で威張らん王族っちゅうのも珍しいもんだ」

 車内の空気が柔らかく笑いに包まれた。



 王都南門 ― 白亜の防壁の前で

 巨大な石造りの門が目前に迫る。
 高さ十メートルを越す二重防壁。その上には十数名の弓兵が見張りをしていた。
 門の前には商人や旅人の列が長く続き、門番の掛け声が響く。

「止まれ! 通行証を確認する!」

 ブレイザー車が静かに停止すると、門番たちが怪訝そうな顔で駆け寄った。
「おい……なんだ、この鉄の塊は? 馬がいねぇぞ?」
「魔導兵器か? こんなの見たことねぇ……」

 周囲の商人たちもざわつく。
「鉄の馬車?」「動いてたよな……魔導工学の試作品か?」

 ブレイザー(擬人化)が車外に出て、落ち着いた声で答えた。
「我々はバルド領より帰還した使節団です。正式な通行許可は領主殿より受けています」

 門番が警戒を解かぬまま、通行証を覗き込む。
「……ふむ。確かにバルド領の印だ。だが、この“使節団”ってのは?」

 その時だった。
 静かにドアが開き、金の髪を持つ青年――ユリウスが降り立った。
 陽の光を受けて、その髪が煌めく。

 ユリウスは懐から、金の印籠を静かに取り出した。
 双獅子を模した王家の紋章が、陽光に照らされて眩く光る。

「私はユリウス・アルベルト。王家の次男だ。
 この印が、その証明となろう」

 一瞬、時間が止まった。
 次の瞬間、門番たちは一斉に膝をつき、頭を下げた。

「――ユリウス殿下! 本物の……殿下だ!」
「殿下がご帰還なされたぞーっ!!」

 門の上からも見張り兵たちが慌てて敬礼する。
 通行列の人々がざわめき、やがて歓声が広がった。

 ユリウスは小さく手を上げ、穏やかに微笑む。
「顔を上げてくれ。私は民の一人として戻ってきた。
 皆の無事な姿を見られて、嬉しく思う」

 その一言に、兵士たちの顔が緩んだ。
 門が静かに開かれ、王都の光が差し込む。

「ユリウス殿下、ご帰還を心より歓迎いたします!」



馬車置き場 ― 鋼の守護者

 王都に入ると、すぐに騎士団の先導で貴族専用の馬車置き場へ案内された。
 そこには数十台の豪華な馬車が並び、従者や護衛たちが忙しく行き交っている。

 ブレイザー車が静かに停車すると、周囲の兵士たちが息を呑んだ。
「こ、これが……さっき動いてた“鉄の馬車”か……?」
「まるで意志を持ってるみたいだ……」

 擬人化したブレイザーが軽く頷く。
「ブレイザー車、結界展開。安全確保」

《ブレイザー車:防御結界展開――完了。周囲、異常なし》

 淡い光が車体を包み、透き通った結界の膜が揺らめく。
 兵士たちは思わず後ずさりした。

「な、なんだこの光は……?」
「結界……? いや、見たことがねぇ……」

 翔が笑いながら肩をすくめる。
「安心しろ。味方には何の影響もない。魔物避けみたいなもんだ」

「そ、そうでしたか……」
 兵士が頭を下げ、感心したように呟いた。
「……すげぇ……これが異国の魔導工学の技術か……」



ミアの別行動 ― ドローン同行任務

 全員が降りると、ミアが翔と忍に歩み寄った。
「翔さん、忍さん。私はこのまま王都ギルド本部に報告へ向かいます。
 今回の旅の記録と、殿下のご帰還――すぐに正式に伝えなければ」

「そうか。任せる」翔が頷いた。
「でも、王都は広いし人も多い。気をつけてな」

 ブレイザーが一歩前に出る。
「ミア嬢、護衛としてドローンを一機同行させます」

 車体上部から銀色の小型ドローンが静かに浮上し、青いセンサーライトを点灯。
 ふわりとミアの肩のそばに寄り添い、一定距離を保って漂う。

「えっ……これが、ドローン……?」
 ミアが目を丸くする。

「彼は通信兼護衛ユニットです。危険があれば即時対応します。安心して行ってください」

「……ありがとう、ブレイザーさん。頼りにしてます」
 ミアが笑みを見せると、ドローンが短く電子音を鳴らして応えた。

「じゃあ、行ってきます! 皆さんもお気をつけて!」
 ミアは振り返って手を振り、王都の人波の中へと消えていった。



王族馬車へ ― 城への帰還

 やがて、王城から豪奢な馬車が到着した。
 白金の装飾が陽光を反射し、純白の馬が嘶く。

 ユリウスたち王族一行、そして翔と忍らはその馬車に乗り込み、王城へと向かう。
 ブレイザー(擬人化)は最後尾で扉を開き、静かに礼をした。

「皆様、王都アルディナへのご到着――おめでとうございます」

 カトリーナが微笑み、忍が小声で言う。
「これが……旅の終わり、じゃなくて新しい始まりね」

 翔も頷く。
「そうだな。ここからが、本番だ」

 王都の鐘が高らかに鳴り響き、空を渡る鳥たちが舞い上がった。
 金色の城壁の向こう、新たな物語が待っている――。
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