リア充な世界にこんにちは

茜るるる

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第7話 食卓上の神様

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「姉ちゃんさ、なんで生徒会長に立候補したの?」


「んー……」


 モグモグと口に含んだ夕食を咀嚼しつつ、奏が可愛らしい唸り声をあげる。
 口に物が入っているときは喋らない。相変わらずお上品で何よりでございます。


「まぁ深い理由はないんだけどね。担任の先生に立候補しないかって言われたのが一番の理由かな」


「でもさ、生徒会の仕事しながら家事って結構大変じゃね?」


「そう?」


 奏が箸を持ったままほんの少し首を傾げた。


「ほら、私部活やってないじゃない。その分ほかの人よりも時間あるし、料理とか作るのも楽しいし、大変とは思わないけどねー」


 左様ですか……。
 普通なら家事だけでもしんどいはずなんだが、きっと完璧人間の体の構造は凡人と違うのだろう。


「それに……」


 それに……?
 そう言いかけた奏はどこか嬉しそうで、何か悪いことを考えているような笑顔である。


「ふふっ」


 え、何その笑い……。メチャクチャ気になるんですけど!?
 そんな俺の思いは何も感じていない様子で、奏は大皿に盛られたおかずに箸を伸ばした。


「まぁ……引き受けちゃったし、とりあえず最後まで頑張ろうかなーって。って言ってももう一人立候補してる人がいるみたいだし、私が生徒会長になるかは分かんないんだけどね」


「ふーん」


 そんな空返事をして、俺はわざとらしくみそ汁をズズッと啜ってみた。

『最後まで頑張る』といった時の奏はいつも本気だ。たかが先生に誘われたくらいでなるものか?なんて思っても見るが、少なくとも今の俺に辞退を促すのは無理そうだ。もう一人の立候補と言うのは間違いなく猫村先輩のことだろうし、まぁここからは本人に頑張ってもらうしかないか……。


「ところで空君、明日暇?」


 ん?何を唐突に……。
 明日からの週末は家でのんびり過ごすという綿密な計画が立っているわけですが……。


「ほら、今駅で猛毒展ってやってるでしょ?もし暇なら一緒にどうかなーって」


 猛毒展……ねぇ。
 世界中の毒を持つ生物を集めてるんだっけ?一部のマニアックな人向けだと思ってたが、まさかこんな近くに興味を持ってる人間がいるとは。



 まぁ……ぶっちゃけ興味ないんだけど。


「え……行きたくない?」


 反応の薄い俺に不安になったのか、奏が心配そうに尋ねた。
 勿論のこと、俺は行きたくない訳である。

 そもそも何が悲しくて貴重な週末を家から出なくてはならないのか。1週間の内5日間も他人といなければならないというのに、さらに週末まで外に出ようというリア充の考えは非常に興味深い限りである。いっそのこと、リア充展でも開いてくれれば世界各地からボッチの精鋭が興味本位に集まることだろう。


「でもね空君。貴重な10代の時間を家でダラダラ過ごすのはよくないと思うよ?」


 奏のぐうの音も出ないほどの正論に、全く持って言い返す言葉が思い浮かばない陳腐な俺である。
 ええそうです、全くその通りでございます。でもね、世の中には生まれつきイベントパワーの低い人種がいるんですよ。主にコミュ障とかコミュ障とかコミュ障。

 なんてことをいくら説明したところで、この理論が奏に分かることはない。
 そもそも『人に話しかけれない』という経験がないリア充にとって、コミュ障の何が辛いのかはわからないのである。


「はい、それじゃあ明日は猛毒展に行きまーす」


 あ、それはもう決定事項なんですね?なんて、既に決まりつつある話にあえてツッコむ。
 なぜ心の中でツッコむのかって?こうなった時の奏は誰にも止められないことも俺は知っているからである。完璧人間と言っても家族に対しては案外頑固らしい。


「それじゃあ空君、明日朝10時ね。寝坊しないように!」


 奏がビシッと決め顔を決める。
 あんたが起こすんだから寝坊はないだろ……。なんて野暮なことは言わない。

 花の金曜日だというの、なぜ心はブルーにならなければならないのか。土曜日が仕事の社会人と言うのはいつもこんな感じなのだろう、とちょっと真面目に想像してみた空君である。


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