『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊

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第一章:九条カケル、世界の終わりにマイホームを買う。

第6話「王女の婚約宣言と、俺の頭痛」

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「……え?」

 声にならない声が、喉の奥から漏れた。

 美しすぎる王女、リュシア=エル=リセラは、赤い絨毯の先からゆっくりと近づいてくる。
 黄金の髪が揺れ、彼女が一歩進むごとに、騎士たちが無言でひざをつく。

 重厚なドレスの裾を引きずりながら、リュシアは俺の前に立ち止まり、深々とお辞儀をした。

「改めまして、深淵の支配者――†黒翼の夜叉†様。遠路の旅、誠にお疲れ様でした」

 そう言って、俺の手を両手で包み込む。
 柔らかく、冷たい手のひら。繊細な香水の香り。
 そして、彼女の真剣すぎる眼差し。

「この日を、私は……何年も、何百回も夢に見てまいりました」

「ま、待ってくれ……ちょっと待って? あの、俺、まだこの世界来たばっかで……何もしてないし……てか今朝までは普通に、洗濯してたし……」

「ええ。承知しております。貴方様が“現界門”から現れることこそが、預言に記された“再統合の兆し”。この時代の混迷を終わらせる、唯一の導きなのです」

 リュシアは真剣なまなざしで言い切った。

 目の前の美女は、完全に俺を救世主として認識している。

 勘違いのレベルを超えてる。
 というか、これはもう宗教である。



「そして……貴方様と私が結ばれることで、この世界の均衡は保たれるのです」

 そう言って、リュシアは俺の手を胸元へと添え――

「どうか、私と婚約していただけませんか……?」

「……はあああああああああああああああああああああああっ!?!?!?!?」

 あまりの急展開に、脳が揺れる。
 全俺が頭痛を訴えていた。



 騒然とする玉座の間。

 レオンは当然のように膝をついたまま、「ありがたき祝福……」と呟いてるし、他の騎士たちも無言で深々と頭を垂れている。

 だが俺は、ひとり完全にフリーズしていた。

 なぜなら――人生で初めてのプロポーズが、異世界の王女から、出会って3分で飛んできたからだ。

「ちょっとちょっとちょっと、俺まだ覚悟とか全然できてないんだけど!? てか、そもそも俺、恋愛とか超苦手で――」

「ご安心ください。婚礼の儀は急ぎません。まずは形式上の婚約でも結構です。これもまた、“儀式の条件”なのですから」

「待って待って、何その“儀式”? 俺なんか鍵でも開けんの!? ヒロイン即鍵!? それどこのギャルゲー!?」



 その瞬間――

 脳内に、あの声が響いた。

 

  《メインクエストが更新されました》
  《『王女との婚約を受け入れよ』》
  《報酬:王国の正式な保護・ステータス開放・スキル使用許可》
  《※拒否した場合:世界の崩壊進行率+12%》

 

「……まただ」

 脳の奥に直接届くような、“機械的な女の声”。
 画面もボタンもないのに、頭の中に文字が浮かび上がる感覚。

 さっきの“ステータス画面”といい――
 どうやらこの世界には、俺専用の“システムインターフェース”みたいなものが組み込まれてるらしい。

 まるでゲームのような、でも確実に現実の中で機能している何か。
 もしかすると、それが“深淵の支配者”としての力の一部なのかもしれない。

「異世界チートって……こういうことかよ……」

 だが――

 その内容は、どう見ても選択肢の皮をかぶった強制イベントだった。

「“婚約受け入れないと世界崩壊+12%”って何だよ!? バッドエンドフラグ高すぎだろ!!」

 選ばせる気ゼロ。
 これもう、“はい”しか選べないタイプの選択肢じゃん……!



 だが、玉座の間の空気は静まり返ったままだ。
 王女も、騎士も、すべての視線が――俺に集中している。

 逃げ場は、ない。

 

「…………わかったよ。とりあえず“形式上”なら……いいぜ」

 

 そう呟いたその瞬間、再び脳内に響くシステム音。

 

  《メインクエスト:クリア》
  《スキルロック解除》
  《称号:“契約せし者”を獲得しました》
  《魔導適性:全属性SSS判定》
  《新スキル:エターナルブレード/シャドウリンク/虚無の眼 解放》

 

 俺の中で、何かが開いた感覚がした。

 力が流れ込む――この世界の“ルール”に、俺自身が同期していくような感覚。

 

「……なんだよこれ、マジでRPGかよ……」

 

 そして目の前では、王女リュシアが微笑んでいた。

 

「これで、あなたは正式に……“この世界の運命”となりました」

 

 ――こうして、俺の異世界ハードモード婚約生活が始まった。
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