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第23話:初めてのデートと、彼の言葉
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初めての、恋人としての、日曜日。
私は、クローゼットの前で、かれこれ一時間近くも仁王立ちしていた。
(何を着ていけばいいの!?)
ただ映画に行くだけ。そう頭では分かっているのに、心臓は、まるで体育祭のリレー前みたいに、ドキドキと鳴りやまなかった。
結局、一番お気に入りの、白いニットと揺れるフレアスカートという、無難な格好に落ち着いた。
待ち合わせ場所の駅前広場に着くと、彼は、もう先に来ていた。
黒のパーカーに、すっきりとしたシルエットのジーンズ。ラフな格好なのに、彼のスタイルの良さが際立って、道行く人が、何度も振り返っている。
私の王子様は、どこにいても、やっぱり王子様だった。
「ご、ごめん! 待った?」
「……いや、今来たとこ」
彼は、私を一瞥すると、少しだけ、本当に少しだけ、目を見開いた。
「……その服。似合ってる」
「!」
たった一言。それだけで、私の心は、空高く舞い上がってしまいそうだった。
映画館の暗闇の中、私たちは、少しだけ緊張しながら、隣同士の席に座った。
大きなスクリーンで繰り広げられる物語よりも、すぐ隣にある彼の存在の方が、よっぽど私の心を占領する。ポップコーンを取ろうとして、指先が触れ合うたび、甘い痺れが、全身を駆け巡った。
映画が終わり、私たちは、近くのカフェでお茶をすることにした。
「面白かったね!」
「……ああ。悪くなかった」
そんな、他愛もない会話をしながら、賑やかな駅前の通りを歩く。その、穏やかで幸せな時間を、打ち破る声が聞こえたのは、その時だった。
「あー! 怜せんぱいと、陽菜せんぱい!」
振り返ると、そこには、友達らしき二人を連れた、松本彩花さんが立っていた。
「すごい偶然! もしかして、お二人、デートですかぁ?」
その、蜂蜜みたいに甘ったるい声が、なぜか私の神経を逆なでする。
「……ああ」
怜くんの、短く、肯定する返事。その一言に、彼の「邪魔をするな」という意志が、はっきりと込められていた。
でも、彩花さんは、全く気にする様子もなく、さらに距離を詰めてくる。
「いいなー! ね、よかったら、この後、私たちも一緒にお茶してもいいですか? 大勢の方が、楽しいじゃないですか!」
彼女は、悪気のない笑顔で、そう、私たちの特別な時間に、土足で踏み込んできた。
私が、どう断ろうかと言葉を探すより先に、怜くんが、すっと、私の前に立った。
まるで、私を彼女から守る、盾になるみたいに。
そして、彼は、今まで聞いたことのないくらい、冷たく、きっぱりとした声で、言ったのだ。
「断る。これは、俺と陽菜の、二人だけのデートだ。邪魔をするな」
その場が、しん、と静まり返る。
彼の、あまりにも真っ直гуで、揺るぎない拒絶の言葉。
彩花さんの完璧な笑顔が、ほんの一瞬だけ、ひきつったのを、私は見逃さなかった。
「……そっかー! ごめんなさーい、お邪魔しちゃって!」
彼女は、すぐにいつもの笑顔を取り戻すと、そそくさと友達の元へと戻り、足早に去っていった。
嵐が去った後、怜くんが、私の方へと振り返る。
その表情は、もういつもの、少しだけ不器用な彼に戻っていた。
「……悪かったな。あんなのが来て」
「ううん……」
私は、胸がいっぱいで、言葉が出てこない。
私のために、怒ってくれた。私たちの時間を、守ってくれた。その事実が、たまらなく嬉しかった。
「行こうか」
そう言うと、彼は、おずおずと、でも、確かに、私の手を握った。
人通りの多い、駅前の真ん中で。もう、何も、隠すものなんてないというように。
私たちは、手を繋いだまま、カフェへと向かって歩き出す。
繋がれた手から伝わる、彼の温かさ。私を見つめる、優しい眼差し。
(これが、本当に愛されるっていうことなんだ)
初めてのデートは、少しだけ波乱含みだったけれど、そのおかげで、私たちの絆は、また一つ、強く、確かなものになったのだ。
私は、クローゼットの前で、かれこれ一時間近くも仁王立ちしていた。
(何を着ていけばいいの!?)
ただ映画に行くだけ。そう頭では分かっているのに、心臓は、まるで体育祭のリレー前みたいに、ドキドキと鳴りやまなかった。
結局、一番お気に入りの、白いニットと揺れるフレアスカートという、無難な格好に落ち着いた。
待ち合わせ場所の駅前広場に着くと、彼は、もう先に来ていた。
黒のパーカーに、すっきりとしたシルエットのジーンズ。ラフな格好なのに、彼のスタイルの良さが際立って、道行く人が、何度も振り返っている。
私の王子様は、どこにいても、やっぱり王子様だった。
「ご、ごめん! 待った?」
「……いや、今来たとこ」
彼は、私を一瞥すると、少しだけ、本当に少しだけ、目を見開いた。
「……その服。似合ってる」
「!」
たった一言。それだけで、私の心は、空高く舞い上がってしまいそうだった。
映画館の暗闇の中、私たちは、少しだけ緊張しながら、隣同士の席に座った。
大きなスクリーンで繰り広げられる物語よりも、すぐ隣にある彼の存在の方が、よっぽど私の心を占領する。ポップコーンを取ろうとして、指先が触れ合うたび、甘い痺れが、全身を駆け巡った。
映画が終わり、私たちは、近くのカフェでお茶をすることにした。
「面白かったね!」
「……ああ。悪くなかった」
そんな、他愛もない会話をしながら、賑やかな駅前の通りを歩く。その、穏やかで幸せな時間を、打ち破る声が聞こえたのは、その時だった。
「あー! 怜せんぱいと、陽菜せんぱい!」
振り返ると、そこには、友達らしき二人を連れた、松本彩花さんが立っていた。
「すごい偶然! もしかして、お二人、デートですかぁ?」
その、蜂蜜みたいに甘ったるい声が、なぜか私の神経を逆なでする。
「……ああ」
怜くんの、短く、肯定する返事。その一言に、彼の「邪魔をするな」という意志が、はっきりと込められていた。
でも、彩花さんは、全く気にする様子もなく、さらに距離を詰めてくる。
「いいなー! ね、よかったら、この後、私たちも一緒にお茶してもいいですか? 大勢の方が、楽しいじゃないですか!」
彼女は、悪気のない笑顔で、そう、私たちの特別な時間に、土足で踏み込んできた。
私が、どう断ろうかと言葉を探すより先に、怜くんが、すっと、私の前に立った。
まるで、私を彼女から守る、盾になるみたいに。
そして、彼は、今まで聞いたことのないくらい、冷たく、きっぱりとした声で、言ったのだ。
「断る。これは、俺と陽菜の、二人だけのデートだ。邪魔をするな」
その場が、しん、と静まり返る。
彼の、あまりにも真っ直гуで、揺るぎない拒絶の言葉。
彩花さんの完璧な笑顔が、ほんの一瞬だけ、ひきつったのを、私は見逃さなかった。
「……そっかー! ごめんなさーい、お邪魔しちゃって!」
彼女は、すぐにいつもの笑顔を取り戻すと、そそくさと友達の元へと戻り、足早に去っていった。
嵐が去った後、怜くんが、私の方へと振り返る。
その表情は、もういつもの、少しだけ不器用な彼に戻っていた。
「……悪かったな。あんなのが来て」
「ううん……」
私は、胸がいっぱいで、言葉が出てこない。
私のために、怒ってくれた。私たちの時間を、守ってくれた。その事実が、たまらなく嬉しかった。
「行こうか」
そう言うと、彼は、おずおずと、でも、確かに、私の手を握った。
人通りの多い、駅前の真ん中で。もう、何も、隠すものなんてないというように。
私たちは、手を繋いだまま、カフェへと向かって歩き出す。
繋がれた手から伝わる、彼の温かさ。私を見つめる、優しい眼差し。
(これが、本当に愛されるっていうことなんだ)
初めてのデートは、少しだけ波乱含みだったけれど、そのおかげで、私たちの絆は、また一つ、強く、確かなものになったのだ。
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