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第24話:彼の隣、という指定席
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初めてのデートの翌日。
月曜日の朝、私が教室のドアを開けると、クラス中の視線が一斉に私に突き刺さった。それは、好奇と、驚きと、そして、ほんの少しの羨望が入り混じった、今まで経験したことのない種類の視線だった。
「ひなー! 聞いたよー!」
席に着くや否や、美咲が満面の笑みで駆け寄ってきた。
「『俺と陽菜の、二人だけのデートだ。邪魔をするな』ですって!? きゃー! 少女漫画のヒーローじゃん、怜くん!」
どうやら、怜くんのあの爆弾発言は、週末の間に、あっという間に学年中に広まってしまったらしい。
廊下を歩けば、「あの子が、霧島くんの……」というひそひそ声が聞こえてくる。
以前のような、私を値踏みするような視線は、もうない。むしろ、彼の心を射止めた猛者として、どこか尊敬の念すら含まれているような気がした。
当の彩花さんはというと、私と目が合っても、ぷいっと顔を背けるだけ。週末の出来事で、すっかり彼女の勢いは削がれてしまったようだった。
「よぉ、怜。お前、昨日、王子様ムーヴかましたらしいじゃねーか」
悠斗が、ニヤニヤしながら怜くんの肩を叩いている。
「……うるさい」
怜くんは、相変わらずのポーカーフェイスでそう返すが、その耳は、ほんのりと赤く染まっていた。
昼休み、いつもの屋上。
「……ごめんね、怜くん。なんだか、学校中に噂が広まっちゃって」
私がそう言うと、彼は、サンドイッチを頬張りながら、何でもないように言った。
「……別に。本当のことだろ」
その、あまりにも男前な返事に、私の心臓が、きゅん、と音を立てる。
「……でも、ありがとう。昨日、すごく、嬉しかった」
私が、真っ直ぐにそう伝えると、彼は、照れくさそうに、少しだけ視線を逸らした。
その沈黙を破るように、彼は、話題を変えた。
「……お前の、次の記事。テーマは決まったのか」
「え? うん! 今度は、写真部のコンクールについて、特集を組もうと思ってるんだ!」
私が、目を輝かせながら企画の内容を語り始めると、彼は、黙って、でも、とても優しい顔で、私の話に耳を傾けてくれた。
私の、新聞部としての活動も、夢も、彼は、ちゃんと応援してくれている。それが、たまらなく嬉しかった。
彼が、私を見つめている。
その瞳には、もう、秘密を探られることへの警戒心はない。ただ、穏やかで、深い愛情の色だけが、揺れていた。
私は、この人の隣が、私の指定席なんだ、と、心の底から実感していた。
放課後、部室に向かう途中、私は、体育館の裏で話している美咲と悠斗の姿を見つけた。
「だから、お前は無駄に声がでかいんだって!」
「はぁ? 悠斗こそ、もっとちゃんと人の話、聞きなさいよ!」
いつものように、賑やかにじゃれ合っている。でも、その距離感は、以前より、ずっと近い気がした。
悠斗が、呆れたように笑いながら、美咲の頭を、ぽん、と優しく撫でた。その瞬間、美咲の顔が、ぼふっと真っ赤に染まる。
(……私の知らないところで、親友の恋も、進んでいたみたい)
その微笑ましい光景に、私は、そっと、その場を離れた。
バスケ部の練習が終わった怜くんと、二人で並んで帰る、夕暮れの道。
それが、私たちの、一番好きな時間だった。
「……なあ、陽菜」
彼が、不意に、私の名前を呼んだ。
「ん?」
「今度の週末……。うちの、親父が、お前に会いたいって言ってる」
「え……?」
お、お父さん……!?
予想の斜め上を行く、あまりにも衝撃的な申し出に、私の思考は、完全に停止してしまった。
私たちの恋の物語は、どうやら、また新しい、とんでもないステージへと、進もうとしているらしい。
月曜日の朝、私が教室のドアを開けると、クラス中の視線が一斉に私に突き刺さった。それは、好奇と、驚きと、そして、ほんの少しの羨望が入り混じった、今まで経験したことのない種類の視線だった。
「ひなー! 聞いたよー!」
席に着くや否や、美咲が満面の笑みで駆け寄ってきた。
「『俺と陽菜の、二人だけのデートだ。邪魔をするな』ですって!? きゃー! 少女漫画のヒーローじゃん、怜くん!」
どうやら、怜くんのあの爆弾発言は、週末の間に、あっという間に学年中に広まってしまったらしい。
廊下を歩けば、「あの子が、霧島くんの……」というひそひそ声が聞こえてくる。
以前のような、私を値踏みするような視線は、もうない。むしろ、彼の心を射止めた猛者として、どこか尊敬の念すら含まれているような気がした。
当の彩花さんはというと、私と目が合っても、ぷいっと顔を背けるだけ。週末の出来事で、すっかり彼女の勢いは削がれてしまったようだった。
「よぉ、怜。お前、昨日、王子様ムーヴかましたらしいじゃねーか」
悠斗が、ニヤニヤしながら怜くんの肩を叩いている。
「……うるさい」
怜くんは、相変わらずのポーカーフェイスでそう返すが、その耳は、ほんのりと赤く染まっていた。
昼休み、いつもの屋上。
「……ごめんね、怜くん。なんだか、学校中に噂が広まっちゃって」
私がそう言うと、彼は、サンドイッチを頬張りながら、何でもないように言った。
「……別に。本当のことだろ」
その、あまりにも男前な返事に、私の心臓が、きゅん、と音を立てる。
「……でも、ありがとう。昨日、すごく、嬉しかった」
私が、真っ直ぐにそう伝えると、彼は、照れくさそうに、少しだけ視線を逸らした。
その沈黙を破るように、彼は、話題を変えた。
「……お前の、次の記事。テーマは決まったのか」
「え? うん! 今度は、写真部のコンクールについて、特集を組もうと思ってるんだ!」
私が、目を輝かせながら企画の内容を語り始めると、彼は、黙って、でも、とても優しい顔で、私の話に耳を傾けてくれた。
私の、新聞部としての活動も、夢も、彼は、ちゃんと応援してくれている。それが、たまらなく嬉しかった。
彼が、私を見つめている。
その瞳には、もう、秘密を探られることへの警戒心はない。ただ、穏やかで、深い愛情の色だけが、揺れていた。
私は、この人の隣が、私の指定席なんだ、と、心の底から実感していた。
放課後、部室に向かう途中、私は、体育館の裏で話している美咲と悠斗の姿を見つけた。
「だから、お前は無駄に声がでかいんだって!」
「はぁ? 悠斗こそ、もっとちゃんと人の話、聞きなさいよ!」
いつものように、賑やかにじゃれ合っている。でも、その距離感は、以前より、ずっと近い気がした。
悠斗が、呆れたように笑いながら、美咲の頭を、ぽん、と優しく撫でた。その瞬間、美咲の顔が、ぼふっと真っ赤に染まる。
(……私の知らないところで、親友の恋も、進んでいたみたい)
その微笑ましい光景に、私は、そっと、その場を離れた。
バスケ部の練習が終わった怜くんと、二人で並んで帰る、夕暮れの道。
それが、私たちの、一番好きな時間だった。
「……なあ、陽菜」
彼が、不意に、私の名前を呼んだ。
「ん?」
「今度の週末……。うちの、親父が、お前に会いたいって言ってる」
「え……?」
お、お父さん……!?
予想の斜め上を行く、あまりにも衝撃的な申し出に、私の思考は、完全に停止してしまった。
私たちの恋の物語は、どうやら、また新しい、とんでもないステージへと、進もうとしているらしい。
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