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第4話:ドジっ子王子の発見
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霧島怜くんを本格的に観察し始めてから、数日が経った。
私の「観察日記」のページは、彼の小さな癖や、ふとした瞬間の表情で、着実に埋まっていく。
『休み時間、女子に話しかけられると、返事はクールだが、教科書をめくる指の動きが速くなる』
『昼休み、購買のパンを選ぶ時、実は結構悩んでる』
どれも、他の誰も気づかない、彼が完璧な仮面の下に隠している、ささやかな人間らしさの証拠だった。
しかし、私のスクープ魂を決定的に揺さぶる出来事は、週明けの月曜、五限目の現代社会の授業で起こった。
その日の授業は、少し難しい時事問題がテーマだった。教師がクラスを見渡し、誰を当てるか探している。生徒たちが、どうか当たりませんように、と机の下で祈る中、女子生徒たちの期待を一身に受けながら、教師は迷いなく言った。
「じゃあ、この問題について、霧島、君の意見を聞こうか」
まただ。教師ですら、彼の完璧さに期待している。
怜くんは、静かに立ち上がると、よどみない口調で、自分の考えを述べ始めた。それは、ただ教科書をなぞっただけの意見じゃない。高校生とは思えないほど、多角的な視点と、しっかりとした知識に裏打ちされた、論理的な意見だった。
教室中が、彼の言葉に聞き入っている。私も、思わず感心してしまった。
(頭もいいんだ……。本当に、欠点とかないのかな)
そう思った、直後だった。
「……以上です」
見事な意見を述べ終え、教師からも「素晴らしいな、霧島」と称賛の言葉をかけられる。クラス中から、尊敬と憧れの視線が彼に降り注ぐ。
怜くんは、そんな視線から逃れるように、少しだけ早足で自分の席へと戻ろうとした。
そして、椅子に腰を下ろした、その瞬間。
カタン、コロコロ……。
彼の指から滑り落ちた一本のシャープペンシルが、小さな音を立てて床を転がった。
教室の誰もが気づかないほどの、ささやかな出来事。
でも、私の目は、その一部始終を捉えていた。
「……っ」
怜くんが、誰にも聞こえないくらい小さな声で、舌打ちをしたのがわかった。そして、完璧なポーカーフェイスを必死で保ちながら、机の下に屈み、慌ててペンを拾い上げる。その一連の動きは、普段のスマートな彼からは想像もつかないほど、ぎこちなかった。
(……落とした!)
私は、声に出さずに叫んだ。
(あの完璧な霧島怜が、みんなの前でドジをした!)
他の生徒たちは、彼の素晴らしい意見に感心しているだけで、誰も彼の小さな失敗に気づいていない。気づいているのは、彼をずっと、ずっと観察していた、私だけ。
(原因は、過度の緊張と、注目を浴びたことによる極度の照れ……に違いない!)
私は、可笑しさと、それ以上にこみ上げてくる、きゅん、とした愛おしさで、胸がいっぱいになった。
完璧な王子様が、実は、こんなにも分かりやすく動揺して、ドジを踏んでしまうなんて。
私は、机の下で、急いで「観察日記」を開いた。
『観察記録④:注目を浴びて完璧な回答をした直後、安堵と緊張で、高確率で小物を落とす。最高に、可愛い』
最後の「可愛い」という一文字は、無意識に書いてしまっていた。
自分の席に戻った怜くんの後ろ姿を、私はじっと見つめる。
すると、彼が、私の視線に気づいたかのように、ちらりとこちらを振り返り、すぐに、気まずそうに前を向いた。
そのわずかに赤く染まった耳を見て、私は確信する。
霧島怜くん、あなた、知れば知るほど、面白くて、最高の人だ。
このスクープ、絶対に、途中でやめたりなんてしない。
私の「観察日記」のページは、彼の小さな癖や、ふとした瞬間の表情で、着実に埋まっていく。
『休み時間、女子に話しかけられると、返事はクールだが、教科書をめくる指の動きが速くなる』
『昼休み、購買のパンを選ぶ時、実は結構悩んでる』
どれも、他の誰も気づかない、彼が完璧な仮面の下に隠している、ささやかな人間らしさの証拠だった。
しかし、私のスクープ魂を決定的に揺さぶる出来事は、週明けの月曜、五限目の現代社会の授業で起こった。
その日の授業は、少し難しい時事問題がテーマだった。教師がクラスを見渡し、誰を当てるか探している。生徒たちが、どうか当たりませんように、と机の下で祈る中、女子生徒たちの期待を一身に受けながら、教師は迷いなく言った。
「じゃあ、この問題について、霧島、君の意見を聞こうか」
まただ。教師ですら、彼の完璧さに期待している。
怜くんは、静かに立ち上がると、よどみない口調で、自分の考えを述べ始めた。それは、ただ教科書をなぞっただけの意見じゃない。高校生とは思えないほど、多角的な視点と、しっかりとした知識に裏打ちされた、論理的な意見だった。
教室中が、彼の言葉に聞き入っている。私も、思わず感心してしまった。
(頭もいいんだ……。本当に、欠点とかないのかな)
そう思った、直後だった。
「……以上です」
見事な意見を述べ終え、教師からも「素晴らしいな、霧島」と称賛の言葉をかけられる。クラス中から、尊敬と憧れの視線が彼に降り注ぐ。
怜くんは、そんな視線から逃れるように、少しだけ早足で自分の席へと戻ろうとした。
そして、椅子に腰を下ろした、その瞬間。
カタン、コロコロ……。
彼の指から滑り落ちた一本のシャープペンシルが、小さな音を立てて床を転がった。
教室の誰もが気づかないほどの、ささやかな出来事。
でも、私の目は、その一部始終を捉えていた。
「……っ」
怜くんが、誰にも聞こえないくらい小さな声で、舌打ちをしたのがわかった。そして、完璧なポーカーフェイスを必死で保ちながら、机の下に屈み、慌ててペンを拾い上げる。その一連の動きは、普段のスマートな彼からは想像もつかないほど、ぎこちなかった。
(……落とした!)
私は、声に出さずに叫んだ。
(あの完璧な霧島怜が、みんなの前でドジをした!)
他の生徒たちは、彼の素晴らしい意見に感心しているだけで、誰も彼の小さな失敗に気づいていない。気づいているのは、彼をずっと、ずっと観察していた、私だけ。
(原因は、過度の緊張と、注目を浴びたことによる極度の照れ……に違いない!)
私は、可笑しさと、それ以上にこみ上げてくる、きゅん、とした愛おしさで、胸がいっぱいになった。
完璧な王子様が、実は、こんなにも分かりやすく動揺して、ドジを踏んでしまうなんて。
私は、机の下で、急いで「観察日記」を開いた。
『観察記録④:注目を浴びて完璧な回答をした直後、安堵と緊張で、高確率で小物を落とす。最高に、可愛い』
最後の「可愛い」という一文字は、無意識に書いてしまっていた。
自分の席に戻った怜くんの後ろ姿を、私はじっと見つめる。
すると、彼が、私の視線に気づいたかのように、ちらりとこちらを振り返り、すぐに、気まずそうに前を向いた。
そのわずかに赤く染まった耳を見て、私は確信する。
霧島怜くん、あなた、知れば知るほど、面白くて、最高の人だ。
このスクープ、絶対に、途中でやめたりなんてしない。
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