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左手首の多目的端末が着信音を鳴らす。
しばらく無視していたが、鳴りやむ様子もない。
ホテル・メルキオールのスイートルームで汗を流すフィオは、仕方なくしつこいコールを受信した。
「すみません、ちょっと取り込み中で」
「ねえ、取り込み中って、ずっと取り込んでるよね? むしろ取り組み中って感じだよね? 取っ組み合い中?」
通話の向こうのナコの声は露骨に不機嫌さを滲ませている。
フィオは多目的端末から顔を背けるように視線を落とした。
「あうっ♡ はっ♡ はぅんっ♡」
フィオ好みのバックスタイルで貫かれたフリスの背中は桜色に染まり、浮き出た外部冷却液で張り付いた碧の放熱髪とのコントラストが目にも鮮やかだ。
腰を打ち付ける度に漣が走るように揺れる白い尻に目尻を下げると、多目的端末へきりりとした声で告げる。
「取り込み中です」
「うっわ、いけしゃあしゃあと……」
通話の向こうでナコが絶句する。
四つん這いでフィオの肉槍を受け入れるフリスは、肩越しに主の手首を仰ぎ見ると快楽の熱に潤んだ瞳を細めながら口を挟んだ。
「ふふっ♡ 羨ましいですか、ナコ様♡」
「んなっ!?」
「パートナーの目を盗んで、他所のマスターのペニスの型を取るような御方ですもの、さぞや飢えてらっしゃるんでしょうねえ」
「なっ、なっ……!」
嫌みったらしい言葉に反論しようにも、実際その通りなだけにナコはぐうの音も出ない。
マザーメイデンをやり込めたフリスは朱に染まった顔にチェシャ猫染みた笑みを浮かべながら、ことさら甘ったるく悶える。
「あぅぅんっ♡ ますたぁっ♡ もっと奥を抉ってくださぁい♡ おちんちん感じさせてぇ♡」
「ほんと、君って子は誰にでも噛みついて……お仕置き!」
「ふぁぁんっ♡♡」
優位に立ったからと調子に乗るフリスの膣奥をフィオの肉槍が深く抉り込む。
ナコに聞かせる演技だけでなく、本気の喘ぎを漏らすフリスの秘唇から熱い雫が飛び散った。
「あーもう、この似た者主従め! そーだよ、羨ましいよ! こちとら千年お預けだよ! 子宮ユニットからっからだよ!
なんだい見せつけやがって、泣くぞ馬鹿ぁ!」
涙声で吼える通信に、流石にからかい過ぎたかとフィオは小さく舌を出して反省した。 ほんのちょっとだけ。
咳払いして仕切り直す。
「それで、何の用なんです? 僕ら、この通り取り込み中なんですけど」
「こっちだって取り込んでない時に連絡したかったよ! でも君ら、延々部屋に閉じこもりっぱなしじゃないか!
どんだけ盛ってんだよ! ちくしょう、ちょっと分けろ!」
「い、いいじゃないですか、手が空いてるんだから何してたって」
「そうでーす♡ 空いた時間でマスターとメイデンが親密にするのは当然でーす♡」
「いちいちムカつくな、フリスちゃんは! スコールちゃんを見習いなよ! 君らが盛ってる間もコロシアムで経験値積んでるんだよ!?」
「戦績は?」
「……まあ、相手がシュネーちゃんだから……」
「ですよね」
スコールは順調に連敗記録を更新していた。
「まったく、そんだけ盛りたいなら、コロシアムのでっかいベッド貸してあげるからそこでやんなよ!
市民の目を楽しませる慰安案件として手当出したげるから!」
「いやあ、それはちょっと……」
「そんなはしたない真似、できません」
「繋がったまんま通信するくらい、はしたない真似もそうそう無いと思うんだけど?」
通話の向こうでナコが大きな溜息を吐いた。
「うん、まあいいや、諸々おいとこう、今んとこは。
取り込み中に連絡したのはね、フィオくんお待ちかねの情報をキャッチしたからだよ!」
「……来ましたか」
緩んでいたフィオの表情が精悍に引き締まる。
「すぐにガバメントに来て。 詳細はそっちで話すから」
「了解しました」
通話が切れる。
フィオの思考は完全に切り替わっていた。
まずは身支度をせねば。
フリスに深々と突き込んでいた逸物を抜こうと腰を引く。
だが、フリスは背伸びをする猫のように尻を突き上げ、抜けていこうとするペニスに膣肉でしがみついた。
「フリス?」
「……いずれ、この時が来るとは思っていました。
貴方が、私だけのマスターである内に、どうかもう一度だけ」
シーツに突っ伏したフリスの顔は見えない。
だが、先程ナコをからかった時とは裏腹の真摯さを帯びたその声は、涙を堪えるかのように震えていた。
「……少し、ナコ様には待ってて貰おうか」
ただ主だけを求めるフリスに芯から応じきれないのは全てフィオの我が儘ゆえだ。
メイデンの献身に応える術は、ひとつしかない。
フィオはふるふると震える柔らかな尻たぶを両手で掴み直すと、改めて逸物を突き込んだ。
「すぐ来てって言ったよね? ボク、そう言ったよね?」
「いやあ、あはは……」
ジト目で睨めつけてくるナコにフィオは愛想笑いで誤魔化すしかない。
ナコは憤懣やるかたないと言わんばかりの視線を隣のフリスに移す。
「ボクと通話終えてから何発やったの? 一発? 二発? ツヤツヤしちゃってさぁ!」
マザーらしからぬ下品な物言いを投げつけられたフリスは素知らぬ顔で、いつもより重たい前髪をかき上げた。
濡れ髪というわけでもなく、外部冷却液で湿気った髪もそのままに出てきただけである。
フリスは主の寵愛を受けた直後のしっとりとした色気を漂わせていた。
メイデンスーツの股間をひっぺがえせば、子宮ユニットに注ぎ込まれた精液がどろりと零れ落ちるだろう。
「フリスさん、身繕いもなしは流石にどうかと思いますよ……」
「だよね! スゥちゃんもそう思うよね!」
普段は物静かなスゥも眉を顰めながら苦言を呈し、ナコは勢い込んで乗っかった。
だが二人の咎める視線を受けたフリスは、艶然と微笑み小首を傾げてみせるばかり。
その文字通り「胎一杯」の満足げな様子に、子宮ユニット乾き気味の二人の中で苛立ちは募る。
主が余り手を出してくれないだけで時折充足される事もあるスゥはともかく、千年間蓄積されたナコの乾きっぷりは尋常では無い。
ナコの蒼いカメラアイには割と本気の殺意が滲みはじめている。
「とりあえず、キャッチした情報という物について聞かせていただきたい。
……スゥ、埋め合わせは後でしよう」
「は、はいっ!」
話の進まなさに口を挟んだサイボーグ戦士の言葉の後半は、羨ましげな相棒を宥める内容だった。
ヒュリオ自身、余りスゥを満たしてやれていないという自覚と負い目がある。
思わず喜色満面の浮ついた返事をしてしまったスゥは、ナコが絶望と嫉妬と憤懣を混ぜこぜにしたような視線を向けてくる事に気付き、気まずそうに目を伏せた。
「……いいよ、マザーは孤独なのさ、ボクはこの先ずーっとずーっと独り身で、寂しく過ごすんだぁ……」
「あー、その、ナコ様? お気を確かに」
「しっかり」
ぶつぶつと怨嗟の呻きを漏らし始めたナコに、バンはかなり引きながら声を掛け、スコールは取りすがるように肩を揺さぶった。
虚ろに中空に向けられていた蒼いカメラアイに光が戻り、ナコはスコールをぎゅっと抱きしめる。
「もー、みんな勝手ばっかしてさー! フィオくんは盛ってばっかだし、ヒュリオくんはすぐ行方を眩ますし!
ボクの期待通りに動いてくれるの、バンくんとスコールちゃんだけだよぉ!」
「んー、いいこいいこ」
抱きしめられたスコールは、赤と青の瞳をパチパチと瞬かせながらナコの頭を撫でる。
どちらもSSフレームで背丈がほぼ同じ二人がそうしている様は、見た目だけなら微笑ましい。
内実は事情をイマイチ理解しないまま慰める幼いメイデンに泣きつくマザーメイデンという、相当に情けないものであったが。
「えーと、それでナコ様、情報の方を……」
「君がっ! それをっ! 言うのかぁっ! もぉぉっ!」
フィオに急かされたナコは再び激発すると、抱きしめたスコールを振り回しながら、どかどかと床を蹴りつけた。
激しい足踏み動作に短いスカートがまくれ上がり、青白ストライプの縞パンがちらりと覗く。
振り回されたスコールはがっくんがっくんと首を揺さぶられながら、両目を白黒ならぬ白赤青させた。
そんな状態にありながら、スコールは健気ともいえる仕草でナコの頭を撫で続けていた。
「いいこ、いいこ」
「はーっ、はーっ……。 よぉし、落ち着いた、ありがとスコールちゃん」
ナコは何とか強制排気を整えると、スコールの頭を撫で返した。
目を細めてマザーメイデンのいい子いい子を受けるスコールに微笑むと、流石にバツの悪い顔をするフィオをじろりと睨み付ける。
「……タウン75の索敵部隊が移動する山賊の一団を見つけたよ。
ただの山賊にしては数が多くて、その中に常識外れの巨漢も居たって」
「ヴァトー……!」
宿敵の情報にフィオの中から戯れた気配が吹き飛んだ。
「キキョウさんは?」
「パッと見、メイデンは見当たらなかったらしいけど、車両の中に居たら判らないね。
気付かれそうなほど近づくなって索敵部隊には釘刺しておいたし」
ちなみにヴァトーは規格外の巨体のため、キャビンのある車両に乗る事ができない。
座席が剥き出しのバギーで移動していたお陰で、索敵部隊はヴァトーの存在を確認できたのだ。
喉の下を撫でられる猫のように目を細めるスコールの頭を撫でながら、ナコは続ける。
「山賊達の目的地は不明だけど索敵部隊に追跡させてる。 幸いタウン75じゃないみたいだね。
んで、ここからが本題。 轍の跡を辿って、連中の拠点を発見したって」
「腕利きの索敵部隊を抱えておいでだ」
砂漠を渡る風は砂を巻き上げ、車両の轍を簡単に掻き消してしまう。
それを物ともせずに成果を上げた索敵部隊の技量にヒュリオは感嘆の声を漏らした。
「デュークちゃん達と並ぶ、ボクの虎の子さ。
さて、それでどうする、フィオくん? 決めるのは君だ」
フィオは腕組みして思考を巡らせる。
「……移動中の相手に追いすがるのは強行軍になります、そこから真の漢相手に戦うのは辛い。
だから、まずは拠点を潰しましょう」
「キキョウちゃんはヴァトーと一緒にいるかも知れないよ? 空振りになったらどうする?」
「山賊も拠点なしにはやっていけませんから。 拠点に陣取ってれば、いずれ戻ってきますよ」
フィオはヴァトー達フォートMFの行動原理を知らない。
それどころか、フォートMFという彼らの自称すら知らなかった。
真の漢という強力な戦力を有していようとも、過酷なタウン外で生きる以上は基盤となる拠点が絶対に必要である。
常識的に考えて、敵の基盤を叩く方針は間違いではない。
フィオの下した判断にナコは頷いた。
「判った、それじゃシュネーちゃんを貸したげる。 戦力は多い方がいいでしょ?」
「いいんですか?」
「真の漢が率いる山賊団とか洒落にならないしね。
潰せるうちに潰しとかないと、タウン75が危ないかも知れないから」
腕組みしながら述べるナコの言葉は、フォートMFに狙われるマザーとして正鵠を射ていた。
しばらく無視していたが、鳴りやむ様子もない。
ホテル・メルキオールのスイートルームで汗を流すフィオは、仕方なくしつこいコールを受信した。
「すみません、ちょっと取り込み中で」
「ねえ、取り込み中って、ずっと取り込んでるよね? むしろ取り組み中って感じだよね? 取っ組み合い中?」
通話の向こうのナコの声は露骨に不機嫌さを滲ませている。
フィオは多目的端末から顔を背けるように視線を落とした。
「あうっ♡ はっ♡ はぅんっ♡」
フィオ好みのバックスタイルで貫かれたフリスの背中は桜色に染まり、浮き出た外部冷却液で張り付いた碧の放熱髪とのコントラストが目にも鮮やかだ。
腰を打ち付ける度に漣が走るように揺れる白い尻に目尻を下げると、多目的端末へきりりとした声で告げる。
「取り込み中です」
「うっわ、いけしゃあしゃあと……」
通話の向こうでナコが絶句する。
四つん這いでフィオの肉槍を受け入れるフリスは、肩越しに主の手首を仰ぎ見ると快楽の熱に潤んだ瞳を細めながら口を挟んだ。
「ふふっ♡ 羨ましいですか、ナコ様♡」
「んなっ!?」
「パートナーの目を盗んで、他所のマスターのペニスの型を取るような御方ですもの、さぞや飢えてらっしゃるんでしょうねえ」
「なっ、なっ……!」
嫌みったらしい言葉に反論しようにも、実際その通りなだけにナコはぐうの音も出ない。
マザーメイデンをやり込めたフリスは朱に染まった顔にチェシャ猫染みた笑みを浮かべながら、ことさら甘ったるく悶える。
「あぅぅんっ♡ ますたぁっ♡ もっと奥を抉ってくださぁい♡ おちんちん感じさせてぇ♡」
「ほんと、君って子は誰にでも噛みついて……お仕置き!」
「ふぁぁんっ♡♡」
優位に立ったからと調子に乗るフリスの膣奥をフィオの肉槍が深く抉り込む。
ナコに聞かせる演技だけでなく、本気の喘ぎを漏らすフリスの秘唇から熱い雫が飛び散った。
「あーもう、この似た者主従め! そーだよ、羨ましいよ! こちとら千年お預けだよ! 子宮ユニットからっからだよ!
なんだい見せつけやがって、泣くぞ馬鹿ぁ!」
涙声で吼える通信に、流石にからかい過ぎたかとフィオは小さく舌を出して反省した。 ほんのちょっとだけ。
咳払いして仕切り直す。
「それで、何の用なんです? 僕ら、この通り取り込み中なんですけど」
「こっちだって取り込んでない時に連絡したかったよ! でも君ら、延々部屋に閉じこもりっぱなしじゃないか!
どんだけ盛ってんだよ! ちくしょう、ちょっと分けろ!」
「い、いいじゃないですか、手が空いてるんだから何してたって」
「そうでーす♡ 空いた時間でマスターとメイデンが親密にするのは当然でーす♡」
「いちいちムカつくな、フリスちゃんは! スコールちゃんを見習いなよ! 君らが盛ってる間もコロシアムで経験値積んでるんだよ!?」
「戦績は?」
「……まあ、相手がシュネーちゃんだから……」
「ですよね」
スコールは順調に連敗記録を更新していた。
「まったく、そんだけ盛りたいなら、コロシアムのでっかいベッド貸してあげるからそこでやんなよ!
市民の目を楽しませる慰安案件として手当出したげるから!」
「いやあ、それはちょっと……」
「そんなはしたない真似、できません」
「繋がったまんま通信するくらい、はしたない真似もそうそう無いと思うんだけど?」
通話の向こうでナコが大きな溜息を吐いた。
「うん、まあいいや、諸々おいとこう、今んとこは。
取り込み中に連絡したのはね、フィオくんお待ちかねの情報をキャッチしたからだよ!」
「……来ましたか」
緩んでいたフィオの表情が精悍に引き締まる。
「すぐにガバメントに来て。 詳細はそっちで話すから」
「了解しました」
通話が切れる。
フィオの思考は完全に切り替わっていた。
まずは身支度をせねば。
フリスに深々と突き込んでいた逸物を抜こうと腰を引く。
だが、フリスは背伸びをする猫のように尻を突き上げ、抜けていこうとするペニスに膣肉でしがみついた。
「フリス?」
「……いずれ、この時が来るとは思っていました。
貴方が、私だけのマスターである内に、どうかもう一度だけ」
シーツに突っ伏したフリスの顔は見えない。
だが、先程ナコをからかった時とは裏腹の真摯さを帯びたその声は、涙を堪えるかのように震えていた。
「……少し、ナコ様には待ってて貰おうか」
ただ主だけを求めるフリスに芯から応じきれないのは全てフィオの我が儘ゆえだ。
メイデンの献身に応える術は、ひとつしかない。
フィオはふるふると震える柔らかな尻たぶを両手で掴み直すと、改めて逸物を突き込んだ。
「すぐ来てって言ったよね? ボク、そう言ったよね?」
「いやあ、あはは……」
ジト目で睨めつけてくるナコにフィオは愛想笑いで誤魔化すしかない。
ナコは憤懣やるかたないと言わんばかりの視線を隣のフリスに移す。
「ボクと通話終えてから何発やったの? 一発? 二発? ツヤツヤしちゃってさぁ!」
マザーらしからぬ下品な物言いを投げつけられたフリスは素知らぬ顔で、いつもより重たい前髪をかき上げた。
濡れ髪というわけでもなく、外部冷却液で湿気った髪もそのままに出てきただけである。
フリスは主の寵愛を受けた直後のしっとりとした色気を漂わせていた。
メイデンスーツの股間をひっぺがえせば、子宮ユニットに注ぎ込まれた精液がどろりと零れ落ちるだろう。
「フリスさん、身繕いもなしは流石にどうかと思いますよ……」
「だよね! スゥちゃんもそう思うよね!」
普段は物静かなスゥも眉を顰めながら苦言を呈し、ナコは勢い込んで乗っかった。
だが二人の咎める視線を受けたフリスは、艶然と微笑み小首を傾げてみせるばかり。
その文字通り「胎一杯」の満足げな様子に、子宮ユニット乾き気味の二人の中で苛立ちは募る。
主が余り手を出してくれないだけで時折充足される事もあるスゥはともかく、千年間蓄積されたナコの乾きっぷりは尋常では無い。
ナコの蒼いカメラアイには割と本気の殺意が滲みはじめている。
「とりあえず、キャッチした情報という物について聞かせていただきたい。
……スゥ、埋め合わせは後でしよう」
「は、はいっ!」
話の進まなさに口を挟んだサイボーグ戦士の言葉の後半は、羨ましげな相棒を宥める内容だった。
ヒュリオ自身、余りスゥを満たしてやれていないという自覚と負い目がある。
思わず喜色満面の浮ついた返事をしてしまったスゥは、ナコが絶望と嫉妬と憤懣を混ぜこぜにしたような視線を向けてくる事に気付き、気まずそうに目を伏せた。
「……いいよ、マザーは孤独なのさ、ボクはこの先ずーっとずーっと独り身で、寂しく過ごすんだぁ……」
「あー、その、ナコ様? お気を確かに」
「しっかり」
ぶつぶつと怨嗟の呻きを漏らし始めたナコに、バンはかなり引きながら声を掛け、スコールは取りすがるように肩を揺さぶった。
虚ろに中空に向けられていた蒼いカメラアイに光が戻り、ナコはスコールをぎゅっと抱きしめる。
「もー、みんな勝手ばっかしてさー! フィオくんは盛ってばっかだし、ヒュリオくんはすぐ行方を眩ますし!
ボクの期待通りに動いてくれるの、バンくんとスコールちゃんだけだよぉ!」
「んー、いいこいいこ」
抱きしめられたスコールは、赤と青の瞳をパチパチと瞬かせながらナコの頭を撫でる。
どちらもSSフレームで背丈がほぼ同じ二人がそうしている様は、見た目だけなら微笑ましい。
内実は事情をイマイチ理解しないまま慰める幼いメイデンに泣きつくマザーメイデンという、相当に情けないものであったが。
「えーと、それでナコ様、情報の方を……」
「君がっ! それをっ! 言うのかぁっ! もぉぉっ!」
フィオに急かされたナコは再び激発すると、抱きしめたスコールを振り回しながら、どかどかと床を蹴りつけた。
激しい足踏み動作に短いスカートがまくれ上がり、青白ストライプの縞パンがちらりと覗く。
振り回されたスコールはがっくんがっくんと首を揺さぶられながら、両目を白黒ならぬ白赤青させた。
そんな状態にありながら、スコールは健気ともいえる仕草でナコの頭を撫で続けていた。
「いいこ、いいこ」
「はーっ、はーっ……。 よぉし、落ち着いた、ありがとスコールちゃん」
ナコは何とか強制排気を整えると、スコールの頭を撫で返した。
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ただの山賊にしては数が多くて、その中に常識外れの巨漢も居たって」
「ヴァトー……!」
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「キキョウさんは?」
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気付かれそうなほど近づくなって索敵部隊には釘刺しておいたし」
ちなみにヴァトーは規格外の巨体のため、キャビンのある車両に乗る事ができない。
座席が剥き出しのバギーで移動していたお陰で、索敵部隊はヴァトーの存在を確認できたのだ。
喉の下を撫でられる猫のように目を細めるスコールの頭を撫でながら、ナコは続ける。
「山賊達の目的地は不明だけど索敵部隊に追跡させてる。 幸いタウン75じゃないみたいだね。
んで、ここからが本題。 轍の跡を辿って、連中の拠点を発見したって」
「腕利きの索敵部隊を抱えておいでだ」
砂漠を渡る風は砂を巻き上げ、車両の轍を簡単に掻き消してしまう。
それを物ともせずに成果を上げた索敵部隊の技量にヒュリオは感嘆の声を漏らした。
「デュークちゃん達と並ぶ、ボクの虎の子さ。
さて、それでどうする、フィオくん? 決めるのは君だ」
フィオは腕組みして思考を巡らせる。
「……移動中の相手に追いすがるのは強行軍になります、そこから真の漢相手に戦うのは辛い。
だから、まずは拠点を潰しましょう」
「キキョウちゃんはヴァトーと一緒にいるかも知れないよ? 空振りになったらどうする?」
「山賊も拠点なしにはやっていけませんから。 拠点に陣取ってれば、いずれ戻ってきますよ」
フィオはヴァトー達フォートMFの行動原理を知らない。
それどころか、フォートMFという彼らの自称すら知らなかった。
真の漢という強力な戦力を有していようとも、過酷なタウン外で生きる以上は基盤となる拠点が絶対に必要である。
常識的に考えて、敵の基盤を叩く方針は間違いではない。
フィオの下した判断にナコは頷いた。
「判った、それじゃシュネーちゃんを貸したげる。 戦力は多い方がいいでしょ?」
「いいんですか?」
「真の漢が率いる山賊団とか洒落にならないしね。
潰せるうちに潰しとかないと、タウン75が危ないかも知れないから」
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