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第18話:私たちの、はじまりの日
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「――好きだ」
屋上で交わした、あの告白と、涙の後の笑顔。
昨日の出来事が、まるで夢のワンシーンのように、何度も何度も頭の中で再生される。
翌朝、目を覚ました私の枕元で、スマホが小さく震えた。画面に表示されていたのは、たった一言。
『おはよう』
怜くんからの、初めてのメッセージだった。その、あまりにも不器用で、素っ気ない挨拶が、今の私には、どんな甘い言葉よりも、心を揺さぶった。
学校の昇降口で、彼とばったり顔を合わせる。
「お、おはよう、怜くん」
「……ああ。おはよう、陽菜」
お互いに、どういう顔をして、どういう距離感で歩けばいいのか分からない。昨日までとは、何もかもが違って見える。その甘くて、むず痒い空気が、なんだか可笑しくて、私は俯きながら、一人で笑ってしまった。
教室に入ると、私たちのそのぎこちない雰囲気を、親友たちは見逃してくれなかった。
「ひな! あんた、昨日、あの後、何かあったでしょ! 顔、真っ赤だよ!」
美咲が、私の耳元で楽しそうに囁く。
「よぉ、怜。お前、なんか今日、ガチガチじゃねーか。らしくないぞ」
悠斗が、怜くんの背中をバンバンと叩いている。
私と怜くんは、顔を見合わせ、そして、同時に、ぷいっと顔を背けてしまった。そのシンクロした動きに、美咲と悠斗が、ニヤリと笑う気配がした。
授業中も、私は、彼のことが気になって、仕方がなかった。
ノートを取る、彼の長い指。教科書を読む、真剣な横顔。その全てが、昨日までよりも、ずっとずっと、キラキラして見える。
休み時間に、私がうっかりペンを床に落としてしまう。私が屈んで拾おうとすると、すぐ隣から、彼の手がすっと伸びてきて、先にそれを拾い上げてくれた。
「……ほら」
「あ、ありがとう……」
手渡されたペンを受け取る時、ほんの一瞬だけ、彼の指先が、私の指に触れた。
びりり、と、微かな電気が走る。二人して、慌てて手を引っ込めた。
昼休み、私たちは、約束したわけでもないのに、自然と、あの屋上へと向かっていた。
告白の場所。そして、今日からは、私たちだけの、特別な場所。
お弁当を広げても、しばらくは、どちらも何も話せなかった。昨日までの、賑やかなおしゃべりが嘘みたいだ。
沈黙に耐えかねて、私が口を開いた。
「そ、それで……。私たちって、その……付き合ってる、ってことで、いいんだよね?」
「……当たり前だろ」
怜くんは、少し呆れたように、でも、どこか嬉しそうに、そう言った。
その言葉に、私は、心の底から安堵する。
「そっか。……じゃあ、私の『観察日記』は、今日で終わり、かな?」
私が、いたずらっぽくそう尋ねると、彼は、初めて、心からの優しい笑顔を見せた。
そして、おずおずと、私の髪に、そっと触れた。
「もう、『観察』なんてしなくていい」
彼の、真剣な、低い声。
「ただ、……俺の隣に、いてほしい」
それは、彼の、新しいお願いだった。
秘密の協定は、もう終わり。これからは、対等な、恋人として。
私は、涙が出そうになるのを必死で堪え、満面の笑みで頷いた。
「うん……!」
彼は、少しだけ満足そうに頷くと、また、視線を逸らして、自分のサンドイッチを一口かじった。
そして、ぽつりと、呟く。
「……手、繋いでも、いいか?」
その、あまりにも可愛すぎるお伺いに、私は、思わず噴き出してしまった。
「ふふっ、もちろん!」
私がそう言って、そっと手を差し出すと、彼は、少しだけ躊躇った後、その大きな手で、私の手を、優しく、でも、力強く握ってくれた。
屋上の、澄み切った秋空の下。
私たちは、初めて、恋人として、手を繋いだ。
私の、秘密の観察から始まった物語は、こうして、本当に甘くて、温かい、恋の物語の、最初の1ページを、ようやく、めくったのだ。
屋上で交わした、あの告白と、涙の後の笑顔。
昨日の出来事が、まるで夢のワンシーンのように、何度も何度も頭の中で再生される。
翌朝、目を覚ました私の枕元で、スマホが小さく震えた。画面に表示されていたのは、たった一言。
『おはよう』
怜くんからの、初めてのメッセージだった。その、あまりにも不器用で、素っ気ない挨拶が、今の私には、どんな甘い言葉よりも、心を揺さぶった。
学校の昇降口で、彼とばったり顔を合わせる。
「お、おはよう、怜くん」
「……ああ。おはよう、陽菜」
お互いに、どういう顔をして、どういう距離感で歩けばいいのか分からない。昨日までとは、何もかもが違って見える。その甘くて、むず痒い空気が、なんだか可笑しくて、私は俯きながら、一人で笑ってしまった。
教室に入ると、私たちのそのぎこちない雰囲気を、親友たちは見逃してくれなかった。
「ひな! あんた、昨日、あの後、何かあったでしょ! 顔、真っ赤だよ!」
美咲が、私の耳元で楽しそうに囁く。
「よぉ、怜。お前、なんか今日、ガチガチじゃねーか。らしくないぞ」
悠斗が、怜くんの背中をバンバンと叩いている。
私と怜くんは、顔を見合わせ、そして、同時に、ぷいっと顔を背けてしまった。そのシンクロした動きに、美咲と悠斗が、ニヤリと笑う気配がした。
授業中も、私は、彼のことが気になって、仕方がなかった。
ノートを取る、彼の長い指。教科書を読む、真剣な横顔。その全てが、昨日までよりも、ずっとずっと、キラキラして見える。
休み時間に、私がうっかりペンを床に落としてしまう。私が屈んで拾おうとすると、すぐ隣から、彼の手がすっと伸びてきて、先にそれを拾い上げてくれた。
「……ほら」
「あ、ありがとう……」
手渡されたペンを受け取る時、ほんの一瞬だけ、彼の指先が、私の指に触れた。
びりり、と、微かな電気が走る。二人して、慌てて手を引っ込めた。
昼休み、私たちは、約束したわけでもないのに、自然と、あの屋上へと向かっていた。
告白の場所。そして、今日からは、私たちだけの、特別な場所。
お弁当を広げても、しばらくは、どちらも何も話せなかった。昨日までの、賑やかなおしゃべりが嘘みたいだ。
沈黙に耐えかねて、私が口を開いた。
「そ、それで……。私たちって、その……付き合ってる、ってことで、いいんだよね?」
「……当たり前だろ」
怜くんは、少し呆れたように、でも、どこか嬉しそうに、そう言った。
その言葉に、私は、心の底から安堵する。
「そっか。……じゃあ、私の『観察日記』は、今日で終わり、かな?」
私が、いたずらっぽくそう尋ねると、彼は、初めて、心からの優しい笑顔を見せた。
そして、おずおずと、私の髪に、そっと触れた。
「もう、『観察』なんてしなくていい」
彼の、真剣な、低い声。
「ただ、……俺の隣に、いてほしい」
それは、彼の、新しいお願いだった。
秘密の協定は、もう終わり。これからは、対等な、恋人として。
私は、涙が出そうになるのを必死で堪え、満面の笑みで頷いた。
「うん……!」
彼は、少しだけ満足そうに頷くと、また、視線を逸らして、自分のサンドイッチを一口かじった。
そして、ぽつりと、呟く。
「……手、繋いでも、いいか?」
その、あまりにも可愛すぎるお伺いに、私は、思わず噴き出してしまった。
「ふふっ、もちろん!」
私がそう言って、そっと手を差し出すと、彼は、少しだけ躊躇った後、その大きな手で、私の手を、優しく、でも、力強く握ってくれた。
屋上の、澄み切った秋空の下。
私たちは、初めて、恋人として、手を繋いだ。
私の、秘密の観察から始まった物語は、こうして、本当に甘くて、温かい、恋の物語の、最初の1ページを、ようやく、めくったのだ。
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