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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編20
しおりを挟む「そうねー。そういう人もいるけど基本は男女よね」
「それでも別に偏見とかはない?」
「悪いこと言う人はいるけど、善良な人はそんなこと言わないわ。2人の住んでるところは多いの?」
「…一般的ではないかな?」
男子校の学園ではけっこう多いが。あ、向こうの世界の話をしてはいけないし詳しくは言えないか。
まあ、ひとまずこの土地は同姓愛に寛容なわけか。バルファ全土ではどうかはまだまだなんともだが。
「それで、この土地に駆け落ちに? なんてごめんなさいね。巡礼ではないわよね?」
「ええ。ハリハンの都に行こうとしてるんですよ。用事があって」
「そうなのね。今日は我が家を選んでくれてありがとう。ゆっくりしていってね」
「はい。ありがとうございます」
「ふふ。本当に教育がしっかりしてるわね。貴族とかって考えちゃおかしいかしら?」
どうも奥さんのほうは物語とかが好きなようだ。女性なら恋愛物語とかが好きなイメージはある。
「いえ。貴族に見えますか。俺はちょっと親が金を持ってるだけですよ。セイナは?」
幻獣の長の家系って貴族に当てはまるか?と目線で聞いてみる。
「まさか。うちはただちょっとした一族の長ってだけ」
悪ラルクスや豪快母が貴族とかに見えるか?と目で言ってきた。誠那は洗練されたような所作で貴族に見えてもおかしくない気がするが。
「あら村長でもすごいわ」
「ミュリシャ。お話はせめて後で」
「あああ。ごめんなさい。つい楽しくて。部屋の案内するわね」
案内してくれた部屋は客を迎えようと作っているのがわかる。女の子とか喜びそうな内装だ。2人部屋である。
それから風呂に入って、あ、バルファでの風呂率は地域によるが宿をやってるならある可能性が高く、一般的には金次第でもあるが、桶でのほうが多い。
そして夕食は予想通りの家庭的な料理だ!
「これ魚ですか? ここら辺でとれるんですか?」
「それは少し離れた、ここから東にあるバンっていう地域にある湖で穫れるリュリって魚で、干されてここに持ってこられる」
「そうなんですか」
夫のワイヤさんが答えてくれた。しっかり頭の中でメモる。
「地域の料理に興味が?」
「まあ、半分は観光なので」
「美味しいものに興味があるのはわかるが、詳しく知ろうとするなら宮廷料理とか古代料理とかそういうもののほうがいいんじゃないか? 自信の料理ではあるが、田舎のどこにでもある料理だ」
「宮廷料理も興味がありますが、こういう料理だってどこでも食べられるわけじゃないですよ?」
あんまり旅行とかしない人は自分達の食べているものが全世界共通だと思うんだろうな。家庭料理なんて普通すぎるだろと。
「そんなに違うものなのかい?」
「国が違うとずいぶん違いますよ。な、セイナ」
やばい。バルファ知識というより地球知識だ。バルファの人の住む地域もかなり広いし、同じじゃないかと思うけど。
「ああ。気候が違うと欲しくなるものも違うし、穫れる食材が違うから隣同士の国でも大きく違う」
よかったー! 誠那のバルファ知識はかなりのものだな。
「そうなのか。多少味付けや作り方が違うとは旅人から聞いたことがあるんだけど。国を越えての旅人なんてこんな荒れた土地には滅多に来ないから知らなかったよ。君達は若いが複数の国に行ってるんだな」
「はい。ですけど、そんなに多くはないです。知識は興味があって習っただけで」
「セイナくんは長の息子だったか。将来跡を継ぐ為にもしっかりした教育をされてきたのかな」
「そうかもしれません。他がどうなのかよく分からないのですが」
幻獣の長の息子だものな。ラルクスの力とか地位とか幻獣の中ではどの程度か分からないけど、なんとなく、力あるラルクスはドラゴンにも負けてないんじゃないかと思う。
きっと長になる為の英才教育を受けてきたに違いない。
うちは普通だと思うが………、たしかに比べられないな。
若夫婦2人との夕食は穏やかで楽しかった。若夫婦が素晴らしい人だから気兼ねなくていいのか年齢が近いから相性がいいのかだろう。夫婦のどちらも好奇心があって誠那の語る話に面白そうにしていた。
逆にこの辺りのちょっとしたお得情報や歴史など、そういう話をしてくれてかなり長く話し込んでしまった。
応援ありがとうございます!
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