君と過ごした最後の一年、どの季節でも君の傍にいた

七瀬京

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06.撮影開始

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 翌日、朝一番に「校舎の見取り図を作ってきたよ!」とA4サイズのノートを広げて持ってきたのは結城だった。
 校舎は、僕らがいる本館。これは三階建てだ。そして、一応『新校舎』と呼ばれる建物がある。これは音楽室とか、理科室が入っているけど、僕らは入学してから立ち入ったことはない。あと、体育館。始業式とか終業式みたいな式典でだけ使う。
 昔はプールもあったというが、今は無い。今は埋め立てられていて、テニスコートになっているが、テニスもやらないから、荒れていて雑草が生えている。
「これ、どこを撮影したか、印を付けて行ったらわかりやすいと思ってさ」
「あ、たしかに。ダブらなくて済むよね」
「でもさ、季節ごとに取りたい場所とかもあるんじゃない?」
「それはそうかも。ダブるのは良いけど、ヌケを作らないために使う形にしたらいいんじゃない? あとになって、あそこが撮影されてない、とかだと大変だし」
「そうだね」
 人数が少ない上、二年間ずっと一緒だった僕らは簡単に話が決まる。
 気が合う人たちが一緒だったのは、有り難い。もし、誰かが、無視とかイジメとかをやっていたら、イヤだし、空気を悪くする人が居ても、この人数だと居心地が悪くなる。
 そう言う意味で、良い仲間に恵まれたんだと思う。
「とりあえず、あちこちの教室で写真を撮ってくるか」
 と悠真が言う。
「そうだね。プロの写真家って、ものすごい枚数撮るっていうから、沢山撮って、その中から選ぼう」
「スマホの容量持つかな……」
 僕は、すこし気になってポツッと呟く。
「あー、確かに」
「それなら、うちにストレージがあるから、そこに保存すれば良い。実際、アルバムを作るとしたら、パソコンは使うだろうから、そうしておいた方が良いだろう」
 とは青木だ。
「あ、それなら助かる」
 そう言った時、先生が来たので話は中断した。
 とりあえず、今日は、教室を撮影する。
 僕らの教室だけじゃなくて、もう使われなくなった教室に行って見ようと僕は考えて居た。


 放課後になって、僕と悠真。それと結城と池田は写真撮影。
 残りのメンバーは、青木の家で、作戦会議らしい。
「とりあえず、別行動でそれぞれ写真撮ろうぜ」
 とは結城だ。僕も異論は無い。
「じゃあ結城と池田は、2階かな。俺らは3階に行くよ」
 悠真は勝手に決めて「行くぞ」と僕の手を引っ張っていく。僕は「ちょっとまってよ」と、ちょっとたたらを踏みながら、そのまま引っ張られる。
「3階って、電気通ってんのかな」
 悠真が不穏な事を言う。
「えー……?」
「ほら、誰も居ないところに電気通してても無駄だから……ブレーカーとか切ってると困るよなあと思って。たしか、分電盤って、職員室の中だから」
「良く知ってるね」
「職員室に行ったとき、壁に分電盤があるのに気が付いたんだよ。それだけなんだけど。アレ、普通に廊下に分電盤置いたら、生徒が勝手に何かやらかすからだろうな」
 ははは、と悠真が笑う。
「普通の生徒は、分電盤で何かしないでしょ」
「小学生の男児が、どんなイタズラをやらかすか解らないだろ。先生達から見たら、俺らなんてそんなもんなんだろうよ」
「今年成人するのにね」
「前は二十歳だったし。戦国時代とかだと、俺らの年齢で大人になって、結婚して子供が居たりしてたんだろ」
「想像出来ない」
「だよなー」
 なんとなく、結婚、という言葉に僕はドキっとした。
 今、悠真が好きな僕には、とても縁の遠い言葉に思える。
 大人になるというのは、ただ、『好き』だけ行動できないと言うことなのかも知れない。例えば、僕がずっと悠真と一緒に居ようとしたら、そこには必ず『責任』が発生するのだろう。自分自身で負わなければならない『責任』が。
 否応なしに、僕らは、『将来』を考えなければならない。
 それが、なんとなく、苦しい。
 そしてその時、悠真が一緒に居るかどうか解らないのも、僕には苦しい。
 階段を上って、3階にたどり着く。
 埃っぽくて、廊下が、白い薄布を掛けられたように、なんとなくうっすらと白い。
「なんか、空気が淀んでる」
「……灯りは?」
 壁に付けられたスイッチを動かしても、電灯は反応しなかった。
 6時間目の授業と終礼が終わって、その後は掃除。現在、時間は16時をすこし回ったくらいだ。
 日の入りまでは時間があるが、なんとなく、薄暗い。
「ま、いいんじゃね?」
「暗いと写真撮れない気がするけど」
「夜景モードとかでも駄目かな」
「なんか違うと思う」
 悠真は、かまわずに3階を歩いて行く。元々は、三年生が使っていた教室らしく、『三年一組』『三年二組』……とプレートが出ている。
「もし、廃校にならないで、ずっと人が沢山いたら、ここも人が居たんだろうな」
 けれど、廊下にも、教室にも人のいた気配の残滓のこりは、少しも感じることは出来なかった。
 
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