55 / 125
36
しおりを挟む
主の佩刀と対である高速振動刀の鞘を地に突き、柄頭に両手を乗せた姿勢でシュネーは対戦相手を検分していた。
SSフレームのボディに民生品の小型ジェネレーターを搭載したと思しき、小さな機体。
きょときょとと落ちつかなげに周囲を見回す仕草は幼く、起動して間もない若いメイデンであると見て取れた。
相手にもならない。
あっさりとそう判断したシュネーは、カメラ映りに気を配った微笑みを維持したまま、内心で落胆していた。
(久しぶりだからと、張り切りすぎましたわね……)
メイデンバトルのチャンピオンとして君臨するシュネー。
彼女は強すぎた。
彼女を追い落とそうという後輩が登場しなくなる程に。
シュネーが強すぎるせいでタウン75所属のメイデンたちが参加しなくなった為、メイデンバトル自体が開催されなくなってしまうという悪循環に陥っていたのだ。
久しぶりのチャレンジャーと聞き、喜び勇んでフル装備を持ち出してしまったのだが。
(これで相手をするのは余りにも大人げないというもの……)
押し寄せる装甲機生体の大軍すら、単機で撃退してしまうような重装備だ。
二連装の75ミリ砲が左右に二門ずつ、背後に背負った64連多弾頭ロケットランチャー、対空砲を兼ねた7.62ミリのミニガン、そして手にした高速振動刀。
どれを取っても、あのメイデンに対してはオーバースペックだろう。
シュネーはむしろ痛ましげといってもいい視線を対戦相手に向ける。
あのメイデンには戦闘など荷が重すぎる。
家事やウェイトレスなどの仕事が相場の機体に、何という無茶をさせようというのか。
持たされている大きなガントレットと重機関銃は、まるで小さな機体を押し潰すかのようだ。
こんな民生機を無理矢理メイデンバトルに駆りだすのは、報奨金目当てに違いない。
敗北しようともわずかな時間で決して安いとはいえない金額を稼ぎ出せるのは、大きな魅力であろう。
メイデンの被る恥辱を考えなければ。
シュネーは高台に設置されたVIPルームを睨んだ。
(メイデンを晒し物にして稼ごうなどと……見下げ果てたマスターですこと!)
主と共にあの部屋にいるだろう相手のマスターへ、内心侮蔑をぶつける。
だが、相手を哀れもうともシュネーにもチャンピオンとしての立場がある。
手を抜く訳にはいかないし、かといって見せ場のひとつもなく数秒で試合を終わらせる訳にもいかない。
シュネーは嘆息すると、背部ラッチのジョイントを解除した。
重々しい音を立てて、大型コアユニットごと武装システムが脱落する。
亡きライバルの形見である高速振動刀を抜き放ち、颯爽と頭上に掲げた。
その銘も高き名刀ソードイズミノカミはスポットライトを浴びて燦然と輝く。
「チャンピオンに挑もうという意気は買いましょう。
ですが、飛び道具を使うまでもありませんわ!」
傲然と宣言すると、大入りの客席がどよめきに沸いた。
かつては手入れされた芝生が青々と広がっていたドーム式スタジアムだが、今は赤茶けた土で覆われている。
整備の手間が惜しまれた訳ではない。
ホバーや走行球を備えたメイデン達が走り回れば、どんなに手入れした芝生もあっという間に禿げ山となってしまうからだ。
単純に手入れの手間を惜しむのならば土ではなくコンクリートを流し込んだ打ちっ放しにしてしまえばいい。
それをしないのは、メイデンが疾走する際に派手な土煙が舞い上がると見栄えが良いという理由であった。
二カ所用意されたゲートの片側から入場したスコールは、四方から浴びせられるスポットライトと歓声に立ちすくんだ。
「うわ……」
驚きながら、パチパチと瞬きして視覚センサーの光量感度を下げる。
目を眩ませるようなライトの目映さが軽減された所で、周囲を見回す。
ぐるりと取り囲むような客席は、まさに満員御礼。
タウン中の人が集まってきたかというような客入りである。
その、数百、数千にも達する視線が、スコールの小さな機体に向けられていた。
久々のメイデンバトルに興奮した観客達は口々に歓声を上げている。
「んっ……」
そのひとつひとつを判別しようとしてしまい、CPUに圧倒的な負荷を感じたスコールは慌てて分析を打ち切った。
「ひつような、じょうほう、だけ、とりださないと」
キキョウの教えを思い出し、巨大な怪獣のうなり声のようなどよめきへの注意レベルを下げる。
状況に合わせて調整されたスコールの聴覚センサーに、場内のスピーカーから流れる音声が飛び込んできた。
「親愛なる紳士諸君! メイデンバトルへようこそ!」
かつてスコアボードが合った位置に設置された大型のモニターには、真っ赤なスーツにサイバーモノクルをかけた見るからにうさんくさい男が映っている。
「本日の実況は私、フィッシャー!
そして解説はお馴染みの!」
モノクルの男、フィッシャーを大写しにしていたカメラが下がり、解説席に腰を下ろした人物の姿を映しだす。
「はいはい! タウン75の案内人にしてアイドル、本日は解説ちゃんの案内ちゃんでーす!」
ダブルピースで満面にあざと可愛い笑顔を浮かべたエプロンドレスのメイデンがモニターにアップで映り、スコールは小首を傾げた。
「あんないちゃん、かいせつ、もやってる、の?」
ゲート付近で出会った陽気なメイデンが解説席に居る理由がスコールにはよく判らなかった。
「……めいでん、すくないから?」
人手不足だから、色んな雑事を担当させられているのだろうか。
だとしたら気の毒な話である。
メイデンは主に尽くすのが一番の仕事であるのに。
モニターの中の案内ちゃんもとい解説ちゃんを見上げ、スコールは内心同情した。
見上げていたモニターが不意に切り替わる。
どこかで見たような、金髪の小さなメイデンが映し出された。
スコール自身だ。
「えっ」
驚いて身じろぎすると、モニターの中の映像も連動する。
リアルタイムだ。
見回せば、場内には撮影用のカメラを搭載した小型の飛行ドローン型マペットが、プロペラを回転させていくつも浮いている。
そのうちのひとつがスコールの周囲をゆっくりと旋回していた。
カメラマペットの動きと共に大画面モニターに映し出されるアングルが変わる。
アップで顔を映した後に、リボン状のテープで固定された薄い胸元に焦点を移した。
肌に張り付くブルーのスーツに浮きあがったおへその窪みを捉えつつカメラは旋回し、細い腰回りから小振りなお尻の丸みにかけてをじっくりと映し出すと、再び顔の前に戻ってくる。
舐め回すかのように自分の周囲を動きながらホバリングするカメラマペットを、スコールは不思議そうに小首を傾げて見上げた。
「うーん、可愛らしい!
今回エントリーされたのは砂潜りを営んでおられるバンさんのパートナー、スコール嬢です!」
フィッシャーの紹介に、一際大きな歓声が上がった。
「しかし、スコールさんは見ての通りのSSフレームメイデン……。
バトルは少々荷が重いのではないでしょうか。
如何思われますか、解説ちゃん」
解説ちゃんは腕組みをすると、いかにも一家言ありますという風情で応じた。
「それなんだけどね、スコールちゃんには立派な実績があるんだよ!
キャラバンの護衛で装甲機生体の群を撃退したんだって!
やるねー!」
「ほうほう! 戦闘実績証明済みとは、これはご立派!
……む、もう御一方の準備も整ったようです!」
不意に煌々と降り注いでいたスポットライトの明かりが落ちると、天蓋をおろしたドーム式スタジアムの中に暗がりが訪れる。
モニターの輝度も落とされた薄暗闇の中、大入りの観客は何が起きるのか承知しているかの如く、一斉に口を噤んでいた。
「……お待たせしました、皆さん!
我らが故郷の守護者にして、ここスタジアムに君臨する女帝!
メイデンバトルチャンピオン、シュネー嬢の登場です!」
ばんっと音を立ててスポットライトが点灯する。
スコールと対角のゲートに四方から照明が集中した。
同時に割れんばかりの大歓声がスタジアムを埋め尽くす。
そこに佇むは、光を受けて煌めく白銀の放熱髪を背に流した、完全武装の淑女。
絶妙なプロポーションの長身は、金糸で彩られた黒いボディスーツに包まれている。
背負った巨大な武器の塊のような武装システムと装甲ブーツは純白に塗装され、ボディスーツと鮮やかなコントラストを成していた。
鞘に収まった高速振動刀を杖のように地に突き、その柄頭に両手を載せた美女は、白と黒のコントラストの中で唯一の彩りである金糸と同じ輝きの瞳を真っ直ぐにスコールへと向けている。
「うっ……」
圧倒的に格上のメイデンだ。
戦闘能力でも、その美しさの完成度でも。
煌めく黄金の瞳に見つめられ、スコールはびくりと身をすくめた。
白銀の淑女はスコールの怯みを見て取ったのか、小さく嘆息すると背負った武装システムを切り離し、地に落とした。
「え……?」
ごとりと重々しい音を立てて転がる武装システムにスコールは目を丸くする。
シュネーは美麗ともいえるほどの優雅さで佩刀を鞘走らせると、煌めく刃を頭上に掲げて宣言した。
「チャンピオンに挑もうという意気は買いましょう。
ですが、飛び道具を使うまでもありませんわ!」
傲然と言ってのけるスタジアムの女帝に、会場のボルテージは上がる。
割れんばかりの大歓声の中、スコールはじっとシュネーを見据えていた。
馬鹿にされた。
確かに重火器の塊のような武装システムを使用されれば、絶対的な火力の差から勝負は瞬時についてしまうだろう。
だが、それを投棄する自らの勝率を下げるような行いをして尚、十分な勝率を維持しているとあのメイデンは確信しているのだ。
それはスコール自身も理解している事ではある。
そもそも、この場にスコールは勝利するつもりで来てはいない。
元から格上のメイデンと戦って、戦闘経験を蓄積したいだけだったのだ。
それでも、こうまで露骨に見下されれば腹も立つ。
「……まけたく、ない」
スコールはぎゅっと唇を引き結んだ。
何としても一矢報いねばならぬ。
主の手助けをするため強くなりたいという目的意識が、スコールの幼い疑似精神の中に負けず嫌いな一面を芽生えさせつつあった。
SSフレームのボディに民生品の小型ジェネレーターを搭載したと思しき、小さな機体。
きょときょとと落ちつかなげに周囲を見回す仕草は幼く、起動して間もない若いメイデンであると見て取れた。
相手にもならない。
あっさりとそう判断したシュネーは、カメラ映りに気を配った微笑みを維持したまま、内心で落胆していた。
(久しぶりだからと、張り切りすぎましたわね……)
メイデンバトルのチャンピオンとして君臨するシュネー。
彼女は強すぎた。
彼女を追い落とそうという後輩が登場しなくなる程に。
シュネーが強すぎるせいでタウン75所属のメイデンたちが参加しなくなった為、メイデンバトル自体が開催されなくなってしまうという悪循環に陥っていたのだ。
久しぶりのチャレンジャーと聞き、喜び勇んでフル装備を持ち出してしまったのだが。
(これで相手をするのは余りにも大人げないというもの……)
押し寄せる装甲機生体の大軍すら、単機で撃退してしまうような重装備だ。
二連装の75ミリ砲が左右に二門ずつ、背後に背負った64連多弾頭ロケットランチャー、対空砲を兼ねた7.62ミリのミニガン、そして手にした高速振動刀。
どれを取っても、あのメイデンに対してはオーバースペックだろう。
シュネーはむしろ痛ましげといってもいい視線を対戦相手に向ける。
あのメイデンには戦闘など荷が重すぎる。
家事やウェイトレスなどの仕事が相場の機体に、何という無茶をさせようというのか。
持たされている大きなガントレットと重機関銃は、まるで小さな機体を押し潰すかのようだ。
こんな民生機を無理矢理メイデンバトルに駆りだすのは、報奨金目当てに違いない。
敗北しようともわずかな時間で決して安いとはいえない金額を稼ぎ出せるのは、大きな魅力であろう。
メイデンの被る恥辱を考えなければ。
シュネーは高台に設置されたVIPルームを睨んだ。
(メイデンを晒し物にして稼ごうなどと……見下げ果てたマスターですこと!)
主と共にあの部屋にいるだろう相手のマスターへ、内心侮蔑をぶつける。
だが、相手を哀れもうともシュネーにもチャンピオンとしての立場がある。
手を抜く訳にはいかないし、かといって見せ場のひとつもなく数秒で試合を終わらせる訳にもいかない。
シュネーは嘆息すると、背部ラッチのジョイントを解除した。
重々しい音を立てて、大型コアユニットごと武装システムが脱落する。
亡きライバルの形見である高速振動刀を抜き放ち、颯爽と頭上に掲げた。
その銘も高き名刀ソードイズミノカミはスポットライトを浴びて燦然と輝く。
「チャンピオンに挑もうという意気は買いましょう。
ですが、飛び道具を使うまでもありませんわ!」
傲然と宣言すると、大入りの客席がどよめきに沸いた。
かつては手入れされた芝生が青々と広がっていたドーム式スタジアムだが、今は赤茶けた土で覆われている。
整備の手間が惜しまれた訳ではない。
ホバーや走行球を備えたメイデン達が走り回れば、どんなに手入れした芝生もあっという間に禿げ山となってしまうからだ。
単純に手入れの手間を惜しむのならば土ではなくコンクリートを流し込んだ打ちっ放しにしてしまえばいい。
それをしないのは、メイデンが疾走する際に派手な土煙が舞い上がると見栄えが良いという理由であった。
二カ所用意されたゲートの片側から入場したスコールは、四方から浴びせられるスポットライトと歓声に立ちすくんだ。
「うわ……」
驚きながら、パチパチと瞬きして視覚センサーの光量感度を下げる。
目を眩ませるようなライトの目映さが軽減された所で、周囲を見回す。
ぐるりと取り囲むような客席は、まさに満員御礼。
タウン中の人が集まってきたかというような客入りである。
その、数百、数千にも達する視線が、スコールの小さな機体に向けられていた。
久々のメイデンバトルに興奮した観客達は口々に歓声を上げている。
「んっ……」
そのひとつひとつを判別しようとしてしまい、CPUに圧倒的な負荷を感じたスコールは慌てて分析を打ち切った。
「ひつような、じょうほう、だけ、とりださないと」
キキョウの教えを思い出し、巨大な怪獣のうなり声のようなどよめきへの注意レベルを下げる。
状況に合わせて調整されたスコールの聴覚センサーに、場内のスピーカーから流れる音声が飛び込んできた。
「親愛なる紳士諸君! メイデンバトルへようこそ!」
かつてスコアボードが合った位置に設置された大型のモニターには、真っ赤なスーツにサイバーモノクルをかけた見るからにうさんくさい男が映っている。
「本日の実況は私、フィッシャー!
そして解説はお馴染みの!」
モノクルの男、フィッシャーを大写しにしていたカメラが下がり、解説席に腰を下ろした人物の姿を映しだす。
「はいはい! タウン75の案内人にしてアイドル、本日は解説ちゃんの案内ちゃんでーす!」
ダブルピースで満面にあざと可愛い笑顔を浮かべたエプロンドレスのメイデンがモニターにアップで映り、スコールは小首を傾げた。
「あんないちゃん、かいせつ、もやってる、の?」
ゲート付近で出会った陽気なメイデンが解説席に居る理由がスコールにはよく判らなかった。
「……めいでん、すくないから?」
人手不足だから、色んな雑事を担当させられているのだろうか。
だとしたら気の毒な話である。
メイデンは主に尽くすのが一番の仕事であるのに。
モニターの中の案内ちゃんもとい解説ちゃんを見上げ、スコールは内心同情した。
見上げていたモニターが不意に切り替わる。
どこかで見たような、金髪の小さなメイデンが映し出された。
スコール自身だ。
「えっ」
驚いて身じろぎすると、モニターの中の映像も連動する。
リアルタイムだ。
見回せば、場内には撮影用のカメラを搭載した小型の飛行ドローン型マペットが、プロペラを回転させていくつも浮いている。
そのうちのひとつがスコールの周囲をゆっくりと旋回していた。
カメラマペットの動きと共に大画面モニターに映し出されるアングルが変わる。
アップで顔を映した後に、リボン状のテープで固定された薄い胸元に焦点を移した。
肌に張り付くブルーのスーツに浮きあがったおへその窪みを捉えつつカメラは旋回し、細い腰回りから小振りなお尻の丸みにかけてをじっくりと映し出すと、再び顔の前に戻ってくる。
舐め回すかのように自分の周囲を動きながらホバリングするカメラマペットを、スコールは不思議そうに小首を傾げて見上げた。
「うーん、可愛らしい!
今回エントリーされたのは砂潜りを営んでおられるバンさんのパートナー、スコール嬢です!」
フィッシャーの紹介に、一際大きな歓声が上がった。
「しかし、スコールさんは見ての通りのSSフレームメイデン……。
バトルは少々荷が重いのではないでしょうか。
如何思われますか、解説ちゃん」
解説ちゃんは腕組みをすると、いかにも一家言ありますという風情で応じた。
「それなんだけどね、スコールちゃんには立派な実績があるんだよ!
キャラバンの護衛で装甲機生体の群を撃退したんだって!
やるねー!」
「ほうほう! 戦闘実績証明済みとは、これはご立派!
……む、もう御一方の準備も整ったようです!」
不意に煌々と降り注いでいたスポットライトの明かりが落ちると、天蓋をおろしたドーム式スタジアムの中に暗がりが訪れる。
モニターの輝度も落とされた薄暗闇の中、大入りの観客は何が起きるのか承知しているかの如く、一斉に口を噤んでいた。
「……お待たせしました、皆さん!
我らが故郷の守護者にして、ここスタジアムに君臨する女帝!
メイデンバトルチャンピオン、シュネー嬢の登場です!」
ばんっと音を立ててスポットライトが点灯する。
スコールと対角のゲートに四方から照明が集中した。
同時に割れんばかりの大歓声がスタジアムを埋め尽くす。
そこに佇むは、光を受けて煌めく白銀の放熱髪を背に流した、完全武装の淑女。
絶妙なプロポーションの長身は、金糸で彩られた黒いボディスーツに包まれている。
背負った巨大な武器の塊のような武装システムと装甲ブーツは純白に塗装され、ボディスーツと鮮やかなコントラストを成していた。
鞘に収まった高速振動刀を杖のように地に突き、その柄頭に両手を載せた美女は、白と黒のコントラストの中で唯一の彩りである金糸と同じ輝きの瞳を真っ直ぐにスコールへと向けている。
「うっ……」
圧倒的に格上のメイデンだ。
戦闘能力でも、その美しさの完成度でも。
煌めく黄金の瞳に見つめられ、スコールはびくりと身をすくめた。
白銀の淑女はスコールの怯みを見て取ったのか、小さく嘆息すると背負った武装システムを切り離し、地に落とした。
「え……?」
ごとりと重々しい音を立てて転がる武装システムにスコールは目を丸くする。
シュネーは美麗ともいえるほどの優雅さで佩刀を鞘走らせると、煌めく刃を頭上に掲げて宣言した。
「チャンピオンに挑もうという意気は買いましょう。
ですが、飛び道具を使うまでもありませんわ!」
傲然と言ってのけるスタジアムの女帝に、会場のボルテージは上がる。
割れんばかりの大歓声の中、スコールはじっとシュネーを見据えていた。
馬鹿にされた。
確かに重火器の塊のような武装システムを使用されれば、絶対的な火力の差から勝負は瞬時についてしまうだろう。
だが、それを投棄する自らの勝率を下げるような行いをして尚、十分な勝率を維持しているとあのメイデンは確信しているのだ。
それはスコール自身も理解している事ではある。
そもそも、この場にスコールは勝利するつもりで来てはいない。
元から格上のメイデンと戦って、戦闘経験を蓄積したいだけだったのだ。
それでも、こうまで露骨に見下されれば腹も立つ。
「……まけたく、ない」
スコールはぎゅっと唇を引き結んだ。
何としても一矢報いねばならぬ。
主の手助けをするため強くなりたいという目的意識が、スコールの幼い疑似精神の中に負けず嫌いな一面を芽生えさせつつあった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる