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少年が退室した途端、ヒュリオの仮面じみた微笑みは剥がれ落ちた。
「はぁー……」
盛大な溜息を吐き出す。
微笑みの仮面の下から現れたのは、精悍な面立ちに似合わない疲れ切った表情だった。
目元を押さえて揉みほぐす。
取調室の扉が開き、廊下に待機していたマイザー主従が入ってきた。
「お疲れか」
疲労を隠し切れない様子のヒュリオに、マイザーは無神経とも言える言葉を無造作に呟いた。
他人事のような口振りに、さしものヒュリオの堪忍袋も限界を迎えた。
「誰のせいだと思っている!」
全力で拳を机に叩きつけそうになり、寸前で思いとどまる。
機械化された彼の腕力で殴りつけたら、ちゃちな事務机など即座に真っ二つだ。
代わりとばかりに加減した平手で机を叩くが、音の割に鬱憤は欠片も晴れなかった。
苛立ちの元凶を睨みつける。
「どういうつもりだ、マイザー。
こんな大事にしてしまって」
「大事?」
平手を机に打ちつけて苛立ちを露わにするヒュリオにも表情を変えなかったマイザーが、眉を上げた。
「マザーから賜った任務以外に、大事などあるまい。
私はそう認識している」
胸を張ってそう言い切れるマイザーが、ある意味羨ましい。
彼のマザーへの忠誠は曇りないものだ。 ヒュリオと違って。
「だからといって、初手から姿を現す奴があるか!
彼に知られてしまったろうが」
「それに何か問題が?」
軽く首を傾けながら問い返すマイザーに、ヒュリオは絶句した。
「護衛任務は護衛対象との密な連携が必要であると教本にあった。
調査面においても、彼と直に話した方が情報の集まりは良いと判断する。
そもそも、この任務において、マザーは秘密裏に行えと命じられておられない」
その通りだ。 ヒュリオは喉の奥で唸った。
この面において、マイザーの意見は正しい。
唸るヒュリオをマイザーは不審そうに見返す。
「私としては、貴方の積極性のなさに驚いている。
潜伏し情報収集を行う方針は判るが、それで護衛対象を危険に晒しては本末転倒だろう」
「それは……」
言い淀む。
実際、露呈を恐れなければフィオのメイデンが出てくる前に先の襲撃者を始末する事など簡単であった。
スゥに命じればいい。
彼女にとって探査、斥候の能力は余技にすぎない。
純戦闘向けに作られた訳ではないが、スゥが全力を発揮すれば勝てるメイデンはタウン48全域を見回してもそういないとヒュリオは確信している。
だが、彼女の戦闘スタイルは派手な代物で、確実にフィオのメイデンに気づかれる。
それを恐れたが故に、ヒュリオ自身の能力の発動に留めたのだ。
結果的にフィオ主従の介入を防ぐことはできなかったが。
「……できるだけ、彼の生活パターンを崩したくなかったからだ。
異常事態が起これば、マザーが求めておられるデータが入手できないかもしれない」
苦しい言い訳だが、ヒュリオの本心も混じっていた。
フィオの日常を護ってやりたい。
それは同類かも知れない年下の少年に対する、年長者としての勤めであると、ヒュリオは己に任じていた。
自分のように「しくじった」道を歩ませてはならない。
その為にはマザーを偽り、彼とマザーの距離を離す必要がある。
それは課された任務に対する、明確なサボタージュと言えた。
「……貴方にも考えがあるのは判った。ならばいい。
マザーに怠慢の報告をしなくて済む」
マイザーの言葉にヒュリオは顔を顰めた。
この野郎、鈍いのか、鋭いのか。
「貴方は貴方の方針通りに任務を遂行してくれ。
私は、私の方針に沿って任務を遂行する」
マイザーは踵を返すとドアを開けた。
「マイザー!」
「自分で考えて行動する、貴方が言った事だぞ、ヒュリオ」
ヒュリオの目の前で扉が音を立てて閉じる。
罵声が口を突きかけたが、すんでの所で呑み込んで椅子にどっかと腰を下ろす。
安手のパイプ椅子は常人以上のヒュリオの体重に断末魔じみた軋みをあげた。
「……余計な事ばかり覚えてやがる、あいつめ……」
バリバリと頭を掻く。
秘密裏に動いて、フィオの日常をできるだけ壊さずに見守りたいというのは、ヒュリオの私情にすぎない。
アーミーの兵士に建前の上では序列はなく、ヒュリオとマイザーは役職上同格だ。
普通は先輩を立てるなどといった人情が挟まる余地もあるのだが、あの空気を読まない男にその辺りの機微は通じまい。
彼が勝手にやると宣言した以上、ヒュリオがそれを止めるには明確な理由が必要になる。
方針の出所が私情では、制止する事はできなかった。
「仕方ない。
あいつの言葉通りにするのは癪だが、オレ達はオレ達で勝手にやるぞ、スゥ」
「はい、マスター」
スゥは椅子に座った主の頭をふわりと抱いた。
豊かな双丘に後頭部が埋まる感触に、ヒュリオの苛立ちも幾分和らいだ。
もっと若く、彼がまだ生身だった頃も、こうしてなだめられた記憶が胸によぎる。
失われた愛する女の思い出に胸の奥が疼く前に、ドアが乱暴にノックされた。
パッとスゥは離れ、直立不動になる。
苦笑しながら、ヒュリオはドアへ声をかけた。
「どうぞ」
「失礼しますぜ」
白髪交じりの初老の巡査長、ケディンだ。
「片割れが出ていっちまったが、取り調べは終わったのかい? 部屋を空けて欲しいんだが」
「あ、ああ、申し訳ない」
慌てて立ち上がるヒュリオに、ケディンは面白そうに眉をあげた。
「へえ、申し訳ない、と来たか。
アーミーの方にしちゃあ礼儀がなってらっしゃる」
「は?」
「アーミーの皆さん方は、警邏隊なんぞアーミーの下請けと思ってらっしゃるようでね」
意味ありげに笑うケディンに、ヒュリオも察する。
アーミーの兵士は、その生得能力の高さから入隊を許され、その後特権階級としての人生を送る。
故に、挫折や折り合いをつける事を知らず、他部署に対して居丈高になる者も多い。
ヒュリオ自身、死に掛けて己を省みる経験がなければ、傲慢な振る舞いのままであったかも知れない。
「……同僚達が、申し訳ない」
「いやいや、アーミーの中にも話の通じそうな方が居られて一安心ってもんですよ」
「恐縮です」
頭を下げつつも、現場レベルでの同僚達の評判の悪さにヒュリオは小さくため息を吐いた。
肩で風を切るように出ていった若い主従と違い、やや年長のアーミー兵士はメイデン共々しきりにこちらへ頭を下げつつ退去した。
「あれだけ温度差があるのも面白えな」
「アーミーの人にペコペコされても、正直気味が悪いですぅ」
「違いねえや」
アンズの率直な感想にケディンはゲラゲラと笑う。
「それで、あの坊主の素性は割れたか?」
ひとしきり笑った所で問いかけると、スレンダーな警邏メイデンはこっくりと頷いた。
「ガバメントオフィスに問い合わせました。
ランク5砂潜りのフィオ、だそうです。
住まいはこの第29分署の管轄内ですぅ」
「第29分署の管轄内か、また辺鄙な所に住んでるガキだな……」
「なんでも、ランク1砂潜りの手ほどきを受けていたらしいので、腕に自信があるんじゃないですかぁ?
あと、連れてたメイデンも凄かったし」
アンズは見るからにタウン48製ではない緑の髪のメイデンの姿を思い出し、ぶるぶると震えた。
「アンズよぅ、お前、あの坊主のメイデンを制圧しろって言われて、やれそうか?」
「やめてくださいぃ、どんな風にやられるかまでは演算できませんけど、ジャンクにされる事は確実ですぅ」
本気で嫌そうな相棒にケディンは苦笑した。
「まあ、坊主がなんぞ問題でも起こそうもんなら、それこそアーミーの連中に通報してやるさ。
化け物メイデン持ち同士で勝手にやりあってろってぇんだ」
OAチェアにどっかりと腰を下ろしつつ、ケディンは吐き捨てた。
とはいえ、管轄内にAクラス戦闘メイデン持ちが居るとなると、多少の備えは必要かも知れない。
「パトロールのローテーションを変えるか。
坊主の住処付近の見回りを強化する方向で」
「何か起きたとしても踏み込むのは嫌ですぅ、絶対ジャンク間違いなしだもの。
私たち、CPUが残ってれば再生できますけど、この場合経費で落ちるんですかぁ」
「……お前を修理するへそくり位、あらぁ」
そっぽを向いてぶっきらぼうに応えるケディンに、アンズはパチパチと垂れ目を瞬かせると、ごま塩頭にぎゅっと抱きついた。
グレンクスが通されたのは、下水道から続く地下とは思いがたい程に洗練された一室であった。
サイズ的には小部屋といっても良い部屋ではあるが、その三方を埋めるのは紙製の書籍。
グレンクスの知識にはないが、書斎という言葉がふさわしい。
本棚ぎっしりに詰め込まれた紙媒体の山は最終戦争以前の代物なのか、独特の埃っぽい臭いを放っている。
砂潜りとしての能力は最低限に近いグレンクスではあるが、それでもこれらの書籍が持ち込む所に持ち込めば大金に化ける貴重品であると察した。
1、2冊ちょろまかすだけでも、相当な豪遊ができる。
ただし、背後に相変わらずポンチョの男が控えた状況ではそれが可能とも思えなかった。
「それで」
部屋の真ん中に置かれた、木製の大振りなデスクに着く男が口を開く。
この部屋の主、デッドマン。
自ら死人と名乗る男は、銀色の髪を撫でつけた初老の伊達男であった。
誰に見せるでもない地下だというのに、仕立てのよいダブルのスーツを纏っている。
死者を騙る癖にその肌艶は血色よく、グレンクスに向けられた瞳は楽しげに光っていた。
「どういう話を聞かせてくれるのかな? グレンクスくん?」
耳障りの良い声音はやさしく、与し易そうにも思える。
だが、そんなはずはない。
与し易い優男が、マザーの目を逃れた弱肉強食の裏社会で名を馳せていられる訳もないのだ。
「え、えぇと……」
グレンクスは必死になって喋った。
フィオという砂潜りの事、自分の舎弟であったバンがフィオとつるんでから急に金回りが良くなった事、元々メイデンを持っていたフィオがさらにメイデンを手に入れた事、アーミーが彼を警護していると思われる事……。
元々頭が良いわけでも、喋りが上手いわけでもないグレンクスの話は取り留めない。
だが、デッドマンが時折「なるほど」「ふむ、それで?」「ほうほう」などと相槌を入れると、不思議と話しやすくなる。
デッドマンという男は聞き上手であった。
「ふーむ……」
ひとしきり聞き終えたデッドマンは腕組みをしてチェアに背を預けた。
リクライニングが小さく軋む。
瞑目してしばらく考えてたが、灰色の瞳を開いてグレンクスを見る。
「君、そりゃ逆恨みって奴じゃないかい?」
「そ、そんな!?」
「若い衆に上手い事やられて悔しい。
わかるよ、私もこの年だ、才能ある若いのを見ると自分が彼の年の頃はなんて思って気落ちする事もある。
でも、そこで何くそ!と踏ん張って男を見せるのが大人ってもんじゃないかね?」
正論である。
裏社会の重鎮の口から出たとは思えない程に真っ当な、正々堂々とした言葉であった。
「君の意気込みはともかく、客観的にはこれじゃあねえ……。
そのフィオとかいう坊やを締めあげて、儲け話が出てこなかったとしたらアーミーに喧嘩を売るばかりの丸損じゃあないか。
流石にそれは私とて許容できないよ」
デッドマンの言葉と共にポンチョの男が銃を上げる。
聞こえよがしにセーフティを外す物音が背後で響き、グレンクスは震え上がった。
「デ、デッドマンさん!? 待ってください!」
グレンクスはその場にひれ伏した。
恥も外聞もない土下座で懇願する。
「何でもしますから! 殺さないでください!」
「何でもって言われても、君じゃねえ……。
もうちょっといい男か、可愛い子ならともかく」
「ア、アーミーがあいつを護ってるのは確かなんだ! 絶対なんかあるんだ! だから!」
「ふむ……」
デッドマンはぶるぶると激しく震えながら土下座するグレンクスの後頭部を見下ろし、思案した。
小さく頷き、手のひらを上げる。
主の意向を受け、サブマシンガンを構えていたポンチョの男は、銃にセーフティを掛け直した。
「君の話は正直当てにならんと思っている。
けれど、そんな与太話をこの私に持ち込む気になるのはちょっと面白い、なかなか箍が外れている。
その坊やの事、ちょっと調べてみようじゃないか」
「あ……ありがとうございますぅっ!」
「礼には及ばんよ、本当に何もない与太だったら、それなりの落とし前をつけてもらうのだから。
とりあえず、君の身柄はこちらで預からせてもらおう、トンズラされても困るからね」
ポンチョの男がグレンクスの襟首を掴み、立ち上がらせる。
グレンクスの顔は緊張と安堵の揺り戻しの余り、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
「若い衆の寝床のどこかに空きがあったろう、そこを使わせてやりなさい」
ポンチョの男はデッドマンの指示に頷くと、引き立てるようにグレンクスを連れて退室した。
静寂を取り戻した書斎で、デッドマンはため息を吐く。
「さて、落とし前をつけさせるにしてもどうしたものかねえ、間違いなく掘って楽しい感じじゃないし。
やっぱり男は可愛いか、芯があるか、どっちかじゃないとダメだねえ」
一人ごちながら書棚に歩み寄り、愛読書を手に取った。
見苦しい男と会話した不快感を洗い流すように、デッドマンは読書に興じる。
男と男の友情、そしてその愛の育みを描いた最終戦争前の一冊の世界へと耽溺していった。
ようやく自室に戻ったフィオは鋭い目で室内を見回した。
「……」
「マスター?」
「フリス、シャワーを浴びよう」
「え……」
唐突な主の言葉に、フリスは一瞬虚を突かれる。
「は、はい! お背中お流しします!」
「うん、よろしく」
先ほどは断られたというのにどういう心境の変化か。
主の気が変わらない内にと、フリスはいそいそとシャワールームへ向かう。
「ふわ……♡」
CPUの記憶領域にしっかりと焼き込まれた主の裸体であるが、シャワールームで見るのはまたひと味違う。
とろけそうな声を上げるメイデンを余所に、フィオは思い切りシャワーのノブを捻った。
強く降り注ぐ水流を浴びながら、フリスを抱き寄せる。
「マ、マスター?」
「これなら、水音で誤魔化せる。
小さい声で話して」
緊迫した主の小声に、桃色領域に埋め尽くされそうだったフリスのCPUに活が入った。
「……どうされました?」
「アーミーがやってくるのがいくらなんでも早すぎた。
それにあのマイザーって人が殴り倒した以外にも倒されてるチンピラが居た。
きっと、最初に聞いたサイレンサーの音、あれでやられた奴だ」
囁く主の腕に力が籠もる。
乳房が主の胸で潰れ、形を変えると内蔵したジェネレーターの稼働率も上がっていく。
「この部屋は監視されてる、これは間違いない。
僕の目じゃわからなかったけど、盗聴器の類もあるかも知れない」
「わ、私のセンサーに反応はありませんでしたが……」
「能動的に探してはいないよね?
それに相手はアーミーだ、メイデンのセンサーの死角を突くように仕掛けてるのかも知れない」
抱きすくめる主の手が、フリスの濡れ髪を優しく撫でる。
「部屋の中の会話は聞かれてると思った方がいい。
例の件について下手に話して、マザーの耳に入りでもしたら拙い」
「わ、わかりました、室内の会話には気を配ります」
「うん、よろしく」
至近距離で朗らかに微笑むフィオの笑顔に、フリスのスイッチは完全に入った。
すでに大量に主の精を詰め込まれている子宮ユニットは、もっと寄越せと貪欲な催促の疼きを発している。
フリスは堪らず、主を強く抱きしめ返した。
「フリス?」
「そ、その、内緒話だけ、ですか?」
柔らかな肢体をくねるように擦りつける。
「あ、あの、僕、流石に疲れてるんだけど……」
「そんなぁ……」
潤んだ瞳で切なげな声をあげるフリスに、フィオは唾を呑み込んだ。
結局、疲労を圧してもう一戦に臨んでしまうフィオであった。
「はぁー……」
盛大な溜息を吐き出す。
微笑みの仮面の下から現れたのは、精悍な面立ちに似合わない疲れ切った表情だった。
目元を押さえて揉みほぐす。
取調室の扉が開き、廊下に待機していたマイザー主従が入ってきた。
「お疲れか」
疲労を隠し切れない様子のヒュリオに、マイザーは無神経とも言える言葉を無造作に呟いた。
他人事のような口振りに、さしものヒュリオの堪忍袋も限界を迎えた。
「誰のせいだと思っている!」
全力で拳を机に叩きつけそうになり、寸前で思いとどまる。
機械化された彼の腕力で殴りつけたら、ちゃちな事務机など即座に真っ二つだ。
代わりとばかりに加減した平手で机を叩くが、音の割に鬱憤は欠片も晴れなかった。
苛立ちの元凶を睨みつける。
「どういうつもりだ、マイザー。
こんな大事にしてしまって」
「大事?」
平手を机に打ちつけて苛立ちを露わにするヒュリオにも表情を変えなかったマイザーが、眉を上げた。
「マザーから賜った任務以外に、大事などあるまい。
私はそう認識している」
胸を張ってそう言い切れるマイザーが、ある意味羨ましい。
彼のマザーへの忠誠は曇りないものだ。 ヒュリオと違って。
「だからといって、初手から姿を現す奴があるか!
彼に知られてしまったろうが」
「それに何か問題が?」
軽く首を傾けながら問い返すマイザーに、ヒュリオは絶句した。
「護衛任務は護衛対象との密な連携が必要であると教本にあった。
調査面においても、彼と直に話した方が情報の集まりは良いと判断する。
そもそも、この任務において、マザーは秘密裏に行えと命じられておられない」
その通りだ。 ヒュリオは喉の奥で唸った。
この面において、マイザーの意見は正しい。
唸るヒュリオをマイザーは不審そうに見返す。
「私としては、貴方の積極性のなさに驚いている。
潜伏し情報収集を行う方針は判るが、それで護衛対象を危険に晒しては本末転倒だろう」
「それは……」
言い淀む。
実際、露呈を恐れなければフィオのメイデンが出てくる前に先の襲撃者を始末する事など簡単であった。
スゥに命じればいい。
彼女にとって探査、斥候の能力は余技にすぎない。
純戦闘向けに作られた訳ではないが、スゥが全力を発揮すれば勝てるメイデンはタウン48全域を見回してもそういないとヒュリオは確信している。
だが、彼女の戦闘スタイルは派手な代物で、確実にフィオのメイデンに気づかれる。
それを恐れたが故に、ヒュリオ自身の能力の発動に留めたのだ。
結果的にフィオ主従の介入を防ぐことはできなかったが。
「……できるだけ、彼の生活パターンを崩したくなかったからだ。
異常事態が起これば、マザーが求めておられるデータが入手できないかもしれない」
苦しい言い訳だが、ヒュリオの本心も混じっていた。
フィオの日常を護ってやりたい。
それは同類かも知れない年下の少年に対する、年長者としての勤めであると、ヒュリオは己に任じていた。
自分のように「しくじった」道を歩ませてはならない。
その為にはマザーを偽り、彼とマザーの距離を離す必要がある。
それは課された任務に対する、明確なサボタージュと言えた。
「……貴方にも考えがあるのは判った。ならばいい。
マザーに怠慢の報告をしなくて済む」
マイザーの言葉にヒュリオは顔を顰めた。
この野郎、鈍いのか、鋭いのか。
「貴方は貴方の方針通りに任務を遂行してくれ。
私は、私の方針に沿って任務を遂行する」
マイザーは踵を返すとドアを開けた。
「マイザー!」
「自分で考えて行動する、貴方が言った事だぞ、ヒュリオ」
ヒュリオの目の前で扉が音を立てて閉じる。
罵声が口を突きかけたが、すんでの所で呑み込んで椅子にどっかと腰を下ろす。
安手のパイプ椅子は常人以上のヒュリオの体重に断末魔じみた軋みをあげた。
「……余計な事ばかり覚えてやがる、あいつめ……」
バリバリと頭を掻く。
秘密裏に動いて、フィオの日常をできるだけ壊さずに見守りたいというのは、ヒュリオの私情にすぎない。
アーミーの兵士に建前の上では序列はなく、ヒュリオとマイザーは役職上同格だ。
普通は先輩を立てるなどといった人情が挟まる余地もあるのだが、あの空気を読まない男にその辺りの機微は通じまい。
彼が勝手にやると宣言した以上、ヒュリオがそれを止めるには明確な理由が必要になる。
方針の出所が私情では、制止する事はできなかった。
「仕方ない。
あいつの言葉通りにするのは癪だが、オレ達はオレ達で勝手にやるぞ、スゥ」
「はい、マスター」
スゥは椅子に座った主の頭をふわりと抱いた。
豊かな双丘に後頭部が埋まる感触に、ヒュリオの苛立ちも幾分和らいだ。
もっと若く、彼がまだ生身だった頃も、こうしてなだめられた記憶が胸によぎる。
失われた愛する女の思い出に胸の奥が疼く前に、ドアが乱暴にノックされた。
パッとスゥは離れ、直立不動になる。
苦笑しながら、ヒュリオはドアへ声をかけた。
「どうぞ」
「失礼しますぜ」
白髪交じりの初老の巡査長、ケディンだ。
「片割れが出ていっちまったが、取り調べは終わったのかい? 部屋を空けて欲しいんだが」
「あ、ああ、申し訳ない」
慌てて立ち上がるヒュリオに、ケディンは面白そうに眉をあげた。
「へえ、申し訳ない、と来たか。
アーミーの方にしちゃあ礼儀がなってらっしゃる」
「は?」
「アーミーの皆さん方は、警邏隊なんぞアーミーの下請けと思ってらっしゃるようでね」
意味ありげに笑うケディンに、ヒュリオも察する。
アーミーの兵士は、その生得能力の高さから入隊を許され、その後特権階級としての人生を送る。
故に、挫折や折り合いをつける事を知らず、他部署に対して居丈高になる者も多い。
ヒュリオ自身、死に掛けて己を省みる経験がなければ、傲慢な振る舞いのままであったかも知れない。
「……同僚達が、申し訳ない」
「いやいや、アーミーの中にも話の通じそうな方が居られて一安心ってもんですよ」
「恐縮です」
頭を下げつつも、現場レベルでの同僚達の評判の悪さにヒュリオは小さくため息を吐いた。
肩で風を切るように出ていった若い主従と違い、やや年長のアーミー兵士はメイデン共々しきりにこちらへ頭を下げつつ退去した。
「あれだけ温度差があるのも面白えな」
「アーミーの人にペコペコされても、正直気味が悪いですぅ」
「違いねえや」
アンズの率直な感想にケディンはゲラゲラと笑う。
「それで、あの坊主の素性は割れたか?」
ひとしきり笑った所で問いかけると、スレンダーな警邏メイデンはこっくりと頷いた。
「ガバメントオフィスに問い合わせました。
ランク5砂潜りのフィオ、だそうです。
住まいはこの第29分署の管轄内ですぅ」
「第29分署の管轄内か、また辺鄙な所に住んでるガキだな……」
「なんでも、ランク1砂潜りの手ほどきを受けていたらしいので、腕に自信があるんじゃないですかぁ?
あと、連れてたメイデンも凄かったし」
アンズは見るからにタウン48製ではない緑の髪のメイデンの姿を思い出し、ぶるぶると震えた。
「アンズよぅ、お前、あの坊主のメイデンを制圧しろって言われて、やれそうか?」
「やめてくださいぃ、どんな風にやられるかまでは演算できませんけど、ジャンクにされる事は確実ですぅ」
本気で嫌そうな相棒にケディンは苦笑した。
「まあ、坊主がなんぞ問題でも起こそうもんなら、それこそアーミーの連中に通報してやるさ。
化け物メイデン持ち同士で勝手にやりあってろってぇんだ」
OAチェアにどっかりと腰を下ろしつつ、ケディンは吐き捨てた。
とはいえ、管轄内にAクラス戦闘メイデン持ちが居るとなると、多少の備えは必要かも知れない。
「パトロールのローテーションを変えるか。
坊主の住処付近の見回りを強化する方向で」
「何か起きたとしても踏み込むのは嫌ですぅ、絶対ジャンク間違いなしだもの。
私たち、CPUが残ってれば再生できますけど、この場合経費で落ちるんですかぁ」
「……お前を修理するへそくり位、あらぁ」
そっぽを向いてぶっきらぼうに応えるケディンに、アンズはパチパチと垂れ目を瞬かせると、ごま塩頭にぎゅっと抱きついた。
グレンクスが通されたのは、下水道から続く地下とは思いがたい程に洗練された一室であった。
サイズ的には小部屋といっても良い部屋ではあるが、その三方を埋めるのは紙製の書籍。
グレンクスの知識にはないが、書斎という言葉がふさわしい。
本棚ぎっしりに詰め込まれた紙媒体の山は最終戦争以前の代物なのか、独特の埃っぽい臭いを放っている。
砂潜りとしての能力は最低限に近いグレンクスではあるが、それでもこれらの書籍が持ち込む所に持ち込めば大金に化ける貴重品であると察した。
1、2冊ちょろまかすだけでも、相当な豪遊ができる。
ただし、背後に相変わらずポンチョの男が控えた状況ではそれが可能とも思えなかった。
「それで」
部屋の真ん中に置かれた、木製の大振りなデスクに着く男が口を開く。
この部屋の主、デッドマン。
自ら死人と名乗る男は、銀色の髪を撫でつけた初老の伊達男であった。
誰に見せるでもない地下だというのに、仕立てのよいダブルのスーツを纏っている。
死者を騙る癖にその肌艶は血色よく、グレンクスに向けられた瞳は楽しげに光っていた。
「どういう話を聞かせてくれるのかな? グレンクスくん?」
耳障りの良い声音はやさしく、与し易そうにも思える。
だが、そんなはずはない。
与し易い優男が、マザーの目を逃れた弱肉強食の裏社会で名を馳せていられる訳もないのだ。
「え、えぇと……」
グレンクスは必死になって喋った。
フィオという砂潜りの事、自分の舎弟であったバンがフィオとつるんでから急に金回りが良くなった事、元々メイデンを持っていたフィオがさらにメイデンを手に入れた事、アーミーが彼を警護していると思われる事……。
元々頭が良いわけでも、喋りが上手いわけでもないグレンクスの話は取り留めない。
だが、デッドマンが時折「なるほど」「ふむ、それで?」「ほうほう」などと相槌を入れると、不思議と話しやすくなる。
デッドマンという男は聞き上手であった。
「ふーむ……」
ひとしきり聞き終えたデッドマンは腕組みをしてチェアに背を預けた。
リクライニングが小さく軋む。
瞑目してしばらく考えてたが、灰色の瞳を開いてグレンクスを見る。
「君、そりゃ逆恨みって奴じゃないかい?」
「そ、そんな!?」
「若い衆に上手い事やられて悔しい。
わかるよ、私もこの年だ、才能ある若いのを見ると自分が彼の年の頃はなんて思って気落ちする事もある。
でも、そこで何くそ!と踏ん張って男を見せるのが大人ってもんじゃないかね?」
正論である。
裏社会の重鎮の口から出たとは思えない程に真っ当な、正々堂々とした言葉であった。
「君の意気込みはともかく、客観的にはこれじゃあねえ……。
そのフィオとかいう坊やを締めあげて、儲け話が出てこなかったとしたらアーミーに喧嘩を売るばかりの丸損じゃあないか。
流石にそれは私とて許容できないよ」
デッドマンの言葉と共にポンチョの男が銃を上げる。
聞こえよがしにセーフティを外す物音が背後で響き、グレンクスは震え上がった。
「デ、デッドマンさん!? 待ってください!」
グレンクスはその場にひれ伏した。
恥も外聞もない土下座で懇願する。
「何でもしますから! 殺さないでください!」
「何でもって言われても、君じゃねえ……。
もうちょっといい男か、可愛い子ならともかく」
「ア、アーミーがあいつを護ってるのは確かなんだ! 絶対なんかあるんだ! だから!」
「ふむ……」
デッドマンはぶるぶると激しく震えながら土下座するグレンクスの後頭部を見下ろし、思案した。
小さく頷き、手のひらを上げる。
主の意向を受け、サブマシンガンを構えていたポンチョの男は、銃にセーフティを掛け直した。
「君の話は正直当てにならんと思っている。
けれど、そんな与太話をこの私に持ち込む気になるのはちょっと面白い、なかなか箍が外れている。
その坊やの事、ちょっと調べてみようじゃないか」
「あ……ありがとうございますぅっ!」
「礼には及ばんよ、本当に何もない与太だったら、それなりの落とし前をつけてもらうのだから。
とりあえず、君の身柄はこちらで預からせてもらおう、トンズラされても困るからね」
ポンチョの男がグレンクスの襟首を掴み、立ち上がらせる。
グレンクスの顔は緊張と安堵の揺り戻しの余り、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
「若い衆の寝床のどこかに空きがあったろう、そこを使わせてやりなさい」
ポンチョの男はデッドマンの指示に頷くと、引き立てるようにグレンクスを連れて退室した。
静寂を取り戻した書斎で、デッドマンはため息を吐く。
「さて、落とし前をつけさせるにしてもどうしたものかねえ、間違いなく掘って楽しい感じじゃないし。
やっぱり男は可愛いか、芯があるか、どっちかじゃないとダメだねえ」
一人ごちながら書棚に歩み寄り、愛読書を手に取った。
見苦しい男と会話した不快感を洗い流すように、デッドマンは読書に興じる。
男と男の友情、そしてその愛の育みを描いた最終戦争前の一冊の世界へと耽溺していった。
ようやく自室に戻ったフィオは鋭い目で室内を見回した。
「……」
「マスター?」
「フリス、シャワーを浴びよう」
「え……」
唐突な主の言葉に、フリスは一瞬虚を突かれる。
「は、はい! お背中お流しします!」
「うん、よろしく」
先ほどは断られたというのにどういう心境の変化か。
主の気が変わらない内にと、フリスはいそいそとシャワールームへ向かう。
「ふわ……♡」
CPUの記憶領域にしっかりと焼き込まれた主の裸体であるが、シャワールームで見るのはまたひと味違う。
とろけそうな声を上げるメイデンを余所に、フィオは思い切りシャワーのノブを捻った。
強く降り注ぐ水流を浴びながら、フリスを抱き寄せる。
「マ、マスター?」
「これなら、水音で誤魔化せる。
小さい声で話して」
緊迫した主の小声に、桃色領域に埋め尽くされそうだったフリスのCPUに活が入った。
「……どうされました?」
「アーミーがやってくるのがいくらなんでも早すぎた。
それにあのマイザーって人が殴り倒した以外にも倒されてるチンピラが居た。
きっと、最初に聞いたサイレンサーの音、あれでやられた奴だ」
囁く主の腕に力が籠もる。
乳房が主の胸で潰れ、形を変えると内蔵したジェネレーターの稼働率も上がっていく。
「この部屋は監視されてる、これは間違いない。
僕の目じゃわからなかったけど、盗聴器の類もあるかも知れない」
「わ、私のセンサーに反応はありませんでしたが……」
「能動的に探してはいないよね?
それに相手はアーミーだ、メイデンのセンサーの死角を突くように仕掛けてるのかも知れない」
抱きすくめる主の手が、フリスの濡れ髪を優しく撫でる。
「部屋の中の会話は聞かれてると思った方がいい。
例の件について下手に話して、マザーの耳に入りでもしたら拙い」
「わ、わかりました、室内の会話には気を配ります」
「うん、よろしく」
至近距離で朗らかに微笑むフィオの笑顔に、フリスのスイッチは完全に入った。
すでに大量に主の精を詰め込まれている子宮ユニットは、もっと寄越せと貪欲な催促の疼きを発している。
フリスは堪らず、主を強く抱きしめ返した。
「フリス?」
「そ、その、内緒話だけ、ですか?」
柔らかな肢体をくねるように擦りつける。
「あ、あの、僕、流石に疲れてるんだけど……」
「そんなぁ……」
潤んだ瞳で切なげな声をあげるフリスに、フィオは唾を呑み込んだ。
結局、疲労を圧してもう一戦に臨んでしまうフィオであった。
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