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第13話:四人の週末
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あの雨の日の相合い傘から一週間。
中間テストも終わり、教室には解放感と、ほんのり浮かれた空気が漂っていた。私と怜くんの間には、言葉にしなくても分かる、甘くて、少しだけぎこちない空気が流れている。
目が合っては、慌てて逸らす。その繰り返し。でも、もう以前のような緊張感はなく、むしろ、その気まずさすら楽しんでいる自分がいた。
「ねえねえ、テストお疲れ様会しよーよ!」
そんな空気を破ったのは、いつだって太陽みたいに明るい、親友の美咲の声だった。
「今週末、みんなで映画とかどう? 悠斗も行くでしょ!」
「お、いいね! 行く行く!」
前の席の悠斗が、待ってましたとばかりに振り返る。そして、二人の視線は、当然のように、教室の隅にいる王子様へと向けられた。
「怜、お前も来るよな?」
教室の注目が、一斉に怜くんに集まる。
以前の彼なら、「興味ない」と、一言で切り捨てていたはずだ。
でも、彼は、ほんの少しだけ迷うように視線を彷徨わせた後、ちらりと、私の方を見た。その瞳に、「お前はどうするんだ」という問いかけの色が浮かんでいる。
私は、彼に向かって、小さく、こくりと頷いてみせた。
彼は、それを見届けると、観念したように、大きなため息をついた。
「……わかった」
その、たった四文字の返事に、悠斗と美咲が「よっしゃー!」とハイタッチを交わす。
彼は、私のために、みんなと過ごす時間を選んでくれた。その事実が、私の心を、温かいもので満たしていく。
そして週末。
賑やかな映画館のロビーで、私と怜くんは、悠斗と美咲の、ポップコーンの味を巡るコントみたいな口喧嘩を、少し離れた場所から眺めていた。
「だから、キャラメル一択だって!」
「はぁ? 映画といえば塩バターでしょ!」
そんな二人を見ていると、怜くんの口元が、ほんの少しだけ、緩んでいるのがわかった。
映画館の暗闇の中、私の席の隣には、怜くんが座っていた。
大きなスクリーンで繰り広げられる派手なアクションシーンよりも、すぐ隣にある彼の存在の方が、よっぽど私の心臓をドキドキさせる。
ドリンクホルダーに置かれたジュースを取ろうとして、彼の手と私の手が、偶然、触れ合った。
「……っ」
二人して、ビクッと体を揺らす。暗闇でよかったと、心から思った。こんな真っ赤な顔、絶対に見せられない。
映画が終わり、近くのファミレスで遅いお昼を食べる。
悠斗と美咲は、相変わらず賑やかだ。そんな二人を見ながら、怜くんが、ふっと、静かに笑った。それは、いつものような照れ笑いじゃない。友達と過ごす時間を、心から楽しんでいるような、自然な笑顔だった。
私は、彼のそんな表情を見られたことが、嬉しくて、少しだけ、泣きそうになった。
彼が、少しずつ、変わってきている。
氷の王子様は、完璧な仮面を脱ぎ捨てて、みんなの中で笑う、一人の男の子の顔を取り戻しつつある。そのきっかけが、ほんの少しでも、私であったなら、いいな、なんて。
日が暮れ、駅に向かう道で、悠斗と美咲が「じゃあ、俺らこっちだから!」と、賑やかに手を振って去っていった。
二人きりになった帰り道。
秋の夜風が、少しだけ肌寒い。
「……悪くなかったな」
沈黙を破ったのは、怜くんだった。
「うん、すっごく楽しかった!」
私が心からの気持ちを伝えると、彼は、真っ直ぐに私を見つめて言った。
「……ああ。陽菜がいたから、楽しかった」
それは、彼の、今までで一番、素直で、真っ直ぐな言葉だった。
私の心臓が、大きく、大きく、跳ね上がる。
何かを言い返す前に、彼は「じゃあ、また月曜」とだけ言って、足早に去っていってしまった。その耳が、街灯の光に照らされて、真っ赤に染まっているのが見えた。
一人、駅のホームに取り残された私は、まだじんじんと熱い自分の頬を、両手でそっと押さえた。
私の、秘密の観察から始まった物語は、いつの間にか、二人で紡ぐ、甘くて、温かい恋の物語へと、その姿を変えていたのだ。
中間テストも終わり、教室には解放感と、ほんのり浮かれた空気が漂っていた。私と怜くんの間には、言葉にしなくても分かる、甘くて、少しだけぎこちない空気が流れている。
目が合っては、慌てて逸らす。その繰り返し。でも、もう以前のような緊張感はなく、むしろ、その気まずさすら楽しんでいる自分がいた。
「ねえねえ、テストお疲れ様会しよーよ!」
そんな空気を破ったのは、いつだって太陽みたいに明るい、親友の美咲の声だった。
「今週末、みんなで映画とかどう? 悠斗も行くでしょ!」
「お、いいね! 行く行く!」
前の席の悠斗が、待ってましたとばかりに振り返る。そして、二人の視線は、当然のように、教室の隅にいる王子様へと向けられた。
「怜、お前も来るよな?」
教室の注目が、一斉に怜くんに集まる。
以前の彼なら、「興味ない」と、一言で切り捨てていたはずだ。
でも、彼は、ほんの少しだけ迷うように視線を彷徨わせた後、ちらりと、私の方を見た。その瞳に、「お前はどうするんだ」という問いかけの色が浮かんでいる。
私は、彼に向かって、小さく、こくりと頷いてみせた。
彼は、それを見届けると、観念したように、大きなため息をついた。
「……わかった」
その、たった四文字の返事に、悠斗と美咲が「よっしゃー!」とハイタッチを交わす。
彼は、私のために、みんなと過ごす時間を選んでくれた。その事実が、私の心を、温かいもので満たしていく。
そして週末。
賑やかな映画館のロビーで、私と怜くんは、悠斗と美咲の、ポップコーンの味を巡るコントみたいな口喧嘩を、少し離れた場所から眺めていた。
「だから、キャラメル一択だって!」
「はぁ? 映画といえば塩バターでしょ!」
そんな二人を見ていると、怜くんの口元が、ほんの少しだけ、緩んでいるのがわかった。
映画館の暗闇の中、私の席の隣には、怜くんが座っていた。
大きなスクリーンで繰り広げられる派手なアクションシーンよりも、すぐ隣にある彼の存在の方が、よっぽど私の心臓をドキドキさせる。
ドリンクホルダーに置かれたジュースを取ろうとして、彼の手と私の手が、偶然、触れ合った。
「……っ」
二人して、ビクッと体を揺らす。暗闇でよかったと、心から思った。こんな真っ赤な顔、絶対に見せられない。
映画が終わり、近くのファミレスで遅いお昼を食べる。
悠斗と美咲は、相変わらず賑やかだ。そんな二人を見ながら、怜くんが、ふっと、静かに笑った。それは、いつものような照れ笑いじゃない。友達と過ごす時間を、心から楽しんでいるような、自然な笑顔だった。
私は、彼のそんな表情を見られたことが、嬉しくて、少しだけ、泣きそうになった。
彼が、少しずつ、変わってきている。
氷の王子様は、完璧な仮面を脱ぎ捨てて、みんなの中で笑う、一人の男の子の顔を取り戻しつつある。そのきっかけが、ほんの少しでも、私であったなら、いいな、なんて。
日が暮れ、駅に向かう道で、悠斗と美咲が「じゃあ、俺らこっちだから!」と、賑やかに手を振って去っていった。
二人きりになった帰り道。
秋の夜風が、少しだけ肌寒い。
「……悪くなかったな」
沈黙を破ったのは、怜くんだった。
「うん、すっごく楽しかった!」
私が心からの気持ちを伝えると、彼は、真っ直ぐに私を見つめて言った。
「……ああ。陽菜がいたから、楽しかった」
それは、彼の、今までで一番、素直で、真っ直ぐな言葉だった。
私の心臓が、大きく、大きく、跳ね上がる。
何かを言い返す前に、彼は「じゃあ、また月曜」とだけ言って、足早に去っていってしまった。その耳が、街灯の光に照らされて、真っ赤に染まっているのが見えた。
一人、駅のホームに取り残された私は、まだじんじんと熱い自分の頬を、両手でそっと押さえた。
私の、秘密の観察から始まった物語は、いつの間にか、二人で紡ぐ、甘くて、温かい恋の物語へと、その姿を変えていたのだ。
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