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征服6

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少し強めにハルガの身体を叩く。滅びろ。変態。女の敵。そして俺の敵。

びしびし何度も叩く。楽しい。なぜだ。
ああ、こうも仕返しができたのは初めてだな。今のうちにたっぷり…。

そう思ったが手首を掴まれた。…わかってた。そんな展開だよな。


「セリ。可愛すぎるだろ。そんなに俺にもっといじめてほしいのか?」


わざわざ耳元で言ってきた。


「いつも勝手にいじめるだろ」

「そうだな」


口が災いした。腰を引き寄せられる。


「やめろ。もう無理だ」


足腰立たないとか嫌だ。


「…わかってる。なんにもしないさ。ただ大人しく寝るぞ?」


からかっただけらしい。俺はハルガに抱き込まれていて抱き枕のようだ。


「待て。寝るのか? 仕事は?」

「ない。セリの部屋から俺が出ていくところは見られたくないが、たまにはスリリングに朝まで一緒もいいだろ」


そう言ってハルガは俺の反論など聞かずに目を閉じた。俺は不満でハルガに顔を寄せ確認してみるが、本気で寝ている。そんな余裕がやはり腹立たしい。

それでもいつのまにか俺も眠っていた。

そして朝も一緒に食べて、俺は緊張しながら部屋を出るがハルガは簡単に出ていって、あっさりどこかに消えてしまった。勝手な奴だ。





「か、会長…」

「今は授業中だろ?」


今日も生徒会室にいれば1人の生徒が入ってきた。


「先生の体調不良で自習なんです」


それでもいいとは言えないが。入ってきた生徒は俺の親衛隊の隊員で平凡な容姿だが、癒し系小動物タイプで俺も見てるだけで和んだものだ。

そんないつもほわほわした小動物が今は顔色が悪い。


「…どうした?」


俺には優しさなんてないが、なるべく脅かさないように話しかければ、小動物は泣きそうな顔で親衛隊がおかしいと言う。

俺のリコールを考えているのだそうだ。

副会長が脅してきたが、脅しでなく本気だったのだな。俺が自から会長の座を降りなかったからかもしれない。

リコールは簡単にできるだろう。もともと人気投票な為、仕事ができないとかはあまり関係なく、人気が落ちれば落とされる。過去、人気が落ちてリコールされたことが何度かあったと聞いたことがある。

たしか生徒会の役員1人が署名して生徒の過半数が望めばリコールは成立する。簡単なことだ。俺の親衛隊が望めばそれこそあっさりと俺は会長でなくなるだろう。


「みんなひどいです。僕が会長は悪くないのにって言っても、それは分かってるけど、それ以上にふさわしい人がなるべきだって言うんです。みんなあんなに会長のこと好きだったのに…」


もうほとんど泣いてる小動物の頭を撫でてみる。小動物なだけに少し驚いたようであわあわしはじめた。


「別に会長でないと困ることはないから、気にするな」


前なら、かなり固執したに違いない。だが、今は自分がどうすればいいのか、それすら分からないくらいで、会長なんてもの、どうでもよく思える。


「大丈夫、ですか?」

「ああ。本当に気にしない」

「よかった…」


そういえば、役員でなくなれば一人部屋ではなくなるな。そうなるとあいつはどうするのだろうか。まさか聞かせる趣味があるとかはねえよな?


「そうだ。ひとつ聞きたいが、俺の代わりに会長にしようとしているのは、ハルガ、いや、留学生か?」


留学生を役員にって、いくら学校にずっといるとしても、おかしな話だな。

小動物はこくりと頷いた。


「じゃあ、お前は留学生のことはどう思う?」

「あの人のことですか? この前頭を撫でてくれました。ニコニコと優しそうでいい人だなって思いました」


あいつ……………、小動物もありとか言わないよな? さすがに犯罪だと言っておこう。俺はすでに被害者だが。


「そうか。お前も留学生のことは好きなんだな」

「それは…、そうですけど、会長もちゃんと好きですよ?」

「別に怒ってねえよ。そんな顔すんな」


やっぱ俺みたいな優しくない奴は小動物を怖がらせるようだ。もう一度頭を撫でるが、怖がんねえかな?


「えへへ、会長も優しいです」

「…わかったら、教室戻れ。友人が心配してるだろ」


安心した小動物は笑顔で部屋から出ていった。

…あれ、飼っちゃ駄目だろうか?

さて、俺はどうするかな。会長の座に未練がないようだし、どうでもいいか。

あっさりと結論にいたり、すぐに仕事を再開した。
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