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征服7
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昼は最近食べない時もあるが、さすがにそれではもたない時もあるので、煩そうな食堂に向かう。
やっぱり嫌な視線を受けるが、そこまで弱くない俺は、それらを無視して席につく。
料理を頼んで静かに待っていたが、食堂が騒がしくなった。どうせ他の役員だと思っていれば、その通り副会長が俺の前にやってきた。
「会長、言いましたよね? あなたの人気はすでにないんです」
……なにが言いたいのか。俺は恨まれでもしていたのか。
副会長に目を向けると副会長1人だけでの騒がしさでなく、ハルガとその取り巻き達だと分かった。副会長含め、俺に媚びを売ってきていた連中が、今は俺を嘲笑うかのような目を向けてきている。
「リブリードさんと比べれば、庶民とかわりない存在なんです」
ああ。もしかしたら、こいつも上に立つことを望み、ハルガといることで、俺以上になった気でいるのか。今は優越感を感じているように見える。
「…今度、あなたをリコールします。惨めなまねは止めて、自ら会長であることを辞めれば、きれいな去り方になりますよ?」
「そうですよ、会長。お慕いしていたあなたが見苦しく席にしがみつくまねなどしないでください」
俺の親衛隊隊長も副会長の言葉に乗って話す。
他の奴も同じだな。俺という高い位置にいる人間を貶せるということに愉悦を感じているのだろう。そんなところはやはり見た目女みたいでも男なんだな。
「会長、いえ、鷹鐘、考えは決まりましたよね?」
俺がどう言おうが、人目が多いということを利用して俺を笑い者にする気か。…それもどうでもいいが、さて、少しくらい苛めるか? いや、面倒か。
「そうだな、俺は…」
「俺はそんな話初めて聞いたが?」
俺はあっさり会長の座を降りようとしたのに、ハルガの奴が言葉をかぶせてきやがった。空気だったくせに。
もし、苛められるのだとしたら、面倒でもこいつは苛めたい。
「すみません。まずは鷹鐘が会長を辞めてからだと思っていたもので」
「その言い方だと、次に俺に会長になってほしいとでも?」
「はい。あなたが誰よりもふさわしい」
副会長がうっとりした顔でハルガに話す。猫なで声が気色悪い。
「留学生なんだが?」
「問題ありませんよ。他にも役員はいるのですし、ここの生徒会はカリマスがあることが重要なんです」
「…今の会長でも問題はないだろ?」
「それは…、その、やはり、一番力のある者が上に立たないとおかしくありませんか?」
「ふーん?」
ハルガは穏やかそうに副会長の話を聞いていたが、わずかに口角を上げる。
その表情にぞっとした。分からない者は分からないだろうが、完全に危ない目だろ。ひどく寒気を感じる。…分かっていたが、やばい。
「だが、それなら、俺が会長になっても今の会長は副会長になっていいんじゃないか?」
「…そういうシステムはないので…」
副会長もなにかは感じたのか、わずかに声に戸惑いが感じられる。
「なら全員いったん辞めて再び選挙ってのは? 悪くない話だろ。フェアだしな」
「ああ、そうですね。思いつきませんでした。恥ずかしい話です。それではそうしましょう」
「ああ」
感じ取ったものなど忘れて副会長はハルガを尊敬の眼差しで見る。アホだな。
「では、そのように決まりました。これならなんの問題もない。だだをこねるのはやめてくださいね」
他の奴の意見は聞かずに決定かよ。その目はどんなことをしてもあなたは役員に戻ることはありえませんよと言っている。
さすがに気に食わなくて眉を寄せた。そんな表情を悔しさからとでも解釈したのか、副会長は満足そうにして、ハルガ一行とともに俺から離れた席へと向かった。
その日、いるんじゃないかと放課後すぐに部屋に帰れば、奴はいた。
「どういうつもりだ」
「どうした? なにも企てなどないぞ? 学生相手にそんなこと考えるほど大人げなくはない」
それは大人が言う台詞だと言いたいが、言ってもやはり余裕の表情を見せるだけだろう。
「本当に、なにも…」
「ああ。…珍しい表情をするな」
理由は分からないが俺の眉は下がる。不安のようなものを感じているようだ。
「俺がその原因か?」
「…わからない…」
「そんな表情もそそられるが、どうもあまり好まないようだ。なにか嫌なことがあるなら言ってくれ」
ハルガは俺の目元をなぞる。泣いても潤んでもいないぞ?
それでも身体を包まれると温かく感じて悪くないと思った。だが、思い出す。俺は、こいつのモノだが、こいつは俺のモノじゃない。
この温もりが与えられているのも、こいつのただの気まぐれだ。それでも、身体を預けてしまうのは、俺にはもう他に何もないからだろうか。
やっぱり嫌な視線を受けるが、そこまで弱くない俺は、それらを無視して席につく。
料理を頼んで静かに待っていたが、食堂が騒がしくなった。どうせ他の役員だと思っていれば、その通り副会長が俺の前にやってきた。
「会長、言いましたよね? あなたの人気はすでにないんです」
……なにが言いたいのか。俺は恨まれでもしていたのか。
副会長に目を向けると副会長1人だけでの騒がしさでなく、ハルガとその取り巻き達だと分かった。副会長含め、俺に媚びを売ってきていた連中が、今は俺を嘲笑うかのような目を向けてきている。
「リブリードさんと比べれば、庶民とかわりない存在なんです」
ああ。もしかしたら、こいつも上に立つことを望み、ハルガといることで、俺以上になった気でいるのか。今は優越感を感じているように見える。
「…今度、あなたをリコールします。惨めなまねは止めて、自ら会長であることを辞めれば、きれいな去り方になりますよ?」
「そうですよ、会長。お慕いしていたあなたが見苦しく席にしがみつくまねなどしないでください」
俺の親衛隊隊長も副会長の言葉に乗って話す。
他の奴も同じだな。俺という高い位置にいる人間を貶せるということに愉悦を感じているのだろう。そんなところはやはり見た目女みたいでも男なんだな。
「会長、いえ、鷹鐘、考えは決まりましたよね?」
俺がどう言おうが、人目が多いということを利用して俺を笑い者にする気か。…それもどうでもいいが、さて、少しくらい苛めるか? いや、面倒か。
「そうだな、俺は…」
「俺はそんな話初めて聞いたが?」
俺はあっさり会長の座を降りようとしたのに、ハルガの奴が言葉をかぶせてきやがった。空気だったくせに。
もし、苛められるのだとしたら、面倒でもこいつは苛めたい。
「すみません。まずは鷹鐘が会長を辞めてからだと思っていたもので」
「その言い方だと、次に俺に会長になってほしいとでも?」
「はい。あなたが誰よりもふさわしい」
副会長がうっとりした顔でハルガに話す。猫なで声が気色悪い。
「留学生なんだが?」
「問題ありませんよ。他にも役員はいるのですし、ここの生徒会はカリマスがあることが重要なんです」
「…今の会長でも問題はないだろ?」
「それは…、その、やはり、一番力のある者が上に立たないとおかしくありませんか?」
「ふーん?」
ハルガは穏やかそうに副会長の話を聞いていたが、わずかに口角を上げる。
その表情にぞっとした。分からない者は分からないだろうが、完全に危ない目だろ。ひどく寒気を感じる。…分かっていたが、やばい。
「だが、それなら、俺が会長になっても今の会長は副会長になっていいんじゃないか?」
「…そういうシステムはないので…」
副会長もなにかは感じたのか、わずかに声に戸惑いが感じられる。
「なら全員いったん辞めて再び選挙ってのは? 悪くない話だろ。フェアだしな」
「ああ、そうですね。思いつきませんでした。恥ずかしい話です。それではそうしましょう」
「ああ」
感じ取ったものなど忘れて副会長はハルガを尊敬の眼差しで見る。アホだな。
「では、そのように決まりました。これならなんの問題もない。だだをこねるのはやめてくださいね」
他の奴の意見は聞かずに決定かよ。その目はどんなことをしてもあなたは役員に戻ることはありえませんよと言っている。
さすがに気に食わなくて眉を寄せた。そんな表情を悔しさからとでも解釈したのか、副会長は満足そうにして、ハルガ一行とともに俺から離れた席へと向かった。
その日、いるんじゃないかと放課後すぐに部屋に帰れば、奴はいた。
「どういうつもりだ」
「どうした? なにも企てなどないぞ? 学生相手にそんなこと考えるほど大人げなくはない」
それは大人が言う台詞だと言いたいが、言ってもやはり余裕の表情を見せるだけだろう。
「本当に、なにも…」
「ああ。…珍しい表情をするな」
理由は分からないが俺の眉は下がる。不安のようなものを感じているようだ。
「俺がその原因か?」
「…わからない…」
「そんな表情もそそられるが、どうもあまり好まないようだ。なにか嫌なことがあるなら言ってくれ」
ハルガは俺の目元をなぞる。泣いても潤んでもいないぞ?
それでも身体を包まれると温かく感じて悪くないと思った。だが、思い出す。俺は、こいつのモノだが、こいつは俺のモノじゃない。
この温もりが与えられているのも、こいつのただの気まぐれだ。それでも、身体を預けてしまうのは、俺にはもう他に何もないからだろうか。
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