I NEED YOU

リンネ

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エピソード2

記憶

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 翌日の朝。玉森は寝癖がつきにつきまくった状態で起きた。
 「ふわぁーもう朝なの?」
 欠伸をしながらそう言った。
 そして、ソファーから立ち上がり、蒼愛を起こそうと部屋へ向かった。
 すると、扉が開いて、中から蒼愛が自力で歩いて出てきた。
 「ちょ、安静にしてないと。悪化しちゃうよ?」
 「ねぇ!凄いでしょ?もう、あんまり痛くないの!」
 蒼愛はキラキラ光る瞳で玉森を見つめた。
 「でも、ちゃんと治すには安静に……」
 「おわっ!」
 急に玉森の視界から蒼愛が消えた。
 ふと下に視線をやると、蒼愛が座り込んでいた。
 「だから安静にしててって言ってるのに……」
 玉森はすぐにしゃがみこみ、蒼愛の腕を自分の肩へ回し、蒼愛を立たせた。
 「平気?」
 「うん、まだ安定しないなぁ」
 玉森はリビングのダイニングテーブルの方へ連れていき、椅子に座らせた。
 「大丈夫?」
 「平気平気」
 蒼愛は少し苦し紛れにそう言った。
 「私、今日仕事だから、家ひとりでも平気?」
 蒼愛は足を抑えながら頷いた。
 「じゃあ、家でたらあと宜しくね」
 そう言うと、玉森は用意をし始めた。
 髪を整えメイクをした。
 その後自分の寝室で、さっきまで着ていた服を脱いだ。
 下はタイトスカートの膝少し上の長さ。上は半袖白シャツ。と、きちっとした服装だ。
 「学校の人?」
 リビングに戻ってきた玉森に、蒼愛が尋ねた。
 「ん?そうだよ?あれ、言ってなかったっけ」
 いいながら、カバンに財布や携帯、化粧品など私物をいくつか入れた。
 「よし。そいじゃ、蒼愛ちゃんあと宜しくね。あっ!お風呂ちゃんと入ってね」
 玉森に言われ、蒼愛は頷いた。
 そして、玉森は玄関に靴を履くと、「行ってきまーす」と言い、外へ出た。
 玉森が車に乗りこんだ音を確認すると、蒼愛は足を抑えていた手を外し、平然と椅子から立ち上がった。
 「疲れたぁ演技って難しいなぁ」
 さっきよりも低い声でそう言いながら、更に平然と歩き出す。
 「……必ずあいつを、地獄に送ってやる」
 そう言うと、蒼愛は拳を握った。それは、憎悪に満ちていた。
 「それにしても、綺麗な家だなぁ」
 蒼愛はふと周りを見渡した。
 いつ見ても整理された部屋。
 汚かったことなど無さそうだった。
 リビングをみわたすのに飽きたのか、蒼愛は首から下げた青く輝くペンダントを顔の前にやった。
 そして、何か決心したようにペンダントをもう1度下げると、深呼吸をした。
 「さっさと歩けるようになんねぇと、面倒だな」
 さっきよりも明らかに口調が変わっていた。
 「何で人間の家になんか……」
 ふと、昨日の記憶が蘇った。
 「大丈夫?」
 頭の中で繰り返される昨日の記憶、情景そして玉森の声。
 更に、思い出したのはそれだけでは無かった。
 脳裏をよぎる、最悪の記憶。蒼愛の頭の中に鮮明に出てきた、あの日の出来事。
 「あそこに隠れなさい」
 蒼愛の腕を掴みながら走る、40代くらいの男性がいた。その頃の蒼愛は今から比べると相当幼くて、小学1年生くらいだった。
 「隠れなさい」と、蒼愛を隠したのはゴミ収集所の大きなゴミカゴの隣。
 「パパ、ママは?」
 「大丈夫だよ。後で会える」
 そうに言った男性は、蒼愛の父だ。
 蒼愛の父は、手に手斧を握っていた。
 「大丈夫」と言った蒼愛の父は 、走ってきた方向に歩き出した。
 「パパ?」
 蒼愛の声を聞かずに、どんどん遠ざかる。
 蒼愛がゴミカゴから少し身を出して見てみると、歩く方法には何やら金髪で、スカジャンを着たいかにもヤンキーと言える男がいた。
 「ちょっと~頼みますよ~言われたとおり1000万用意すれば、簡単にあの女を解放したのに」
 「出来るわけないだろ!1000万なんて、桁が違い過ぎる!」
 「じゃあ、殺していいの?あの女」
 「くっ……」
 幼い蒼愛にも分かるくらい、とんでもない現場だ。しかし、助けに入ることは出来なかった。
 更に今は雨が降っているため、外出する人はいなかったため、他人が助けに入ることもなかった。
 「そもそも、なんで……!」
 「なんでぇ?」
 父の言葉を遮って、男が喋り出した。
 「そりゃあ、あんたに人生壊されたからでしょ?俺を首にしやがって!!」
 「それは君がした失態のせいだろ!」
 「はぁ、話にならない。もういいや。面倒だから喋れなくしてやるよ」
 そう言うと、男はポケットから小型ナイフを出した。
 すると、父は怯えて、手斧をうっかり落としてしまった。
 しかし、男の様子を見るに、拾っている場合ではない。父は男に背を向け、蒼愛の方へ走り出した。
 「殺せ」
 男が小さく囁くと、男の隣にいた身長190cmはありそうな大男が、携帯を取り出し「殺せ」と言った。おそらく、「あの女」のことだろう。
 その連絡が済むと、男は父の後ろを走って追いかけた。
 そして、男は父にとうとう追いつき、背中からナイフを刺した。
 父は動きが止まり、両膝をついた。
 そのまま、蒼愛の目の前で倒れた。当然、蒼愛は刺される瞬間から倒れるまで、その目で見てしまった。
 蒼愛は恐怖で体が凍りついた。
 「あ?てめぇこいつのか?」
 「やめて……くれ……その…子は……関係……ない」
 「うっせーんだよ!!」
 男は傷口を強く踏みつけた。
 「ぐあぁぁ!!」
 「おい!てめぇ、誰かにチクってみろ」
 男は蒼愛の頬にナイフの先端を突きつけた。
 「ぶっ殺してやるよ」
 蒼愛に囁くように言った後、男は薄気味悪く口角を上げ、ニヤついた。
 ナイフをしまうと、男は蒼愛とその父を残して去っていった。
  男が去ったのを確認すると、蒼愛は倒れたままの父の元へ駆け寄った。
 「パパ?」
 「パパ……大丈夫……だから……だい……じょ…う……」
 「パパ?パパ!パパ!!いや!一緒にいてよ!
パパ!!」
 蒼愛は大声で泣き出した。声がかれるほど。
 雨がさっきよりも強くなった気がした。
 自分の心が見えている気がした。
 頬を流れる涙も感じられなかった。
 「ママ、この子どうしたの?」
 ふと後ろから女の子の声がした。
 蒼愛はその声に気づき、後ろに振り向く。
 そこには、黒い髪の毛でツインテール、黄色い長靴をはいて黄色い傘をさして、ギンガムチェックのシャツとデニムスカートを着た、見た目蒼愛と同い年くらいの女の子と、デニムワンピースをきて薄黄色の傘をさした若い女性がいた。
 ふと、蒼愛はその女性と目が合った。
 「どうしたの?」
 女性は蒼愛の傍により、目線が合うようにしゃがみ、蒼愛の頭の上に傘をやった。
 「パパが……」 
 そう言われふと目をやると、完全に死体と化した男がいた。
 女性は一瞬叫びそうになったが、叫びそうなところで止め、蒼愛の目を見た。
 「誰にこんなことされたの?」
 「金髪の、怖いお兄ちゃん」
 「わかった。今警察に通報するから。ママは?」
 蒼愛は黙ったまま首を振った。
 「まさか……いや、大丈夫!ママが迎えに来るまで私の家にいよ?」
 蒼愛は俯いて、少し間が空いてから頷いた。
 「よしっ!じゃあちょっと待ってねぇ」
 そう言うと、しゃがんだ体勢たちあがり、携帯でまず警察に連絡し、その次に救急車も連絡した。
 「もうこれで大丈夫」
 女性は蒼愛の頭を撫でた。
 「うん」
 蒼愛はまた泣き出した。女性は蒼愛を抱きしめた。泣き止むまでずっと。
 すると、警察と救急車がきた。
 サイレンの音で、近くに住む人たちが出てきたり、窓開けて見たりしていた。
 警察の何人かと鑑識が死体の方へ行った。
 死体に青いビニールシートのようなものがかけられた。立ち入り禁止の黄色いものを張る人もいた。
 「パパ、どうなるの?」
 その様子を見て、蒼愛は女性の袖を掴んだ。
 「パパはね、安全な場所に行くの。パパの居るべき場所に。もうパパは帰ってこないけど、ずっと心にいるから」
 女性は蒼愛の胸に手を当てた。すると蒼愛は涙目になったが、泣くことはせずに「パパ……」と小さく呟いた。
 雨の叩きつける音は弱まり、今の蒼愛には、悲しい雨の音も色鮮やかな物に思えた。
 
 思い出したのはそれだけじゃない。
 今度はその頃から大きく成長し、高校生になった頃だ。
 
 あの雨の日に偶然出会った蒼愛と少女は、またまた偶然にも同い年だった。
 出会ったあの日からずっと、蒼愛は少女とその母親であるあの女性と共に、母親が現れるまで過ごすことになった。
 しかし、母親が現れることはなかった。
 母親が現れることがないまま、高校生へと成長した。
 順風満帆な生活を送っていたある日、最悪の知らせが蒼愛の耳に入った。
 「ママが……病気で、もう手の施し用がないって……」
 震えた声で女の子が言った。
 蒼愛は耳を打た疑った。
 「え?」
 「ママ……死んじゃうの……」
 女の子は、涙を零した。声も手も震えていた。
 「大丈夫だよ、もしそうなっても、ふたりで生きよ?」
 そう言うと、蒼愛に抱きついて女の子は泣いた。
 しかし、最悪の知らせはそれだけに留まらなかった。
 ある休日のニュース番組。
 ぼーっとした意識で画面を見つめていた。
 すると、ひときわ目立つような見出しで、大きく報じられていた。
 「速報です。先週発見された、東京都千代田区にある廃工場の白骨死体の、性別と年齢、死亡推定時刻がわかったそうです。性別は女性、当時の年齢は29歳、死亡推定時は2019年7月26日午前10:35頃との事です。遺体の心当たりがある方は警察庁に電話をお願いします」
 真剣な眼差しでカメラを見つめ話す男性アナウンサー。蒼愛はその目を、自分に訴えかけてるように感じた。
 蒼愛は目から大粒の涙を零した。
 玄関からドアが閉まる音がする。
 「ただいまー」
 高校の制服で、一緒に暮らしている女の子が帰ってきた。
 「ねぇ、どうしよう……」
 「ん?………え……」
 リビングまで来て、女の子は立ち止まった。
 テレビ画面を見て唖然とした。目の前に広がる光景に。
 男性アナウンサーの真剣な眼差しと低い声、そして、大きい見出しに書かれた、「謎の白骨死体、死亡推定時刻は今から約10年前」の文字。
 最初は蒼愛も共に違うと思ったが、どう考えても同じだ。それに、あんな事があったのは自分たちだけだ。
 そう思った瞬間、身の毛がよだつ、よりももっと、体中の何かが震え上がるような感覚だった。
 蒼愛は女の子の目の前で泣き崩れた。
 「大丈夫だよ、ウチらにはもう親……いないけど、2人で生きていこうよ」
 そう言いながら、同じく涙を流し、蒼愛を抱き寄せた。
 
 そんなことがあり、蒼愛は1週間は学校を休んだ。蒼愛を見かねて、担任の教師が家を訪問したりした。教師の訪問により、2人共に親がいないことと、その為に家を2人でバイトでやりくりしていたことがバレてしまった。
 そして、勇気を出して1週間学校休んで、蒼愛はようやく学校へ行くようになった。
 しかし、蒼愛への惨劇はそれだけでは無かった。
 学校へ行くようになると、蒼愛は親がいないことに関していじめを受けるようになった。
 「おめぇー、親いねぇんだろ?」
 「どうやって稼いでんだ?あ?水商売か?」
 「それとも~?枕仕事~?」
 いじめの実行犯は主に男子が多く目立っていた。しかし、女子も全くやらなかった訳では無い。
 「あんた枕仕事してんでしょ?」
 「てか、親いないアピールして心配されたいわけ?」
 「こいつきたねーから掃除してあげちゃう?」
 蒼愛は何度もトイレに呼び出されては、デッキブラシで顔や体を叩かれたり、擦られたりした。
 同居している女の子が仲裁に入って止めることもあったが、それだけではいじめは収まることを知らなかった。
 さすがにエスカレートし過ぎて、顔中のあざに担任の教師も学年主任も怪しむようになった。更には、養護教諭の教師にも疑われ、1度「服を脱いで体を見せて」と言われた。
 無論、最初は蒼愛も断っていたが、エスカレートしていくうちに辛くなったため、仕方なく承諾し、保健室で服を脱ぎ体を見せたところ、その場に居合わせた担任の女性教師も、養護教諭の教師も顔が青ざめるほど、体中はあざだらけだった。
 そしてそれを学年主任の男性教師に伝え、学年主任はいじめを止めるよう説得したものの、いじめはエスカレートする一方。
 そんなある時だった。
 「ねぇ、私が死んだら悲しい?」
 「当たり前でしょ、悲しくないわけない」
 「そっか、よかった」
 「死なないでよね」
 何かを暗示していたのだろうか。
 蒼愛は悲しげに微笑むと、静かに眠った。
 そして翌日、事件はおこった。
 「先生っ!!」
 授業の間の10分休み、勢いよく職員室のドアが開いた。
 「失礼します」も言わずに、咄嗟に視野に入った学年主任の元へ駆け寄る。
 「女の子がひとり、屋上のギリギリのところに!!」
 そういった瞬間、職員室が騒然とした。
 ざわつき出す大人の空間。
 「わかった、今すぐ行こう!」
 学年主任はすぐに席を立ち、職員室に飛び込んできた生徒と共に、職員室を走って出ていった。
 その話を聞いていた周りの教師は、通報したり、男性教師が外に出て屋上の様子を見たり、他の教師の何人かが、先に走っていった2人のあとを追ったり。
 「何を考えてるんだ!」
 屋上へ続く階段を駆け上がりながら、学年主任の教師は思った。
 
 屋上に続くドアの前まで来て、学年主任は勢いよくドアを開けた。
 「やめなさい!!」
 学年主任の声がよく響いた。
 しかし、蒼愛はやめる様子はなかった。むしろ逆に後ろへ下がり、ギリギリまで行った。
 「来ないで!!生きてる意味ないの!もう、無理なの!!」
 学年主任は悲しそうな顔をした。
 「どうして……」
 小さく呟く声も、蒼愛の耳には届いていなかった。
 「もう……いいよね?」
 そう言うと、蒼愛は後ろへ体重をかけた。
 蒼愛の体は宙に浮き、頭から校舎とほぼ平行に、下へ落ちていった。
 
 ここまで読んでわかっただろう。
 蒼愛は1度死んでいる。
 蒼愛は輪廻転生をした。
 人として……なのか、もっと別次元の生き物としてか。それはまだ、分からないだろう。
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