キモおじさんの正体は…

クラッベ

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第五話

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それから私は、次の日には本当に国に帰してもらえた。

王子様達に再会した私は、ビビアンとあのおっさんを処刑してもらおうと涙を流して「あいつらにひどいことをされた」って言ったの。

だけど、彼らは以前のように慰めてくれなかった。

それどころか…

「父上…いや、陛下から聞いたよ。キミはビビアンに冤罪を着せるために、ずっと嘘をついていたんだってね」

「教科書を破られたとか、水をかけられたとか、ビビアン嬢はやってないって証言した人と証拠が出たんだ」

「しかも、キミのことを全員で話し合ったら…週替わりで皆と同じ場所でデートしてたんだって?しかもみんなに同じこと言ったんだって?」

「“あなたとこうしている時間が一番幸せなんです”って…このあなたって誰の事指してたんですか?」

「楽しかったか?オレたちを騙して、誑かしてそんなに楽しかったか?」

皆から冷たい視線が送られる。

王子も、騎士も、宰相も、神官も、商人も、だれも私の味方をしてくれない。

…デートイベントに関しては、全員違う場所に行くと誰とどこに行ったとか忘れちゃうし、好感度があがるセリフは皆一緒だったんだからしょうがないじゃない!

「現実を直視できましたか?」

一言いってやろうかとしたその時、城に来てからずっと王子のそばを離れなかった小悪魔…正確にはサキュバスらしい、そいつが声をかけてきた。

「…あぁ、ビビアンの話をロクに聞かず、こんな奴を妄信してしまった自分が情けない」

「それが理解できただけでも進歩です。もうあなたは王位を継げませんが…これからは第二王子の臣下として頑張ってくださいね」

「王子だけじゃない。お前たちもだ。寄ってたかって一人の女性を追い込むなんざ騎士失格だ。お前は騎士団長になれない。これからはオレの部下として、戦場の最前線で戦ってもらうからな」

「…そうだな」

サキュバスだけじゃない。狼娘が騎士に怒りながらそう言い

「あなたもですよ。この国を支える役職であるあなたがそんな体たらくで情けない」

「…返す言葉も、ありません」

蛇娘が蔑んだ目で宰相を見下ろし

「あなたは神に仕える身うんぬん以前に、人の話を聞くことを覚えなさい。一人の女に妄信し、周りが見えなくなるなど言語道断です。これから先、また神官見習いとしてその性根を鍛えなおしなさい」

「…天使様の、おっしゃる通りです」

天使が冷たい目で、首を垂れる神官を叱咤し

「キミも反省しなきゃだよ?あの子にプレゼント贈るために店のもの勝手に持ち出したりタダにしたりして…お父さん怒ってたでしょ?もうお前に商会は任せておけないって。これからは一人で頑張れだって」

「…そうだね」

スライム娘が腰に手を当てて、商人に怒っていた。

彼らが何を言ってるのかわからない。内容が理解できない。

「さて、それではこの者の処遇ですが…平民の身でありながら貴族の令嬢に冤罪を着せ、不当に追放したこと。そして隣国の時期王妃となられるお方に危害を加えようとしたことにより、処刑するのが妥当だと思われます」

私が呆然としていると、蛇娘がこちらを向き、そんなこと言い出した。

「ま、待ってよ!なんでそうなるのよ!私はこの世界のヒロインで、あの女は悪役令嬢なのよ!?追放は当然のことをしたまでじゃない!それに、私は光魔法が使える聖女なのよ!?聖女がいなくなったらこの国はどうなると思ってるの!?」

「あぁ、それでしたらご心配なく、あなたずっと私に聖女の仕事を押しつけてきたものですから、今では私がこの国の聖女として認知されています。遊び惚けている怠け者より、モンスターでもしっかり務めを果たしてくれる者の方が良いのだとか」

なにそれ!?いつの間にそんなことになってたの!?
そんなこと認められず、天使を消せば元通りになると考えた私は天使に襲い掛かろうとしたけど、城の兵士たちに押さえつけられ、また檻の中に入れられてしまった。

「ありえない…どうして…こんな…」

「現実を見た感想はどうだい?」

檻の中でブツブツ言っていると、またあのおっさんが檻の前に現れた。

「あの子たちは僕が調教した中で特に優秀な子たちでね、これからこの国は、彼女たちが王子たちの手綱を握って繁栄させてくれるだろうね」

「…よくも私から幸せを奪ってくれたわね!?許さない!絶対に許さないから!!」

私は檻を掴んでおっさんにそう怒鳴りつけた。するとおっさんは檻の間に足を突っ込んだかと思うと、私の顔に蹴りを入れてきた。

「ぎゃっ!」

「…許さないのはこっちのセリフだよ。僕はね、怒ってるんだ。あんなにも誰かのために努力してきたあの子を貶めて、傷つけてきた君たちにね。だから奪ってやることにしたんだよ。全部ね」

痛みに呻きながら顔を上げると、ゲームで見たスチルとは違う。静かな怒りを含んだ無表情を浮かべているおっさんと目が合う。

「ねぇ、今どんな気持ち?突然現れた女に自分が手にしたものを奪われて、今どんな気持ち?」

「あ、あんた、この世界のヒロインにこんなことして許されるわけが…」

「まだここが現実だって認められないの?君はヒロインなんかじゃないし、この世界はゲームなんかじゃない。まぁ、夢を見るのは自由だけどさ。それじゃあねヒロインちゃん。今度は平和な世界に生まれ変われたらいいね」

「ま、待って!私を助けて!」

「助けないよ。じゃあね」

おっさんは前を向いたまま私に手を振って、地下牢を後にした。

それから私は何もできず、処刑の日が来てしまい、断頭台に立たされる。
綺麗な青い空も、周りで罵倒してくる人々の声も、両側から私を抱えてくる兵士も、座らされた固い床も、首を固定する枷も、全部が遠くに感じて

認めない、こんなの、こんなのが現実なんて認めない!この世界は私のためにある世界で!私はこの世界のヒロインで!聖女で!みんなから愛されて



ズパンッ!……ゴトッ…



「あーあ、首飛んじゃったねぇ」

ドラゴンに乗って、僕は処刑の様子を空から眺めていた。

「馬鹿だね、ちゃんとこの世界も現実だって、ゲームとは違うんだよって理解できればこんなことにならなかったのに」

かつての僕も、転生特典としてもらった「モンスターのみにモテる」という体質を利用して好き放題してきたけど、この世界の人間もモンスターも、画面の向こうの世界じゃなくて、ちゃんと触れ合える、ケガをすれば血が流れる、命と心ある存在だって理解してから、この特典を使って人とモンスターが共存できる世界を作ろうと奮闘した。

まだまだ先は長いし課題も多いけれど、少しずつ、その目標に近づいている。
ビビアンちゃん達もきっとこれから、手を取り合ってあの国を発展させていくだろう。

人とモンスターが共に暮らす、最初の国として。

「さて、それじゃあ行こうか」

僕がそういうとドラゴンが「グォ」と鳴いて、高く上昇した。

僕ができることはまだまだあるんだ。ビビアンちゃんたちやモンスター娘が笑って暮らせる世の中にするため、僕の旅はまだまだ続く。

それから数年後、ビビアンちゃんとクレス君の子供生まれたという知らせを聞き、彼女たちの元に立ち寄ったのはまた別の話

  
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