魔導姫戦記

森乃守人

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本編 第二部

ep.34 黒幕

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カーバンクルの導きに従い、ルーシェの居るヴィマーナ艦橋を目指すラグナ達は、船に潜入したラン達と合流する。
「ミシェル・ラグナ!
アンタ達がここでこうしてるって事は、船を動かしてるのはルーシェ姫って事だね。
裁きの鉄槌を撃ったのも…」
ラグナ「おそらく…
でも、ルーシェ姫は一体どこを狙ったんでしょう…?」
リリィ「…心配しなくても、姫様は一般人パンピーに被害だす様な事はしないって。」
ミシェル「私もそう思います…!
それより心配なのは、私達が泳がされてたっていう事です。」
ラン「船が動いてからの策が、奴らにはあるって事だね。」
シェイミー「……」










ヴィマーナ艦橋…

ルーシェ「…ど、どういう事ですの…?
ザハーク…‼︎」
イリア「ザハーク様…
…何やってんだ…⁉︎」
ゼル「……
そうか…そういう事か…
はじめから貴方も、そちら側の人間だったのですね…?」
ザハーク「流石はゼル、気付いたかね?」
イリア「どういう事だよ?兄貴…!」
ゼル「敵にとっても重要なこの遺物内で、ここまで雑兵しか居ない事に違和感を感じていた…
…いや、それよりももっと前から…
シェイミー女史が我々とたもとを別つ時、我々は敵の掌で踊らされていると言った…
憎しみに駆られて聞く耳持たなかったが、その通りだったのだ…はじめから…!」
「今さら気付いてももう遅え。
姫様の命が惜しけりゃ、武器エモノを捨てな。」
パズズの言葉に、為す術なく武器を手放すゼルとイリア。

帝国魔導師ウィザードのエースもこれまでか…呆気ねぇ。
いや…手も足も出ねぇテメェの目の前で、妹を嬲り殺した方が盛り上がりそうだなぁァァ…ゲハハ…」
パズズはそう言うと、イリアに近づいて行く。

イリア「くっ…」
ゼル「やめろ‼︎」
ルーシェ「わたくしに構わず武器を取りなさい‼︎
これは命令です‼︎」
「抵抗すんなよ、お前ら…」
パズズがイリアの胸元に爪を立てようとした、次の瞬間…



走る雷鳴と閃光!
そして、弾き飛ばされ倒れたパズズが見上げると、天馬に跨ったラグナに、槍の穂先を突きつけられていた。

パズズ「くっ…
…そぉガァキィィィィィ‼︎」
ザハーク「おや?
…なぜ君が、まだ自由に彷徨うろついていられるのかね?
まさか…」
ラグナ「ザハークさん、貴方こそ一体なにをしてるんです⁉︎
…まさか、貴方も内通者⁉︎」
ゼル「…そのまさかだ。」
パズズ「…状況がわかったらテメェも武器エモノを捨てろや、ガキィ‼︎」

「状況わかってないのはアンタの方よ、パズズ!」
威嚇するパズズに指摘しながら、リリィが艦橋に入室する。
続いて入室したランが、ザハークに向かって言った。
「そこのアンタ、人質ってのは生きてないと意味ないってのはわかるよね?
しかもそれが、よりによって姫さんとは…
まぁ、ミシェルが捕まってる予定で切り捨てるつもりだったんだろうけど、お生憎様、ミシェルはここだよ。」

ランに促されてミシェルと一緒に入室したシェイミーが、ザハークに向けて弓に矢を番える。
「…殿下から離れなさい…ザハーク博士…!」
ザハーク「ククク…形勢逆転と言う訳か…
まさかオーディン君が失敗しくじるとは予想外だったよ。
こんな事なら、もう少し猿芝居を続ければよかったねぇ。」
シェイミー「…貴方、その話し方…
ザハーク博士じゃなくて、まさか…
…正体を見せなさい‼︎」
「…勘付いたかね?
まぁ、そこそこ長い付き合いだからね。
確かに、こうなってしまっては、このむさ苦しい変装も無意味だし、もういいだろう。」
これまでザハークを名乗っていた男は、自ら顔の皮膚を引き剥がす。
その下から現れた素顔は…



ラグナ「…貴方は…アリハマ博士⁉︎」
ゼル「なん…だと…⁉︎」
リリィ「一体いつから…⁉︎」
アリハマ博士「いつから?
最初からだよ最初から。
シェイミー君、君達がまだ幼かった殿下を私の研究室から連れ出した時からね。」
ルーシェ「そんな…それでは…わたくし達が今までしてきた事は、全て…」
アリハマ博士「そう…全て私の計画通り…
ここまで順調に運んできたんだが…
まさかねぇ…」
イリア「そ、そうだぜ!
お前らの悪巧みも、これでお終いだ!
観念しな!」
アリハマ博士「ククク…
君達、大事な事…いや、人を忘れてないかね?」
「…‼︎
そうだ、父は…リモンはどこにいる⁉︎」
ゼルが問い正そうとした時、とつぜん船内に衝撃を伴う轟音が響き、一瞬、重力が無くなったかのような感覚がその場に居る全員を襲った。
そして、次の瞬間…

ミシェル「これってもしかして…」
ゼル「あぁ、間違いない…」
シェイミー「…墜落してるわ、この船!」
「いい仕事だ、リモン君。」
アリハマ博士はそう言うと、皆がうろたえた隙に、意図的異形ネクロマンサー化したパズズの鷲の脚に掴まり逃走する。

ラン「チッ、逃げられた…!」
リリィ「そんな事より、アタシらも脱出しないと…!」



一行は脱出し、それぞれ聖獣や翼ある獣に乗ると、船体と4枚の翼が爆破によって分離し、雲の下へと吸い込まれて行くヴィマーナの姿を目の当たりにしたのだった。





続く…
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