魔王軍、リメイク!! ~転生者によるジリ貧魔王軍再建記~

あかさた

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第1章 始まりの砦攻め

第2話 はじめての決闘

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ゴブリンを襲っていたのは狼人間のような奴だった。

殴り飛ばしたゴブリンには見向きもせず、果実にかぶりつく。

殴られたゴブリンは顔から血を流していた。

俺は喧嘩の仲裁なんてやったことがない。
だが味方同士で食料を奪い合う軍が戦いに勝てるはずがない。
それにあまりにも理不尽だ。

「やめろ!」
慌てて止めに入る。

「なんか文句あんのか」
狼人間は明らかに苛立った様子で俺を見やる。
ゴブリンから食料を奪ったことにまったく罪悪感を感じていないようだった。

「勝手に他の奴の食い物をとるな。食べたければ自分で探せばいい」

「はっ何言ってやがんだ。俺の方が強いんだから欲しいものは俺のものに決まってんだろうが。それで文句ねえよなあ!」

最後の言葉は俺でなくゴブリンに向けられたもののようだ。

悪いことにゴブリンたちは狼人間逆らえないようだ。
食料を奪われたゴブリンたちは抵抗もできず震えている。
それどころか一部のゴブリンは持っている食料を狼人間に渡そうとしていた。

これはかなり重症だな…

「今俺たちは砦攻めに向かってるんだぞ?その途中で仲間から食料を奪うなんてあり得ない」

「うるせえな。人狼族最強の戦士ガルフ様に向かってなめた口ききやがって。ぶちのめされる覚悟はできてんだろうな」

「強ければ何でも許されるわけじゃないだろう」

仮にも魔王軍――つまり軍隊を名乗っているのだ。
ある程度の規律はあるのだとこの時の俺は思っていた。

その幻想はこの後粉々に打ち砕かれることになる。

「タカアキ、何やってんだい?もめてるみたいだけど…」

別れていたレーナが来たようだ。
彼女に状況を説明する。
するととんでもない答えが返ってきた。

「よくあることだよ。気にしない方がいいさ」

「問題ないのか?仲間の食事を奪うのが…」

「あんたが魔王軍に入る前どこにいたのかは知らないけど、ここではこれが普通だよ。強いものが弱いものから奪うのは昔からのならわしみたいなものさ。いい気分はしないし、ガルフは度が過ぎてるけどね。考えてみな、もし無理やりやめさせたとして、強いやつが魔王軍に来てくれなくなったらどうするのさ。ゴブリンみたいな弱いやつだけじゃ何もできないよ」

どうやらここでは俺の考え方の方が異常らしい。
しかし、俺は知っている兵士一人一人の力量は低くとも優れた組織力で戦いに勝利した軍があることを。

本当に軍を率いる立場の者もレーナと同じような考えを持っているのだろうか。
軍を率いる立場の者ならガルフを抑えてくれるかもしれない


「レーナ、この軍の指揮官…リーダーは誰なんだ?」

「軍のリーダー?リーダーは魔王様に決まってるじゃないか」

レーナが不思議そうに応える。だが俺が聞きたいことは違う。

「そうじゃないんだ。この砦攻めをする軍のリーダーが誰なのかを知りたいんだ」

するとまたしてもとんでもない返答が帰ってきた。

「そんなのいないよ。みんなそれぞれ強いやつと固まって敵のところまで行くんだ」

そんなバカな。
遠征軍の指揮を執る者がいない?なんじゃそりゃ。
じゃあこの遠征では突撃や撤退の判断は各々で行うってことなのか。

ありえない。
もはやこの集団は軍ではない。
動物の群れにすら及ばない。これではただの烏合の衆だ。

俺は呆然としていた。


「何ゴチャゴチャ話してんだ。まだごねるなら勝負してやろうか?その代わり負けたら俺の手下になってもらうがな!」
ガルフが大声を上げる。

「おいレーナ!囲いを作れ!」
もうガルフは決闘する気満々のようだった。

本来味方同士での争いは避けるべきだ。

だがこのまま言い争っても解決しない。
それならば…

「分かった。決闘をやろう」

「タカアキ、本当にいいのかい?ガルフは強いよ」

「ああ、構わない。俺には責任がある」

もしここで俺が引けばゴブリンたちは持っている果実をガルフに奪われるだろう。

もとはといえばゴブリンたちに食料を渡して襲われるきっかけを作ったのは俺だ。
その責任はとる。

「わかった。嫌いじゃないよそういうの。リングを作るから気をつけな」

レーナはにこりと笑うと大きく息を吸い込み、目を閉じた。

炎よ円環をなせファイヤーリング
レーナが魔法を唱えた次の瞬間、高さ数十センチ程の炎リングが表れた。囲われた地面の広さは直径20メートルほどだ。

これが魔法なのか。
これは凄い。
戦場で使えば一気に戦局を変えることが出来るかもしれない。
決闘の後にレーナに教えてもらおう。

「炎のリングから出るか、降参した方が負けだよ。それじゃあ始め!」


「逃げねえことは褒めてやる。死ね!」
始まりの合図とともにガルフが突っ込んでくる。いきなりか。
猛烈なスピードで迫る拳。普通の人間ならこの一撃でイチコロだろう。

俺は黒騎士の反射神経を活かしてガルフの拳をかわす。
二撃目、三撃目と続けざまに拳が振るわれるがこれもかわす。

連続して拳をかわされ体勢の崩れたガルフに全力で剣を振るう。だがガルフは俺の一撃を半身でかわすと強烈な膝蹴りを叩き込んできた。

何とか剣を防御に回すが吹き飛ばされる。危うくリングの外に出るところだった。

「今の蹴りで吹き飛ばねえのか。大したパワーだ。だが、俺の方が強い」

自信ありげに笑うガルフ。

俺にとってまずいことにガルフの自信は間違っていない。
俺には戦闘経験なんてものはない。
一対一の決闘も初めてだ。
長期戦になれば必ずぼろが出るだろう。

今ガルフと互角に戦っているのは黒騎士の身体能力と腰にあった剣のおかげだ。


だがここで俺の意見を通すためには勝たなくてはいけない。

軍隊としてはあり得ないが、今の魔王軍には指揮系統なんてものはなく、腕っぷしが強いものが尊重されるのだ。

なら、俺のやるべきことは決まっている。

「勝負だ!ガルフ!」そう叫ぶと俺はガルフに向かって突進し剣を全力で投げつけた。
意表を突かれたガルフの動きが一瞬硬直する。
とっさに体を傾けてかわしたようだがもう遅い!俺は姿勢を低くすると突進の勢いのままガルフにタックルする。恵まれた身体能力を生かし切った一撃は、ガルフを炎のリングの外へと弾き飛ばした。

「そこまで!タカアキの勝ち!!」

観戦していたゴブリンたちの歓声が聞こえる。

こうして俺の人生初の決闘は幕を閉じた。
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