バルファ旅行記

はるば草花

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バルファ旅行記すりー前編

すりー前編19

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「…まだはっきりとは。いいか?」


いいってのは、巻き込んでもいいのかってことか?


「おう。俺達の仕事だろ。まだ半人前でもな」

「そう、だったな。まあ無理はしない。俺達でできることなんて限られている。…それで…、そろそろ離してもらえるか?」

「ああ、悪い」


つい抱きついたままだった。衝撃の事実とか聞いたら逆にしがみつくくらいだったしな。


朝は早くに宿を出る。幻獣の売買をしてるという取引は巡礼の道を進んで少し離れたところにある。ちゃんした街としてはここから一番近いらしい。距離にして徒歩8時間くらいらしい。近いか遠いか感覚が分からないな。
ハルハンの都に行くのももう巡礼の道を通っていけるので、元の国に帰るのにもそれほど支障がなさそうだ。

早る気持ちがあると街の景色を悠長に見る気は薄くなり黙々と歩く。


「…オミ。そんなに気を張るな。無茶はしないんだし。せっかく巻き込まれてここにいるんだ。楽しんだほうが得だぞ?」

「セイナ…。ふっ。ありがとな。そうだな。1人でさまよってるわけでもなし、しかも相方は強い幻獣だ。怖いものなんてない。それなら、言葉に甘えて観察させてもらうな」


あー。不安そうな顔の誠那に俺が励ましてやるとか思ってたのに、逆に落ち着かせられるとかって…。情けなくもあるが、誠那の言い方が励ましというより、自分のペースでいろよって感じだから、そんなにショックにはならないな。

それから俺は今までのように誠那に目に入るあらゆることを尋ねながら足を進めた。



「はー、きつい…」

「荒れた土地での野宿はきついしな。朝起きて水ないとか悲惨だぞ」


目的の街、ウルグルに、やあっっと到着した。途中巡礼者用に小屋とかあって井戸とかで水飲めたりしたけど、巡礼者の人数が多くて小屋に入ることもできなかった。
水はなんとか確保しながら、ほとんどまともに休憩もできず、それでも野宿は嫌だったので頑張ってこの街まで来た。巡礼者は野宿する者が多いらしい。いくら準備してきてるといってもすごいな。


「もう暗いが…宿はあるか?」

「どうかな。それでもここも巡礼者の立ち寄ることもある街だし、最悪、休憩所はあるし……、まあ、とにかく探そう」


やっと着いたという安堵で身体の力抜いた後に再び歩くのはきついな。しかたない。

そして運よく宿が見つかりました。一つ目の宿は満員だったんだけど、次を歩いて探すには暗いので宿のおばちゃんに他の宿の場所をたずねたら、普通の家みたいなところを教えてくれた。


そこは気まぐれで旅人を泊めているそうで、外観では分からないから空いてる可能性は高いとか。
そんないい情報が手に入ったのはやはり、誠那の顔が気に入られたからじゃないかと思う。顔がいいのは面倒もけっこう多いが利用すればなかなかな使い勝手がいい。


「すみません」

「はい。なんでしょうか? あ、もしかして宿泊希望かしら?」


教えられた家に来て戸を叩けば、思ったより若い女性が中から出て来た。老夫婦経営じゃなかったのか。


「はい。すみません。こんな遅くに」

「あら、教育のしっかりしたご両親なのね。そんなこと気にする人なんて少ないわ。ここらでは夜遅くなるのも当然だもの。頑張ってシャリフから歩いてきんでしょ?」


そうか。俺達みたいなパターンの旅人は多いんだな。


「その通りです。では今日泊めていただけますか?」

「もちろん。さ、疲れたでしょ。早く中に入ってくつろいで」

「ありがとうございます」


自然と感謝の気持ちが湧いてくるので2人で頭を下げて家の中へと入った。


「おー、泊まりの人か。しかも2人とも若い。苦労しただろう? ほら、早く座りなさい」


中にいた男の人も若かった。俺達よりは上でしっかり成人済みだろうけど。2人は若夫婦なわけか。
ご厚意に遠慮せず長椅子に座る。とたんに疲れが出てきた。荷物を下ろせば肩が楽になり息を吐いた。


「旅はあまり慣れていなさそうだね?ご両親がよく許可したね」

「あー、それほどの長旅でもないので」

「そうかい?」


うう…。こういう人達にはあんまり嘘つきたくないな。


「あら、私は駆け落ちでもしたのかと思ったわよ」

「「は?!」」

驚きが誠那とかぶった。


「こらこらお前ね」

「ふふ。ごめんなさい。冗談よ。ただ2人ってすごく素敵でお似合いだから、つい物語のようなことを考えてしまったわ」

「えっと…。男同士とか気にしないんですか。この辺り」


前の宿のとこでも美人だとか抱かせろとかも言われたけども、どうなんだ?


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