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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編21
しおりを挟む「はは、疲れてたのにかなり話したな」
「だが楽しかった。あちらの夫婦が疲れていないかが心配だな」
「かもな。それなら俺達が手伝おう。……そうしよう!」
人との交流は手伝いからだよな。宿とはいえ、安い料金で泊めてくれるはずだから、手伝いもせねば! つかしたい。田舎体験とかで金払ってまでする奴と同じだ。うわ、わくわくする。
そんな俺の心情を理解している誠那は苦笑していた。でも目は優しかった。
まだ交渉はしていないがここには目的があって来ているだけに何日か泊まりたいので、ここには長くお世話になるだろう。それに目的があっても急ぐことではないから夫婦の手伝いもゆっくりできる。
気分がいいからか、しっかり眠ってほどよい時間に起きることができたし、体調もいい。
さっそく眠そうなミュリシャさんの朝の準備の手伝いをした。何日か泊まりたいと言えば好きなだけどうぞと言われた。なんだか嬉しい。
朝食を食べた後、旦那さんのワイヤさんは仕事に向かい、その後は3人でゆったり会話した後、俺達は街を散策することにした。
「取引の場所も日にちもはっきりしているんだよな?」
観光でなく幻獣の違法取引に関して調べる為に行動している。前に誠那が言ったように少しは観光もするけど、幻獣第一だ。
「ああ。完全には信用できないが今はそれをあてにするしかない。それまで後…、4日先だな。十分下調べできるな」
「まずは場所見学?」
「そうだな。しかし、余所者なうえ俺達は目立ちすぎるからな。観光しながらそこにも立ち寄ったというフリでもするか」
誠那も自分の容姿が並じゃない自覚はあるんだな。無自覚とかだったら面白かったのに。いや、変な虫がいっぱい寄ってきてよくないか。
「それじゃあ、まずは名所巡り?」
「…あまりないが、ワイヤさんに聞いたところに言ってみるか」
前の街と違ってここは普通の街だ。一応歴史的に重要な拠点だったこともありはするが、何百年も前の話で、それ以降あまり戦火に巻き込まれていないのが特徴みたいなところだ。それだけ特徴の薄い場所なのが違法取引するにはいい、ということなんだろう。
どこの異世界の街でもあるだろう市場へとやってきた。とても小さい市場であるが、街の人には大事な場所だろう。
「店とかいっぱい見た中で木彫りの置物に一番興味をひかれたものの、こういう、ただの菜っぱでも買いたくなる…!」
布の上に土で汚れたままの菜っぱが束になっておかれている。
どんな調理をすればいいのか分からないし、味も知らないが、お婆さんに話しかけて交流したい。話すだけでもいいだろうが、買いたい!記念に押し菜っぱにしたい。
「お兄さん、すごい目が輝いてるね。こんな市が珍しいの?」
飲み物を売ってるらしい少女に微妙な顔で話しかけられた。そんなに変だったか…。
少女は俺達よりいくつも年下のようだが、仕事をしているんだな。学校に行くのが義務ではないんだろう。
「ああ。あんまり見たことない」
「それってやっぱり貴族だから? できれば王子様希望です!」
「残念、貴族でもない。ただ家は裕福なほうではあるかな」
「へえ。あ、これ飲まない? ハルナの実のジュースだよ」
「おお。いただこう」
菜っぱはさすがに諦めるが、飲み物くらいいいだろう。誠那からもらったお小遣いを出す。
「お金はいいよ! お兄さん2人は特別! そのかわり、ここでゆっくり飲んでいって、そこにある椅子に座っていいから」
…なるほど。バルファの名も無き小さな街の少女も商売は上手なようだ。
街の名前は忘れたわけじゃないぞ?
誠那と2人まったり椅子に座って甘いジュースを飲んでいれば、少女の読み通り、俺達が珍しくて人がたくさん集まってくる。飲み物もちゃんと売れているようで安心する。さらにずっと年上の人達にはいろんなものを貰った。主にお菓子だと思われる。
飲み終わったら他の場所にも行く必要があるので市場から離れた。
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