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第10章 ラストダンジョン編
光龍の声
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地底空洞の最深部。
光が凝縮され、世界の鼓動そのものが響いていた。
ブレイザー号は重力を無効化し、ゆっくりと光の根の中心に降下していく。
外の景色は、金色の海。
上下の概念すら消え、ただ“存在”そのものが光に溶けていた。
《注意。魔力濃度、観測上限を超過。空間歪曲が限界域です。》
翔は視界の先を見つめた。
そこに、まるで銀河のように絡み合う巨大な根の集合――“世界樹”があった。
根は地底全体を貫き、一本一本が呼吸をしているように光を放つ。
その中心には、白銀の光をまとった龍の影が、ゆっくりと揺れていた。
「……あれが、光龍……!」
忍の声に応えるように、空気が震える。
『……風の子よ……水の子よ……理の継承者よ……』
声が響いた瞬間、
全身の細胞が震えるような振動が走る。
音ではない。魂に直接届く“声”だった。
亮が頭を垂れる。
「光龍様……理を取り戻すために参りました。」
『見事だ……人の子よ。
再び理を求める者が現れるとは……。
だが――この地の終わりは、すでに始まっている。』
翔が一歩前に出る。
「止められるんですよね。俺たちで。」
『ああ。お前たちの創りし“アルカディア”は、命を繋ぐ新たな器。
だが――器には心臓が要る。
理の流れを回す中心、それこそがこの“世界樹”だ。』
亮が息を呑んだ。
「では、この世界樹を――アルカディアへ?」
『その通り。
この地を離れれば、旧き世界は消える。
だが、その理は新しき地球で再び芽吹く。
それが、再生の循環だ。』
翔が頷き、ブレイザーへ命じる。
「ブレイザー、転送シーケンスを準備。対象、世界樹全体。
アルカディア中央区画、〈理の核層〉へ定着させる。」
《了解。転送対象:世界樹主幹体および根系構造体。
魔力リンク確立――安定化まで120秒。》
艦体の周囲がまばゆい光に包まれる。
根の一本一本が青白く震え、周囲の空間がゆっくりと解けていった。
忍が目を細める。
「……まるで、世界そのものが息をしてるみたい。」
「息だけじゃない。」亮が静かに言う。
「これは鼓動だ。この大地の“心臓”の音だ。」
『人の子らよ……汝らの覚悟、しかと見届けた。』
光龍の声が再び響く。
『風、水、理――三つの流れが揃う時、世界は再び目覚める。』
翔が息を吸い込み、拳を胸に当てた。
「翔――風の半神として、命の流れを繋ぎます。」
忍が続く。
「忍――水の半神として、世界の命を潤します。」
亮が最後に声を重ねる。
「亮――理の半神として、全ての命を“正しい循環”に導きます。」
三人の胸の紋章が一斉に輝いた。
翠、蒼、白金――三つの光が重なり、巨大な魔法陣が展開される。
《三柱の同調確認。転送プログラム起動――世界樹固定化までカウント開始。》
光が広がり、世界樹全体が揺れる。
根が引き抜かれるように浮かび上がり、
地底の空が、光の滝となって上へ流れ出す。
『これでよい……。
お前たちが選んだ未来、それが“新たな地球の理”となる。』
光龍の声が静かに優しく響く。
その姿が溶けるように光へと変わっていった。
『――我は、再び眠ろう。
風が流れ、水が満ち、理が廻る世界に。』
《転送完了。世界樹、アルカディア中枢への定着を確認。
魔力循環率、上昇開始――95%、97%……安定。》
翔が息を詰めたままモニターを見つめた。
そこには、アルカディアの中央塔――“理層の庭”に根を張る巨大な樹が映し出されていた。
その葉は光を放ち、風に合わせて音を奏でる。
「……生きてる……本当に。」
忍の目が潤む。
「これで、世界は繋がった。」亮が微笑む。
「この樹がある限り、二つの世界はもう離れない。」
《補足報告。アルカディア・ネクサス、魔力安定化完了。
全生命体の波動を検出。循環率――100%。》
翔が深く息を吐き、拳を握る。
「終わった……ようで、始まったんだな。」
忍が頷く。
「ここからが、本当の“再生”ね。」
ブレイザー号の外で、地底空洞が光に包まれていく。
ゆっくりと崩壊していく大地――しかしそれは滅びではなく、帰還だった。
光の粒が天へ昇り、アルカディアの空へと還っていく。
《転送最終段階完了。アルカディア、地球座標に到達。》
翔が最後に言葉を放った。
「ありがとう、光龍。あんたの理は、もう一度生まれ変わった。」
空が裂け、白い光が世界を包む。
そして、ブレイザー号は――再び、青い星の空へ還った。
北太平洋沖――。
航路を行く船員たちは、突如として計器の異常を訴えた。
霧が裂け、光の海が広がる。
その中心に、誰も知らぬ大陸が浮上していた。
衛星写真が即座に世界中へ拡散される。
東京、ロサンゼルス、モスクワ――全ての国が同時にその“奇跡”を観測した。
緑に覆われた巨大な陸地。その中央には、天を貫くような一本の樹。
しかし、誰ひとり上陸できなかった。
船も、航空機も、一定距離で見えない壁に阻まれ、
機器は沈黙し、通信は途絶えた。
それは、理の結界。
人が触れてはならぬ“新たなる理の聖域”だった。
光が凝縮され、世界の鼓動そのものが響いていた。
ブレイザー号は重力を無効化し、ゆっくりと光の根の中心に降下していく。
外の景色は、金色の海。
上下の概念すら消え、ただ“存在”そのものが光に溶けていた。
《注意。魔力濃度、観測上限を超過。空間歪曲が限界域です。》
翔は視界の先を見つめた。
そこに、まるで銀河のように絡み合う巨大な根の集合――“世界樹”があった。
根は地底全体を貫き、一本一本が呼吸をしているように光を放つ。
その中心には、白銀の光をまとった龍の影が、ゆっくりと揺れていた。
「……あれが、光龍……!」
忍の声に応えるように、空気が震える。
『……風の子よ……水の子よ……理の継承者よ……』
声が響いた瞬間、
全身の細胞が震えるような振動が走る。
音ではない。魂に直接届く“声”だった。
亮が頭を垂れる。
「光龍様……理を取り戻すために参りました。」
『見事だ……人の子よ。
再び理を求める者が現れるとは……。
だが――この地の終わりは、すでに始まっている。』
翔が一歩前に出る。
「止められるんですよね。俺たちで。」
『ああ。お前たちの創りし“アルカディア”は、命を繋ぐ新たな器。
だが――器には心臓が要る。
理の流れを回す中心、それこそがこの“世界樹”だ。』
亮が息を呑んだ。
「では、この世界樹を――アルカディアへ?」
『その通り。
この地を離れれば、旧き世界は消える。
だが、その理は新しき地球で再び芽吹く。
それが、再生の循環だ。』
翔が頷き、ブレイザーへ命じる。
「ブレイザー、転送シーケンスを準備。対象、世界樹全体。
アルカディア中央区画、〈理の核層〉へ定着させる。」
《了解。転送対象:世界樹主幹体および根系構造体。
魔力リンク確立――安定化まで120秒。》
艦体の周囲がまばゆい光に包まれる。
根の一本一本が青白く震え、周囲の空間がゆっくりと解けていった。
忍が目を細める。
「……まるで、世界そのものが息をしてるみたい。」
「息だけじゃない。」亮が静かに言う。
「これは鼓動だ。この大地の“心臓”の音だ。」
『人の子らよ……汝らの覚悟、しかと見届けた。』
光龍の声が再び響く。
『風、水、理――三つの流れが揃う時、世界は再び目覚める。』
翔が息を吸い込み、拳を胸に当てた。
「翔――風の半神として、命の流れを繋ぎます。」
忍が続く。
「忍――水の半神として、世界の命を潤します。」
亮が最後に声を重ねる。
「亮――理の半神として、全ての命を“正しい循環”に導きます。」
三人の胸の紋章が一斉に輝いた。
翠、蒼、白金――三つの光が重なり、巨大な魔法陣が展開される。
《三柱の同調確認。転送プログラム起動――世界樹固定化までカウント開始。》
光が広がり、世界樹全体が揺れる。
根が引き抜かれるように浮かび上がり、
地底の空が、光の滝となって上へ流れ出す。
『これでよい……。
お前たちが選んだ未来、それが“新たな地球の理”となる。』
光龍の声が静かに優しく響く。
その姿が溶けるように光へと変わっていった。
『――我は、再び眠ろう。
風が流れ、水が満ち、理が廻る世界に。』
《転送完了。世界樹、アルカディア中枢への定着を確認。
魔力循環率、上昇開始――95%、97%……安定。》
翔が息を詰めたままモニターを見つめた。
そこには、アルカディアの中央塔――“理層の庭”に根を張る巨大な樹が映し出されていた。
その葉は光を放ち、風に合わせて音を奏でる。
「……生きてる……本当に。」
忍の目が潤む。
「これで、世界は繋がった。」亮が微笑む。
「この樹がある限り、二つの世界はもう離れない。」
《補足報告。アルカディア・ネクサス、魔力安定化完了。
全生命体の波動を検出。循環率――100%。》
翔が深く息を吐き、拳を握る。
「終わった……ようで、始まったんだな。」
忍が頷く。
「ここからが、本当の“再生”ね。」
ブレイザー号の外で、地底空洞が光に包まれていく。
ゆっくりと崩壊していく大地――しかしそれは滅びではなく、帰還だった。
光の粒が天へ昇り、アルカディアの空へと還っていく。
《転送最終段階完了。アルカディア、地球座標に到達。》
翔が最後に言葉を放った。
「ありがとう、光龍。あんたの理は、もう一度生まれ変わった。」
空が裂け、白い光が世界を包む。
そして、ブレイザー号は――再び、青い星の空へ還った。
北太平洋沖――。
航路を行く船員たちは、突如として計器の異常を訴えた。
霧が裂け、光の海が広がる。
その中心に、誰も知らぬ大陸が浮上していた。
衛星写真が即座に世界中へ拡散される。
東京、ロサンゼルス、モスクワ――全ての国が同時にその“奇跡”を観測した。
緑に覆われた巨大な陸地。その中央には、天を貫くような一本の樹。
しかし、誰ひとり上陸できなかった。
船も、航空機も、一定距離で見えない壁に阻まれ、
機器は沈黙し、通信は途絶えた。
それは、理の結界。
人が触れてはならぬ“新たなる理の聖域”だった。
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