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「ヒュリオ、私はどう動いたらいいのだろうか?」
応接室から出たマイザーはヒュリオにそう問いかけた。
ヒュリオは小さく嘆息すると、バリバリと頭を掻いた。
「……君も基礎教練は受けているだろう。
まずはそれに従って自分で考えてみろ」
それっぽい事を言っているが、実の所丸投げである。
ヒュリオにはマイザーの面倒を見る気は全くなかった。
「判った、では失礼する」
マイザーは踵を合わせ、律儀に一礼するとシコンを伴い駆け足で去っていった。
「……よろしいのですか、マスター」
意気揚々と走り去る若き主従の後ろ姿に、スゥは不安を隠しきれない口調で主に問う。
「……ターゲットと相棒、両方の子守をするなんて冗談じゃないからな。
彼も一人前のアーミーだ、一人でも上手くやるさ」
肩を竦め、歩き始める。
ヒュリオが歩を進める度に、重々しい足音が鳴った。 機械化された彼の体は、常人よりも格段に重たい。
「スゥ、警邏部に連絡して防犯カメラの映像を回させろ。
ターゲットの坊やの位置情報を確認するんだ。
AAAの任務だ、ある程度はゴリ押しが利くだろう。
それと、坊やの住所も調べておいてくれ」
「了解……。
確認、取れました。
ターゲットは現在、タウン外苑部の私営メンテナンスファクトリー、ヘイゲン整備工場に居ます」
警邏部とリンク通信を行ったスゥは、てきぱきと情報を伝達する。
「ふむ、交友関係がある相手なのか、押さえておきたいが……」
ヒュリオは精悍なラインを描く顎に指を当て、黙考した。
「……いや、先に監視の土台を作ろう。
スゥ、今の内に彼の家に監視網を張ってくれ。
盗聴器の設置と監視ポイントの設営だ」
「承知しました」
「相手もメイデンを連れている。
センサーに引っかけられないよう、上手く偽装してくれ」
スゥは微笑んで頷くと、走り始める。
主に先行して、戦場を整えるのが彼女の役目。
戦闘任務ではなくとも、その役目に変わりはないのだ。
「さて……」
走り去るスゥの後ろ姿、背中で揺れるポニーテールを眺めながら、ヒュリオはマザーの思惑について思考を巡らせた。
どこにでも居そうな少年を、アーミーの兵士を二人も使って監視、警護するという事。
明らかに監視向けの人材ではないマイザーをこの任務に配置した事。
疑問点はこの二点だ。
まず、あの少年の正体については一端保留する。 与えられた情報が少ない以上、仕方ない。
だが、あの突飛な相棒をつけられたという点からある程度の推測は可能だ。
マイザーという青年はアーミーの兵士の中でも異質な男だ。
その精神性ではない。
単純にその能力が異質なのだ。
如何なアーミーの兵士といえど、徒手空拳で銃を持った相手を制圧するのは苦労する。
それを嬉々としてやってしまうマイザーは、アーミーの兵士達の間でも「何か、あいつはモノが違う」として遠巻きにされていた。
彼は、人の枠を踏み外しているのだ。
かつてのヒュリオ自身と同じく。
ヒュリオとマイザーの共通点はそこだ。
そして、この二人がこの任務に配置されたという事は。
「つまり、あの坊やは三人目、なのか」
人の枠を越えた異質な「力」の片鱗を示した者。
ヒュリオは自身の経験から、マザーがそれに固執している事を知っている。
そして、死に掛け機械化によって命を繋いだものの、力の大半を失った彼にマザーが興味を失った事も。
「……マイザーもどうやらお眼鏡に叶わなかったようだしな」
シヤの基準がどうなのか知らないが、かつての自分の時ほどマイザーに興味を持っていないように見受けられる。
単純にあの格闘馬鹿の性格を持て余しているだけかも知れないが。
「あの坊やが三人目として、それでマザーのお眼鏡に叶ったなら。
……どうなるんだ?」
答えの出ない疑問だ。 だが、嫌な予感だけは拭えない。
ヒュリオはガリガリと頭を掻くと、思考を打ち切った。
嫌な予感があったとしても、戦場に出ないわけにはいかない。
兵士とはそういうものなのだ。
メンテナンスポッドの並んだ整備室は、ヘイゲン整備工場の設備で最も広い部屋である。
砂潜り三人とそのパートナー、さらに家主も含めた7人は、あるいは蓋を閉じたメンテナンスポッドに腰掛け、あるいは簡易な折りたたみ椅子に腰を下ろし、あるいは床に直に座り込んで、沈黙していた。
床に座り込んだフィオが、キキョウを奪われフリスを手に入れた顛末を語り終えてから、場を沈黙が支配している。
かすかに響くメンテナンスポッドの低い稼働音が耳障りであった。
「にわかには信じ難いな……。
あのキキョウが、生身の人間に真っ正面から敗北するとは」
ロスはようやく重い口を開く。
これはメイデンに親しみ、その能力を知る者にとって当然の感覚であった。
ロスはキキョウがゼンクのパートナーであった頃から、何度となく共に仕事をこなしている。
彼女の高い性能を実感として熟知していた。
キキョウはタウン48屈指の性能を持つAクラス戦闘メイデン。
人間が彼女を止めようとするのならば、大隊クラスの兵力を用意するか、陸上戦艦でも持ち出すか、その位しか手立てがない存在なのだ。
「相手の男がサイボーグだとでも言うのなら、まだわからんでもないのじゃが」
折りたたみ椅子に胡座をかいたヘイゲン老は腕組みをして唸った。
「性質の悪い冗談だぜ……」
メンテナンスポッドにスコールと並んで腰掛けたバンは両手でバリバリと頭を掻きむしった。
その顔は苦渋に歪んでいる。
キキョウは彼にとっても初恋の人。
友の伴侶ではあるが、その存在は心の聖域に有り続け、敬愛を捧げる相手なのだ。
酷い冗談を仕掛けられたと思い込みたいが、こんな冗談を言うような友ではないし、彼の隣にはキキョウの姿はなく、代わりに見慣れないメイデンがいた。
そのメイデンに、バンの相棒は物言いたげな目を向けている。
「キキョウねえさま……」
キキョウの居るべき場所に、澄まし顔で居座る新参者が気に食わないのだ。
眉を寄せ、喉の奥で低い唸りをあげながらフリスを睨んでいる。
睨まれている方は一切意に介していないように、主の方を見ていたが。
「なあ、フィオ。
仕方ない状況だったのは判る、けどよぉ……。
それでも、なんとか、ならなかったのか?」
バンの口から弱々しく漏れるのは、繰り言にすぎない。
金魚鉢兄弟の言葉に首を上げたフィオは、炯々と光る目でバンを睨む。
だが、奥歯を噛みしめた彼の口から言葉は出ず、うなだれてしまった。
「フィオ、何とか言えよ、おい」
バンの弱い声音は、責めるものではない。
彼もまた途方に暮れているのだ。
だが、フィオの隣に横座りしたフリスは、バンの顔を見上げて反論した。
「バンさん、やめてください。
マスターの命があっただけでも幸いな状況だったのですから」
「あんたはその場に居たわけじゃないだろう、フリスさん」
バンの言葉はフリスの癇に障るものだ。
自分がその場に居れば、フィオを護れたとフリスは自負している。
その確信に水を差されたフリスは下がり気味の眉を上げ、下からねめつけるようにバンを睨む。
「う……」
美貌に怨念のような憤りを湛えて睨みつけてくるフリスに、バンは思わず息を呑んだ。
スコールはオッドアイを鋭く光らせるとメンテナンスポッドから飛び降り、主とフリスの間に割って入った。
「Grrr……」
喉を唸らせながら、フリスを睨みつける。
フリスはスコールのオッドアイを真っ向から受け止めたが、ふと視線を少し下げた。
ついで自分の胸元に目を向けると、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「なっ!」
何を比べ、勝ち誇られたのかを理解したスコールは、怒りと羞恥に顔を赤く染め、フリスとは比べ物にならないくらい貧弱な胸元を両手で隠した。
「ううっ、きらいっ! このこ、きらいっ!」
「大丈夫だスコール、俺は小さくても好きだから」
慌てて相棒の肩を抱き、慰めにならない慰めの言葉を掛けるバンに、フリスは勝者の笑みを浮かべて鼻を鳴らした。
「その辺にしとけよ、お前等」
ロスがため息混じりに若い衆の脱線を止める。
「それで、真の漢だっけか。
また厄介そうなネタだな……」
「すみません、でも僕だけで抱えるには大ネタすぎて」
フィオはマザーにも話していない真の漢についての情報を一同に告げていた。
どうやら、己がその真の漢になってしまったらしい事も。
それだけ、彼がこの面子を頼りにしているという証であった。
「真の漢か……。
メイデンの機能のあれこれにリミッターが掛けられていたのは、本来の主の元で開花するようにという仕掛けだったんじゃなあ」
ヘイゲン老は長年の疑問が解消し、どこかすっきりした表情で頷く。
「まあ、ワシらが真の漢とやらの前座扱いなのは業腹じゃが、マザーはそいつらを集めて何をさせるつもりなんじゃろうかのう」
「さぁ……。
下手に僕が真の漢だってバレると幽閉でもされちゃいそうだから、あまり突っ込んだ話もできなかったし」
フィオの漠然とした予想は実際の所、正しかった。
彼が知る由もないが、シヤにフィオが真の漢であると知れた場合、ガバメント内に幽閉されるのは確実である。
数百年もの間、待ち続けた想い人が現れたとあれば、シヤの理性は完全に蒸発してしまう。
堅牢無比なガバメントで主を保護するという名目の元、邪魔なフリスを排除して身柄を拘束し、執務室で自由もなくひたすらシヤの子宮ユニットに精液を注がされ続ける爛れた日々が待っている。
彼は、かろうじて精液牧場の牛扱いになる未来を回避していた。
「厄ネタは勘弁だが、古馴染みのキキョウを助ける為とあれば仕方ない。
アイネズ、この件はマザーには報告厳禁だぞ」
「はい、承知してます」
主への忠誠心が最上位なのはメイデンとして当然だが、基本機能としてタウンへの忠誠心も植え付けられている。
ロスは命令という形で明示する事で、アイネズに念押しした。
「とはいえ、どこから手を着けたもんか……。
マザーに勘ぐられるのも拙いから、おおっぴらに情報収集をする訳にもいかんし。
こいつは骨だぞ」
「はい……」
ロスの言葉にフィオはうなだれる。
「まあ、お前のお陰で俺はアイネズを取り戻せたんだ。
あの時と同じだ、何とか知恵を絞ってキキョウを取り戻すとしようぜ」
不器用に頬を歪めながらウィンクしてみせるベテランに、フィオの強ばった顔はようやく解れた。
同僚に子守は嫌だと見放されてしまったマイザーではあるが、彼自身は全くもってその事実に気付いていなかった。
実績有る先輩に与えられた「基本を見直して物事に当たれ」というアドバイスは、警護という任務への苦手意識を吹き飛ばして余りある。
マイザーはヒュリオの言葉を非常に都合良く解釈していた。
一見クールな細マッチョイケメンなマイザーの脳味噌は、恐ろしくポジティブで単純なお手軽システムであった。
だが、単純ゆえに一端方向性を定めてしまえば、その熱意を全力で注ぎ込む事ができる。
「シコン、警邏部に連絡して、ターゲットの少年の位置情報がわかるか確認してくれ」
「了解!」
まずは目標の確認。
この辺りはベテランのヒュリオと同じ手順である。
「ふむ、ヘイゲン整備工場か……。
行ってみよう」
実際に足を運ぶ点は先輩と手法が違っていたが、図らずも手分けした形になっていた。
タウン48のロゴが胴体に刻まれた兵員輸送車を借りだし、自らハンドルを握ってタウン外苑部へと足を伸ばす。
助手席に座るシコンは乙種装備の点検に余念がない。
その凛々しい美貌にはあからさまな不満の色がある。
先日、甲種装備を持ち出して密輸商人のアジトを強襲した際、シヤ直々にしこたま怒られたのだ。
「敵を倒す火力は大きければ大きいほどいいのに、理不尽だわー……」
ぶつぶつ言いながらも押しつけられた乙種装備の点検を終えたシコンに、マイザーは大きく頷き同意した。
「獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言う。
あいにくデータベースでしか獅子も兎も見た事がないが、己の数段下の敵に油断をして破れたとあっては恥晒し極まるというもの。
マザーの倹約主義にも困ったものだ」
倹約ではなく、単純に町中で振り回す武器のレベルを考えろと言う話なのだが、バトルジャンキー主従にはどこ吹く風であった。
「さて、この辺りだが……。 む?」
マイザーの鋭敏な視力は、目的の整備工場の周囲にうろつく不審者をいち早く捉えていた。
「ふむ……。 護衛という事は障害を排除せねばならんという事だったな?」
兵員輸送車を停めたマイザーは、一人降車した。
シコンはいつでも車を動かせるよう車内に待機。
ヒュリオには脳味噌までマッスルと疑われているマイザーであるが、このくらいの考えは回るのだ。
ごく無造作でありながら一切足音を立てない独特の歩法で不審者に近づく。
工場の壁の隙間から中を覗こうとする中年男の背後にそっと立つ。
「失礼、何をしているのかな?」
「うおっ!?」
いきなり声を掛けられた中年男は文字通り飛び上がって驚き、次いで目を真ん丸に見開いた。
「ア、アーミー!?」
マイザーの青い制服を見るなり、脱兎の勢いで逃げ始める。
「シコン! 回り込め!」
すかさず飛んだマイザーの指示で、シコンが兵員輸送車で男の進路を塞ぐ。
シコンはドアを撥ね開けると、乙種装備の軽機関銃を突き出した。
「ホールドアップよ! 動いてもいいのよ! ハチの巣だから!」
「や、やめっ! やめてくれっ!」
凶悪な銃口で逃げ道を塞がれた中年男はその場にへたり込んだ。
シコンは銃口を向けたまま、男の顔をタウンのデータベースで画像照会。 砂潜りの登録を発見する。
「ランク4のグレンクスです、マスター。 ターゲットの友人が前に所属していたチームのリーダーですよ」
「ふむ、何をしていたのかな、こんな所で」
マイザーはグレンクスの襟首を掴んで立ち上がらせた。
「メ、メイデンの整備の予算を聞きに来たんだよ!」
「……その割りにはメイデンを持ってないようだが?」
「今から買うんだよ! なんだよ、アーミーの兵隊さんは善良な納税者を脅すのが仕事なのかよ!」
グレンクスは裏返った甲高い声でやけくそ気味に罵りをあげた。
マイザーは耳障りな罵声に顔を顰めつつ尋問する。
「……あんな所から何を覗こうとしていた?」
「ションベンしようとしてたんだよ! 引っ込んじまったじゃねえか!」
「何故、私が声を掛けた途端に逃げ出したのだ?」
「いきなりあんたらの制服見せられたら驚くだろうが! アーミーなんか怖いんだよ!」
タウンの守護者たるアーミーが市民の恐怖の対象であったとは。 マイザーはちょっと凹んだ。
「……判った、すまなかったな。
漏れないうちにトイレに行きたまえ」
「あ、あぁ」
グレンクスはマイザーが襟首から手を離すと、鼠のような素早さで立ち去っていく。
「いいんですか、マスター」
「仮に何かあったとしても、今は彼を捕えるような理由もないからな……」
マイザーは秀麗な顔を歪めて嘆息した。
「何とも面倒だ、厄介事は全部殴りつけて解決できれば気が楽だと言うのに」
主と波長ぴったりのメイデンは大きく頷いて同意した。
「アーミーが出張ってるだと? やっぱ何かあるんだな」
マイザーの手を逃れて路地裏を歩きながら、グレンクスは呟いた。
「ターゲット、あの話ぶりだと棚ボタ小僧の事か?
アーミーも注目してるし、新しいメイデンもどっかから手に入れてやがる。
臭いやがるぜ、儲けの臭いが」
久しぶりに美味い汁が吸えるかもしれない。
グレンクスは皮算用にニタリと笑った。
応接室から出たマイザーはヒュリオにそう問いかけた。
ヒュリオは小さく嘆息すると、バリバリと頭を掻いた。
「……君も基礎教練は受けているだろう。
まずはそれに従って自分で考えてみろ」
それっぽい事を言っているが、実の所丸投げである。
ヒュリオにはマイザーの面倒を見る気は全くなかった。
「判った、では失礼する」
マイザーは踵を合わせ、律儀に一礼するとシコンを伴い駆け足で去っていった。
「……よろしいのですか、マスター」
意気揚々と走り去る若き主従の後ろ姿に、スゥは不安を隠しきれない口調で主に問う。
「……ターゲットと相棒、両方の子守をするなんて冗談じゃないからな。
彼も一人前のアーミーだ、一人でも上手くやるさ」
肩を竦め、歩き始める。
ヒュリオが歩を進める度に、重々しい足音が鳴った。 機械化された彼の体は、常人よりも格段に重たい。
「スゥ、警邏部に連絡して防犯カメラの映像を回させろ。
ターゲットの坊やの位置情報を確認するんだ。
AAAの任務だ、ある程度はゴリ押しが利くだろう。
それと、坊やの住所も調べておいてくれ」
「了解……。
確認、取れました。
ターゲットは現在、タウン外苑部の私営メンテナンスファクトリー、ヘイゲン整備工場に居ます」
警邏部とリンク通信を行ったスゥは、てきぱきと情報を伝達する。
「ふむ、交友関係がある相手なのか、押さえておきたいが……」
ヒュリオは精悍なラインを描く顎に指を当て、黙考した。
「……いや、先に監視の土台を作ろう。
スゥ、今の内に彼の家に監視網を張ってくれ。
盗聴器の設置と監視ポイントの設営だ」
「承知しました」
「相手もメイデンを連れている。
センサーに引っかけられないよう、上手く偽装してくれ」
スゥは微笑んで頷くと、走り始める。
主に先行して、戦場を整えるのが彼女の役目。
戦闘任務ではなくとも、その役目に変わりはないのだ。
「さて……」
走り去るスゥの後ろ姿、背中で揺れるポニーテールを眺めながら、ヒュリオはマザーの思惑について思考を巡らせた。
どこにでも居そうな少年を、アーミーの兵士を二人も使って監視、警護するという事。
明らかに監視向けの人材ではないマイザーをこの任務に配置した事。
疑問点はこの二点だ。
まず、あの少年の正体については一端保留する。 与えられた情報が少ない以上、仕方ない。
だが、あの突飛な相棒をつけられたという点からある程度の推測は可能だ。
マイザーという青年はアーミーの兵士の中でも異質な男だ。
その精神性ではない。
単純にその能力が異質なのだ。
如何なアーミーの兵士といえど、徒手空拳で銃を持った相手を制圧するのは苦労する。
それを嬉々としてやってしまうマイザーは、アーミーの兵士達の間でも「何か、あいつはモノが違う」として遠巻きにされていた。
彼は、人の枠を踏み外しているのだ。
かつてのヒュリオ自身と同じく。
ヒュリオとマイザーの共通点はそこだ。
そして、この二人がこの任務に配置されたという事は。
「つまり、あの坊やは三人目、なのか」
人の枠を越えた異質な「力」の片鱗を示した者。
ヒュリオは自身の経験から、マザーがそれに固執している事を知っている。
そして、死に掛け機械化によって命を繋いだものの、力の大半を失った彼にマザーが興味を失った事も。
「……マイザーもどうやらお眼鏡に叶わなかったようだしな」
シヤの基準がどうなのか知らないが、かつての自分の時ほどマイザーに興味を持っていないように見受けられる。
単純にあの格闘馬鹿の性格を持て余しているだけかも知れないが。
「あの坊やが三人目として、それでマザーのお眼鏡に叶ったなら。
……どうなるんだ?」
答えの出ない疑問だ。 だが、嫌な予感だけは拭えない。
ヒュリオはガリガリと頭を掻くと、思考を打ち切った。
嫌な予感があったとしても、戦場に出ないわけにはいかない。
兵士とはそういうものなのだ。
メンテナンスポッドの並んだ整備室は、ヘイゲン整備工場の設備で最も広い部屋である。
砂潜り三人とそのパートナー、さらに家主も含めた7人は、あるいは蓋を閉じたメンテナンスポッドに腰掛け、あるいは簡易な折りたたみ椅子に腰を下ろし、あるいは床に直に座り込んで、沈黙していた。
床に座り込んだフィオが、キキョウを奪われフリスを手に入れた顛末を語り終えてから、場を沈黙が支配している。
かすかに響くメンテナンスポッドの低い稼働音が耳障りであった。
「にわかには信じ難いな……。
あのキキョウが、生身の人間に真っ正面から敗北するとは」
ロスはようやく重い口を開く。
これはメイデンに親しみ、その能力を知る者にとって当然の感覚であった。
ロスはキキョウがゼンクのパートナーであった頃から、何度となく共に仕事をこなしている。
彼女の高い性能を実感として熟知していた。
キキョウはタウン48屈指の性能を持つAクラス戦闘メイデン。
人間が彼女を止めようとするのならば、大隊クラスの兵力を用意するか、陸上戦艦でも持ち出すか、その位しか手立てがない存在なのだ。
「相手の男がサイボーグだとでも言うのなら、まだわからんでもないのじゃが」
折りたたみ椅子に胡座をかいたヘイゲン老は腕組みをして唸った。
「性質の悪い冗談だぜ……」
メンテナンスポッドにスコールと並んで腰掛けたバンは両手でバリバリと頭を掻きむしった。
その顔は苦渋に歪んでいる。
キキョウは彼にとっても初恋の人。
友の伴侶ではあるが、その存在は心の聖域に有り続け、敬愛を捧げる相手なのだ。
酷い冗談を仕掛けられたと思い込みたいが、こんな冗談を言うような友ではないし、彼の隣にはキキョウの姿はなく、代わりに見慣れないメイデンがいた。
そのメイデンに、バンの相棒は物言いたげな目を向けている。
「キキョウねえさま……」
キキョウの居るべき場所に、澄まし顔で居座る新参者が気に食わないのだ。
眉を寄せ、喉の奥で低い唸りをあげながらフリスを睨んでいる。
睨まれている方は一切意に介していないように、主の方を見ていたが。
「なあ、フィオ。
仕方ない状況だったのは判る、けどよぉ……。
それでも、なんとか、ならなかったのか?」
バンの口から弱々しく漏れるのは、繰り言にすぎない。
金魚鉢兄弟の言葉に首を上げたフィオは、炯々と光る目でバンを睨む。
だが、奥歯を噛みしめた彼の口から言葉は出ず、うなだれてしまった。
「フィオ、何とか言えよ、おい」
バンの弱い声音は、責めるものではない。
彼もまた途方に暮れているのだ。
だが、フィオの隣に横座りしたフリスは、バンの顔を見上げて反論した。
「バンさん、やめてください。
マスターの命があっただけでも幸いな状況だったのですから」
「あんたはその場に居たわけじゃないだろう、フリスさん」
バンの言葉はフリスの癇に障るものだ。
自分がその場に居れば、フィオを護れたとフリスは自負している。
その確信に水を差されたフリスは下がり気味の眉を上げ、下からねめつけるようにバンを睨む。
「う……」
美貌に怨念のような憤りを湛えて睨みつけてくるフリスに、バンは思わず息を呑んだ。
スコールはオッドアイを鋭く光らせるとメンテナンスポッドから飛び降り、主とフリスの間に割って入った。
「Grrr……」
喉を唸らせながら、フリスを睨みつける。
フリスはスコールのオッドアイを真っ向から受け止めたが、ふと視線を少し下げた。
ついで自分の胸元に目を向けると、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「なっ!」
何を比べ、勝ち誇られたのかを理解したスコールは、怒りと羞恥に顔を赤く染め、フリスとは比べ物にならないくらい貧弱な胸元を両手で隠した。
「ううっ、きらいっ! このこ、きらいっ!」
「大丈夫だスコール、俺は小さくても好きだから」
慌てて相棒の肩を抱き、慰めにならない慰めの言葉を掛けるバンに、フリスは勝者の笑みを浮かべて鼻を鳴らした。
「その辺にしとけよ、お前等」
ロスがため息混じりに若い衆の脱線を止める。
「それで、真の漢だっけか。
また厄介そうなネタだな……」
「すみません、でも僕だけで抱えるには大ネタすぎて」
フィオはマザーにも話していない真の漢についての情報を一同に告げていた。
どうやら、己がその真の漢になってしまったらしい事も。
それだけ、彼がこの面子を頼りにしているという証であった。
「真の漢か……。
メイデンの機能のあれこれにリミッターが掛けられていたのは、本来の主の元で開花するようにという仕掛けだったんじゃなあ」
ヘイゲン老は長年の疑問が解消し、どこかすっきりした表情で頷く。
「まあ、ワシらが真の漢とやらの前座扱いなのは業腹じゃが、マザーはそいつらを集めて何をさせるつもりなんじゃろうかのう」
「さぁ……。
下手に僕が真の漢だってバレると幽閉でもされちゃいそうだから、あまり突っ込んだ話もできなかったし」
フィオの漠然とした予想は実際の所、正しかった。
彼が知る由もないが、シヤにフィオが真の漢であると知れた場合、ガバメント内に幽閉されるのは確実である。
数百年もの間、待ち続けた想い人が現れたとあれば、シヤの理性は完全に蒸発してしまう。
堅牢無比なガバメントで主を保護するという名目の元、邪魔なフリスを排除して身柄を拘束し、執務室で自由もなくひたすらシヤの子宮ユニットに精液を注がされ続ける爛れた日々が待っている。
彼は、かろうじて精液牧場の牛扱いになる未来を回避していた。
「厄ネタは勘弁だが、古馴染みのキキョウを助ける為とあれば仕方ない。
アイネズ、この件はマザーには報告厳禁だぞ」
「はい、承知してます」
主への忠誠心が最上位なのはメイデンとして当然だが、基本機能としてタウンへの忠誠心も植え付けられている。
ロスは命令という形で明示する事で、アイネズに念押しした。
「とはいえ、どこから手を着けたもんか……。
マザーに勘ぐられるのも拙いから、おおっぴらに情報収集をする訳にもいかんし。
こいつは骨だぞ」
「はい……」
ロスの言葉にフィオはうなだれる。
「まあ、お前のお陰で俺はアイネズを取り戻せたんだ。
あの時と同じだ、何とか知恵を絞ってキキョウを取り戻すとしようぜ」
不器用に頬を歪めながらウィンクしてみせるベテランに、フィオの強ばった顔はようやく解れた。
同僚に子守は嫌だと見放されてしまったマイザーではあるが、彼自身は全くもってその事実に気付いていなかった。
実績有る先輩に与えられた「基本を見直して物事に当たれ」というアドバイスは、警護という任務への苦手意識を吹き飛ばして余りある。
マイザーはヒュリオの言葉を非常に都合良く解釈していた。
一見クールな細マッチョイケメンなマイザーの脳味噌は、恐ろしくポジティブで単純なお手軽システムであった。
だが、単純ゆえに一端方向性を定めてしまえば、その熱意を全力で注ぎ込む事ができる。
「シコン、警邏部に連絡して、ターゲットの少年の位置情報がわかるか確認してくれ」
「了解!」
まずは目標の確認。
この辺りはベテランのヒュリオと同じ手順である。
「ふむ、ヘイゲン整備工場か……。
行ってみよう」
実際に足を運ぶ点は先輩と手法が違っていたが、図らずも手分けした形になっていた。
タウン48のロゴが胴体に刻まれた兵員輸送車を借りだし、自らハンドルを握ってタウン外苑部へと足を伸ばす。
助手席に座るシコンは乙種装備の点検に余念がない。
その凛々しい美貌にはあからさまな不満の色がある。
先日、甲種装備を持ち出して密輸商人のアジトを強襲した際、シヤ直々にしこたま怒られたのだ。
「敵を倒す火力は大きければ大きいほどいいのに、理不尽だわー……」
ぶつぶつ言いながらも押しつけられた乙種装備の点検を終えたシコンに、マイザーは大きく頷き同意した。
「獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言う。
あいにくデータベースでしか獅子も兎も見た事がないが、己の数段下の敵に油断をして破れたとあっては恥晒し極まるというもの。
マザーの倹約主義にも困ったものだ」
倹約ではなく、単純に町中で振り回す武器のレベルを考えろと言う話なのだが、バトルジャンキー主従にはどこ吹く風であった。
「さて、この辺りだが……。 む?」
マイザーの鋭敏な視力は、目的の整備工場の周囲にうろつく不審者をいち早く捉えていた。
「ふむ……。 護衛という事は障害を排除せねばならんという事だったな?」
兵員輸送車を停めたマイザーは、一人降車した。
シコンはいつでも車を動かせるよう車内に待機。
ヒュリオには脳味噌までマッスルと疑われているマイザーであるが、このくらいの考えは回るのだ。
ごく無造作でありながら一切足音を立てない独特の歩法で不審者に近づく。
工場の壁の隙間から中を覗こうとする中年男の背後にそっと立つ。
「失礼、何をしているのかな?」
「うおっ!?」
いきなり声を掛けられた中年男は文字通り飛び上がって驚き、次いで目を真ん丸に見開いた。
「ア、アーミー!?」
マイザーの青い制服を見るなり、脱兎の勢いで逃げ始める。
「シコン! 回り込め!」
すかさず飛んだマイザーの指示で、シコンが兵員輸送車で男の進路を塞ぐ。
シコンはドアを撥ね開けると、乙種装備の軽機関銃を突き出した。
「ホールドアップよ! 動いてもいいのよ! ハチの巣だから!」
「や、やめっ! やめてくれっ!」
凶悪な銃口で逃げ道を塞がれた中年男はその場にへたり込んだ。
シコンは銃口を向けたまま、男の顔をタウンのデータベースで画像照会。 砂潜りの登録を発見する。
「ランク4のグレンクスです、マスター。 ターゲットの友人が前に所属していたチームのリーダーですよ」
「ふむ、何をしていたのかな、こんな所で」
マイザーはグレンクスの襟首を掴んで立ち上がらせた。
「メ、メイデンの整備の予算を聞きに来たんだよ!」
「……その割りにはメイデンを持ってないようだが?」
「今から買うんだよ! なんだよ、アーミーの兵隊さんは善良な納税者を脅すのが仕事なのかよ!」
グレンクスは裏返った甲高い声でやけくそ気味に罵りをあげた。
マイザーは耳障りな罵声に顔を顰めつつ尋問する。
「……あんな所から何を覗こうとしていた?」
「ションベンしようとしてたんだよ! 引っ込んじまったじゃねえか!」
「何故、私が声を掛けた途端に逃げ出したのだ?」
「いきなりあんたらの制服見せられたら驚くだろうが! アーミーなんか怖いんだよ!」
タウンの守護者たるアーミーが市民の恐怖の対象であったとは。 マイザーはちょっと凹んだ。
「……判った、すまなかったな。
漏れないうちにトイレに行きたまえ」
「あ、あぁ」
グレンクスはマイザーが襟首から手を離すと、鼠のような素早さで立ち去っていく。
「いいんですか、マスター」
「仮に何かあったとしても、今は彼を捕えるような理由もないからな……」
マイザーは秀麗な顔を歪めて嘆息した。
「何とも面倒だ、厄介事は全部殴りつけて解決できれば気が楽だと言うのに」
主と波長ぴったりのメイデンは大きく頷いて同意した。
「アーミーが出張ってるだと? やっぱ何かあるんだな」
マイザーの手を逃れて路地裏を歩きながら、グレンクスは呟いた。
「ターゲット、あの話ぶりだと棚ボタ小僧の事か?
アーミーも注目してるし、新しいメイデンもどっかから手に入れてやがる。
臭いやがるぜ、儲けの臭いが」
久しぶりに美味い汁が吸えるかもしれない。
グレンクスは皮算用にニタリと笑った。
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