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フィオ一行の持ち帰ったお土産はナコを大いに喜ばせた。
資源の塊である大型装甲機生体、それもCPUまで残っていると来れば利用方法は無数にある。
上機嫌のナコは損傷したキキョウとスコールのみならず、旅路に同行したメイデン全てに最上級のメンテナンスをサービスした。
もちろんメイデンの主達へのスイートルーム提供も続行である。
だが、ナコとタウン75にとって最大の収穫は物資ではなく、情報であった。
「また面倒くさい集団だねえ……」
ドクの口述をまとめたフォートMFに関する報告書に目を通し、ナコは嘆息する。
「貴女のようなマザーにとっては面倒な事この上ないだろうな。
連中はマザーメイデンを貶め、その支配からタウンを解放する事を至上命題としている。
まさに不倶戴天の敵という奴だな」
仮にもフォートMFの幹部であったというのにドクは全く他人事のように評すると、コーヒーカップを傾けた。
VIPルームのソファに悠然と腰掛けコーヒーを喫するドクの姿は、手首に嵌められた手錠を除けばとても虜囚のように見えない。
「君自身にはマザーへの敵意とかないの?」
流石に呆れたように問うフィオへ、ドクはあっけらかんと応じる。
「特にないな。 フォートMFとつるんでいたのは、連中が食わせてくれたからさ。
俺は頭脳特化型だからな。 脳みその性能以外を切り捨てた結果が、幼児成熟の貧弱ボディって訳だ。
この御時世、誰かの保護がなけりゃとても生きていけやしない」
ドクは一口コーヒーを啜ると、小さく続ける。
「だからボディガードにサンクチュアリを作ったんだが……」
大破したサンクチュアリは鹵獲機という扱いでタウン75のメンテナンスルームに担ぎ込まれている。
だが、キキョウやスコールと違い修復は行われておらず、スリープ状態のまま放置されていた。
「あの子の修理はまだお預けだね。 まずは君がボクらの役に立つ所を見せて貰わないと」
釘を刺すナコにドクは神妙な顔で頷いた。
「自分の立場は弁えているさ。
貴女の温情に応えるべく、働くとしよう」
「期待してるからねー」
「ナコ様、オレからも彼に質問してもよろしいですか」
「どうぞー」
片手を上げたサイボーグ戦士にナコは鷹揚に頷くと、カフェオレのカップへ手を伸ばした。
律儀に一礼したヒュリオは精悍な眼光をドクへ向ける。
荒事慣れしているとはとても言えないドクは、強面のサイボーグ戦士の視線に怯えたように首を竦めた。
「君たちの主力はタウン48へ攻め込むつもりだと言っていたな。
タウン48はこの辺りで最大のタウンだ、勝ち目があると考えているのか?」
「もちろん。 そうでなきゃ行動を起こさない」
「いくら真の漢がいても、無謀じゃないかな?」
ヴァトーとの戦いを思い起こし、フィオは口を挟んだ。
ヴァトーの異様な防御力と腕力はAクラスメイデンすら凌駕していたが、それでも強力な個人であるにすぎない。
真の漢の特殊能力は無から有を生み出すものではないとフィオ自身、実感している。
超常の力を発揮しようとも、そのパワーソースは本人の体力に依存しているのだ。
圧倒的な物量を持つタウン48を相手にすれば、いずれ力尽きるのは目に見えている。
「お前さん、ヴァトーとやりあった事があったんだったな。
確かに奴の能力だけじゃ、大規模タウンと消耗戦になればそのうち競り負けるだろう。
けれど、レックスは違う。 あいつの能力はタウン48とは特に相性がいい」
「フォートMFのリーダー、だっけ」
「ああ、あいつは近くにいるメイデンを腰砕けにする。
メイデンに戦力を頼ってるタウン48は大幅な弱体化は免れんだろう。
そこを地下に潜伏しているデッドマンの部隊とヴァトーの部隊で挟撃するという作戦だよ」
「……ここでデッドマンかあ」
フィオは腕組みをして唸った。
彼自身には全く関わりのない相手だが、タウン48の影の大物と噂される男がタウン転覆を本気で謀り、永らく潜伏し続けていたという事実にはぞっとするものを感じていた。
「ヒュリオさん、デッドマンについて知ってます?」
「一度ニアミスした事はあるが、それ以外は噂程度だね。
ただ、聞いた話ではデッドマンを名乗る犯罪者は数百年前から記録に残っているらしい。
タウン転覆を狙って後継者に名を継がせつつ代々潜伏し続けていたとすると、物凄い執念だな」
「そいつはちょっと違う」
ドクは飲み干したコーヒーカップをソーサーに戻すと、ヒュリオの言葉を訂正した。
「デッドマンは『代々』潜伏し続けてたんじゃない。
全部あのおっさん自身の話さ」
「……数百年前からだぞ?」
「あの親父も真の漢だ、長命がおっさんの能力なんだろうよ」
「長生きの癖に死人を名乗るのか、ふざけてるなあ」
金魚鉢を出てから三年ちょっとの人生しか歩んでいないフィオには数百年の人生など想像もつかなかった。
「でも長生きったって、それだけじゃ大して脅威でもないんじゃないのか?」
バンの感想にヒュリオは首を振った。
「いや、デッドマン自身が卓越した戦士だ。
Aクラスメイデンとアーミーのコンビを一人で殴り倒すくらいにな」
「マイザーさんみたいですね……」
「殴り倒されたのがそのマイザーだよ」
「マジですか」
マイザーの腕っ節を目の当たりにした事のあるフィオは思わず目を剝いた。
「あの親父曰く、永く生きてると功夫を積む機会が増えるんだとさ」
「際限なく鍛える時間があるなら、そこまで強くなれるのか……長生き怖え」
バンはぞっとしない顔で自分の言葉を撤回した。
腕組みしたヒュリオは小さく唸りながらフォートMFと古巣の戦力状況を分析する。
「デッドマンとヴァトー、Aクラスメイデンを倒すような相手が敵側に居るのにタウン側のメイデンの戦力が落ちているのなら、相当に厳しいな……。
ドク、メイデンが腰砕けになるというのは、どういう意味だ? 行動不能になるのか?」
「言葉の通りというか……主持ちのメイデンでも盛りがついたみたいにレックスを求めるようになるんだ。
タウン所属のメイデンは基本マスターレスだからな、ひとたまりもあるまい」
「求める? マスター持ちのメイデンが他人をか? 信じがたいな……」
ドクの説明にヒュリオは眉を寄せる。
子宮ユニットによるマスター認証はメイデンシステムの根幹である。
メイデンの主にとって、その大前提を覆す存在には疑念を挟まずにいられなかった。
「んー……。 詳しくはキキョウに聞いた方がいいと思うんだがな」
「待った、なんでここでキキョウさんが出てくるの」
ぽろりと漏らした呟きに鋭くフィオが食いつく。
「あいつがレックスの能力を体験してるからさ。
レックスの能力は常に垂れ流し状態だ、近くに居れば敵味方関係なく影響を受けちまうんだ」
空っぽのカップの底を物欲しげに眺めながら、まるで講義を行うかのような調子でドクは続けた。
フィオの表情筋が引き攣ったような形で固まっている事に気付かない。
「……キキョウさんがマスター以外を求めたと?」
「フォートMFの幹部会議でヴァトーに連れられてたからな。
目の前でレックスの能力にあてられちゃあ、どんな堅物メイデンでもひとたまりはない。
そのまま乱行パーティさ」
「そうかそうか、つまり君もそれに参加したんだな!」
フィオの右手が閃くように乙女殺しのグリップへ伸びる。
凶悪な20㎜拳銃を引っこ抜く少年の肩をヒュリオは慌てて掴んだ。
「落ち着け、フィオくん!」
「殿中だよ!」
座ってたソファの背後に家庭内有害害虫を思わせる驚異的な速度で飛び込んだナコもまた、古めかしい制止の声をあげた。
ちなみに20㎜の威力の前では革張りのソファなど屁の突っ張りにもならない。
「離してくださいヒュリオさん! こんにゃろう、ぶっ殺してやる!」
乙女殺し振り回して激昂するフィオの剣幕に、ドクはソファからずり落ちかけながらどこかずれた感想を漏らした。
「じゅ、12.5㎜を超える弾丸を人間に使うのは条約違反だぞ……」
「そんな大昔の条約、護ってる所なんてないよー」
すかさずナコに突っ込まれ、ドクは情けなく顔をひきつらせる。
「それで、お前、キキョウさんとヤったのかよ」
ナコと同じくソファを盾にしながら問うバンに、ドクはぶんぶんと首を振って否定した。
「やってない! 俺はサンクチュアリ一筋だ!」
「……そうかい、ならいいや。 紛らわしい言い方をするんじゃないよ」
必死で己の潔白を訴えるドクの言葉に、フィオは憑きものが落ちたかのようにあっさり頷くと乙女殺しを腰のホルスターに戻した。
「……お前が早とちりしたんだろうが」
「キキョウさん絡みだと、フィオの沸点めちゃくちゃ低いからな。
変に勿体ぶらない方がいいぜ」
「肝に銘じるよ」
バンが囁くアドバイスに、ドクは酢を飲んだような表情で頷いた。
平静を取り戻したフィオに小さく溜息を吐くと、ヒュリオは真顔で依頼する。
「フィオ君、嫌な事だとは思うが、キキョウからレックスの能力の詳細について聞いておいてくれ。
余りにも危険な能力だ」
「……わかりました、キキョウさん達がメンテから戻ったら確認しておきます」
「それとフリスに釘を刺すのも頼む。
前にも言ったが、彼女の短絡的な行動は目に余る」
「フリスちゃんには、ちょっとお説教が必要かもねえ」
「お説教、ですか……」
ヒュリオに合わせてナコにまで言われ、フィオは腕組みをして宙を睨んだ。
彼にしても色々とやりすぎるフリスをそのままにはしておけないと思っている。
メイデンを御しえないのはマスターとして失格もいい所だ。
フィオは頭の中でお説教プランをまとめると、ナコに向き直った。
「……ナコ様、ちょっと用意していただきたいものがあるんですけど」
資源の塊である大型装甲機生体、それもCPUまで残っていると来れば利用方法は無数にある。
上機嫌のナコは損傷したキキョウとスコールのみならず、旅路に同行したメイデン全てに最上級のメンテナンスをサービスした。
もちろんメイデンの主達へのスイートルーム提供も続行である。
だが、ナコとタウン75にとって最大の収穫は物資ではなく、情報であった。
「また面倒くさい集団だねえ……」
ドクの口述をまとめたフォートMFに関する報告書に目を通し、ナコは嘆息する。
「貴女のようなマザーにとっては面倒な事この上ないだろうな。
連中はマザーメイデンを貶め、その支配からタウンを解放する事を至上命題としている。
まさに不倶戴天の敵という奴だな」
仮にもフォートMFの幹部であったというのにドクは全く他人事のように評すると、コーヒーカップを傾けた。
VIPルームのソファに悠然と腰掛けコーヒーを喫するドクの姿は、手首に嵌められた手錠を除けばとても虜囚のように見えない。
「君自身にはマザーへの敵意とかないの?」
流石に呆れたように問うフィオへ、ドクはあっけらかんと応じる。
「特にないな。 フォートMFとつるんでいたのは、連中が食わせてくれたからさ。
俺は頭脳特化型だからな。 脳みその性能以外を切り捨てた結果が、幼児成熟の貧弱ボディって訳だ。
この御時世、誰かの保護がなけりゃとても生きていけやしない」
ドクは一口コーヒーを啜ると、小さく続ける。
「だからボディガードにサンクチュアリを作ったんだが……」
大破したサンクチュアリは鹵獲機という扱いでタウン75のメンテナンスルームに担ぎ込まれている。
だが、キキョウやスコールと違い修復は行われておらず、スリープ状態のまま放置されていた。
「あの子の修理はまだお預けだね。 まずは君がボクらの役に立つ所を見せて貰わないと」
釘を刺すナコにドクは神妙な顔で頷いた。
「自分の立場は弁えているさ。
貴女の温情に応えるべく、働くとしよう」
「期待してるからねー」
「ナコ様、オレからも彼に質問してもよろしいですか」
「どうぞー」
片手を上げたサイボーグ戦士にナコは鷹揚に頷くと、カフェオレのカップへ手を伸ばした。
律儀に一礼したヒュリオは精悍な眼光をドクへ向ける。
荒事慣れしているとはとても言えないドクは、強面のサイボーグ戦士の視線に怯えたように首を竦めた。
「君たちの主力はタウン48へ攻め込むつもりだと言っていたな。
タウン48はこの辺りで最大のタウンだ、勝ち目があると考えているのか?」
「もちろん。 そうでなきゃ行動を起こさない」
「いくら真の漢がいても、無謀じゃないかな?」
ヴァトーとの戦いを思い起こし、フィオは口を挟んだ。
ヴァトーの異様な防御力と腕力はAクラスメイデンすら凌駕していたが、それでも強力な個人であるにすぎない。
真の漢の特殊能力は無から有を生み出すものではないとフィオ自身、実感している。
超常の力を発揮しようとも、そのパワーソースは本人の体力に依存しているのだ。
圧倒的な物量を持つタウン48を相手にすれば、いずれ力尽きるのは目に見えている。
「お前さん、ヴァトーとやりあった事があったんだったな。
確かに奴の能力だけじゃ、大規模タウンと消耗戦になればそのうち競り負けるだろう。
けれど、レックスは違う。 あいつの能力はタウン48とは特に相性がいい」
「フォートMFのリーダー、だっけ」
「ああ、あいつは近くにいるメイデンを腰砕けにする。
メイデンに戦力を頼ってるタウン48は大幅な弱体化は免れんだろう。
そこを地下に潜伏しているデッドマンの部隊とヴァトーの部隊で挟撃するという作戦だよ」
「……ここでデッドマンかあ」
フィオは腕組みをして唸った。
彼自身には全く関わりのない相手だが、タウン48の影の大物と噂される男がタウン転覆を本気で謀り、永らく潜伏し続けていたという事実にはぞっとするものを感じていた。
「ヒュリオさん、デッドマンについて知ってます?」
「一度ニアミスした事はあるが、それ以外は噂程度だね。
ただ、聞いた話ではデッドマンを名乗る犯罪者は数百年前から記録に残っているらしい。
タウン転覆を狙って後継者に名を継がせつつ代々潜伏し続けていたとすると、物凄い執念だな」
「そいつはちょっと違う」
ドクは飲み干したコーヒーカップをソーサーに戻すと、ヒュリオの言葉を訂正した。
「デッドマンは『代々』潜伏し続けてたんじゃない。
全部あのおっさん自身の話さ」
「……数百年前からだぞ?」
「あの親父も真の漢だ、長命がおっさんの能力なんだろうよ」
「長生きの癖に死人を名乗るのか、ふざけてるなあ」
金魚鉢を出てから三年ちょっとの人生しか歩んでいないフィオには数百年の人生など想像もつかなかった。
「でも長生きったって、それだけじゃ大して脅威でもないんじゃないのか?」
バンの感想にヒュリオは首を振った。
「いや、デッドマン自身が卓越した戦士だ。
Aクラスメイデンとアーミーのコンビを一人で殴り倒すくらいにな」
「マイザーさんみたいですね……」
「殴り倒されたのがそのマイザーだよ」
「マジですか」
マイザーの腕っ節を目の当たりにした事のあるフィオは思わず目を剝いた。
「あの親父曰く、永く生きてると功夫を積む機会が増えるんだとさ」
「際限なく鍛える時間があるなら、そこまで強くなれるのか……長生き怖え」
バンはぞっとしない顔で自分の言葉を撤回した。
腕組みしたヒュリオは小さく唸りながらフォートMFと古巣の戦力状況を分析する。
「デッドマンとヴァトー、Aクラスメイデンを倒すような相手が敵側に居るのにタウン側のメイデンの戦力が落ちているのなら、相当に厳しいな……。
ドク、メイデンが腰砕けになるというのは、どういう意味だ? 行動不能になるのか?」
「言葉の通りというか……主持ちのメイデンでも盛りがついたみたいにレックスを求めるようになるんだ。
タウン所属のメイデンは基本マスターレスだからな、ひとたまりもあるまい」
「求める? マスター持ちのメイデンが他人をか? 信じがたいな……」
ドクの説明にヒュリオは眉を寄せる。
子宮ユニットによるマスター認証はメイデンシステムの根幹である。
メイデンの主にとって、その大前提を覆す存在には疑念を挟まずにいられなかった。
「んー……。 詳しくはキキョウに聞いた方がいいと思うんだがな」
「待った、なんでここでキキョウさんが出てくるの」
ぽろりと漏らした呟きに鋭くフィオが食いつく。
「あいつがレックスの能力を体験してるからさ。
レックスの能力は常に垂れ流し状態だ、近くに居れば敵味方関係なく影響を受けちまうんだ」
空っぽのカップの底を物欲しげに眺めながら、まるで講義を行うかのような調子でドクは続けた。
フィオの表情筋が引き攣ったような形で固まっている事に気付かない。
「……キキョウさんがマスター以外を求めたと?」
「フォートMFの幹部会議でヴァトーに連れられてたからな。
目の前でレックスの能力にあてられちゃあ、どんな堅物メイデンでもひとたまりはない。
そのまま乱行パーティさ」
「そうかそうか、つまり君もそれに参加したんだな!」
フィオの右手が閃くように乙女殺しのグリップへ伸びる。
凶悪な20㎜拳銃を引っこ抜く少年の肩をヒュリオは慌てて掴んだ。
「落ち着け、フィオくん!」
「殿中だよ!」
座ってたソファの背後に家庭内有害害虫を思わせる驚異的な速度で飛び込んだナコもまた、古めかしい制止の声をあげた。
ちなみに20㎜の威力の前では革張りのソファなど屁の突っ張りにもならない。
「離してくださいヒュリオさん! こんにゃろう、ぶっ殺してやる!」
乙女殺し振り回して激昂するフィオの剣幕に、ドクはソファからずり落ちかけながらどこかずれた感想を漏らした。
「じゅ、12.5㎜を超える弾丸を人間に使うのは条約違反だぞ……」
「そんな大昔の条約、護ってる所なんてないよー」
すかさずナコに突っ込まれ、ドクは情けなく顔をひきつらせる。
「それで、お前、キキョウさんとヤったのかよ」
ナコと同じくソファを盾にしながら問うバンに、ドクはぶんぶんと首を振って否定した。
「やってない! 俺はサンクチュアリ一筋だ!」
「……そうかい、ならいいや。 紛らわしい言い方をするんじゃないよ」
必死で己の潔白を訴えるドクの言葉に、フィオは憑きものが落ちたかのようにあっさり頷くと乙女殺しを腰のホルスターに戻した。
「……お前が早とちりしたんだろうが」
「キキョウさん絡みだと、フィオの沸点めちゃくちゃ低いからな。
変に勿体ぶらない方がいいぜ」
「肝に銘じるよ」
バンが囁くアドバイスに、ドクは酢を飲んだような表情で頷いた。
平静を取り戻したフィオに小さく溜息を吐くと、ヒュリオは真顔で依頼する。
「フィオ君、嫌な事だとは思うが、キキョウからレックスの能力の詳細について聞いておいてくれ。
余りにも危険な能力だ」
「……わかりました、キキョウさん達がメンテから戻ったら確認しておきます」
「それとフリスに釘を刺すのも頼む。
前にも言ったが、彼女の短絡的な行動は目に余る」
「フリスちゃんには、ちょっとお説教が必要かもねえ」
「お説教、ですか……」
ヒュリオに合わせてナコにまで言われ、フィオは腕組みをして宙を睨んだ。
彼にしても色々とやりすぎるフリスをそのままにはしておけないと思っている。
メイデンを御しえないのはマスターとして失格もいい所だ。
フィオは頭の中でお説教プランをまとめると、ナコに向き直った。
「……ナコ様、ちょっと用意していただきたいものがあるんですけど」
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