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しおりを挟む柊生さんが来たのは、夜中だった。
「持ってきましたよ、戸籍」
「ありがとう」
葛籠一つ分にもなる量の三種類の戸籍は、和綴じ本で所々虫食いなど在るものの、状態は比較的よろしく、日本語の筆記体だったが読めないこともなかった。
「こちらが、普通の戸籍です。お役所に提出した戸籍の控えだそうです。もう一つは、家ごとの系図。そしてこれが、房姫の旦那さん達の系図です。ホラ、ここに私の名前があるでしょう。これが、隆一」
妻 桃源雛姫(とうげんひなき) 夫 堺柊生
「雛姫さんと仰有るの? あなたの、細君は」
「ええ。雛というのは、私の曾祖母の名前です。曾祖母の名前に姫を付けるのが、慣例だそうです」
「じゃあ、この海棠先生の奥様の、妙姫(たえき)さんと仰有るのも?」
「ヤツの曾祖母だね」
「桃か」
「僕も、もうそろそろ、本物の奥さん貰わないとなぁ」
「雛姫さんに、浮気したいって言ってたって告げ口しようかしら」
「止めてください。嫉妬深いんですから」
柊生さんの冗談に。私は大口開けて笑ってしまった。
「そんなに笑わなくても良いでしょう!」
拗ねたように言う彼が、とても十歳も年上に思えなくて、私は再び笑ってしまった。そう言えば、男の人って、どこかしら、子供だ。海棠先生も、柊生さんも。
「ねぇ、柊生さんには、恋人とか居ないの?」
「昔はいましたよぉ、昔はね。でも、長続きしないんだよねぇ」
「柊生さん、ステキなのに」
「ありがとう。でもね、僕はつまらないのかもしれないね」
「そんなこと、無いわよ」
私はかなり面喰いな方だが、柊生さんはそんな私の目から見ても、綺麗な人だった。
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