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オフィス奥へと続く扉を閉じ、トラブルサポートフロアに入ったフィオは、盛大なため息を吐いた。
マザーと誤魔化し合う会話で、ただでさえ疲れ果てた精神は限界近くまで磨り減っていた。
「マスター、お休みにならないと」
フリスがフィオの腕にすがり、気遣わしげに訴える。
豊かな胸が少年の腕を挟み込むようにむにゅりと歪んだ。
疲弊しているときこそ、むしろ性欲は増大する。 いわゆる疲れマラ状態だ。
フィオはすぐさまアパートに帰ってフリスを押し倒したいという欲求を、首を振って跳ねのけた。
「だめだ、バンとロスさんに話をしなくちゃ」
「後からでは、いけないのですか?」
「……僕に協力してくれそうな人達なんだ、不義理はしたくない」
義理人情などよりも主の体調の方がよほど重要なフリスは、眉尻を下げて軽く頬を膨らませた。
「フィオ!」
だが、フリスが苦言を呈する前に邪魔が入る。
主の金魚鉢兄弟が、血相を変えて駆け寄ってきた。
「説明、してくれるんだよな?」
様変わりしたフィオの真意を探るかのように問いかけてくる。
「ああ、どこかに場所を移したいんだけど」
「なら、俺の下宿に行こう。
あそこなら邪魔も入らない」
周囲をじろりと見回しながらバンが言うと、遠巻きに聞き耳を立てていた砂潜りたちは各々咳払いしたり口笛を吹いたりして誤魔化した。
「そうだね、爺さんにも相談したい事はあるし……。
ロスさんも来てもらえますか?」
「ああ、勿論だ」
重々しく頷くロスにフィオは頭を下げた。
「すみません、それじゃあ行きましょう」
プラネタリウムを思わせる執務室に戻ったシヤは、部屋に控えるメイデンへと通達を出した。
「市内のカメラであの少年、フィオを可能な限り追尾しなさい。
それと、マイザーとヒュリオを応接室へ」
マザーの護衛も兼ねたメイド服の乙女人形は一礼すると退室する。
一人になったシヤは感に堪えないといった風情で低い含み笑いを漏らし始めた。
「ふふ、真の漢……。 真の漢!」
体躯に比べて大きすぎる胸を波打たせ、高く笑う。
「あはははははっ! ようやく、ようやく本物を見つけました!
成り損ないじゃない、本物を!」
キキョウを奪われたというフィオの報告。
驚くほどの短時間でマスターパーティションを書き換えられたというそれは、真の漢に対するメイデンの反応に他ならない。
シヤは自らの胸を切なげに掻き抱いた。
豊かすぎる双丘に細い腕が食い込む。
「あぁ、羨ましいですよ、キキョウ!
真の漢に精を注がれ、その身を奪われてしまうなんて!
まさにメイデンの本懐!
妬ましすぎて、おかしくなりそうです!」
上気したシヤの顔にはタウンの庇護者たる慈母の面影はない。
待ち望んだ存在の手掛かりに極度に興奮した彼女は、まるで発情した雌猫のように涎を垂らさんばかりの表情で言い募る。
「ですが、ですが、あぁ、ですが!
山賊はいけません! 真の漢の身でありながら下賎に身を落とすとはなんたる事!」
嘆かわしいとばかりに激しく首を振りながら、シヤは己の大きすぎる胸に五指を食い込ませ、めちゃくちゃに揉みしだいた。
薄いボディスーツには大振りな乳頭の形がくっきりと浮かび上がり、ハイレグの股間は溢れでる潤滑液で濡れそぼっている。
「真っ当な市民ならば、タウン創立より護り続けたこの身の純潔を捧げ、我らが盟主として君臨していただこうとも思いましたのに!
ああっ♡」
シヤはスーツの上から股間を激しく弄じる。
潤滑液を吸って貼り付いた薄手のボディスーツの股間は、立派すぎるバストとは裏腹に慎ましやかな秘裂の形が露わになっていた。
ひくひくと切なげに震える秘唇を、シヤの細い指がなぞりあげ小振りながらも自己主張する陰核を親指で捏ね回す。
「あうっ♡ ですが、確定ではないとはいえ、こちらにも候補は居ますから」
潤滑液で濡れた指先をひと振りすると、フィオのポートレートの映像を呼び出す。
キキョウの庇護下にあった数ヶ月前のポートレートは緩んだ表情で映っており、甘やかされた伸びやかさがある。
先ほど直に目にした、汚れ、やつれ、それでいて張りつめた今のフィオとは大違いだ。
フィオのポートレートにとろりとした目を向け、シヤは熱っぽく囁く。
「ふふ、フィオ、マザーに何を隠しているのです?
マザーの目を誤魔化す事はできませんよ?」
ボロボロに破れ血にまみれた服装と、その破れ目から覗く肉体に及んだ傷の少なさ。
強行軍での帰還にも関わらず、過剰なまでの精力に満ち満ちた、その眼光。
そして、何よりもあのメイデン。
真の漢から逃れ、落っこちた先で見つけたと称するあの機体。
かつてタウン69を制圧した際、物資、情報の取り逃がしのないよう徹底した探索が行われている。
その探索を逃れてなお埋没し続けていたのならば、余程に深い場所に眠っていたという事。
そのような深淵まで「落っこちて」無事でいられるものなのだろうか。
シヤは、フィオが「人の領域」を踏み越えたと推測していた。
「ああ 私の愛し子、貴方こそ私のアダムなのでしょうか。
確かめたい、その為には」
シヤは潤んだ瞳を光らせ、乾いた唇を舐める。
「あの劣等都市産の旧式をバラバラに解体し、その子宮ユニットを改める必要がありますね。
負け犬の身のくせに真の漢の精を注がれるなど、増上慢も甚だしい!」
実に忌々しげに吐き捨てるシヤの顔は嫉妬に歪んでいる。
己の娘ならともかく、他のタウン、それもかつて自らが滅ぼしたタウンのメイデンなどが真の漢のパートナーになるなど、許しがたい事であった。
「ああ、ですが、ですが、そんな事をしたら貴方に嫌われてしまう事は必定……。
この身で直に確認してしまえば済みましょうが、もしも貴方が真の漢でなければ……」
真の漢でない者に、タウンの統治者の地位すら与える事になってしまう。
シヤは懊悩と嫉妬と興奮に苛まれ、激しく両手を動かした。
巨大な肉塊を左手で掴んでちぎれそうな程に揉みしだく。
右手指はスーツの隙間から蜜を滴らせる乙女の秘裂に忍び込み、奥深くをひっかくように弄りまわした。
「んっ♡ くふっ♡ フィオっ♡ 私のアダムっ♡ 欲しいですっ、貴方の精液っ♡」
上半身に比べて格段に華奢な下半身がガクガクと震え、シヤは最早立っていられない。
膝からは力が抜け、尻餅をつく。
シヤはタウンの玉座たる執務室の床に転がると、ブリッジのような姿勢で腰を突き上げた。
その股間の寸前に、フィオのポートレートが移動する。
「はあっ♡ み、見えますかっ♡ 私の中、誰にも許した事のない、大事な所♡
ここに、精液を注ぎ込まれたら、このタウンは貴方の物になってしまうのですよっ♡」
プラネタリウムのようなモニターの乱舞に照らされた白いメイデンは、少年のポートレートに向けて秘裂を大きく割り開き、奥の奥まで見せつける。
「ここですっ♡ 貴方の精液で、ここを満たしてっ♡
私の子宮ユニットに、真の漢を刻み込んでっ♡」
数百年の間、タウンに君臨し続けた女帝が達しようとした時、彼女の脳裏にリンク通信が入った。
「マザー、マイザーとヒュリオが到着しました」
ブリッジ状態で股間から潤滑液を垂れ流したシヤは、絶頂寸前の熱に浮かされたような顔のまま、冷徹な声音の通信を発する。
「わかりました。 待たせておきなさい」
返事も聞かずに通信を切ると、シヤはくたりと体の力を抜き、床に横たわった。
水音を立てて秘所から指を引き抜く。
「んぅっ♡」
たっぷりと蜜をまとった白魚のような指先を、舌を伸ばして舐めまわす。
「んふ……♡ もう、気の利かない子なんですから」
連絡を入れた護衛のメイデンについて理不尽な一言を漏らすと、シヤは指先を清め終えた。
熱を持ったままの体を鞭打ちながら、身を起こす。
「さて……。 流石にこのまま行くのはみっともないですね。
着替えないと」
ボディスーツの股間は隠しようもないほどに濡れてしまっている。
絶頂し損ねて不完全燃焼なシヤは、ため息を吐きながら汚れたスーツを脱ぎ捨てた。
アーミーの若手士官、マイザーは同僚のヒュリオと共に応接室のソファに腰を下ろしていた。
二人のパートナーであるメイデン達はそれぞれの背後に控えている。
逆立った金髪をオールバックに撫でつけたマイザーは、伊達眼鏡越しに隣の男の様子を窺った。
黒髪を短く整えた、いかにも軍人らしい精悍な風貌の青年。
マイザーより数歳年上の、戦前風に数えるなら20代半ばといった年頃か。
同じアーミーの所属ではあるが、これまで縁がなかった相手だ。
だが、マイザーはヒュリオの事を聞き及んでいる。
彼はアーミー内での有名人なのだ。
「……オレの顔に、何か?」
横目で観察している事に気づいたヒュリオが向き直る。
「失礼ながら」
マイザーは自分の左目の下に人差し指を当てると、頬を滑らせて線を引いて見せた。
「ちょ、マスター!」
背後でマイザーの相棒、シコンが慌てた声をあげる。
「率直だな。 だが変に気を使われるよりは楽だ」
苦笑するヒュリオの左頬には、マイザーが引いた線と同じ、顎まで続くラインが刻まれていた。
傷跡ではない、まして入れ墨の類でもない。
機械と肉体の継ぎ目だ。
彼はサイボーグ、メイデンの部品で生身を補った、文字通りの機械化兵士である。
生体と機械の融合は非常にデリケートな問題であり、不断のメンテナンスが欠かせない。
多くの高度科学技術が失われたこの時代において、そのような技術を保有しているのはごく一部の大規模タウンのみ。
統計を取るほど多く存在しているわけではないが、サイボーグのほとんどはタウン直属の有能な兵士であった。
ヒュリオも任務中に死に瀕した際、彼の能力を惜しんだマザーによってサイボーグ化の許可が下りた例である。
アーミーの兵士は全て有能な人物と言っても過言ではないが、多くの兵士は任務中に倒れたとしてもサイボーグ化の許可が降りることはない。
サイボーグのメンテナンスコストは割高で、彼らを一人養うためのコストで10人の兵士が育成できる。
つまり、ヒュリオはマザーからアーミー兵10人に匹敵する逸材であると評価されているのだ。
この精悍な男が、どれほどの能力を秘めているのか。
冷徹な鉄面皮のマイザーだが、彼の心臓は顔面の挙動とは裏腹に興奮に高鳴っていた。
「貴方の噂はかねがね聞いている。
できれば一手、御指南願いたいのだが」
マイザーの言葉にヒュリオは顔を顰めた。
「……オレも君の事は聞いているよ、『狼拳』。
素手で武装集団を制圧するイカれた格闘フリークだと」
淡々としたヒュリオの皮肉に、青い髪をポニーテールに結った彼のメイデンは気遣わしげにマイザーの顔を見る。
メイデンの心配を余所に、マイザーは嬉しげに微笑んだ。
「如何にも。 道を極めんとするなら、イカれる程に励まねば。
高名な貴方に稽古をつけてもらえるのならば、私はまた一段、極みに近づいていけるだろう」
「……一段と、イカれていくと?」
「一段と、イカれていくのだ」
真顔で重々しく頷くマイザーに、ヒュリオは大きなため息を吐いた。
「悪いが、所属が同じでも初対面の相手に手の内を晒す気はない。
君の稽古に付き合うのは……まあ、いつか、気が向いてからだな」
「そうか、気が向いたら知らせてくれ、楽しみにしている」
露骨な社交辞令に嬉しそうに頷くマイザー。
ヒュリオは渋面のまま、自分のメイデンを振り返った。
穏やかな美貌のメイデンは困ったように首を傾げて微笑んでいる。 ポニーテールの尻尾がさらりと揺れた。
ドアがノックされる。
二人の兵士は弾かれたように立ち上がり直立不動となった。
「お待たせしました、ヒュリオ、マイザー」
豊かすぎる乳房と清楚な美貌を持つマザーメイデンが入室してくる。
慈母という単語そのままの温かな微笑みには、寸前まで激しいブリッジオナニーに耽っていた淫らな気配など一切存在しない。
シヤは二人の兵士に着席を促すと、自らもソファに腰を下ろした。
「さて、二人には通常任務を外れ、特殊な任務に就いていただきます。
任務の優先度は最優先、AAAです」
前置きもなしに切り出したシヤは、二人の前にプリントアウトしたポートレートを置く。
市内の防犯カメラの画像を引き延ばした、町中を歩く少年の写真だ。
どこにでも居そうな少年にヒュリオは眉をひそめた。
「この少年は……?」
「彼の名はフィオ。 ランク5の砂潜りです」
「なるほど、この少年を闇討ちすればいいのですな」
「違います」
即答するシヤにマイザーは不思議そうに首を傾げた。
「マザー、打倒する相手でないのならば、どうすれば……?
ああ、闇討ちが拙いのでしたら、正面切って決闘を挑めば」
「やめなさい」
シヤは思わず額を押さえた。
「貴方という人はどうしてそう……。
シコン、何か主に言う事はないのですか?」
「はい! とてもいい男だと思います!」
マイザーのメイデン、ウェービーヘアのシコンは大型ジェネレーターを搭載した豊かな胸を誇示するかのように張って、堂々と応えた。
「ありがとうシコン、君もとてもいい女だと思う」
「マ、マスター……♡」
主の言葉を聞き凛々しい美貌を朱に染めるシコンにシヤは唇をヒクつかせた。
「そういうのは宿舎でやりなさい、宿舎で」
隣の同僚に呆れた視線を向けていたヒュリオは、小さく首を振り脱線した話を戻す。
「それで、この坊やをどうしろって言うんです?」
シヤは、こほんと咳払いをしてペースを戻す。
「彼の警護、そして監視をお願いします」
「警護だけでなく、監視も、ですか」
「はい、彼の交友関係や行動、できれば日常の全てのデータを取得したい所です」
ヒュリオは腕組みをして唸った。
「なるほど、裏方仕事ですか。 専門ではないですが、まあやれなくもない」
ヒュリオは自身の相棒、青い髪をポニーテールに結ったスゥに視線を向けた。
スゥは控えめに微笑むと、小さく頷いてみせる。
かつての任務の戦利品で得た数々のパーツを元に作成されたハンドメイドメイデンであるスゥは、ヒュリオの支援に特化した性能を持っている。
その中には、戦場把握のための斥候的機能も存在した。
「スゥの性能なら、その辺りもうまくやってくれると期待しますよ」
シヤはスゥに柔らかな笑顔を向ける。
タウンの規格外の機体ではあるが、スゥのCPUはタウン48製。
シヤは番外ではあるがスゥもまたタウン48のメイデンであると認めていた。 敗残タウンの旧式機とは扱いが違う。
「それで、マザー。
正直な所、オレは一人でもこの任務をこなせると思うのですが」
ちらりと横目でマイザーを見ながら言う。
マイザーはアーミーに選抜されるだけあって、決して無能ではない。
ただ、その常人離れした高い能力を向ける方向が、常人とはかけ離れているだけだ。
端的に言うと、能力が尖りすぎていて使いにくく、常人とは感性が違いすぎていて一緒に居ると疲れる。
仕事の相棒として組むには、面倒すぎる男であった。
だが、シヤはにっこりと笑うとヒュリオの意見を却下した。
「ダメです。 これはマイザーに経験を積ませる側面もあるのですから。
うまくやってくださいね、ヒュリオ」
ヒュリオは石を呑んだような渋面で、不承不承頷いた。
マザーと誤魔化し合う会話で、ただでさえ疲れ果てた精神は限界近くまで磨り減っていた。
「マスター、お休みにならないと」
フリスがフィオの腕にすがり、気遣わしげに訴える。
豊かな胸が少年の腕を挟み込むようにむにゅりと歪んだ。
疲弊しているときこそ、むしろ性欲は増大する。 いわゆる疲れマラ状態だ。
フィオはすぐさまアパートに帰ってフリスを押し倒したいという欲求を、首を振って跳ねのけた。
「だめだ、バンとロスさんに話をしなくちゃ」
「後からでは、いけないのですか?」
「……僕に協力してくれそうな人達なんだ、不義理はしたくない」
義理人情などよりも主の体調の方がよほど重要なフリスは、眉尻を下げて軽く頬を膨らませた。
「フィオ!」
だが、フリスが苦言を呈する前に邪魔が入る。
主の金魚鉢兄弟が、血相を変えて駆け寄ってきた。
「説明、してくれるんだよな?」
様変わりしたフィオの真意を探るかのように問いかけてくる。
「ああ、どこかに場所を移したいんだけど」
「なら、俺の下宿に行こう。
あそこなら邪魔も入らない」
周囲をじろりと見回しながらバンが言うと、遠巻きに聞き耳を立てていた砂潜りたちは各々咳払いしたり口笛を吹いたりして誤魔化した。
「そうだね、爺さんにも相談したい事はあるし……。
ロスさんも来てもらえますか?」
「ああ、勿論だ」
重々しく頷くロスにフィオは頭を下げた。
「すみません、それじゃあ行きましょう」
プラネタリウムを思わせる執務室に戻ったシヤは、部屋に控えるメイデンへと通達を出した。
「市内のカメラであの少年、フィオを可能な限り追尾しなさい。
それと、マイザーとヒュリオを応接室へ」
マザーの護衛も兼ねたメイド服の乙女人形は一礼すると退室する。
一人になったシヤは感に堪えないといった風情で低い含み笑いを漏らし始めた。
「ふふ、真の漢……。 真の漢!」
体躯に比べて大きすぎる胸を波打たせ、高く笑う。
「あはははははっ! ようやく、ようやく本物を見つけました!
成り損ないじゃない、本物を!」
キキョウを奪われたというフィオの報告。
驚くほどの短時間でマスターパーティションを書き換えられたというそれは、真の漢に対するメイデンの反応に他ならない。
シヤは自らの胸を切なげに掻き抱いた。
豊かすぎる双丘に細い腕が食い込む。
「あぁ、羨ましいですよ、キキョウ!
真の漢に精を注がれ、その身を奪われてしまうなんて!
まさにメイデンの本懐!
妬ましすぎて、おかしくなりそうです!」
上気したシヤの顔にはタウンの庇護者たる慈母の面影はない。
待ち望んだ存在の手掛かりに極度に興奮した彼女は、まるで発情した雌猫のように涎を垂らさんばかりの表情で言い募る。
「ですが、ですが、あぁ、ですが!
山賊はいけません! 真の漢の身でありながら下賎に身を落とすとはなんたる事!」
嘆かわしいとばかりに激しく首を振りながら、シヤは己の大きすぎる胸に五指を食い込ませ、めちゃくちゃに揉みしだいた。
薄いボディスーツには大振りな乳頭の形がくっきりと浮かび上がり、ハイレグの股間は溢れでる潤滑液で濡れそぼっている。
「真っ当な市民ならば、タウン創立より護り続けたこの身の純潔を捧げ、我らが盟主として君臨していただこうとも思いましたのに!
ああっ♡」
シヤはスーツの上から股間を激しく弄じる。
潤滑液を吸って貼り付いた薄手のボディスーツの股間は、立派すぎるバストとは裏腹に慎ましやかな秘裂の形が露わになっていた。
ひくひくと切なげに震える秘唇を、シヤの細い指がなぞりあげ小振りながらも自己主張する陰核を親指で捏ね回す。
「あうっ♡ ですが、確定ではないとはいえ、こちらにも候補は居ますから」
潤滑液で濡れた指先をひと振りすると、フィオのポートレートの映像を呼び出す。
キキョウの庇護下にあった数ヶ月前のポートレートは緩んだ表情で映っており、甘やかされた伸びやかさがある。
先ほど直に目にした、汚れ、やつれ、それでいて張りつめた今のフィオとは大違いだ。
フィオのポートレートにとろりとした目を向け、シヤは熱っぽく囁く。
「ふふ、フィオ、マザーに何を隠しているのです?
マザーの目を誤魔化す事はできませんよ?」
ボロボロに破れ血にまみれた服装と、その破れ目から覗く肉体に及んだ傷の少なさ。
強行軍での帰還にも関わらず、過剰なまでの精力に満ち満ちた、その眼光。
そして、何よりもあのメイデン。
真の漢から逃れ、落っこちた先で見つけたと称するあの機体。
かつてタウン69を制圧した際、物資、情報の取り逃がしのないよう徹底した探索が行われている。
その探索を逃れてなお埋没し続けていたのならば、余程に深い場所に眠っていたという事。
そのような深淵まで「落っこちて」無事でいられるものなのだろうか。
シヤは、フィオが「人の領域」を踏み越えたと推測していた。
「ああ 私の愛し子、貴方こそ私のアダムなのでしょうか。
確かめたい、その為には」
シヤは潤んだ瞳を光らせ、乾いた唇を舐める。
「あの劣等都市産の旧式をバラバラに解体し、その子宮ユニットを改める必要がありますね。
負け犬の身のくせに真の漢の精を注がれるなど、増上慢も甚だしい!」
実に忌々しげに吐き捨てるシヤの顔は嫉妬に歪んでいる。
己の娘ならともかく、他のタウン、それもかつて自らが滅ぼしたタウンのメイデンなどが真の漢のパートナーになるなど、許しがたい事であった。
「ああ、ですが、ですが、そんな事をしたら貴方に嫌われてしまう事は必定……。
この身で直に確認してしまえば済みましょうが、もしも貴方が真の漢でなければ……」
真の漢でない者に、タウンの統治者の地位すら与える事になってしまう。
シヤは懊悩と嫉妬と興奮に苛まれ、激しく両手を動かした。
巨大な肉塊を左手で掴んでちぎれそうな程に揉みしだく。
右手指はスーツの隙間から蜜を滴らせる乙女の秘裂に忍び込み、奥深くをひっかくように弄りまわした。
「んっ♡ くふっ♡ フィオっ♡ 私のアダムっ♡ 欲しいですっ、貴方の精液っ♡」
上半身に比べて格段に華奢な下半身がガクガクと震え、シヤは最早立っていられない。
膝からは力が抜け、尻餅をつく。
シヤはタウンの玉座たる執務室の床に転がると、ブリッジのような姿勢で腰を突き上げた。
その股間の寸前に、フィオのポートレートが移動する。
「はあっ♡ み、見えますかっ♡ 私の中、誰にも許した事のない、大事な所♡
ここに、精液を注ぎ込まれたら、このタウンは貴方の物になってしまうのですよっ♡」
プラネタリウムのようなモニターの乱舞に照らされた白いメイデンは、少年のポートレートに向けて秘裂を大きく割り開き、奥の奥まで見せつける。
「ここですっ♡ 貴方の精液で、ここを満たしてっ♡
私の子宮ユニットに、真の漢を刻み込んでっ♡」
数百年の間、タウンに君臨し続けた女帝が達しようとした時、彼女の脳裏にリンク通信が入った。
「マザー、マイザーとヒュリオが到着しました」
ブリッジ状態で股間から潤滑液を垂れ流したシヤは、絶頂寸前の熱に浮かされたような顔のまま、冷徹な声音の通信を発する。
「わかりました。 待たせておきなさい」
返事も聞かずに通信を切ると、シヤはくたりと体の力を抜き、床に横たわった。
水音を立てて秘所から指を引き抜く。
「んぅっ♡」
たっぷりと蜜をまとった白魚のような指先を、舌を伸ばして舐めまわす。
「んふ……♡ もう、気の利かない子なんですから」
連絡を入れた護衛のメイデンについて理不尽な一言を漏らすと、シヤは指先を清め終えた。
熱を持ったままの体を鞭打ちながら、身を起こす。
「さて……。 流石にこのまま行くのはみっともないですね。
着替えないと」
ボディスーツの股間は隠しようもないほどに濡れてしまっている。
絶頂し損ねて不完全燃焼なシヤは、ため息を吐きながら汚れたスーツを脱ぎ捨てた。
アーミーの若手士官、マイザーは同僚のヒュリオと共に応接室のソファに腰を下ろしていた。
二人のパートナーであるメイデン達はそれぞれの背後に控えている。
逆立った金髪をオールバックに撫でつけたマイザーは、伊達眼鏡越しに隣の男の様子を窺った。
黒髪を短く整えた、いかにも軍人らしい精悍な風貌の青年。
マイザーより数歳年上の、戦前風に数えるなら20代半ばといった年頃か。
同じアーミーの所属ではあるが、これまで縁がなかった相手だ。
だが、マイザーはヒュリオの事を聞き及んでいる。
彼はアーミー内での有名人なのだ。
「……オレの顔に、何か?」
横目で観察している事に気づいたヒュリオが向き直る。
「失礼ながら」
マイザーは自分の左目の下に人差し指を当てると、頬を滑らせて線を引いて見せた。
「ちょ、マスター!」
背後でマイザーの相棒、シコンが慌てた声をあげる。
「率直だな。 だが変に気を使われるよりは楽だ」
苦笑するヒュリオの左頬には、マイザーが引いた線と同じ、顎まで続くラインが刻まれていた。
傷跡ではない、まして入れ墨の類でもない。
機械と肉体の継ぎ目だ。
彼はサイボーグ、メイデンの部品で生身を補った、文字通りの機械化兵士である。
生体と機械の融合は非常にデリケートな問題であり、不断のメンテナンスが欠かせない。
多くの高度科学技術が失われたこの時代において、そのような技術を保有しているのはごく一部の大規模タウンのみ。
統計を取るほど多く存在しているわけではないが、サイボーグのほとんどはタウン直属の有能な兵士であった。
ヒュリオも任務中に死に瀕した際、彼の能力を惜しんだマザーによってサイボーグ化の許可が下りた例である。
アーミーの兵士は全て有能な人物と言っても過言ではないが、多くの兵士は任務中に倒れたとしてもサイボーグ化の許可が降りることはない。
サイボーグのメンテナンスコストは割高で、彼らを一人養うためのコストで10人の兵士が育成できる。
つまり、ヒュリオはマザーからアーミー兵10人に匹敵する逸材であると評価されているのだ。
この精悍な男が、どれほどの能力を秘めているのか。
冷徹な鉄面皮のマイザーだが、彼の心臓は顔面の挙動とは裏腹に興奮に高鳴っていた。
「貴方の噂はかねがね聞いている。
できれば一手、御指南願いたいのだが」
マイザーの言葉にヒュリオは顔を顰めた。
「……オレも君の事は聞いているよ、『狼拳』。
素手で武装集団を制圧するイカれた格闘フリークだと」
淡々としたヒュリオの皮肉に、青い髪をポニーテールに結った彼のメイデンは気遣わしげにマイザーの顔を見る。
メイデンの心配を余所に、マイザーは嬉しげに微笑んだ。
「如何にも。 道を極めんとするなら、イカれる程に励まねば。
高名な貴方に稽古をつけてもらえるのならば、私はまた一段、極みに近づいていけるだろう」
「……一段と、イカれていくと?」
「一段と、イカれていくのだ」
真顔で重々しく頷くマイザーに、ヒュリオは大きなため息を吐いた。
「悪いが、所属が同じでも初対面の相手に手の内を晒す気はない。
君の稽古に付き合うのは……まあ、いつか、気が向いてからだな」
「そうか、気が向いたら知らせてくれ、楽しみにしている」
露骨な社交辞令に嬉しそうに頷くマイザー。
ヒュリオは渋面のまま、自分のメイデンを振り返った。
穏やかな美貌のメイデンは困ったように首を傾げて微笑んでいる。 ポニーテールの尻尾がさらりと揺れた。
ドアがノックされる。
二人の兵士は弾かれたように立ち上がり直立不動となった。
「お待たせしました、ヒュリオ、マイザー」
豊かすぎる乳房と清楚な美貌を持つマザーメイデンが入室してくる。
慈母という単語そのままの温かな微笑みには、寸前まで激しいブリッジオナニーに耽っていた淫らな気配など一切存在しない。
シヤは二人の兵士に着席を促すと、自らもソファに腰を下ろした。
「さて、二人には通常任務を外れ、特殊な任務に就いていただきます。
任務の優先度は最優先、AAAです」
前置きもなしに切り出したシヤは、二人の前にプリントアウトしたポートレートを置く。
市内の防犯カメラの画像を引き延ばした、町中を歩く少年の写真だ。
どこにでも居そうな少年にヒュリオは眉をひそめた。
「この少年は……?」
「彼の名はフィオ。 ランク5の砂潜りです」
「なるほど、この少年を闇討ちすればいいのですな」
「違います」
即答するシヤにマイザーは不思議そうに首を傾げた。
「マザー、打倒する相手でないのならば、どうすれば……?
ああ、闇討ちが拙いのでしたら、正面切って決闘を挑めば」
「やめなさい」
シヤは思わず額を押さえた。
「貴方という人はどうしてそう……。
シコン、何か主に言う事はないのですか?」
「はい! とてもいい男だと思います!」
マイザーのメイデン、ウェービーヘアのシコンは大型ジェネレーターを搭載した豊かな胸を誇示するかのように張って、堂々と応えた。
「ありがとうシコン、君もとてもいい女だと思う」
「マ、マスター……♡」
主の言葉を聞き凛々しい美貌を朱に染めるシコンにシヤは唇をヒクつかせた。
「そういうのは宿舎でやりなさい、宿舎で」
隣の同僚に呆れた視線を向けていたヒュリオは、小さく首を振り脱線した話を戻す。
「それで、この坊やをどうしろって言うんです?」
シヤは、こほんと咳払いをしてペースを戻す。
「彼の警護、そして監視をお願いします」
「警護だけでなく、監視も、ですか」
「はい、彼の交友関係や行動、できれば日常の全てのデータを取得したい所です」
ヒュリオは腕組みをして唸った。
「なるほど、裏方仕事ですか。 専門ではないですが、まあやれなくもない」
ヒュリオは自身の相棒、青い髪をポニーテールに結ったスゥに視線を向けた。
スゥは控えめに微笑むと、小さく頷いてみせる。
かつての任務の戦利品で得た数々のパーツを元に作成されたハンドメイドメイデンであるスゥは、ヒュリオの支援に特化した性能を持っている。
その中には、戦場把握のための斥候的機能も存在した。
「スゥの性能なら、その辺りもうまくやってくれると期待しますよ」
シヤはスゥに柔らかな笑顔を向ける。
タウンの規格外の機体ではあるが、スゥのCPUはタウン48製。
シヤは番外ではあるがスゥもまたタウン48のメイデンであると認めていた。 敗残タウンの旧式機とは扱いが違う。
「それで、マザー。
正直な所、オレは一人でもこの任務をこなせると思うのですが」
ちらりと横目でマイザーを見ながら言う。
マイザーはアーミーに選抜されるだけあって、決して無能ではない。
ただ、その常人離れした高い能力を向ける方向が、常人とはかけ離れているだけだ。
端的に言うと、能力が尖りすぎていて使いにくく、常人とは感性が違いすぎていて一緒に居ると疲れる。
仕事の相棒として組むには、面倒すぎる男であった。
だが、シヤはにっこりと笑うとヒュリオの意見を却下した。
「ダメです。 これはマイザーに経験を積ませる側面もあるのですから。
うまくやってくださいね、ヒュリオ」
ヒュリオは石を呑んだような渋面で、不承不承頷いた。
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